ドヴォルザーク:弦楽セレナード【聴いてみよう】Dvořák: Serenade for Strings in E Major, Op. 22, B. 52

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ドヴォルザーク:弦楽セレナード【YouTube】

ドヴォルザーク:弦楽セレナード オランダ室内管弦楽団 2016年11月27日コンサートの模様です。しっかりした芯がありつつ、柔らかさに包まれ、あーっシアワセという気分になります。33分56秒の演奏です。
出典:YouTube Serenade for Strings | Dvořák | Netherlands Chamber Orchestra | Concertgebouw Nederlands Philharmonisch Orkest | Nederlands Kamerorkest コンマス:ゴルダン・ニコリッチ Gordan Nikolić

ドヴォルザーク:弦楽セレナード テリエ・トンネセン ノルウェー室内管弦楽団  2021年1月11日コンサートの模様です。ただただ美しいとしか言いようのない演奏です。Terje Tønnesen Norwegian Chamber Orchestra
出典:YouTube Antonín Dvořák: Serenade for Strings | NCO · Tønnesen Norwegian Chamber Orchestra

ドヴォルザーク:弦楽セレナード【名盤・おすすめ】

チョン・ミョンフン ウィーン・フィル 😘

ドヴォルザーク:弦楽セレナード チョン・ミョンフン ウィーン・フィル 2001年
Dvořák: Serenade for Strings in E Major, Op. 22, B. 52 Myung-Whun Chung Wiener Philharmoniker

チョン・ミョンフン(ミュンフン)さんのセレナードは、サクサクっと進んで行きます。高音域のフレーズがよく聞こえてきますが、チェロなどの中音域の音が薄め。落ちついた重厚感は薄く、まったりした感覚が少ないです。軽妙さを持ち合わせたスピードのある演奏で、さっと風が吹いていくような感覚です。特に、高音域のヴァイオリンの音色に特徴があり、絹織物のような風合いを感じさせるもの。これはウィーン・フィルの音でしょうね。

絹の風合いと言っても、貴族的な大人の女性の雰囲気ではなく、ひらっとした襞のある短めのスカートで、ちょっとめくれあがり、身をかわされて逃げられてしまうような雰囲気がします。特に、第1楽章はそんな感じを受けます。弦の動きは綺麗ですし、残響も適度にあって好ましいのですが、しっとりした風情、ふくよかな感覚とか、アルトの声を持つような女性とは違います。

なぜなんだろう~。遠い目をして懐古調になっていくところが、ドヴォルザークのセレナードの良さだと思います。草原の広がり感を感じて、記憶の断片を探してみたりとか、田舎の懐かしい景色をみたりとか。そんな気持ちになると思うのですが、ミュンフンさんの演奏には、枯れ草のにおい、素朴な女の子と一緒に遊んでいる甘酸っぱい少年時代の名残りは、ちょっと蘇らない感じがします。中低音の音域より高音域の方が勝っているから、そしてフレージングが軽いからかもしれません。音域の厚みバランスが難しいですね。

CDカップリング:ドヴォルザーク 弦楽セレナード、管楽セレナード 出典:YouTube Dvořák: Serenade for Strings in E Major, Op. 22, B. 52 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

クリストファー・ウォーレン=グリーン ロンドン室内管弦楽団 😘

ドヴォルザーク:弦楽セレナード クリストファー・ウォーレン=グリーン ロンドン室内管弦楽団 1988年
Dvořák: Serenade for Strings in E Major, Op. 22, B. 52 Christopher Warren-Green London Chamber Orchestra

ウォーレン=グリーンさんの演奏は二種類あります。当盤のロンドン室内管弦楽団は、ヴァージンから発売されていたもので、フィルハーモニア管弦楽団(1985年 シャンドス)もあります。基本的に演奏スタイルは似ており、当盤は、有名なセレナード集めた「String Serenades」というタイトルの2枚組BOX。いわゆるオムニバス(コンピレーション)アルバムです。弦楽合奏曲が、盛りだくさんで嬉しいですね。

