チャイコフスキー:幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」【聴いてみよう】Tchaikovsky: Francesca da Rimini, Op. 32, TH 46

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チャイコフスキー 幻想序曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」【YouTube】

チャイコフスキー:「フランチェスカ・ダ・リミニ」 サントゥ=マティアス・ロウヴァリ フィルハーモニア管弦楽団 2022年3月10日ライブ録音の模様です。28分38秒の動画です。
Santtu-Matias Rouvali Philharmonia Orchestra 出典:YouTube Tchaikovksy: Francesca da Rimini Philharmonia Orchestra ROYAL FESTIVAL HALL

セミヨン・ビシュコフ チェコ・フィル 🥰

チャイコフスキー:幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」 セミヨン・ビシュコフ チェコ・フィル 2017年
Tchaikovsky: Francesca da Rimini, Op.32 Semyon Bychkov Czech Philharmonic

ビシュコフさんの演奏は、バランスが良く、穏やかな美音で綴られた美しい演奏です。アクの強い演奏ではなく、中庸なのですが、深々とした艶のある音です。ビシュコフさんとチェコ・フィルとの相性が良いのでしょう。なかなかに奥行きのある録音で、ゆったりと、そしてふくよかに劇的に演奏されています。どろっとした粘着性もないし、地獄の道行きという恐ろしさもないのですが、繊細で叙情性あふれる良い演奏だと素直に感じることができます。

過去には、怖ろしい暗黒をイメージする演奏もあったのですが、そこまで、落ちなくても良いんじゃないかなあと納得する演奏に仕上がっています。客観的すぎず、かといって主観的すぎず、私小説を読んでいるような感じでもなく、ほどよい距離感を持って、このストーリーを描いているように思います。チェコ・フィルの艶っぽさが、歌に乗って演奏されているので、それだけで酔える感じですね。コッテリ、ドロドロの情念の絡んだ演奏をお好みの方には、向いていないかもしれませんが、そこまでは~という一般的な演奏を好まれる場合は、お薦めの演奏です。
出典:YouTube Tchaikovsky: Francesca da Rimini, Op. 32, TH 46 セミヨン・ビシュコフ – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

アンドリス・ネルソンス バーミンガム市交響楽団 😍

チャイコフスキー:幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」 アンドリス・ネルソンス バーミンガム市交響楽団 2011年 Tchaikovsky: Francesca da Rimini, Op.32 Andris Nelsons City of Birmingham Symphony Orchestra

ネルソンさんの演奏は、かなり劇的で、盛りあげが巧いです。えっ アハハ~という感じで驚かされちゃうドラマティックさ。演技抜群という役者ぶりです。シャイーさんの演奏に似ているかもしれません。活発で、スマートで、勢いよく進んで行きます。序奏部分は、素早く、前のめり感のある進み方と展開ですが、フレージングが大きく膨らむためか、セカセカした感覚にはなりません。引き締まった音作りで、繊細な動きをしていくるので、新鮮に聞こえますし、そいう意味では聴かせ上手です。打楽器のシャンシャン、ドンドンも迫力がありますし、大袈裟な演技で引き込んできますねえ~ スピードのあげかたも巧いので、退屈させないで、ぐいぐい~ 押してくる圧の強い演奏です。これは良いわ。面白すぎる。

また、中間部分は、ねっとり気味で歌いあげてきます。ねっとりしているんだけど、旋律にキレがあるので、嫌みのないスマートさ。アコギですねえ~ 決してメタボのおじちゃんにはなりません。うーん、結婚詐欺に遭っているかもしれないというような役者振り。色彩感も豊かで、抒情的で、誘われ、思わせ感たっぷりの身のこなしです。弦も木管も、打楽器群も、総力戦で聴かせてきます。うーん、ちょっとフランチェスカ・ダ・リミニとは思えないようなストーリー展開で、こんなにロマンティックで良いのかどうか、うーむ。困ったなあ~と思いますが、あらがえないですねえ。ハイ、落ちるところまで一緒に落ちましょうという気分になっちゃいました。やられました。

