ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ)【聴いてみよう】Debussy: Nocturnes(Nuages, Fetes, Sirenes), L. 91

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ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ)【YouTube】

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ) ピエール・ブーレーズ ウィーン・フィル 1992年ザルツブルク音楽祭での演奏です。こんな貴重な映像が、YouTubeで配信されていたなんて! 24分47秒の映像です。
Pierre Boulez  Vienna Philharmonic Salzburg Festival, 1992 出典:YouTube Debussy – Trois Nocturnes (Vienna Philharmonic, Pierre Boulez) EuroArtsChannel

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ)【名盤・おすすめ】

ドビュッシーの夜想曲は、次の3つの曲で構成されています。
1 雲 (Nuages) 2 祭 (Fêtes) 3 シレーヌ (Sirènes)

フランソワ=グザヴィエ・ロト レ・シエクル 🤩

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ) フランソワ=グザヴィエ・ロト レ・シエクル 2018年
Debussy: Nocturnes(Nuages, Fetes, Sirenes), L. 91 François-Xavier Roth Les Siècles

フランソワ=グザヴィエ・ロトさんの快進撃はいつまで続くのだろう~っと唖然としてしまうペースの速さです。ドビュッシーの没後100周年としてハルモニア・ムンディが企画した一連のCDですが、ドビュッシーとピリオド楽器の組み合わせが違和感があると思っていたのですが、聴いたら、意外といけてる!(と思いました。笑)大昔の定盤だったマルティノンの演奏に似たような明晰さ、クリアさを感じます。

とろんとした響き、ふわっとした感覚とはかけ離れており、キレキレのドビュッシー、生々しいドビュッシー、スピード感あふれるドビュッシーという感じです。特にこの夜想曲においては、第1曲の雲は、湿気の少ない秋のスカっと晴れた青空に浮かぶ雲がイメージされます。第2曲の祭は、シャキシャキした男祭という感じで、オチャメに躍動し活気があります。2楽章終わり際は、祭りに参加してエネルギッシュに活動したせいか、お疲れモード。この筋肉が緩んだような、ほっとした感じが伝わります。

第3曲のシレーヌは、スタイリッシュな妖艶さがあります。空間のもわっとした響きが好きな方には、どうかとは思いますが、ある意味、突き抜けた爽快さがあります。ワタシ個人的は、第3曲のシレーヌは、曖昧模糊とした夢幻的な雰囲気が好きで、つかみどころのない浮遊感に酔っていたいところもあるので、他の演奏の方を好みますが、人気があるのも頷けます。

CDカップリング:ドビュッシー 牧神の午後への前奏曲、バレエ音楽「遊戯」、夜想曲 2018年録音 出典:YouTube Prélude à l’après-midi d’un faune, CD 87 レ・シエクル – トピック Provided to YouTube by harmonia mundi

ステファヌ・ドゥネーヴ ロイヤル・スコティッシュ管弦楽団 😘

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ) ステファヌ・ドゥネーヴ ロイヤル・スコティッシュ管弦楽団 2011年~12年 Debussy: Nocturnes (Nuages, Fetes, Sirenes), L. 91 Stéphane Denève Royal Scottish National Orchestra

ドネーヴさんは、1971年生まれフランス出身の指揮者です。するっとサッパリ聴けちゃう演奏ですが、彩度の高い演奏ではなく、モノトーン気味でありながら、ドビュッシー特有のふわっとした感覚があります。特に、第1曲の雲は、どんよりともせず、今にも雨が降りそうでもなく、その存在を強い意思で示すこともなく、すーっと去っていきます。

第2曲の祭りは、柔らいリズム感ながらも、しっかり刻まれていますし、第3曲のシレーヌは、幻想的ですが、もわっとしすぎていません。湿気の高い演奏ではなく、あくまでも澄み切った湿度の低い爽やかさが感じられます。はるか上空の雲って感じですし、空気が重くないというのかしら。複雑な旋律は、大きな曲線になっていますが、こまかなリズムの変化が綺麗に感じられ、さりげなく色彩感がちりばめられているようです。いずれの曲も、すーっとフェードアウトしていきます。

CDカップリング:ドビュッシー 映像、遊戯、夜想曲、交響詩「海」、牧神の午後への前奏曲、スコットランド行進曲、交響組曲「春」(管弦楽曲版)、カンタータ「放蕩息子」、英雄の子守歌(管弦楽曲版) 出典:YouTube Nocturnes, L. 91, CD 98 ステファヌ・ドゥネーヴ – トピック Provided to YouTube by PIAS

エマニュエル・クリヴィヌ ルクセンブルク・フィル 😍

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ) エマニュエル・クリヴィヌ ルクセンブルク・フィル 2009年
Debussy: Nocturnes(Nuages, Fetes, Sirenes), L. 91 Emmanuel Krivine Luxembourg Philharmonic Orchestra

クリヴィヌさんの演奏は、落ち着いた夢幻的な雰囲気が漂います。ワタシにとって、クリヴィヌさんのドビュッシーといえば、1990年代中頃録音のDENONから発売されていたシリーズがありました。(CD棚を捜索中なのですが整理ベタで見当たらないのです。)リヨン管との演奏だったのですが、音質、音色が、他の演奏とちょっと違って、ベールに包まれた神秘性がありました。

ルクセンブルク・フィルも同じような傾向で、独特の空気感があり、シックな風合いが素敵です。ホント、この空気感が、なんとも言えないですね。ふわっとした暖かみを感じます。音に重みを感じません。宙に留まっている感じがします。時空に彷徨っているみたい。特に、アクサンチュス合唱団を起用しているシレーヌは、色のグラデーションを感じつつ、聴いているうちに、潜在的なレベルまで入っていくような雰囲気がします。

CDカップリング:ドビュッシー 牧神の午後への前奏曲、クラリネットと管弦楽のための狂詩曲、夜想曲、神聖な舞曲と世俗的な舞曲、交響組曲「春」2009年~10年録音 出典:YouTube Nocturnes エマニュエル・クリヴィヌ – トピック Provided to YouTube by NAXOS of America

