ラフマニノフ:交響的舞曲【聴いてみよう】Rachmaninov: Symphonic Dances, Op. 45

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ラフマニノフ:交響的舞曲【YouTube】

ラフマニノフ:交響的舞曲 エドワード・ガーディナー オランダ放送フィル 2011年12月18日コンサートの模様です。40分59秒の動画です。出典:YouTube Rachmaninoff: Symphonic Dances op.45 – Live concert HD
AVROTROS Klassiek

ラフマニノフ:交響的舞曲 テミルカーノフ サンクトペテルブルク・フィル 2013年の演奏です。
出典:YouTube Sergei Rachmaninoff – Symphonic Dances, Op. 45 (Yuri Temirkanov, St. Petersburg Philharmonic Orch.) EuroArtsChannel Yuri Temirkanov Saint-Petersburg Philharmonic Orchestra

ラフマニノフ:交響的舞曲【名盤・おすすめ】

ヤニック・ネゼ=セガン フィラデルフィア管弦楽団 😓

ラフマニノフ:交響的舞曲 ヤニック・ネゼ=セガン フィラデルフィア管弦楽団 2018年
Rachmaninov: Symphonic Dances, Op. 45 Yannick Nézet-Séguin The Philadelphia Orchestra

ネゼ=セガンさんの演奏は、色彩豊かで躍動的です。煌びやかさは、金管だけでなく木管も打楽器も、総力戦で躍動してきます。遊び心が満載で、これは、やっぱりアメリカのオケを振っているからこその愉悦性かもしれません。この曲を初演したオーマディ、フィラデルフィアが、21世紀だったらこう演奏していたかな~ Wikipediaにおいて、次のように掲載されていました。

ラフマニノフは指揮者のユージン・オーマンディに宛てた8月21日付の手紙の中で、新しい交響的作品を作曲中であること、そして完成後にそれをオーマンディと、当時オーマンディが音楽監督を務めていたフィラデルフィア管弦楽団に献呈したい旨を述べていた。この時点でラフマニノフは「幻想的舞曲集」として着想しており、各楽章に「真昼」、「黄昏」、「夜中」という標題を付すことも構想していた。

オーケストレーションは10月29日に完成し、各楽章の標題は破棄されて3つの楽章からなる『交響的舞曲』として発表された。初演は1941年1月3日にユージン・オーマンディ指揮、フィラデルフィア管弦楽団によって行われ、好評を以て迎えられた。

この記載を拝読して、交響的舞曲の構想時に、真昼、黄昏、夜中というイメージを持っていたことを知りました。へえ~ そうだったんだ。単に楽しいだけではなく、第3楽章には憂いが来ます。そんな悲観しなくても良いのに、ラフマニノフの人生のラストになって、朝を描いた楽章がないんですねえ。

カラフルな楽曲だけに、なんだか余計にツラくなりました。そうだとすると、フィラデルフィア管弦楽団の演奏は、アメリカナイズされた華やかさが感じられますが、少し表面的すぎる気がしますね。ラフマニノフの最後の曲にしては、影や憂鬱が感じられない気が・・・。出典:YouTube Rachmaninoff: Symphonic Dances, Op. 45 フィラデルフィア管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

マリス・ヤンソンス バイエルン放送交響楽団 😞

ラフマニノフ:交響的舞曲 マリス・ヤンソンス フィラデルフィア管弦楽団 2017年
Rachmaninov: Symphonic Dances, Op. 45 Mariss Jansons Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks

ヤンソンスさんの演奏は、弦の力強い出だしで始まり、エンジンのトルク音のように響いてくる演奏です。ティンパニーと低弦の響きがダメ押しのように聞こえます。いつもなら、しなやかで弾力性の高い弦と言うところですが、この演奏では、カッチリしたパワーを感じます。バンっと押さえる前にちょっとした間があり、それが効いています。

木管はいつもようにサワサワしながら、サックスを迎えています。オーボエが鳥の鳴き声のようでもあり、池の畔で座りながら黄昏れているような雰囲気です。ん? サックスは、もう少し元気でも良いのですが、ここでは、寂しさが充満しちゃってますね。

第2楽章は、ワルツの筈なのですが、どうもよたっているみたいで、もわもわした拍感覚で進みます。憂鬱そうな色白美人が、よよよ~と言う感じで、ふらふら歩いており、目もうつろという感じです。ちょっと病的すぎて、演出過剰って気がしますが、いや、ヤンソンスは、そういうアプローチなのでしょう。