CDカップリング:チャイコフスキー フランチェスカ・ダ・リミニ、交響曲第4番 2011年 出典:YouTube Francesca da Rimini, Op. 32, TH 46 バーミンガム市交響楽団 – トピック Provided to YouTube by NAXOS of America

アントニオ・パッパーノ 聖チェチーリア国立音楽院管弦楽団 😐

チャイコフスキー:幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」 アントニオ・パッパーノ 聖チェチーリア国立音楽院管弦楽団 2005年 Tchaikovsky: Francesca da Rimini, Op.32 Antonio Pappano Orchestra dell’Accademia Nazionale di Santa Cecilia

パッパーノさんの演奏は、うーん、どうでしょう、最初に聴くには良い演奏かな~って思います。柔らかい音質で、地獄の道行きを一緒にしたくない時、客観的に、さらっと聴きたい場合にお薦めでしょうか。ストーリーを知り、聞き込んでくると、これは、完全に物足りなさが出てきます。あまりにヤワすぎて、聴いてられないかなあ、やっぱり。切迫感が薄い、なさすぎ~ ということになるでしょうか。勝手気ままに感想を書いててスミマセン。
CDカップリング:チャイコフスキー フランチェスカ・ダ・リミニ、ロミオとジュリエット 2006年、エフゲニー・オネーギン第2幕ワルツ、同第3幕ポロネーズ、序曲1812 ロメジュリを除き2005年録音 出典:YouTube Francesca da Rimini, Op. 32 Antonio Pappano Provided to YouTube by Warner Classics

ネーメ・ヤルヴィ デトロイト交響楽団 🙂

チャイコフスキー:幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」 ネーメ・ヤルヴィ デトロイト交響楽団 1995年
Tchaikovsky: Francesca da Rimini, Op.32 Neeme Järvi Detroit Symphony Orchestra

N・ヤルヴィさんの演奏は、ちょっと古風なドラマ展開をします。エーテボリ響と交響曲第6番悲愴とカップリングされたBIS盤の演奏(2003年)もありますが、今のところ未聴です。この旧録にあたる演奏は、テンポが遅めで、とろんとしています。今風のスマートさ、スリリングな要素は残念ながら、今一歩という感じです。ブラスの重厚な演奏で、ドンドン、シャンシャンと逞しく響かせているところが、パパ・ヤルヴィらしいところでしょうか。中間部の歌いっぷりも濃厚で、悲劇的な要素を含んで歌うし、大袈裟にドラマを盛り上げてきます。

CDカップリング:チャイコフスキー 組曲第3番(作品55)、フランチェスカ・ダ・リミニ 出典:YouTube Francesca da Rimini, Op. 32 ネーメ・ヤルヴィ – トピック Provided to YouTube by PIAS

エフゲニー・スヴェトラーノフ ロシア国立交響楽団 😱

チャイコフスキー:幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」 エフゲニー・スヴェトラーノフ ロシア国立交響楽団 1993年 Tchaikovsky: Francesca da Rimini, Op.32 Evgeny Svetlanov The State Academic Symphonic Orchestra of Russia

録音状態はまずまず。ドラマティックというより、暴力的というか、痛ましいというか。血みどろになって金管が炸裂し、シンバルの一撃が、心臓に突き刺さる。殴られ感の強い、リアルな演奏です。今日は、スヴェトラーノフ盤を拝聴したのですが、冒頭は、ごごんっという出会い頭に、ぶつかったような音が鳴り、金管の「そぉ~ふぁ そぉ~ そぉ~」というフレーズ出てきます。

低弦のうねりと、金管の暗雲の垂れ込めた、湿った空気感に取り囲まれる。どす黒い、どこまで落ちるのだろう~という低弦の響きと、ボンボンっとした低弦の響きが大きい。頭出しから、ドラマティックな演奏で、雷鳴が轟く前の、空気の張りついた感じ、真空状態になったような感じで、息を殺した感じがリアルです。徐々に弦の悲痛に、音量をあげていきます。きっとロート状になって、地底(きっと地獄なんだろう)に、引き込まれていくシーンが描かれているのだと思います。逆竜巻のように、引きの強い音で、ぐるぐる渦に巻き込まれていく~う。他の演奏で聴いたときには、嵐だと思ってたんですけどね・・・。これは嵐じゃないです。間違っていたわ。