準・メルクル フランス国立リヨン管弦楽団

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ) 準・メルクル フランス国立リヨン管弦楽団  2007年
Debussy: Nocturnes(Nuages, Fetes, Sirenes), L. 91 Jun Märkl Lyon National Orchestra

準・メルクルさんのドビュッシーは管弦楽作品全集としてNAXOSからボックスで発売されていました。ワタシは一度に購入できないので、ぽつり~と購入していたのですが、クリヴィヌさんとは違って明瞭な音が出てきます。出典:YouTube Nuages リヨン国立管弦楽団 – トピック

パーヴォ・ヤルヴィ シンシナティ交響楽団 

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ) パーヴォ・ヤルヴィ シンシナティ交響楽団 2004年
Debussy: Nocturnes(Nuages, Fetes, Sirenes), L. 91 Paavo Järvi Cincinnati Symphony Orchestra

CDカップリング:ドビュッシー 牧神の午後への前奏曲、夜想曲、交響詩海、英雄的な子守歌 2004年録音 出典:YouTube Debussy: Nocturnes, L. 91 パーヴォ・ヤルヴィ – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

クラウディオ・アバド ベルリン・フィル 😘

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ) クラウディオ・アバド ベルリン・フィル 1999年
Debussy: Nocturnes(Nuages, Fetes, Sirenes), L. 91 Claudio Abbado Berliner Philharmoniker

アバドさんの演奏は、輪郭線がハッキリしていますが、質感としては木質的です。浅くもなく深くもなく、型がくっきりしないように弦の旋律を柔らかくしています。なんたって、雲を音で描こうっていうわけですから。難しいですよね。雲の質感を表現するって、それも音で~ 周囲の音に溶け込む~ 少なくともカッチリしすぎない、拍感覚で進むことかしら。アバドさんの雲は、綿菓子のよう。そこそこ質量感があり、爽やかなフルートの微風が通っていきます。初夏、田んぼのまんなかで、雲を見ているかのよう。初夏かなあ。適度な湿度で、距離も感じます。

「祭」の始まりは、リズミカルで、シャリ感があります。収穫祭のような華やかさがあり、祝祭的です。イタリアぽっく、いささか楽天的ですが、ぼわ~としたものではなく、キレのある演奏です。

「シレーヌ」は、ちょっと健康です。妖しく濃密で、もわっと膜に覆われた感じがしません。ワタシの欲が深いのでしょうか。迷いや惑わされる感じでも夢幻的というほどでもないようです。シレーヌって、セイレーン(Seirēn) ギリシャ神話に出てくる海の怪物。上半身が人の女性で、下半身は鳥の姿または魚、海の航路上の岩礁から、美しい歌声で航行中の人を惑わし、遭難や難破させるって悪役ですもん。歌声に魅惑されて、食い殺された船人たちの骨は、島に山をなした~といわれているのですが。そこまで深読みしないでも良いでしょうか。旧録のボストン響(1970年録音)は未聴です。

CDカップリング: ドビュッシー 牧神の午後への前奏曲、夜想曲 雲、祭り、シレーヌ(ベルリン放送合唱団)、ペレアスとメリザンド組曲 森、庭園の泉、城の地下窟 城の一室(1998年ライブ) 出典:YouTube Debussy: Nocturnes, CD 98 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ロリン・マゼール ウィーン・フィル 😘

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ)
ロリン・マゼール ウィーン・フィル 1999年
Debussy: Nocturnes(Nuages, Fetes, Sirenes), L. 91
Lorin Maazel Wiener Philharmoniker

録音状態は良い。ゆるやかに、濃密で幻想的で、魅惑的。艶を消したモノトーンな雰囲気を持っているが、淡く丸く、解りやすく、なかなかに不思議感があって、やられました。意外と良かったな~って思ったのが、このマゼール盤である。ふわぁ~っと、優美で、まどろみのある幻想的な雰囲気が、冒頭から漂っており、クールで鋭角的、そして明解なドビュッシー だと思っていたのに、えーっ ウッソ~という感じの意外性のある夜想曲である。

「雲」
冒頭 「そふぁそみふぁれ そふぁそみふぁれ」「み~れ~ど~」「みしれらどそ みしれらどそ」と木管が吹かれているのだけど、解りやすい。音が混濁せずに、さりげなく吹かれているんだけど、ちゃんと絡み合ってて、ものすごく柔らかいんだけど芯があって、ちょい中味は硬いって感じのフレーズだ。
輪郭が、すーっとした一筆書きというのではなく、幻惑されそうな、ふわふわした、濃密な世界が広がっていて、魅惑的だ。なーんていうか、おフランス風フレーズではなく、聴きなれたドイツ風味で~(← なんとも曖昧な表現だけど)間合いが、うんうん、聴きなれた雰囲気のフレージングだな~って感じなんである。巧く言えないんだけど、変に間延びしてないっていうか・・・音の取り方というか、音の置き方が、ハイ、ウネウネしてないんである。それでいて、音質や音色には、くすみがあってと色を落としました。って感じ。彩度が高くなく、艶を消してあるのだ。線の太さと音質だと思うんだけど~どういえば良いのか・・・ おフランス的ではなく、ラヴェルのような華やかさや煌びやかさとか は、無いのだ。あー これがドビュッシーか。と言っちゃ~超マズイのかもしれないが、ワタシ的には、は~なるほどねえ。と感じちゃった1枚である。もっと、コーラングレだけを目立たせるのかと思っていたが、また、もっとクールに響かせるのかと思っていたんだけど、こりゃ、違う。弦の響きなんぞ、やっぱ魅惑的で はあるが、ウィーン・フィルとは一見して解らない。とても不思議感のある演奏だ。

フレーズの膨らませ方とか、息の長さと弦の余韻で、聴かせちゃうような気もするが~いろんな楽器がセッションしているのだけど、それが分離・分解されていないで、ふわっと一つにして聴かせちゃうという芳醇な響きがある。コーラングレも前に出すぎずに、ハープの音色も、ピンピンっと張っていないで、音が抑えられてて、輝いて来ないのが、なーんか、これが良かったりする。
特に木管のフレーズと弦のパートが、それぞれ受け渡して演奏しているのに、そんな分離感がないのが、良いな~って思ってしまった。弦だけは、なーんか、ほのかに光を放っている感じがするが、艶っぽさは消されている。木管の音色が、コーラングレも、クラリネットも、フルートの響きも、どこか同じような響きに聞こえてくるというか、均質的というか、そんな気がするんだけど・・・  (←そんな筈はないんだが)

