ヒンデミット:組曲「いとも気高き幻想」【聴いてみよう】Hindemith: Suite “Nobilissima visione”

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ヒンデミット:組曲「いとも気高き幻想」【名盤・おすすめ】

マレク・ヤノフスキ ケルンWDR交響楽団 🥰

ヒンデミット:組曲「いとも気高き幻想」 マレク・ヤノフスキ ケルンWDR交響楽団 2017年
Hindemith: Suite “Nobilissima visione” Marek Janowski WDR Sinfonieorchester Köln

ヤノフスキさんの演奏は、カッチリ堅牢な構成で描かれています。ヴァントさんのような冷え冷えとした感覚ではありませんが、人を寄せつけない毅然としたフレージングが、恐れ多く、襟を正して聴かないと罰が当たりそうです。中低音の弦の和音フレーズから始まります。低弦の存在が、くっきりしており、揺らぎのないストレートな響きで空間を占めていきます。

微妙な音の変化で静謐さを生みます。落ち着いたフレージングで一歩ずつ歩いて行く重みが感じられ、宗教臭くはありませんが、自ずと、その雰囲気に呑み込まれていく演奏です。弦楽合奏部分の響きは、とてもシック。木管のフレージングは、密やかに奏でられています。

近代曲ではあるのですが、教会旋法を取り入れた音で構成されているため、変に硬くはありませが、讃美歌風に歌われ神妙な面持ちになるには、間違いありません。特に、第三楽章は、和音から旋律にかわって、重層的に響きます。ここでヤノフスキさんの本領発揮という感じです。カッチリした和音の進行で、そして対抗旋律を巻き込み、威厳を持ち、誇らしげなクライマックスを作っていきます。腰の据わった納得の演奏でした。

CDカップリング:ヒンデミット ウェーバーの主題による交響的変容、組曲「気高き幻想」、弦楽と金管のための協奏音楽「ボストン・シンフォニー」 出典:YouTube Nobilissima visione Suite ケルンWDR交響楽団 – トピック Provided to YouTube by PIAS

クラウディオ・アバド ベルリン・フィル 😘

ヒンデミット:組曲「いとも気高き幻想」 クラウディオ・アバド ベルリン・フィル 1995年
Hindemith: Suite “Nobilissima visione” Claudio Abbado Berliner Philharmoniker

アバドさんの演奏は、ゆったり柔らかい音で始まります。荘厳な和音の響きですが、録音のせいかヌケの良さが感じられないところが悲しいです。弦楽合奏の特にチェロが美しく、ヴァイオリンは、重厚な和音から立ち上がってきます。リストのピアノ曲「二つの伝説」の「小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ」と同じく、聖人を主人公にしたバレエ音楽ですが、金管でコラールが奏でられ荘厳さを感じます。

組曲ですが、元々はバレエ音楽なのです。バレエ?! 聖人が主人公ですが、どうやって踊るんでしょう。躍動感ゼロではないのでしょうか。全く想像がつきません。YouTubeで、動画がないかと探してみたのですがバレエ自体があまりアップされていないので~ ないかもしれません。

まあ、そんな疑問は横に・・・、曲は進みます。多層的に繰り広げられていく楽曲ですし、題材からすると、見通しの良い演奏の方が好まれるように思います。また、まろやかな金管の響きが欲しいところ。力強い主旋律と、他の旋律がよりあわさって進み、堂々と歌いあげていく様は圧巻です。アバドさんの誇らしげなフレーズと、響きは、万人向けではないでしょうか。ヒンデミットってホント、縦横を縦横無尽に使ってますね。この方のキャンパスって大きいわあ。

CDカップリング:ヒンデミット:画家マティス、組曲「いとも気高き幻想」、ウェーバーの主題による交響的変容
出典:YouTube Hindemith: Mathis der Maler Symphony ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ヴォルフガング・サヴァリッシュ フィラデルフィア管弦楽団 🙂

ヒンデミット:組曲「いとも気高き幻想」 ヴォルフガング・サヴァリッシュ フィラデルフィア管弦楽団 1994年
Hindemith: Suite “Nobilissima visione” Wolfgang Sawallisch Philadelphia Orchestra