うーん、これは、地獄で、くさびを打ち込まれているような音ですね。 雷は鳴っているし、まだまだ、底には到着しないようで。ぐるぐる~ おっそろしい大太鼓の打ち込みがあります。シーンっと、静まりかえって、場面が展開します。うっ 底に到着したようです。中間部に入ってからは、甘いとろとろの歌謡風フレーズが登場。弦の旋律は、甘いものの、心身共に傷だらけ、後ろめたさや後悔しているような、すごく辛そうな感じで演奏されています。

フルートとクラリネットが、女性と男性を受け持っているのか、互いのフレーズが絡むことから、固く結ばれ~ すーっと、昇っていく感じが描かれています。愛の昇華シーンなのだろう。取り巻く弦のフレーズの方が、強めなので、解りづらいのですが、チェロが甘くも切ない旋律を奏でているなか、木管が飛び交い、もしかしてコウモリ? 彷徨っている感がします。幻想的な超力というか、多分だけど~ 多くの人々の魂がさまよっているのかもしれません。

弦のピチカートが入ってきてから、フランチェスカのテーマと思われるフルートが心情を語り出します。絞り出すかのような声で、溶解した甘い旋律ですが、金管と弦に軋み感があり、傷だらけの○○って感じで、相当に痛々しい。ロミオとジュリエットのように、突き刺されたように、シャンっ!という一撃が入ります。嫉妬に狂った男が詰問したあげく ばばーんっ、シャンシャン~ あーっ 刺されている、殴られているという感じです。やられたっ!

想像力の貧相なワタシでも、なんとなく暴力的なシーンをイメージ(妄想レベル)してしまいます。ホント、リアルで聴いてられないって感じになります。痛ましいというか、後味の悪い楽曲というか、猛烈にエネルギーを吸い取られてしまいました。どっつかれです。25分48秒の悲痛なドラマ展開でした。超リアルです。CDカップリング:チャイコフスキー 交響曲第4番、チャイコフスキー 幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミ」 出典:YouTube チャイコフスキー:幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」作品32 エフゲニ・スヴェトラーノフ – トピック Provided to YouTube by CANYON CLASSICS

リッカルド・ムーティ フィラデルフィア管弦楽団 😄

チャイコフスキー:幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」 リッカルド・ムーティ フィラデルフィア管弦楽団 1991年 Tchaikovsky: Francesca da Rimini, Op.32 Riccardo Muti Philadelphia Orchestra

ムーティさんの演奏は、劇的で、シャカシャカ音が鳴ってきます。冒頭、金管の「そぉ~ふぁ そぉ~ そぉ~ふぁそっ しぃ~らしぃ~っ」と、しっかり聞こえており、弦の旋律も、力強く、悲鳴をあげるかのように上昇を繰り返していきます。木管も、スピード感があり、輪郭もハッキリしており、録音状態が良くないにもかかわらず、なかなかにスリリングです。

銅鑼もシャーンっと響いており、大太鼓の打ち込みにも、ティンパニも打ち込みも、とってもリアルで、どきっ!とさせられ、肝を冷やす場面に遭遇します。またクラリネットのソロ部分は、少し甘めの音で流麗だし、その後、ロメジュリのような甘いフレーズが奏でられていきます。ホント、中間部は、甘く綺麗なフレージングで、長い弦のフレーズが続くなか、フルートやクラリネットが、甘い恋心を表しています。飛び交うようなフレーズが奏でられ、劇的な効果も高く、ついつい悲劇のヒロインに、なっちゃった気分に~ アハっ。まっいいか。優美な演奏に終始していました。CDカップリング:チャイコフスキー 交響曲第5番、フランチェスカ・ダ・リミニ 出典:YouTube Francesca da Rimini, Op. 32 フィラデルフィア管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Warner Classics