そんな風に耳に馴染んでくるが、とっても不思議で、どこか木管フレーズも、5音階的な響きがあって、これも嬉しい。ホント、雲に関しては、かなり嬉しい仕上がりで~ うふふ。は~ なるほどなあと聞き惚れてしまった1枚である。曇空のようにどんより、モノトーン的で、光が煌めいているって感じがしない曇り空 だし、一見すると、おとなしいだけの演奏に聞こえちゃうが~ なかなかに含蓄ある演奏だと思う。

「祭」
ワタシ的には、ドビュッシーよりラヴェルの方が、ラテン的で、ずーっと好きなのだが~この祭り、総体的に、もう少し明るめでも、弾んでも良いのにな~と思うが、なんか妙におとなしい割には、楽しい。どこか、モノトーン臭いというか、あっさりして 淡い色調なのだ。トルトゥリエ盤で聴くと、祭りが、楽しく明るく華やかで、「れれれ れっれ れれれ れっれ れれれ れっれ・・・」 「そらし どれみ ふぁみふぁ れどれ らそふぁ」「み~ ふぁみふぁみぃ~」と、弾んで、タタッタ タタッタ・・・と強めに太く演奏されるのだが、マゼール盤では、柔らかくて、とんがっていない 。全体的に丸くて、ふんわりしている。それでいて、リズミカルだが華やかな感じではなく、音の粒が丸くて、弾んでこない。そのくせ、柔らかいなかにリズム感があって、平板ではないという感じ。

あー 巧く言えないのが、もどかしいなあ。木管の響きが丸いし、弦のピチカートは、しっかりした硬さは持っているけれど、やっぱ丸い。金管も咆吼しないし~開放感のある音ではない。バンダのところは、奥行き感はあまりなく、弱音なだけで、この点は、ちょっと残念なんだけど~ホント、派手さがなく抑えめで、洗練されていない。 で、アコギな言い方をしちゃうと、わざと彩度を落とした感じがしないでもないが~  だって、これだけの楽器が鳴っていて、えー そんな筈ないやん。って感じがしちゃうんだもん。これだけ楽器が鳴っていると、ホントは、もっと派手な筈なんだけどな~って思いつつ聴いたが、これがよかったりして~ ちょっと不自然な感じがしちゃったけど・・・。これは、録音のなせるワザかもしれない。打楽器や金管の音の抑え方が、妙に気になって~ 丸い響きが、妙にワタシにハマッテしまった。サロネン盤で聴くと、なーんか平板な感じがして、ハリがないのと、シャリシャリした食感が少ないって文句を言ってしまったのだが~ また、トルトゥリエ盤のような抜けるような青空ではないのだが~妙に淡くて、変に曇っている空の元での祭りだが、この色彩感には、ふ~む。どこか、変な感じだ~と思いつつ、何故か、マゼール盤だと、このおとなしい感じが、良い風に感じてしまったのだ。 あ~ 何故なんだろ。自分でも解らない。

「シレーヌ」
このマゼール盤のシレーヌは、とっても怪しい。妖艶って感じがするのだが、どっか抑えてて~ ふわっとした空気感でありながら、空気には濃密さがあって~ むふふっ。ホント、沈没しちゃうぐらい怪しいっ。ああ~ ああ~っという女性の声のなかで、 木管のフレーズが、波打って繰り出される。ああ ああぁぁぁ~ と言いつつ、ううっ うううぅぅ~っ わぉわぉ わぉぉぉ~て、波打って言っているようにも聞こえるんだけど、気のせいかなあ。相当に怪しいぜ。この声っ。単に「あ」じゃーないなあ。この母音の発音・・・。でも、この女性陣の声に、ワタシ的には、完全にやられちまったのである。いや~ このシレーヌは、ハイ、ホント魅惑的で幻想的で、やられます。フレーズが長めでありながら、声の不思議な盛り上がり方があって、弦のフレーズにも、タッチが、筆圧が、太めで強め。もわもわ~とした、柔らかい色調で、太めのフレーズでありながら、安定した音が出ているんだけど、 どっか悶えちゃうような伸ばしがあって、あちゃー。

魅惑的すぎて怖いっ。こりゃー 引きこまれて~気がついたら海の底に連れていかれました~って感じです。蠱惑的で、魅力的、かといって俗的なニオイはしない。超魅力的なニンフさんたちの声で、悶えちゃって、シアワセ~的に昇天しちゃいます。総体的には、ワタシに、ドビュッシーの魅力を教えてくれた1枚です。いろんな色を、細かく、点描で、または、短めの線で置いていくというタッチではなく、いつも聴くような安定的なフレージングで、柔らかいが、長めの線画風。 でも、それがエッジの効いた細めの線が描かれているわけではなく、彩度は落として、淡いパステルカラー的に響く。う~ん。これは、技あり1本っ。ワタシ的には、マゼールさんに、やられました。脱帽っ。そして拍手ですっ。

カップリング:ドビュッシー バレエ音楽「遊戯」、交響詩「海」、夜想曲 (遊戯と海はライブ盤である)
出典:YouTube Nocturnes: Sirènes
ロリン・マゼール – トピック Provided to YouTube by RCA Red Seal

ピエール・ブーレーズ クリーヴランド管弦楽団

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ)
ピエール・ブーレーズ クリーヴランド管弦楽団 1993年
Debussy: Nocturnes(Nuages, Fetes, Sirenes), L. 91
Pierre Boulez The Cleveland Orchestra

出典:YouTube Debussy: Nocturnes, L.91
クリーヴランド管弦楽団 – トピック
Provided to YouTube by Universal Music Group