第3楽章は、締まりなく自信なげな演奏に聞こえます。もっと弦が弾んで、パワー炸裂で良いはずなのですが、また、ラストに行くまでの場面が、ふにゃふにゃしてて、芯になる旋律が見えません。2楽章そのままで心乱れて、病人のままで終わっちゃいましたね。

CDカップリング:ラフマニノフ 合唱交響曲「鐘」2016年、交響的舞曲2017年 出典:YouTube Symphonic Dances, Op. 45 バイエルン放送交響楽団 – トピック Provided to YouTube by NAXOS of America

ドミトリー・キタエンコ ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団 😘

ラフマニノフ:交響的舞曲 ドミトリー・キタエンコ ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団 2013年
Rachmaninov: Symphonic Dances, Op. 45 Dmitri Kitayenko Gürzenich-Orchester Köln

ケルン・ギュルツェニヒ管のラフマニノフは、ロトさんではなく、キタエンコさんの指揮で演奏されています。キタエンコさんの演奏は、重心が低めで音が重めですが、推進力があるので、ガッチリ~ ひきしまった体躯で聞き応えがあります。筋肉質で、ガッガッと弦を刻み、進んでいくので迫力があります。CDカップリング:ラフマニノフ 交響曲第3番2012年、交響的舞曲 2013年 出典:YouTube Symphonic Dances, Op. 45 ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by NAXOS of America

パーヴォ・ヤルヴィ パリ管弦楽団  😍

ラフマニノフ:交響的舞曲 パーヴォ・ヤルヴィ パリ管弦楽団 2011年
Rachmaninov: Symphonic Dances, Op. 45 Paavo Järvi Orchestre de Paris

速い演奏で、シャッキシャキ~という感覚の演奏です。いつも速めですけど、パーヴォさんって、バッサバッサと斬り込んで行くタイプなのでしょうか。スッパスッパと鋭い刃が飛んでくるような感覚の演奏です。63年のキリル・コンドラシン盤も速いのですが、こちらは2000年以降の演奏なので、もう少し軽めですが、同じ傾向の演奏かと思います。そしてスピード感覚としては、.ゲルギエフさんの演奏の1.5倍速って感じでしょうか。

このザクザク感をパリ管から引き出しただけでも、すごい~です。また、軽やかさも持ち合わせており、第2曲のワルツには、うっすら狂気すら感じるものがあり、血の気がすーっと引いていきます。そして、すすーっと鳥肌が立ってきます。なんだろこの肌感覚的な危うさ。香り高い演奏なのですが、艶やかで危ういですね~ 表面的には華麗ですが、もしかしたら、悪い女性にひっかかったような、妖しすぎる妖艶という言葉以上のなんだか怖いワルツです。

第3曲は、第1音からの合間に、すーっと穴にはまった感じがします。綺麗な音が詰まっており、スピードに呑み込まれてしまう感じがします。これは良い演奏です~ 各楽器のパーツが綺麗にはめ込まれており、万全のアンサンブルで演奏されています。そして、狂気を孕みながら陶酔していく傾向の強い演奏です。う~ 良いわ。これ良いですね~
ラフマニノフのアヤシい愛憎、欲、炎、妖艶さ、邪念などが、ふわふぁふぁ~っと、立ち上っていくような錯覚に陥り、魂を持って行かれそうな怖い演奏です。

聴いているうちに自己陶酔して、のめり込んでしまう、そんな迷宮へ誘われるヤバイ演奏です。サブスクを利用して拝聴しました。ちょっと、かなりヤバイ演奏です。ぜひ聴いてみてください。夢か幻か~。しかし、しっかり現実の世界に戻ってきてくださいね。出典:YouTube Symphonic Dances, Op. 45 パーヴォ・ヤルヴィ – トピック Provided to YouTube by Warner Classics

サイモン・ラトル ベルリン・フィル 😘

ラフマニノフ:交響的舞曲 サイモン・ラトル ベルリン・フィル 2010年
Rachmaninov: Symphonic Dances, Op. 45 Simon Rattle Berliner Philharmoniker

ラトルさんの演奏は、しっとりした感覚もあり、感傷的で傷つきやすい心情も感じられ、美しく儚い感覚をもたらす演奏です。ノー天気な演奏とは違い、やっぱり心情的な発露を感じます。ただ、いつもとちがって歯切れの悪さを感じます。どーしたん? ザクザクとしたリズム感が乏しい気がします。ん、いつもの雰囲気と違いますね。