レナード・バーンスタイン ニューヨーク・フィル 😵

チャイコフスキー:幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」 レナード・バーンスタイン ニューヨーク・フィル 1989年 Tchaikovsky: Francesca da Rimini, Op.32 Leonard Bernstein New York Philharmonic

バーンスタインさんの遅くて、重く、とろっとろのフレージングに悩殺されてしまう演奏です。いやー これは泥沼の愛憎劇という感じで、冒頭から、うへっ、覗いてはいけないモノを見てしまった気分で、速攻、戻りたくなります。うーん、チャイコフスキーの後期交響曲もそうなのですが、うーーーん。ワタシには性に合いません。ちょっとやり過ぎるというか、入れ込みすぎるというか、この情感には付き合いきれません、とっても苦手です。ごめんなさい。スヴェトラーノフさんの演奏で、やられてしまったのでこれ以上は、つらくって~ 聴けません。またの機会に。
CDカップリング:チャイコフスキー 交響曲第4番、フランチェスカ・ダ・リミニ ライブ 1989年録音 出典:YouTube Tchaikovsky: Francesca da Rimini, Op. 32 (Live) ニューヨーク・フィルハーモニック – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ウラディーミル・アシュケナージ ロイヤル・フィル 🙄

チャイコフスキー:幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」 ウラディーミル・アシュケナージ ロイヤル・フィル 1988年 Tchaikovsky: Francesca da Rimini, Op.32 Vladimir Ashkenazy Royal Philharmonic Orchestra

アシュケナージさんの演奏は、もわっとした暖かめの空気に感じられて、神曲の地獄篇をモチーフにしたというわりには、少し切迫感が薄いように思います。もちろん甘さを含むのは良いのですが、もう少し推進するテンポの速さが欲しいように感じました。悲劇的な結末を迎えるドラマという劇的な要素が、もう少しだけ欲しいですかね。

悲痛な感じがあまりしないです。弦のフレージングが少し緩めで、タイトさがあまり感じられないとか、ま、そんな感じです。何度か、繰り返して聴いてみたのですが、どうも最後までピンっと来なかったです。おっとりしている感じですかね。それが、録音のせいなのか、そこそこに迫力がありますが、どこかえぐり出すような鋭さが無いためなのか、もう少し他盤を聴いてみないといけないと思っています。CDカップリング:チャイコフスキー ロメオとジュリエット、イタリア奇想曲、フランチェスカ・ダ・リミニ、弦楽セレナード 出典:YouTube Tchaikovsky: Francesca da Rimini, Op. 32 Royal Philharmonic Orchestra Provided to YouTube by Universal Music Group

シャルル・デュトワ モントリオール交響楽団 🥰

チャイコフスキー:幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」 シャルル・デュトワ モントリオール交響楽団 1988年
Tchaikovsky: Francesca da Rimini, Op.32 Charles Dutoit Orchestre Symphonique de Montreal

デュトワさんの演奏は、あまりにも美しすぎて~ アハハ~ これで良いのかしらん、と思ってしまうような演奏です。魂の救済不可能って世界を描いていると思うのですが、ちょっと綺麗すぎるかもしれません。まあ、解釈の違いでもあるのですが、地獄の道行きという感じはしませんね。

チャイコフスキーの幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」は、ダンテの神曲の第5編地獄編がモチーフになっているということを考えると、うーん、ちょっと悩ましいでしょうか。「神曲」っていうだけで、腰が引けますが、ひとことで言っちゃうと、男女の愛欲がテーマになっているようです。ワタシ的には、日頃、漫然と生きているので、書棚に「神曲」はあるのですが、なんで地獄に堕ちないといけないのか、イマイチ納得がいかないところがあります。ナハハ~ だって、家の政略結婚で、好きでもない男性に嫁ぐ羽目になり、それも父親に騙されて、ダンナだと思った相手は醜い男だった。