エサ=ペッカ・サロネン ロサンジェルス・フィル 🙄

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ)
エサ=ペッカ・サロネン ロサンゼルス・フィル 1993年
Debussy: Nocturnes(Nuages, Fetes, Sirenes), L. 91
Esa-Pekka Salonen Los Angeles Philharmonic Orchestra
ソプラノ:ドン・アップショウ Dawn Upshaw

このCDは、珍しいドビュッシーの管弦楽作品が収められている。夜想曲と選ばれた乙女、そして聖セバスチャンの殉教、結構マイナーな曲なのである。で、このページでは、夜想曲をご紹介するのだが、 サロネン盤は、もわ~っとした空気感が、あたりいっぱいに広がっています。

「雲」
録音状態は良い。乳白色系の色彩で、もわ~ ぼわ~としているのは楽曲のせいかもしれないが、ちょっと平板な感じがする。冒頭の木管の絡みが、凄く柔らかい。コーラングレのフレーズが、弱音で柔らかく絡む。
ホント、木管とコーラングレの掛け合いのフレーズが、柔らかく、幾重にも重なっている感じだ。弦のフレーズだけが浮かぶわけではなく、弦も、均質的に木管も、全てが柔らかく絡むのだ。もう少し弦が、少し腰が強めでも良いかもしれないが、いずれにしても、ふんわり感がある。「れみふぁそぉ~ふぁぁ~みぃれどぉ~」というコーラングレだけが、飛び出ているわけではないので、空気感があり、色彩的には、総体的に、乳白色のようだ。色があるような、無いような・・・ 
形の輪郭線が柔らかく描かれていて、ホルンの響きも、それを包むように流れてくる。

クラリネットの「み~れみふぁれふぁそみふぁそみそらふぁそら・・・」と、何の脈路もないような音の並びがあるし、主張するフレーズがほとんど感じられずに、溶け合うのが特徴かもしれない。「ふぁふぁしし ふぁふぁしし ふぁふぁそそ ふぁふぁそそ・・・」と、弦のピチカート部分にさしかかると、リズム感が出てくる。そこにコーラングレが、乗っかってくるのだが、ここでも柔らかく穏やかな音質だ。コーラングレの音質の違いって、結構、他盤と違って、ソフトで地味め。ワタシ的には、これもありかな~って思う。

チェロか、ヴィオラの響きだと思うが、オーボエとの掛け合い、「そふぁそみふぁれ そふぁそみふぁれ みしれらどそ・・・」というフレーズも、何の脈路もないが、そこが、この楽曲の特徴なんでしょうねえ。で、リズム感が、ほとんど感じられない楽曲だが、フルートだけが輝いている感じがする。「そられし れみそみ~ れみし~そらぁ~」

他に、ソロヴァイオリンのフレーズと、チェロの響きと~ハープも登場してくるし~木管の音の違いのお勉強にもなるかなあ。オーボエ、クラリネット、コントラファゴットかなあ。一番暗いパレットの色は、、、と聞き比べながら、すわっと終わってしまった。

コーラングレさんが主役を張っている感じがするが、木管の繰り出されてくるのが面白いのと、パーツごとにセッションが組まれているようで、その場面の展開が面白い楽曲かもしれない。まあ、サロネン盤は、特に個性が強調されていないが、ぼわ~とした乳白色の世界に浸るのも良いかもしれない。

「祭」
総体的に、もう少し明るめでも良いのにな~と思う演奏で、弾むピチカートや、弦の響きにメリハリ感が少なく、平板な感じがして、楽しい楽曲の筈なのに、明るく弾まないんである。ティンパニーの響きも、おとなしいし、金管のフレーズも奥行きが少なめで、う~ん。これは、面白くないでしょ。立体的に響いていないなあ。 トルトゥリエ盤だと、青空のもとで、すかっと晴れたところで、ワクワク感があったのに、あれれ~  サロネン盤では、暗いままで曇った感じがするのと、もわ~とした空気感が漂う。
特に金管の音に、ハリがないのと、シャリシャリした食感が少ないのが、う~ん。イマイチかもしれない。小さくまとまってしまっている感じだ。

「シレーヌ」
ああぁ~ ああぁ~という女性の声から始まるのだが、これがニンフたちの声である。トルトゥリエ盤は、少し健康的すぎだが、ワタシ的には好ましかったが~ このサロネン盤、どことなく緩いんである。確かに、ふんわかした幻想的な世界が描かれた楽曲なのだが、それにしても、雰囲気がイマイチ出ていない。
視覚的にも、想像の世界が広がってきそうなモノなのだが、平板で、あーという声の響きに、広がり感がなく、ツマラナイ感じがする。もっとフレーズの膨らみ感とか、もっと広がり感があっても良いだろうになあ。
雲では感じなかった、音の響きが、どこか、野暮ったいというか、ぼったりした音の感覚が、気の流れを妨げて、空気の澱みを感じさせてしまう。録音のせいかなあ。とも思ったが、いやいや、どこか停滞感を感じてしまって、う~ん。ちょっとなあ。線が明瞭でないし、どこか個性も埋もれているようで、繊細さが見受けられず、センスが磨かれていないような気がするんだけど・・・。どうしてかなあ。次の「選ばれた乙女」なんかは、穏やかで、音が丸く、 適度に小さくまとまってて、音に濁りがあって、彩度をあえて落としたかのようで、色を抜いたような柔らかさがあって、結構好きなんですけど。
CDカップリング:ドビュッシー 夜想曲 雲、祭、シレーヌ、「選ばれた乙女~ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの詩による~」、交響的断章「聖セバスチャンの殉教」

ヤン・パスカル・トルトゥリエ アルスター管弦楽団 😘

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ)
ヤン・パスカル・トルトゥリエ アルスター管弦楽団 1991年
Debussy: Nocturnes(Nuages, Fetes, Sirenes), L. 91
Yan Pascal Tortelier Ulster Orchestra