第2楽章は、死の舞踏ではないですが、コミカルで、ピエロの泣き笑いのような雰囲気が出ています。自己に対する諧謔、自虐的な感じがします。隙間風の吹いた、心にポツンと穴があいちゃった心情が滲み出ているワルツです。悲しすぎる演奏で、よよよ~っと泣きたくなります。

第3楽章は、ヤンソンスさんのバイエルン響との演奏アプローチとは異なり、病み上がりから立ち直り、逞しく生きようとする気持ち取り戻しています。中間部分では、夢想的な世界が、ぽわわ~と広がっており、白昼夢となっていますが、ラストは、文字どおり、機能的で華やかに終わります。夢を通り過ぎた後、最後の審判においても、立派に立ち振る舞おうと決めたかのよう。そんな決意を感じました。出典:YouTube Symphonic Dances, Op. 45 Simon Rattle Provided to YouTube by Warner Classics

ヴァシリー・ペトレンコ ロイヤル・リヴァプール・フィル

ラフマニノフ:交響的舞曲 ヴァシリー・ペトレンコ ロイヤル・リヴァプール・フィル 2009年
Rachmaninov: Symphonic Dances, Op. 45 Vasily Petrenko Royal Liverpool Philharmonic Orchestra

出典:YouTube Symphonic Dances, Op. 45 ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団 – トピック
Provided to YouTube by The Orchard Enterprises

ヴァレリー・ゲルギエフ ロンドン交響楽団 😷

ラフマニノフ:交響的舞曲 ヴァレリー・ゲルギエフ ロンドン交響楽団 2009年
Rachmaninov: Symphonic Dances, Op. 45 Valery Gergiev London Symphony Orchestra 

ゲルギエフさんの演奏は、超スローなテンポで弦を刻みます。遅くて重々しい歩みです。うーん、困ったなあと思いつつも聴き進めるのですが、やっぱ泥沼に足を取られているかのようです。もしかしたら、最近の演奏は速すぎるのかもしれませんが、それにしても遅いですね。第2楽章においても同様で、ぶよぶよに膨らんだカラダを持て余して、それでも、まだオヤツの袋を手放せない風情で、う~ これは肌に合いません。

なんとも場末の夕暮れ時の気怠さというか、不潔な匂いが漂ってきそう。うぷっ、アンタ、いったい何日お風呂に入ってないのぉ~と言いたくなるような、オジチャンが、場末で踊っているようなワルツです。(ちょっと言い過ぎたかも)第3楽章は、場末のネオンのように光ってますが、やけっぱちのシャンシャン打楽器、もう人生の終盤で挽回できないよね~という有様で、もはや聴いておれないです。出典:YouTube Symphonic Dances, Op. 45 ヴァレリー・ゲルギエフ – トピック Provided to YouTube by harmonia mundi

セミヨン・ビシュコフ ケルンWDR交響楽団

ラフマニノフ:交響的舞曲 セミヨン・ビシュコフ ケルンWDR交響楽団 2006年
Rachmaninov: Symphonic Dances, Op. 45 Semyon Bychkov West German Radio Symphony Orchestra

出典:YouTube Symphonic Dances, Op. 45 セミヨン・ビシュコフ – トピック Provided to YouTube by NAXOS of America

ユーリ・テミルカーノフ サンクトペテルブルク・フィル

ラフマニノフ:交響的舞曲 ユーリ・テミルカーノフ サンクトペテルブルク・フィル 2004年
Rachmaninov: Symphonic Dances, Op. 45 Yuri Temirkanov St. Petersburg Philharmonic Orchestra

CDカップリング:ムソルグスキー 死の歌と踊り、ラフマニノフ 交響的舞曲 2004年ライブ バス・バリトン:ディミトリー・ホロストフスキ 出典:YouTube Symphonic Dances, Op. 45 ユーリ・テミルカーノフ – トピック
Provided to YouTube by Warner Classics International

ヴァレリー・ポリャンスキー ロシア国立交響楽団

ラフマニノフ:交響的舞曲 ヴァレリー・ポリャンスキー ロシア国立交響楽団 1998年
Rachmaninov: Symphonic Dances, Op. 45 Valeri Kuzmich Polyansky Russian State Symphony Orchestra

出典:YouTube Symphonic Dances, Op. 45 Valeri Kuzmich Polyansky – トピック Provided to YouTube by PIAS