さて、演奏は、甘いフレーズが目白押し、艶やかで甘め。当然、セレナードだから、女性を口説き落としたくなるような、甘さが必要なのです。むふふ。流麗だし、柔らかくしなやか。推進力も高く弾むようなテンポで演奏されています。旋律重視型の演奏で、イギリスの楽曲に合っている演奏と言えるでしょうか。横に流れる型が良いか、縦に綺麗に合っている演奏か。好みがわかれるかもしれませんが~ 適度にカジュアルに聴けて、無人島に持っていきたい楽曲たちの宝庫でもありますし、弦楽合奏が好きな方にとっては、カップリングの良さで聴いていただけるかと思います。

CDカップリング:「String Serenades」ウォーレン=グリーン ロンドン室内管弦楽団 2枚組BOX
チャイコフスキー 弦楽セレナード、ドヴォルザーク 弦楽セレナード、エルガー 序奏とアレグロ、エルガー 弦楽セレナード、V・ウィリアムズ ロマンス「揚げひばり」、V・ウィリアムズ グリーンスリーヴスによる幻想曲、V・ウィリアムズ トマス・タリスの主題による幻想曲、スーク 弦楽セレナード 出典:YouTube Dvořák Serenade for Strings in E Major, Op. 22, B. 52 ロンドン室内管弦楽団 – トピック London Chamber Orchestra – Topic Provided to YouTube by Warner Classics

コリン・デイヴィス バイエルン放送交響楽団 🥰

ドヴォルザーク:弦楽セレナード コリン・デイヴィス バイエルン放送交響楽団 1987年
Dvořák: Serenade for Strings in E Major, Op. 22, B. 52 Colin Davis Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks

ドヴォルザークの弦楽セレナードは、チャイコフスキーの弦楽セレナードと、カップリングして収録されていることが多いです。どちらかと言えば、チャイコのセレナードの方が聴かれているのかもしれませんが、地味ですが落ち着いた曲です。コリン・デイヴィスさんの演奏は、三月初旬の三寒四温の時期、ちょっぴり春めいてきたかな~という、ふわっとした暖かい空気感が感じられる演奏です。

草原の広がりがあり、地面に座って、しばらく、ぼんやりなにげなく風景を見てて、瞑想しているかのような感じがします。実は、この曲、ドヴォルザークが約10日間で書きあげたものらしいのですが、 作曲した季節は五月頃だったようです。

チェロやヴィオラの中音域が主体となっているので、正直なところ、若い年齢層のリスナーには、あまりお薦めできる楽曲でないと思います。だって~ エナジー爆発しそうな若い時には、地味じゃんと一喝されそうなんですよ。ハイ、かつてのワタシは、そうでした。なので~ 中高年向きのセレナードだと思っています。あと、夜に聴くと心穏やかになって良いかもしれません。 揺りかごの赤ちゃんのような気分で、重心が低く、弦の最後のフレーズが、ふわ~っと抜けて行く感覚が味わえるかもしれません。

コリン・デイヴィスさんの演奏も、そのあたりのツボは押さえてあって、大人向けの渋好みの演奏です。もうちょっと、華やいだ雰囲気があっても~と、思わず欲張ってしまいたくなるのですが、楽章ごとにシーンが変わりますので、飽きることはないと思います。第4楽章は、甘いチェロ響きのうえを、すーっとヴァイオリンが奏でる楽章で、ちょっぴりクールな風が入り込んで、しみじみ思索するような雰囲気がありますし、チェロを男性に、ヴァイオリンを女性が演じて、アイススケートをしながらという感じもします。

まっ、いずれにしても感情移入のしやすい楽曲と、演奏です。自分を見立てて空想(思いに)浸るのも良いですね。重心がかなり低めで、カッチリ。滋味な楽曲が、さらに滋味に聞こえちゃう傾向があるので、ガッチリ渋いオジチャン風の演奏ではあるので、他の演奏と聴き比べて、今の自分にフィットした演奏を見つけてくださいね。

CDカップリング:チャイコフスキー 弦楽セレナード、ドヴォルザーク 弦楽セレナード 出典:YouTube Dvořák: Serenade for Strings in E, Op. 22 バイエルン放送交響楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