録音状態は良い。明るく開放的で、わかりやすい。リズミカルで、推進力があり、縦の糸がぴしゃっと合うところがあり、横だけの流れに、流れれていかないところが気持ち良い。楽しく愉快な感じがする。ドビュッシーの管弦楽って、どうも、とっつきづらく、解りづらいように思う。ドイツ系の音楽(←って曖昧な表現だけど)のカッチリした音楽に馴れていると、どーも、フワフワしてて気持ちが悪いとか、居心地が悪いとか、何が言いたいのか、よーわからん。という感じになると思うのだ。まだ、「海」だと、なんとなくイメージが湧くのだが、この「夜想曲」。一応、3つのタイトルがあって、「雲」、「祭」、「シレーヌ」という名前は付いているのだが、えっ!? 雲ってかい。雲を、どうやって音楽として表現するじゃ、こんなモン、フワフワしているだけで形なんぞ、ないやんかーっ。という感じなのである。 まあ、イメージなんでしょうけどねえ。夜想曲、ノクターンでしょ。寝る前に一曲聴けば良いやんってなワケにも、いかないようで・・・。どうやら、ドビュッシーは、違うイメージのノクターンを書いたようである。

「雲」
コーラングレが、突然声をあげる。「れみふぁそぉ~~ふぁ~み どぉ~ れみふぁそぉ~~ ふぁ~み どぉ~」このメロディーの他には、あまり強調するフレーズがないんだけど・・・。細かい繊細な弦のフレーズが折り重なっていて、ピチピチ、シャシャシャシャ・・・という音がでている。ふわーっとしているが、短いフレーズが何度も繰り返されていく。フルートが、「そぉ~~ら れしそれみし れみそぉ~ そられしそれみし れみそぉ~」「みれみれし~そらぁ~ どれそみ どそらみそしぃ~れみ~」
トルトゥリエ盤は、1音1音がはっきりしているというか、音を踏んでいってくれるので、結構、明解な感じがして、ワタシ的には、わかりやすい。弦が奥に引っ込んで、木管フレーズがメインに聞こえてくるので、ぼわぁ~と、 あまりしていないのだ。ゆらゆらと、あまり揺れないしねえ。すーっと音が横に流れていく感じがしてて、縦揺れがしないのである。フレーズも大づかみって感じがして、文節が長めになっているような気がする。

「祭」 
弾む強めの弦のなかに、フルートが入り込んでくるが、フルートの音色も明るくて太めの力強いフレーズになっているし、タタッタ タタッタ・・・と音を刻んでいく。金管フレーズも、明るく咆吼しているが、まろやかで開放的だ。まぶしいくらいの光が射し込んでくる。「どどっ ししっ どどっ ししっ・・・」「そ ふぁふぁ そっ ふぁぁ~~ ドドッ!」

暗さと明るさの陰影を楽しめば良いのだろうし、ティンパニーの音も豪快に入ってきて、ハープの煌めく音も、すかさず綺麗に入ってくるし、はぁ~ ドイツ音楽とは、全く違う世界が広がってくる。長いフレーズと短いフレーズが、微妙に入り組んでてて、よくわからないのだけど、影がゆらっとしてて幻想的でありながら、愉快な気持ちにさせてくれるフレーズになっていて、晴れやかに、小刻みに動いて弾む。リズム感、ピチカートが、トルトゥリエ盤だと、ハッキリしているので、気持ちが明るくなれちゃう。
それに、金管が、弱音の時から、バンダのように奥から、すごく良く聞こえてきて立体的だ。録音状態が良いので、奥行き感があるし、弦の響きだと思うけれど、行進曲のように現れて~ シャンシャンと最後には、しっかりと盛り上がってくる。リズム感がとっても良く、アクセントも付いてて、かなりオシャレで、スポーティだ。ワタシ的には楽しいっ。

「シレーヌ」
海から、ニンフさんたちが現れて、歌声を響かせているかのような、すごく幻想的な曲だ。
「そふぁ~ そふぁ~ そふぁ~ そふぁそふぁ~」木管の使い方が、やっぱドビュッシーさんの色彩感を、すごくあげているな~という感じがする。トルトゥリエ盤で聴くと、朝陽を浴びて、沐浴しているようなシーンで、すこぶる明るく、開放的だ。影のある楽曲ではなく、月の出た夜の雰囲気という神秘性は、あまりない。ハイ、とっても健康的なんである。可愛い女の子たちが、静かに、でも喜びを体いっぱいに、ピチピチと、水を飛ばしながら、水浴びをしているような感じがする。精神的で、神秘的なパワースポットを訪れたというよりは、むふっ。海賊たちが出そうな島で、ジャングルっぽいところで、亜熱帯のような暖かい温度のところで、滝に打たれているかのような感じ。オチャメで、綺麗な、愉快な映画のワンシーンみたいな感じ。

他のCDを聴いていると、頭のなかで、オタマジャクシが泳ぐというよりは、形のない、もわっとした空気感が感じられ、曖昧感もたまには良いのだが~ どうも、スッキリしない。このトルトゥリエ盤で聴くと、ある意味、人間くさくて、楽しい。幽玄さとか、幻想的というよりも、必要に以上に構えなくても、わりと、すっと入っていける世界だと思う。
他盤だと、耳慣れしなきゃーダメだと思って、何度も繰り返して聴いていくものの~ いつの間にか、めげて、挫折していたのだが、この盤だと、健康的なところが感覚的にマッチしたようである。 うまく言えないのだが、ところどころ、縦の糸がぴしゃっと合うところがあって、それが気持ち良いというか、(もちろんオケ自体の演奏は合っていて当然なのだが~)綺麗さが、わかるというか。 てれてれ~っと、ワカラナイままに流されているような感覚ではないのだ。ホント初心者で、スミマセン。色彩的には、こりゃーラヴェルの楽曲でしょと思いつつ解りやすさで、このトルトゥリエ盤のドビュッシーを聴いていたりする。 ステレオの前でちんまり座って、じっと聴いているよりはモネの絵画とか、セザンヌの風景画とか、ターナーの晩年の形の無くなった絵画なんかを見ながらCDをかけて聴いた方が良いようである。 (えっ それは邪道でしょ。笑)

CDカップリング:ドビュッシー管弦楽作品全集4枚組BOX
出典:YouTube Debussy Nocturnes, L. 91
Yan Pascal Tortelier – トピック Provided to YouTube by PIAS