アンドリュー・デイヴィス ロイヤル・ストックホルム・フィル 🙄

ラフマニノフ:交響的舞曲 アンドリュー・デイヴィス ロイヤル・ストックホルム・フィル 1997年
Rachmaninov: Symphonic Dances, Op. 45 Andrew Davis Stockholm Philharmonic Orchestra

A・デイヴィスさんの演奏は、しなやかに切なくしっとりと歌う感じがします。とろみのついた執拗で濃密なタメの効いた歌い方ではなく、さっぱりとした爽やかさ。ロシア臭い濃厚な味がついていない分、ザクザクと刻まれる弦の強いフレージングは少ないです。ティンパニーも金管も、おとなしい鳴り方です。

木管もアルト・サックスの音も、甘すぎない甘さ。淀みのない旋律の美しさがあって、見通しよく織り込まれています。相対する合いの手や副旋律が、しっかり繊細に織りあがってくるようで、そういう意味での気持ちの良さを感じます。

第2楽章においては、蛇使いのようなクラリネットが絡んできますが、気怠さのなかに哀愁があり、弦の拍を刻む音に乗って歌う木管の旋律に泣かされます。渋い色彩感ですが、しなやかに絡まり、軽妙さも持ち合わせて聞き応えがあります。第3楽章は、軽やかな舞曲で、グレゴリオ聖歌の「怒りの日」のフレーズが聞こえてきますが、心情的な発露よりは、清々しく、潔いというか、この旋律を、ここまで爽やかに奏でるのかと驚くほど。

未練がましい感覚が色濃くでてくる演奏でも、悲哀に満ちたものでもなく、これから先も、明るく活き活きと快活で、希望に満ちている~という確信が感じられるような演奏で、驚いてしまいました。人生を回想していますが、心の底から楽しんでいるみたいで、これが、ラフマニノフさんの最後の作品とは思えないぐらい若々しい演奏です。う~ん、アメリカ的な底抜けに明るい和音で、すかっと楽天的に豪勢に鳴っており、ブラスの鳴りっぷりは、まるでミュージカルのよう。全く真逆のアプローチです。この指揮者はシアワセなのだ~と思います。

カップリング:ラフマニノフ「交響的舞曲」、交響詩「死の島」、幻想曲「岩」 出典:YouTube Rachmaninov Symphonic Dances Op.45 ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Fazer Records/Finlandia

ミハイル・プレトニョフ ロシア・ナショナル管弦楽団 😠

ラフマニノフ:交響的舞曲 ミハイル・プレトニョフ ロシア・ナショナル管弦楽団 1997年
Rachmaninov: Symphonic Dances, Op. 45 Mikhail Pletnev Russian National Orchestra

プレトニョフさんの演奏は、テンポが遅めです。重い演奏ですが、キレはさほど悪くなく、ゲルギエフさんの演奏のようなどろ沼状態ではありません。クールな音質というか、いつも快活な演奏を聴いているためか、かなり老境にさしかかった退職間近のおじちゃん風情で、その方の人生を振り返っている感じがします。

細やかな弦の刻みですが、四角四面な演奏で、ああ~ その退職間近のおじちゃんの人生は、あんまり面白くなかったんだな~って感じです。あはは~かなり妄想の入った聴き方ですが、悲しそうなフレーズで、ホント、完全に肩が落ちちゃって落日間近なのです。聴いてて、つらくなっちゃうわねえ。アルトサックスが、ダメ押ししちゃいます。おじちゃんには、新たな趣味でも見つけて欲しいんですけどねえ。

第2楽章も、活気がないというか、なんでこんなに元気がないんでしょうか、鬱々してて聴いてられません。第3楽章は、最初は、そこそこ楽しかったんだけどね~と感じているのでしょうが、中間部以降は、まるで、アンタの人生終わりだよと烙印が押されてしまったような風情です。出典:YouTube Rachmaninoff: Symphonic Dances, Op. 45 ロシア・ナショナル管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

エフゲニー・スヴェトラーノフ ロシア国立交響楽団 🥰

ラフマニノフ:交響的舞曲 エフゲニー・スヴェトラーノフ ロシア国立交響楽団 1995年
Rachmaninov: Symphonic Dances, Op. 45 Evgeny Svetlanov State Symphony Orchestra of Russian Federation