クリストファー・ウォーレン=グリーン フィルハーモニア管弦楽団 😮

ドヴォルザーク:弦楽セレナード クリストファー・ウォーレン=グリーン フィルハーモニア管弦楽団 1985年
Dvořák: Serenade for Strings in E Major, Op. 22, B. 52 Christopher Warren-Green Philharmonia Orchestra of London

このシャンドス(CHANDOS)の演奏は、少しピントが甘いので、まるでムード音楽になっているのが玉に瑕です。風呂場のような感じがしちゃって、う~ん。かなり柔らかい音で、休日の午後に聴くと、あー 速攻これは寝ちゃいますね。音にエコーが掛かっているかのような感じで、魂抜かれちゃう感じです。

ドライブのBGMに聴くのも良いですが、寝ちゃわないように~って感じでしょうか。瑞々しくロマンティックに響き、まろやかに弦が絡み合って、とろけてしまうほどに可愛い。高音域の弦フレーズと低弦のフレーズが、合わさっては離れて行く、また一緒になって綺麗な和音を形成する。室内楽的響きが綺麗です。ラストの第5楽章に入ると、歯切れのよいフレーズが冒頭に飛び出してきますが、それでも、やっぱり残響が邪魔になりますね。

ウォーレン・グリーンさんの演奏で聴いてみると、渋みが取り払われ、角が取れすぎて丸くなりすぎます。ロンドン室内管弦楽団との演奏(ヴァージン盤)は、残響は適切に処理されているように思います。ドヴォルザークの渋くて甘いセレナードが、別ジャンルの音楽になっており、完熟のムード音楽になってしまった感じです。なので、あまりお薦めしません。

ドヴォルザーク 弦楽セレナード、管楽セレナード 出典:YouTube Dvořák Serenade for Strings in E Major, Op. 22, B. 52 Various Artists – Topic Provided to YouTube by PIAS

パーヴォ・ベルグルンド ストックホルム室内管弦楽団 😍

ドヴォルザーク:弦楽セレナード パーヴォ・ベルグルンド 新ストックホルム室内管弦楽団 1983年
Dvořák: Serenade for Strings in E Major, Op. 22, B. 52 Paavo Berglund New Stockholm Chamber Orchestra

出典:YouTube Serenade for Strings, Op. 22, B. 52 New Stockholm Chamber Orchestra – トピック
Provided to YouTube by NAXOS of America

ネヴィル・マリナー アカデミー室内管弦楽団 🙂

ドヴォルザーク:弦楽セレナード ネヴィル・マリナー アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ 1981年 Dvořák: Serenade for Strings in E Major, Op. 22, B. 52 Neville Marriner Academy of St Martin in the Fields

CDカップリング:チャイコフスキー 弦楽セレナード 1982年、ドヴォルザーク 弦楽セレナード 1981年
出典:YouTube Dvořák: Serenade for Strings in E, Op. 22 Academy of St Martin in the Fields Provided to YouTube by Universal Music Group

ヘルベルト・フォン・カラヤン ベルリン・フィル 🤣

ドヴォルザーク:弦楽セレナード ヘルベルト・フォン・カラヤン ベルリン・フィル 1980年
Dvořák: Serenade for Strings in E Major, Op. 22, B. 52 Herbert von Karajan Berlin Philharmonic Orchestra

カラヤンさんの演奏は、いささか録音年が古く、ソフトフォーカス、残響が多めなので、イマイチお薦めできないな~って思います。SHM-CDなどが発売されているので、サブスクリプションで聴く場合は、音響が改善されていると思います。ぜひ、チャイコフスキーの弦楽セレナードと共に、良い録音でお聴きください。

ドヴォルザークの弦楽セレナードは、ふわっと、さら~っと始まっており、上品でさりげない演奏です。ヴィオラから始まるフレーズは、甘く美しく、風合い濃厚です。カラヤンさんの演奏は、洗練され色気がたっぷりで、第1ヴァイオリンが、ワルツのように踊りだすところは流麗です。後半の楽章では、楽しいスケルツォの第3楽章ですが、鶏が首を絞められたように悲痛な感じがしちゃいます。