んで、結婚を断ったら、まずいってことで、初めに美男の弟を引き合わせていた。で、当然好きになった相手はダンナの弟でした・・・ってわけである。(そんなのありかよぉ~!!)親にもダンナにも、ハメラレタわけである。確かに、結婚したのに、弟と不倫関係が続いていたのは、とっても悪いことだけれど、ある夜、嫉妬に狂った夫に殺されてしまう。う~ん、地獄に堕ちないといけないのは、ダンナじゃーないの? 悪いのはどっちなのだ! パパだって悪いじゃんと、怒り心頭なんですよねえ。(そんな簡単に割り切れるモノでは無いですが 笑)

まあ、いつの時代も不倫は御法度なんでしょうけど。運命に逆らってもなお、愛情を貫くって姿勢も大変である。ワタシには、そんなエネルギーも、パワーも、覚悟もないので~ ちょっと、持ち金しちゃう楽曲です。嵐のような劇的なドラマトゥルギー的なフレーズというか、インパクトのあるフレーズは、確かに登場するのだが、道行きしている主人公なのか、それとも、フランチェスカとパオロの生涯に焦点があたっているのか。

構成は3つに分かれている。最初は、道行き風で~ 中間が甘い恋場面 最後、再び主題が戻ってきて、地獄状態って感じがします。中間部の甘いフレーズは、チャイコフスキーの旋律美が奏でられ、ロメオとジュリエットのような甘さがありますが、しかし、最後は、やっぱり殺人現場って感じのフレーズが入ってきます。時間が逆戻りしており、リアルタイムで劇が進んでいないためか、宙に浮かんだ感覚が全体を覆います。最後、劇の幕が下りるわけではないので、永遠に魂は救われない。だから、まだ永遠にこの状態が続くってわけなんでしょう。

なんだか報われず、救われない結末のないドラマのようで、釈然としないのですが、永遠に繰り返される輪のなかに、閉じこめられたまま、時間が流れていく~ 終わりがないのです。どうも聴いた後の後味が悪いですね。何度となく聴いてみますが、最後の据わりが悪いので、終結しないドラマなんでしょうね。うーん。深いよねえ。ワタシの頭のなかも、ぐるぐる~ うねうね~ メビウスの輪のなかに放り込まれた気分で、気味の悪さだけが残滓として残ってしまいました。CDカップリング:チャイコフスキー 交響曲第4番、幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」 出典:YouTube Tchaikovsky: Francesca da Rimini, Op.32 モントリオール交響楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

リッカルド・シャイー クリーヴランド管弦楽団 😅

チャイコフスキー:幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」 リッカルド・シャイー クリーヴランド管弦楽団 1884年 Tchaikovsky: Francesca da Rimini, Op.32 Riccardo Chailly The Cleveland Orchestra

シャイーさんの演奏は、かなりリズミカルで、とっても弾むイメージがします。ドロドロ~っとした暗黒の闇から、鎌首をもたげてきた怪獣のような演奏や、地獄の道行きという演奏もあるのですが、全く違うアプローチですね。なんとも快活で、スポーティな演奏は、シャイーさんの持ち味です。冒頭から、これほどスポーティで良いのだろうかと、ちょっと首をかしげたくなるほど、スマートに進みます。

シャンシャン打楽器の鳴りも軽やかですし、しなやかで女性的な美しさもあり、弾みながら上昇気流に乗っていくという機能性の高い演奏です。チャイコフスキーの明るい面を強調しており、隠微で、鬱っとした女々しさは、ここには無いと言っても良いと思います。

身を焦がすような情念なんかは薄いのですが、聴いてて悪くないですね。妙に、どろっとした地獄の道行きが、生理的に合わない場合は、お薦めな演奏です。中間部分は、ドラマティックに歌いながら、劇的に、恣意的に盛りあげてきます。いささか誇張的ですが、あらがえないですね。むむっ、これでは、引き込まれてしまうぅ~と、違う意味での道行きを楽しむ演奏になっています。