キャニオンから出ているスヴェトラーノフさんの演奏は、まろやかで、ふくよかな響きがあって満足できる演奏です。格好の良さと濃厚さの両面を持ち合わせて、官能的な世界が広がります。第1楽章は、弦がチャチャチャチャ・・・と細かく刻むなかを、木管が聞こえないぐらいの低音に至ります。クラリネットとフルートが象徴的な三つの音を吹いていくもの。爪を立てて挑みかかってくるような野性的な面があり、スピーディでしなやか。アルト・サクソフォンのフレーズに惚れちゃいます。

第2楽章は、金管の幕開けフレーズがあって、ブンチャッチャ、ンチャチャのリズムのうえに、クラリネットの悲しげなワルツとなります。歌謡風フレーズにおける木管の甘い響きと、ワルツのリズムを刻む弦が、ヴァイオリンのソロが、甘さや妖しい気怠さを運んできます。交響的舞曲には、現在は削除されていますが、各楽章に、サブタイトルがついており、第1楽章は「昼」、第2楽章は「たそがれ」、第3楽章は「深夜」と名付けられていました。

第3楽章は、怒鳴り込みに来るような足音が聞こえ、大太鼓が連打され、鈴が鳴り、鐘がなるという賑々しさ。何者かが到来したようで、そこから幕が開きます。バレエ音楽のようでもあり、軽やかな舞踏風ですが、ラフマニノフのテーマソングである「怒りの日」が、聞こえてくる仕掛けになっています。

舞踏会を開いていても、心の底では、「怒りの日」が流れてくるって感じです。ある一種のトラウマのように、自分自身の影のように引きずって歩いているよう。めまぐるしく風が吹く。華やかな面があるものの、結局、思いは沈むようです。まるで昔の写真を取り出して見ているような気持ちに。

遠い目になって、心、ここにあらず的な感傷的にすぎるかもしれない演奏です。「怒りの日」のテーマが、舞踏風フレーズに乗って登場し、激しく、壮大に幕を閉じるのですが、怒りの日が、舞踏風にアレンジされている点が、意味深だと感じます。CDカップリング:ラフマニノフ「交響的舞曲」、ラフマニノフ 交響詩「ロスティラフ公」、ラフマニノフ「ヴォカリーズ」 出典:YouTube ラフマニノフ:交響的舞曲 作品45 エフゲニ・スヴェトラーノフ – トピック Provided to YouTube by CANYON CLASSICS

ユーリ・テミルカーノフ サンクトペテルブルク・フィル

ラフマニノフ:交響的舞曲 ユーリ・テミルカーノフ サンクトペテルブルク・フィル 1992年
Rachmaninov: Symphonic Dances, Op. 45 Yuri Temirkanov St. Petersburg Philharmonic Orchestra

CDカップリング:歌劇アレコ序曲、パガニーニの主題による狂詩曲、交響的舞曲 出典:YouTube Symphonic Dances, Op. 45 ユーリ・テミルカーノフ – トピック Provided to YouTube by RCA Red Seal

マリス・ヤンソンス サンクト・ペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団 😮

ラフマニノフ:交響的舞曲 マリス・ヤンソンス サンクト・ペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団 1992年
Rachmaninov: Symphonic Dances, Op. 45 Mariss Jansons Saint Petersburg Philharmonic Orchestra

ヤンソンスさんの演奏は、スピーディに淡々と進みます。スタイリッシュな感じがするが、どこか野暮ったく、寂しさも感じられるものです。アルト・サクソフォンの登場場面では、テンポを落としていますが、甘さは封印されています。せっかく、甘いサックスを登場させている意味がないではないか~と思わなくもありません。美味しいところが、お預けのような感じです。

ストーリーが感じられますが、アメリカナイズされた喜劇のようで、気の毒な気がします。滑稽すぎて、ニヒルに都会的に格好つけていますが、寂しさが隠せないですね。寒さ、寂しさ、後悔しているかのような気持ちは、どうも隠しようがないです。ラフマニノフの交響的舞踏、この曲のアプローチって難しそうですね。指揮者の心情、人柄が出ますねえ。人生のラストを控えて、老境時代にこの曲を振ると、自分を投影してしまいそうです。

CDカップリング:交響曲第3番、交響的舞曲カップリング:交響曲と管弦楽曲がカップリングされた3枚組BOX
ピアノ協奏曲とカップリングされた6枚組BOXがあります。出典:YouTube Rachmaninov Symphonic Dances, Op.45 サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団 – トピック St. Petersburg Philharmonic Orchestra – Topic
Provided to YouTube by Warner Classics