シャルル・デュトワ モントリオール交響楽団 🥰

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ)
シャルル・デュトワ モントリオール交響楽団 1988年
Debussy: Nocturnes(Nuages, Fetes, Sirenes), L. 91
Charles Dutoit Orchestre Symphonique de Montreal

録音状態は極めて良い。色彩感が豊かで、奥行き感があり、爽やかにリズミカル。

「雲」クラリネットとファゴットで、 「そふぁそみふぁれ そふぁそみふぁれ みしれらどそ しらど ふぁ~ れみふぁ~」「れみふぁそぉ~~ふぁ~み どぉ~ れみふぁそぉ~~ ふぁ~み どぉ~」コーラングレのフレーズが入ると、ちょっと色彩感が出てくる。で、弦の光の加減が、とっても素敵だ。このドビュッシーの夜想曲は、とっつきづらいけれど、絵画のイメージで言うと、やっぱり~ モネかなあ。演奏によっては、モネの絵画でも、有名な、日の出の朝靄であったり、青空のもとで日傘を差した女性と少年が、川原の土手に立っている左向きの日傘の女だったりする。人によっては、東山魁夷さんの日本画だったりするかもしれない。まあ、デュトワ盤で聴くと、抜けるような青空というよりは、睡蓮の池に映った雲かな~って気がする。もわっとした空気感ではなく、爽やかさがあるので、風の通りは良い雰囲気だ。背景である弦のフレーズの優しさが、印象に残るし、コーラングレのフレーズは、柔らかく、雰囲気たっぷり。ラストでは、雲が去ってしまう感がして、夕暮れ時の雰囲気にもなっている。

「祭り」
デュトワ盤の楽しいのは、やっぱり2曲目の祭だろうか。う~ん、やっぱり、これこれっ。このシャンシャンしたノリ感である。最初こそ、抑えめなのだが~ リズム感が良い。「らっそそ らそぉ~っ」と金管が鳴り響くと、とても爽やかで、あでやか。柔らかい3連符の音が、気持ち良く並んでいるし、ワクワク感が、じわ~っと湧き起こってくる。ホルンの響きも、とてもリズムがあって、奥まったティンパニーの音が、祭りの行列がやってくる雰囲気を醸し出す。

金管が、バンダのように奥から、すごく良く聞こえてきて、爽やかななかに、波打つような感じで鳴っている。シャンシャンと鳴っている小太鼓が、柔らかくも、腰があって~ シンバルも華やかに響く。スポーティでもなく、ゴツい音で、ドンドンジャンジャンではない。そんな不細工な演奏ではない、とっても、まろやかな響きだが、とてもシャイな演奏なのだ。ノリ感に、遠近感があるといえば、ちょっと変なんだけど、奥行きのある絵画を見ているみたい。

「シレーヌ」
まあ、これは、モネの絵画というよりは、ど素人の浅いイメージで、やっぱ、ボッティチェッリのビーナスの誕生って感じなのだが。あはは~ デュトワ盤で聴くと、ちょっと違うなあ。モネの絵画でいうと、フランス、ノルマンディーのエトルタの海の風景だろうか。朝のような、ふわっとした昼さがりだったり。夕暮れかな~とイメージしたり。ピチピチとした少女たちの水浴びというイメージでは、ぜーったい違うわ、もっと大人の楽しみでしょう。って感じがする。今日は、演奏そのものよりも、絵画に関連したイメージで、お話しちゃいましたが~ ドビュッシーのこの楽曲って、勝手な自分のイメージのなかで、遊べちゃう要素が、たっぷりあるように思います。理屈抜きで、音の響きで、光とかを感じるとか、色彩を感じるとか、まあ、タッチの柔らかい印象派の絵画が、マッチングしているとは思うけれど~ 画集を見ながら音楽を聴くって感じでも良いかもしれません。あっ もちろん、ネットで、美術館を検索して、絵画を見ながら聴くっていうのも、ありかも。邪道かもしれないけど、楽しみ方が広がる気がします。

CDカップリング:ドビュッシー 管弦楽のための映像、夜想曲 
出典:YouTube Debussy: Nocturnes, L. 91
モントリオール交響楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ウラディーミル・アシュケナージ クリーヴランド管弦楽団

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ)
ウラディーミル・アシュケナージ クリーヴランド管弦楽団 1986年
Debussy: Nocturnes(Nuages, Fetes, Sirenes), L. 91
Vladimir Ashkenazy The Cleveland Orchestra

出典:YouTube Debussy: Nocturnes, L.91
クリーヴランド管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

アンドレ・プレヴィン ロンドン交響楽団

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ)
アンドレ・プレヴィン ロンドン交響楽団 1986年
Debussy: Nocturnes(Nuages, Fetes, Sirenes), L. 91
André Previn London Symphony Orchestra

出典:YouTube Nocturnes, CD 98, L. 91
アンドレ・プレヴィン – トピック Provided to YouTube by Warner Classics

マイケル・ティルソン・トーマス フィルハーモニア管弦楽団

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ)
マイケル・ティルソン・トーマス フィルハーモニア管弦楽団 1982年
Debussy: Nocturnes(Nuages, Fetes, Sirenes), L. 91
Michael Tilson ThomasThe Philharmonia Orchestra

出典:YouTube Nocturnes, L. 91
マイケル・ティルソン・トーマス – トピック Provided to YouTube by Sony Classical

ダニエル・バレンボイム パリ管弦楽団

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ)
ダニエル・バレンボイム パリ管弦楽団 1981年
Debussy: Nocturnes(Nuages, Fetes, Sirenes), L. 91
Daniel Barenboim Orchestre de Paris 

出典:YouTube Debussy: Nocturnes, L. 91
パリ管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

セルジウ・チェリビダッケ シュトゥットガルト放送交響楽団 🥱

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ)
セルジウ・チェリビダッケ シュトゥットガルト放送交響楽団 1980年
Debussy: Nocturnes (Nuages, Fetes, Sirenes)
Sergiu Celibidache Radio-Sinfonieorchester Stuttgart des SWR
★ YouTubeにおける動画はないようでした。