サヴァリッシュさんの演奏は、乾いた感じの録音状態なので、いささか損をしている感じです。重厚な弦楽合奏には瑞々しい響きが欲しいところです。CDカップリング:ヒンデミット ウェーバーの主題による交響的変容、組曲「気高き幻想」、交響曲「画家マティス」 出典:YouTube Nobilissima Visione – Suite フィラデルフィア管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Warner Classics

ヤン・パスカル・トルトゥリエ BBCフィルハーモニック 🙂

ヒンデミット:組曲「いとも気高き幻想」 ヤン・パスカル・トルトゥリエ BBCフィルハーモニック 1991年
Hindemith: Suite “Nobilissima visione” Yan Pascal Tortelier BBC Philharmonic Orchestra

トルトゥリエさんの演奏は、残響が多めなので響きがスッキリしません。ちょっと惜しい気がします。出典:YouTube Nobilissima visione Suite BBCフィルハーモニック – トピック Provided to YouTube by NAXOS of America

ヨエル・レヴィ アトランタ交響楽団 🙂

ヒンデミット:組曲「いとも気高き幻想」 ヨエル・レヴィ アトランタ交響楽団 1989年
Hindemith: Suite “Nobilissima visione” Yoel Levi Atlanta Symphony Orchestra

レヴィさんの演奏は、ゆったりした歩調で格調高く演奏している感じがします。優しい響きでソフトフォーカス気味ですが、雰囲気は良く伝わってくるもの。
CDカップリング:ヒンデミット 交響曲「画家マティス」、組曲「気高き幻想」、ウェーバーの主題による交響的変容 出典:YouTube Hindemith: Nobilissima visione Suite
アトランタ交響楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ヘルベルト・ブロムシュテット サンフランシスコ交響楽団 😘

ヒンデミット:組曲「いとも気高き幻想」 ヘルベルト・ブロムシュテット サンフランシスコ交響楽団 1989年
Hindemith: Suite “Nobilissima visione” Herbert Blomstedt San Francisco Symphony

導入部とロンドでは、低弦の重厚な旋律で始まります。奥行き感や透明度は低めでしょうか。行進曲とパストラール
においては、ピッコロがおどけたように、軽やかに踊るような旋律を奏でます。まるで、スキップをしながら、行列の先頭を歩き、続いて、木管がトリルを交えて行進してくるという感じになります。

金管が華やかさを増し、聖フランチェスコの生涯を崇敬の念でもって描いていきます。明朗と、誇らしげに演奏されると、アメリカのオケだったなあという感じですが、ジメっとした湿気がなく、陽気さが勝っています。ワタシ的には、おどけた木管フレーズに、力強いブラスが合わさると良いかな~と勝手に思っています。楽章後半になると、内省的で沈静化していきます。

パッサカリアでは、コラールが奏でられます。まろやかなトーンで、旋律が多層的に繰り広げられていくので、見通しの良い演奏の方が好まれるように思います。ブロムシュテットさんの演奏は、力強い主旋律が、金管で堂々と歌いあげており、誇らしげな姿は、オケのなかで際立っています。ヴァイオリンのフレーズが爽やかに奏でたあと、金管フレーズが再現されますが、ちょっと派手気味ですかね。

CDカップリング:ヒンデミット 弦楽と金管のための協奏音楽(作品50)1991年、ヒンデミット 白鳥を焼く男 1991年 ヴィオラ:ジェラルディン・ウォルサー Geraldine Walther、ヒンデミット 気高い幻想組曲 1989年 
出典:YouTube Hindemith: Nobilissima Visione San Francisco Symphony Provided to YouTube by Universal Music Group

ヘルベルト・ケーゲル ドレスデン・フィル 🥰

ヒンデミット:組曲「いとも気高き幻想」 ヘルベルト・ケーゲル ドレスデン・フィル 1980年
Hindemith: Suite “Nobilissima visione” Herbert Kegel Dresdner Philharmonie

ケーゲルさんの演奏は、重厚かつ繊細で、キッチリ楷書体で演奏されており、最後は派手に終わります。導入部とロンドにおいては、弦楽合奏で落ちついた雰囲気を醸し出しています。そして、フルートのみ飛翔します。行進曲とパストラールでは、木管が主体となって、トリルを交えて行進していきます。金管が入ってきて華やかさを増していくのですが、どこかコミカルです。聖職者である筈なのに、聴きようによっては道化師のよう。(失礼しました)