ドヴォルザークは、弦の構成が薄めなのか、さらっとして、ふわっと風のように感じられるフレーズが多いです。特に、ゆったりとした楽章では、艶があり、弾力性が欲しいフレーズが満載です。付点のリズムの面白さは、あまり弾みませんが、ノビ感と語尾に感じる翳りが繊細です。カラヤンさんの演奏は、さすが。典雅で、すご~く優美で、退廃的で、妖しいです。思わず、のけぞってしまいました。ここまでするのぉ?というほどの濃厚な演出ですが、あらがいたいです。自ら引き込まれたい気分に。アハハ~ 陶然としてきます。妖しい、妖しすぎる~ そんな演奏なので骨抜きにされないように気をつけてください。是非、良い録音でお聴きください。

CDカップリング:チャイコフスキー 弦楽セレナード、ドヴォルザーク 弦楽セレナード 出典:YouTube Dvořák: Serenade For Strings In E, Op. 22, B. 52 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Grou

ドヴォルザーク:「弦楽セレナード」【解説】

ドヴォルザークの「弦楽セレナード」ホ長調(作品22)は、1875年、わずか10日余りで書きあげた作品だと言われています。

第1楽章 ホ長調 8分音符のリズムを刻み続けるヴィオラに乗って、第2ヴァイオリンとチェロが、抒情的な主要主題を歌い出します。第1ヴァイオリンが舞い上がるような対旋律を歌い出すなか、第2ヴァイオリンが、旋律主題を歌い継いでいきます。ト長調へと転調すると付点リズムが特徴的な舞曲風の主題となり、ホ長調の主要主題に戻って主和音で終わります。

第2楽章 嬰ハ短調の揺れ動くような舞曲の旋律に始まり、最初の楽節が反復されると、ホ長調による第2の楽節が始まります。第2主題の後半では、付点リズムの旋律が現れ、第1主題が再帰し、第1部の締め括りのカデンツァとなります。第2部は、変ニ長調に転調し展開された後、第1部が再現されます。最後は、嬰ハ長調の和音で終ります。

第3楽章 ヘ長調 4/2拍子 スケルツォ 快活なスケルツォで、カノンの技法を用いたスケルツォ主題は、呈示され、すぐに展開し、全曲で最も単主題的な楽章で、トリオの結びにおいてもスケルツォ主題が再帰します。コーダにもスケルツォ主題が現れて締められます。

第4楽章 イ長調 緩徐楽章で、流れるような旋律と、甘美なフレーズです。ところどころに、第2楽章の第3主題が反響しています。

第5楽章 4/2拍子 フィナーレ 主部は嬰ヘ短調で、後半ではホ長調に転調します。カノン風の下降音型の導入部に始まり、付点リズムの第1主題が続いた後、ヴィオラの8分音符にのって第2主題が現れます。16分音符のヴァイオリンとチェロが、カノン風に奏でられ、ロ長調の第3の主題を呈示します。いったん静まった後、導入主題と第1主題が再呈示されて、順次、第2主題、第3主題が再現されます。後に、第1楽章の主要主題が回想され終わるとおもったら急速なコーダとなり、導入主題が再び現れ、ホ長調の主和音を3度奏でて終わります。

チャイコフスキーの弦楽セレナードと同様に人気の高いセレナードです。その穏やかさ、まろやかさ、優しさ、暖かさ。木質感たっぷりの弦楽合奏に、ほれぼれ~しちゃうことでしょう。大人の楽曲だと思います。

ドヴォルザーク:「弦楽セレナード」【ディスク情報】

2001年 チョン・ミョンフン ウィーン・フィル G
1988年 クリストファー・ウォーレン=グリーン ロンドン室内管弦楽団 Virgin
1987年 C・デイヴィス バイエルン放送交響楽団 Ph
1985年 クリストファー・ウォーレン=グリーン フィルハーモニア管弦楽団 CHANDOS
1983年 ベルグルンド ストックホルム室内管弦楽団 BIS
1981年 マリナー アカデミー室内管弦楽団 Ph
1980年 カラヤン ベルリン・フィル G

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