録音状態は良い。ライブ盤。のっけから~別世界行き確定である。今日、聴いたのは、この内の夜想曲なのだが、めちゃ遅い。予想どおりとはいえ、いやー 雲のなかに入り込んで、迷い混んで、なかなか出てこれないような夢遊状態というか、夢見心地というか。まるで~別世界である。もちろんチェリさまの振った音楽なのだから、緊張は続く~はずなのだが、正直申し上げて、ちょっと眠くなってしまった。精緻と言えば、もちろん(声を大きくして)精緻なのだ。色彩的には、乳白色系で、ちょっとモノトーンめいている。

第2曲の祭りの演奏は、冒頭こそ、フツーのテンポで入っていく。途中まで、ノリノリで聴いていたのだが、弱音になって、遠くからティンパニーの打音が聞こえる。ん? アッピア街道?うっそーっ! これでは、まるでローマの松やん。行進曲ジャーあるまいし。トランペットに、シンバルまで入ってて大音量となって行進していく。おいおい、祭りじゃー 祭り! 行進するんじゃなくって、踊るんですけど。何これ!あちゃー! 信じられない! 我が耳を疑ってしまった。まあ~ また元に戻るんですけどね。

3曲目のシレーヌは、女性のコーラスが入るのだが、えっ? 聞いてはイケナイものを聞いてしまったような、超恥ずかしい気持ちに。美しいんですけどね。いや~ よからぬことを想像したワタシが悪いのだ。凡人のワタシは、邪心が入ってしまって、音楽に浸り込むことは出来ませんでした。まだまだ、修行が足りませぬ。ちなみに、クレジットされている演奏時間は、次のとおりです。

チェリビダッケ シュトゥットガルト響/ マゼール VPO
雲 11分20秒 / 7分45秒
祭り 7分29秒 / 6分02秒
シレーヌ 14分12秒 / 10分57秒

CDカップリング:ドビュッシー 夜想曲 1980年、交響詩「海」1977年、フランス管弦楽作品集 チェリビダッケ、シュトゥットガルト放送交響楽団 1973年~1980年グラモフォン盤からの分売。ちなみに3枚組BOX
夜想曲、交響詩「海」、イベリア、道化師の朝の歌、スペイン狂詩曲、ダフニスとクロエ、クープランの墓、ラ・ヴァルス

ベルナルト・ハイティンク コンセルトヘボウ管弦楽団

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ)
ベルナルト・ハイティンク コンセルトヘボウ管弦楽団 1979年
Debussy: Nocturnes(Nuages, Fetes, Sirenes), L. 91
Bernard Haitink Royal Concertgebouw Orchestra

出典:YouTube Debussy: Nocturnes, CD 98
Concertgebouworkest Provided to YouTube by Universal Music Group

アンタル・ドラティ ワシントン・ナショナル交響楽団

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ)
アンタル・ドラティ ワシントン・ナショナル交響楽団 1975年
Debussy: Nocturnes(Nuages, Fetes, Sirenes), L. 91
Antal Doráti National Symphony Orchestra Washington

出典:YouTube Debussy: Nocturnes, L.91
アンタル・ドラティ – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ジャン・マルティノン フランス国立放送管弦楽団 

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ)
ジャン・マルティノン フランス国立放送交響楽団 1973年
Debussy: Nocturnes(Nuages, Fetes, Sirenes), L. 91
Jean Martinon Orchestre National de l’ORTF

出典:YouTube Nocturnes, CD 98, L. 91
ジャン・マルティノン – トピック Provided to YouTube by Warner Classics

クラウディオ・アバド ボストン交響楽団 G

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ)
クラウディオ・アバド ボストン交響楽団 1970年
Debussy: Nocturnes(Nuages, Fetes, Sirenes), L. 91
Claudio Abbado Boston Symphony Orchestra

出典:YouTube Debussy: Nocturnes, CD 98
マックス・ホウバート – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ピエール・ブーレーズ ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ)
ピエール・ブーレーズ ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1968年
Debussy: Nocturnes(Nuages, Fetes, Sirenes), L. 91
Pierre Boulez New Philharmonia Orchestra

出典:YouTube Nocturnes, L. 91
ピエール・ブーレーズ – トピック Provided to YouTube by Sony Classical

ジャン・フルネ チェコ・フィル

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ)
ジャン・フルネ チェコ・フィル 1963年
Debussy: Nocturnes(Nuages, Fetes, Sirenes), L. 91
Jean Fournet Česká filharmonie

出典:YouTube Nocturnes for Orchestra
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Supraphon

シャルル・ミュンシュ ボストン交響楽団(雲・祭)

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ)
シャルル・ミュンシュ ボストン交響楽団 1962年
Debussy: Nocturnes(Nuages, Fetes, Sirenes), L. 91
Charles Munch Boston Symphony Orchestra
★ ミュンシュ ボストン響 1962年録音は、第1曲雲、第2曲祭りのみ収録されています。

出典:YouTube Nuages (from Nocturnes)
シャルル・ミュンシュ – トピック Provided to YouTube by RCA Red Seal

ポール・パレー デトロイト交響楽団

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ)
ポール・パレー デトロイト交響楽団 1961年
Debussy: Nocturnes(Nuages, Fetes, Sirenes), L. 91
Paul Paray Detroit Symphony Orchestra

CDカップリング:ドビュッシー 牧神の午後への前奏曲、海、夜想曲、イベリア 夜想曲以外は1955年
出典:YouTube Debussy: Nocturnes, L. 91
デトロイト交響楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ピエール・モントゥー ロンドン交響楽団 😊

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ)
ピエール・モントゥー ロンドン交響楽団 1961年
Debussy: Nocturnes(Nuages, Fetes, Sirenes), L. 91
Pierre Monteux London Symphony Orchestra ★2曲のみ第3曲はありません。

特に第3曲のシレーヌの推進力と、金管の鮮やかさに驚かされます。弦の加速スピード感と、シャンシャン鳴ってくる打楽器と、煌びやかな金管のマッチングには舌を巻いてしまいます。確かに、録音年は古いけれど、押し寄せてくるスマートなパワーの演奏です。
出典:YouTube Debussy: Nocturnes, L.91
ピエール・モントゥー – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