パッサカリアでは、金管コラールから始まります。ここでは金管が主旋律を受け持ちますが、弦によって装飾され、打楽器によって、より荘厳な雰囲気を増していきます。徐々に、なんだかハリウッド映画ばりのキラキラ状態で幕を閉じてしまうのですが。う~ん 酔ってしまいそう。聖職者を題材して、最後に派手に鳴らすのは、ワタシ的には、あまり腑に落ちないのですが、リスペクトの仕方が良くわかりません。

ケーゲル盤は、年代のわりに録音状態が良く、ホール感が豊かです。カミソリで切られたような怜悧さや、冷え切った怖さ、鋭さというのは、この曲では感じません。不謹慎ながら、ラストの爆発したような終わり方に、ちょっとにんまりしてしまいます。(頭では、腑に落ちないと思っておきながら、感覚ではニンマリなのです。自己矛盾)

CDカップリング:2枚組BOX 交響曲「画家マティス」、トランペットとファゴットと弦楽のための協奏曲、組曲「いとも気高き幻想」交響曲 変ホ調、シンフォニア・セレーナ 1980年 トランペット:ルートヴィヒ・ギュトラー Ludwig Guttler ファゴット:エッカルト・ケーニヒステット Eckart Konigstedt ヴァイオリン:ラルフ=カーステン・ブロンゼル Ralf-Carsten Bromsel ヴァイオリン:ウォルター・ハーロウィッチ  Walter Hartwich ヴィオラ:ヘルベルト・シュナイダー Herbert Schneider ヴィオラ:ゲルト・グロッチェル Gerd Grotzschel 
出典:YouTube Nobilissima Visione (Orchestral Suite) ヘルベルト・ケーゲル – トピック Provided to YouTube by Kontor New Media

ヒンデミット:組曲「いとも気高き幻想」【解説】

ヒンデミットの組曲「いとも気高き幻想」は、「気高き幻想」と表記される場合がある。元はバレエ音楽で、アッシジの聖フランチェスコの生涯をモチーフにしているらしいのですが、後に、管弦楽組曲に改編されており、三つの楽章にわかれ、約20分の曲です。

1 導入部とロンド Einleitung und Rondo
2 行進曲とパストラール Marsch und Pastorale
3 パッサカリア Passacaglia

重厚なブラスと中音域の弦の響きが、気持ち良く安定感を感じる演奏です。穏やか。作曲家本人が、弦楽四重奏団のヴィオラ奏者であったことや、ヴィオラのソロ奏者として活躍されていたことにも由来するのかもしれません。当曲は、気高い幻想とか、いと高き幻想とか訳されています。で、この1938年に作曲された組曲「いとも気高き幻想」は、元はアッシジの聖フランチェスコの生涯を題材としたバレエ音楽です。

「小鳥への説教」ジョット・ディ・ボンドーネ Giotto di Bondone 1305年頃 

えっ 聖人の生涯を、バレエ音楽にするか? う~ん、お釈迦様の生涯をバレエ音楽にするようなモノで、ちょっと度肝をぬかれちゃいます。その後、組曲に編曲されています。元の11の楽章のうちの5つを使用して、3つの楽章で20分の組曲です。 序奏とロンド Einleitung und Rondo 行進曲とパストラル Marsch und Pastorale パッサカリア Passacaglia

バレエ音楽は1938年2月に完成し、1938年7月21日にロンドンで初演、組曲は、1938年9月にフェニーチェ劇場で行われ、定期的にプログラムされたオーケストラ作品になったそうです。
↓ バレエ版全曲の演奏です。

出典:YouTube Paul Hindemith: Nobilissima Visione, complete Ballet (1938)
Wellesz Opus

ヒンデミット:組曲「いとも気高き幻想」【ディスク情報】

1980年 ケーゲル ドレスデン・フィル Berlin Classics
1989年 ブロムシュテット サンフランシスコ響 Dec
1989年 レヴィ アトランタ交響楽団 TELARC
1991年 ヤン・パスカル・トルトゥリエ BBCフィルハーモニック
1994年 サヴァリッシュ フィラデルフィア管弦楽団 EMI
1995年 アバド ベルリン・フィル G
2017年 マレク・ヤノフスキ ケルンWDR交響楽団 Pentatone

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