若い活気あるフランチェスカ、向上心あふれるフランチェスカという感じでしょうか。全く暗くありません。地獄になんか落ちないわ、ワタシは上昇気流に乗っているのよぉ~という、体育会系のフランチェスカでした。チャイコの作曲の意図に沿っているのかどうかは、かなり疑問です。(いや~違うと思います)イタオペに近い、アプローチの演奏で、変に妙に楽しめちゃった演奏です。

CDカップリング チャイコフスキー ロメオとジュリエット1880年第3稿、フランチェスカ・ダ・リミニ 出典:YouTube Tchaikovsky: Francesca da Rimini, Op. 32 クリーヴランド管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ダニエル・バレンボイム シカゴ交響楽団 😞

チャイコフスキー:幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」 ダニエル・バレンボイム シカゴ交響楽団 1981年
Tchaikovsky: Francesca da Rimini, Op.32 Daniel Barenboim Chicago Symphony Orchestra

バレンボイムさんの演奏は、さすがにシカゴ響とのコラボなので、メチャ迫力があります。旋律にしなやかさは必要なしとばかりに、一直線で硬く、特に、金管の咆哮なんかは野獣のごとく吠えまくりという状態です。冷たくクールな怒りという感じで、ちょっとチャイコフスキーというイメージからは、かなり遠いように思います。なんというか、最後の審判を下す裁判官のように、打ちのめしてしまう感じがするのです。どこか抒情的で、感情で割り切れないところが、チャイコフスキーの楽曲にはあるように思うのですが、完膚なきまでに叩きのめされてしまう。

あちゃーっ、物語そのものをぶっ壊してやるーっ! という感じの演奏に聞こえます。ちょっとした気の迷いとか、名残り惜しさとか、余韻というか、そんなモノが、この演奏には残りません。はぁ~ やっぱり。まあ、迫力があるので聴いて損はしないとは思うのですが、なんだかねえ~ 感極まって泣けるという気分にはなりませんでした。

CDカップリング: チャイコフスキー ロメオとジュリエット1880年第3稿、フランチェスカ・ダ・リミニ、イタリア奇想曲、序曲1812年 1981年録音 出典:YouTube Tchaikovsky: Francesca da Rimini, Op. 32 シカゴ交響楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

アンタル・ドラティ ワシントン・ナショナル交響楽団 😅

チャイコフスキー:幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」 アンタル・ドラティ ワシントン・ナショナル交響楽団 1974年 Tchaikovsky: Francesca da Rimini, Op.32 Antal Dorati The National Symphony Orchestra

録音状態は、まずまず。ちょっと古いので、ヌケは良くないが、ドラマテックな要素が感じられます。古い録音でマーキュリー盤もあるのですが、まっ、気を取り直して、ワシントン・ナショナル響のフランチェスカ・ダ・リミニを聴きます。冒頭、ゴツンっという引き締まった弦と、金管の悲痛な音が出てきますが、低弦のアクセントのある粘っこいフレージングなのです。「れぇぇ~どぉ れぇ~ れれぇ~」という頭出しのガシっとした音。弦は、弓が切れるんじゃーというほど、ボーイングされて引っ張ってきます。木管は鋭く、嵐のような雰囲気で、吹き荒れているし~ まっ、地獄の道行きの雰囲気はリアルです。

ブラスは力強いし、勢いが凄まじいっ。シャンシャンっ ドンドンっ。爆発的で、鋭い閃光を放つかのような感じです。最近の演奏とは違いますね。やっぱり。ブラスと、大太鼓の打ち込みは、ドスンっ シャンシャン! ひぇ~ 漆黒の闇のなかの、音の嵐、洪水状態なのです。
中間部分の甘い旋律は、ドラマティックに盛りあげてきますし、弦のフレージングも、木管との絡みも、美しいハーモニーとなって聴かせてくれます。タイトにしなやかに弦が歌い、そして畳みかけ、粘りつきながら、大きなうねりを生んでいきます。この手腕は、さすが~です。23分54秒というクレジットの演奏ですが、一幕の劇を観ているかのような聴き応えがあります。ちょっと、詰め込みすぎの圧の高い楽曲ですが、中間部分で、ほわっとできるところが嬉しいですね。