アンセルメ スイス・ロマンド管弦楽団

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ)
エルネスト・アンセルメ スイス・ロマンド管弦楽団 1957年
Debussy: Nocturnes(Nuages, Fetes, Sirenes), L. 91
Ernest Ansermet L’orchestre De La Suisse Romande ·

出典:YouTube Nocturne: Nuages
エルネスト・アンセルメ – トピック Provided to YouTube by IIP-DDS

マニュエル・ロザンタール パリ国立歌劇場管弦楽団 😊

ドビュッシー:夜想曲(雲・祭・シレーヌ)
マニュエル・ロザンタール パリ国立歌劇場管弦楽団 1957年
Debussy: Nocturnes(Nuages, Fetes, Sirenes), L. 91
Manuel Rosenthal Orchestre de l’Opéra national de Paris
コーラングレ:エティエンヌ・ボド

この演奏は、サブスクを利用して拝聴しました。録音状態は良いです。たまたまタワーレコードさんのサイトにおいて、このCDの存在を知りました。そこに、ロザンタールさんが、ラヴェル最後の直弟子であることを知り、印象派絵画を思わせる色調表現、また、当時のフランスのオーケストラ特有のヴィブラートの効いた管楽器の音色など、古きよきフランスのオーケストラを堪能できる1枚だとのコメントがあったので、聴いてみたくなったのです。フレーズにおける微妙な揺れ、バックで鳴っている音との調和などを素人ながらも感じることができました。聴いてよかったな~と思ったので、宜しければ、歴史的資料としてお聴きください。
CDカップリング:ドビュッシー 海、春の挨拶 ソプラノ:ナディーヌ・ソトロー、夜想曲、スコットランド行進曲、祈り テノール:ミシェル・カロン、遊戯 1957年~59年

出典:YouTube Debussy: Nocturnes, L. 91
Various Artists – Topic パリ国立歌劇場管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ドビュッシー:「夜想曲」【解説】

ドビュッシーの「夜想曲」(Nocturnes)は、1897年~99年に作曲した管弦楽の組曲です。フランス語のまま「ノクチュルヌ」と呼ばれることもあります。雲、祭、シレーヌという3つの曲で構成されています。

1 雲 (Nuages)
空の雲のゆっくり流れて消えていく様を描写したもの。冒頭に、「セーヌ河の上に垂れこめた雲」を表すと思われるクラリネットとバスーンの動機があり、6/4拍子のリズムに「汽船のサイレン」を表すであろうコーラングレの旋律が4/4拍子で絡みます。 全体的に拍節感がぼやけており、ソロを除いて弱音器がつけられた弦楽器は、細分化され(ヴァイオリンは第1、第2が、それぞれ6分割、合計12分割)、弱音器をつけたホルン、低音域のフルートなど、 「灰色」のイメージが作り出されます。中間部では、ハープを伴ったフルートが、五音音階の旋律を奏でます。

2 祭 (Fêtes)
祭の盛り上がりと祭の後の静けさが描かれています。ff の空虚五度によるリズムが弦楽器によって刻まれ、木管楽器が、スケルツォ風の主題を奏でます。活発な3連符のリズムが唐突に中断すると、遠くから幻影のような行列が近づいてきます。やがて、祭りの主題と、 行列の主題が、同時進行して溶け合うようになり、主題を回想しながら消え入るように終わるもの。トランペットは、次の「シレーヌ」の序奏をさりげなく予告しています。

3 シレーヌ (Sirènes)
「シレーヌ」とは、ギリシャ神話などに出てくる生物です。トロンボーン、チューバ、ティンパニと、打楽器は使用されておらず、代わりに、歌詞のない女声合唱(ヴォカリーズ)が加わられています。月の光を映してきらめく波と、シレーヌの神秘的な歌声が、表現されています。
夜想曲は、「牧神の午後への前奏曲」と「海」の間に位置する管弦楽曲です。絵画的な楽曲という感じがするので、アタマのなかに映像を浮かべて、曲を聴きながら、自分で絵の具を足していくと楽しいかもしれません。

ドビュッシー:「夜想曲」【ディスク情報】

1957年 ロザンタール パリ国立歌劇場管弦楽団 Praga
1957年 アンセルメ スイス・ロマンド管弦楽団 Dec
1961年 モントゥー ロンドン交響楽団 Dec 2曲のみ
1961年 ポール・パレー デトロイト交響楽団 MERCURY
1962年 ミュンシュ ボストン交響楽団(雲・祭) R 2曲のみ
1963年 フルネ チェコ・フィル
1968年 ブーレーズ ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 SC
1970年 アバド ボストン交響楽団 G
1973年 マルティノン フランス国立放送管弦楽団 EMI
1975年 ドラティ ワシントン・ナショナル交響楽団 Dec
1979年 ハイティンク コンセルトヘボウ管弦楽団 Ph
1980年 チェリビダッケ シュトゥットガルト放送交響楽団 G
1981年 バレンボイム パリ管弦楽団 G
1982年 マイケル・ティルソン・トーマス フィルハーモニア管弦楽団 SC
1986年 プレヴィン ロンドン交響楽団 EMI
1986年 アシュケナージ クリーヴランド管弦楽団 Dec
1988年 デュトワ モントリオール交響楽団 Dec
1991年 ヤン・パスカル・トルトゥリエ アルスター管弦楽団  CHANDOS
1993年 サロネン ロサンジェルス・フィル SC
1993年 ブーレーズ クリーヴランド管弦楽団 G
1999年 マゼール ウィーン・フィル ライブ
1999年 アバド ベルリン・フィル G
2004年 P・ヤルヴィ シンシナティ交響楽団 TELARC
2007年 準・メルクル フランス国立リヨン管弦楽団 NAXOS
2009年 クリヴィヌ ルクセンブルク・フィル Timpani
2011年~12年 ドゥネーヴ ロイヤル・スコティッシュ管弦楽団 CHANDOS
2018年 フランソワ=グザヴィエ・ロト レ・シエクル Actes

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