CDカップリング:チャイコフスキー 管弦楽曲集2枚組BOX チャイコフスキー「イタリア奇想曲」デトロイト響 1978年、幻想序曲「ハムレット」ワシントン・ナショナル響1973年、交響的バラード「地方長官」ワシントン・ナショナル響1973年、幻想曲「運命」ワシントン・ナショナル響1974年、序曲「1812年」デトロイト響1978年、幻想序曲「ロメオとジュリエット」ワシントン・ナショナル響1974年、幻想曲「テンペスト」ワシントン・ナショナル響1974年、幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」ワシントン・ナショナル響1973年、スラヴ行進曲 デトロイト響1978年
ワタシが所有している2枚組CD 1973年・74年のワシントン・ナショナル響との録音はイマイチなのだが、78年のデトロイト響との録音は、すこぶる良い。全く違うと言っていいほど、録音状態が異なります。

出典:YouTube Tchaikovsky: Francesca da Rimini, Op.32 TH.46 ワシントン・ナショナル交響楽団 – トピック National Symphony Orchestra – Topic Provided to YouTube by Universal Music Group

イーゴリ・マルケヴィッチ ラムルー管弦楽団 😨

チャイコフスキー:幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」 イーゴリ・マルケヴィッチ ラムルー管弦楽団 1959年
Tchaikovsky: Francesca da Rimini, Op.32 Igor Markevitch Orchestre Lamoureux

マルケヴィッチさんの演奏は、ドラティさんと比べてどうだろう~と思って、サブスクリプションを利用して拝聴しました。意外と、さっぱり~ どす黒い、どろどろとした世界ではなく、さらっと流れていきます。へえ~っ。もっと怖い演奏かと思っていたのですが、キッチリとした爽やかな感じがするほどの流麗さ。録音状態もさほど悪くなく、あっさりしています。決して緩くない、カッチリとした構成で、それでいて打楽器の打ち込みはガツンっと来ます。で、ぽわーんと聴いていると、段々とラストに近づくにつれて、熱くなってきて~ ひぇーーー。いつの間にか、ドラマティックにもりあがって、怖い演奏に変貌して、ドン引き状態になって終わります。油断してました。

CDカップリング:リムスキー・コルサコフ「金鶏」、五月の夜序曲、チャイコフスキー フランチェスカ・ダ・リミニ、ボロディン中央アジアの草原にて、グリンかルスランとリュドミーラ序曲、リァードフ黙示録(作品66) 出典:YouTube Tchaikovsky: Francesca da Rimini, Op. 32 コンセール・ラムルー – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

チャイコフスキー 幻想序曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」【解説】

チャイコフスキーの幻想序曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」(作品32)は、ダンテの「神曲」中にある詩を題材にしています。「神曲」中の絶唱とされる「地獄篇」の第5歌「フランチェスカ・ダ・リミニ」を読んだチャイコフスキーは、「宿命に逆らいながらも真実の愛を求め続ける」という理想を見出しして、これを題材にした交響詩を作曲したいと考えるようになったそうです。1876年10月に着手して、あっという間に書きあげ、翌年3月には初演されています。導入部に続いて、三つの部分が展開される形式となっています。導入部は、減七の和音を駆使した重苦しい雰囲気で、4/4拍子、銅鑼と金管楽器が重用され、不安定な世界が繰り広げられます。

第1部は、ホ短調で、8/6拍子となり、地獄で苦しむ罪人達の姿、フランチェスカたちを待ち受ける過酷な運命が描かれています。木管楽器は、トリル風の動機を出し、ホルンは主要主題の断片を奏でます。緊張を高め、クライマックスに達すると、シンバル、ティンパニが激しく打たれ、トランペットが主題を強奏します。この主題は、繰り返され、一旦静まると、クラリネットに印象的なレチタティーヴォが現れ、第2部に移ります。

第2部は、4/4拍子 レチタティーヴォの主題によって、弦楽器により、甘く幻想的な雰囲気で、フランチェスカとパオロの恋を描いています。しかし、ホルンの信号風の動機によって曲調は一転し、調性感が不安定となり、 レチタティーヴォ主題が、全楽器の強烈な咆哮によって打ち砕かれ、破滅が描かれます。

第3部は、第1部の主題が再現され、地獄に落ちた2人が描かれるというもの。激しいリズムに乗った、強烈な和音が奏された後、大きく膨れ上がり、ホ短調の長い和音で終わります。

約24分の楽曲ですが、ティンパニー3台、大太鼓にシンバル、ハープなどという大編成で、題材が題材だけに、金管の咆吼は凄まじいものがあり、度肝を抜かれるほどドラマティックです。甘さを強調すると、 ロメオとジュリエットと同様になってしまう嫌いがあり、かといって、心理描写を真正面に取り組むと、どうなるのか・・・ ワタシにとっては、青ざめて終わりという感じになりそうですが、いやいや、そんな大層に考えなくても~という考えもあるかもしれません。でもまあ、ちょっと詰め込みすぎかもしれませんね。

改めて幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」について、ウィキペディア(Wikipedia)で調べてみたら、「フランチェスカ・ダ・リミニ」は、ダンテの「神曲」中の絶唱とされている詩です。その内容は、概ね次のとおり。

13世紀ラヴェンナにあるボレンタ家の美しい姫フランチェスカは、父の命令で、宿敵マラテスタ家との和解のため、同家の長男ジョヴァンニのもとへ嫁ぐことになる。しかし、 フランチェスカを迎えに来たのは、ジョヴァンニの弟である美青年パオロだった。2人は恋に落ち、嫁ぐ相手であった醜いジョヴァンニとフランチェスカが結婚してからも、彼らは密会を続ける。ところがある夜、フランチェスカとパオロが密会しているところをジョヴァンニに見つかり、嫉妬に狂ったジョヴァンニによって、2人は殺されてしまう。2人は色欲の罪を犯した者として、地獄の嵐に吹き流される。となっていた。掲載した絵は、ギュスターヴ・ドレの挿絵です。ドレの挿絵は、すごくドラマティックで壮大。

モノクロだが、描き方は繊細だし、光のあてかたが明瞭で、コントラストが大きいので迫力があります。おびただしい男女が、互いに抱きつつ、空に浮かんでおり、それが龍のように帯状になって、グルグルと宙を廻っている。初め見たときは、背景は洞窟なのだと錯覚したのだが、壁に見えたのは、これ全て抱き合った男女でした。ひえぇ~!
これだけ、ご大層にドラマティックな楽曲になったのも、無理からぬことかもしれませんが、聴いてて、とても疲れます。とほほぉ~。絵画については、Gustave Doré, Francesca da Rimini(illustration to Dante’s Inferno, 1857) 「Paolo and Francesca」関連の挿絵は、都合5枚あるようです。

チャイコフスキー 幻想序曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」【ディスク情報】

1958年 ドラティ ロンドン交響楽団 マーキュリー
1959年 マルケヴィッチ ラムルー管弦楽団 G
1973年 ドラティ ワシントン・ナショナル響 Dec
1981年 バレンボイム シカゴ交響楽団 G
1984年 シャイー クリーヴランド管弦楽団 Dec
1988年 デュトワ モントリオール響 Dec
1988年 アシュケナージ ロイヤル・フィル Dec
1989年 バーンスタイン ニューヨーク・フィル G
1991年 ムーティ フィラデルフィア管 EMI
1993年 スヴェトラーノフ ロシア国立管弦楽団 CANYON
1995年 ネーメ・ヤルヴィ デトロイト交響楽団 CHANDOS
2011年 ネルソンス バーミンガム市交響楽団 オルフェオ
2017年 ビシュコフ チェコ・フィル Dec

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