シャルル・デュトワ フィラデルフィア管弦楽団 😓

ラフマニノフ:交響的舞曲 シャルル・デュトワ フィラデルフィア管弦楽団 1990年
Rachmaninov: Symphonic Dances, Op. 45 Charles Dutoit The Philadelphia Orchestra

彩度の高い、痛快な軽妙さが味わえるだろうと予想していたのですが、リズムが多少重いかもしれません。甘くて、とろみのたっぷりロシア臭い演歌風の演奏ではないし、さらっと哀愁の漂うフレージングでもないし、ジャズっぽくもなく、いたって普通という感じに思える。ツンデレでもないし、さみしさも感じず、見通しの良い演奏とも言えず。

エンターテイメント風の演奏でしょうか。グレゴリオ聖歌の「怒りの日」のフレーズが入ってきますが、映画音楽のような雰囲気の曲に、どうして、怒りの日のフレーズが織り込まれているのか。作曲家の意図は何なのか、ウジウジと悩むフレーズ、郷愁、逡巡する思いが詰まったかのような楽章。割り切れなさ、吹っ切れていない思いが、ぐにゅぐにゅ~と詰まっているようです。この演奏には、突き抜けたような甘さ、苦さ、辛さがなく、良い意味で、普通で平凡で良かった~というような演奏に聞こえてしまいます。足りません。

CDカップリング:ラフマニノフ 交響曲・管弦楽曲全集4枚組BOX(Newton Classics 原盤:Decca)ラフマニノフ 交響曲第1番 1991年、交響詩「死の島」1992年、交響曲第2番 1991年、幻想曲「岩」 1993年、交響曲第3番 1990年、交響的舞曲 1990年、合唱交響曲「鐘」、カンタータ「春」、3つのロシアの歌 1992年 出典:YouTube Rachmaninoff: Symphonic Dances, Op. 45 フィラデルフィア管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

アンドルー・リットン ロイヤル・フィル

ラフマニノフ:交響的舞曲 アンドルー・リットン ロイヤル・フィル 1989年
Rachmaninov: Symphonic Dances, Op. 45 Andrew Litton Royal Philharmonic Orchestra

CDカップリング:ヴォカリーズ、交響曲第1番~3番、死の島、交響的舞曲 出典:YouTube Symphonic Dances, Op. 45 アンドルー・リットン – トピック Provided to YouTube by Warner Classics

ロリン・マゼール ベルリン・フィル

ラフマニノフ:交響的舞曲 ロリン・マゼール ベルリン・フィル 1983年
Rachmaninov: Symphonic Dances, Op. 45 Lorin Maazel Berliner Philharmoniker

出典:YouTube Rachmaninoff: Symphonic Dances, Op. 45 ロリン・マゼール – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ウラディーミル・アシュケナージ コンセルトヘボウ管弦楽団

ラフマニノフ:交響的舞曲 ウラディーミル・アシュケナージ コンセルトヘボウ管弦楽団 1983年
Rachmaninov: Symphonic Dances, Op. 45 Vladimir Ashkenazy Royal Concertgebouw Orchestra

アシュケナージさんの演奏は、速くて驚きます。焦って人生を送っているのか、走馬灯のように巡り始めたのか。華やかな人生の筈だったのに~という思いが織り込まれているのでしょうか。出典:YouTube Rachmaninoff: Symphonic Dances, Op. 45 Concertgebouworkest Provided to YouTube by Universal Music Group

アンドレ・プレヴィン ロンドン交響楽団 😘

ラフマニノフ:交響的舞曲 アンドレ・プレヴィン ロンドン交響楽団 1975年
Rachmaninov: Symphonic Dances, Op. 45 André Previn London Symphony Orchestra

賑々しさを全面に出した演奏で往年の名盤です。木管が、暖かみのある太めの音色で奏でられ、アルトサックスのソロは、もう少し、息が長めであって欲しいが、柔らかい表情で、寂しげに吹かれています。金管がマーチ風のフレーズを吹き出すと威勢が良く、ノリノリになって煌めき度を増していきます。金管の破裂している感じはリアルです。

プレヴィン盤では、アンニュイ、オリエンタルな香りがします。ストーリー仕立てで、丁寧に描いており、心情をリアルに浮かびあがらせます。なので、イメージしやすいですね。ある意味、ハリウッド映画を見ているようなのです。また、お決まりの怒りの日は、場末の酔っ払い風情で奏でられています。

まあ、こんな風にオチャラケにして良いのかなあ~と思うほど、金管のぶっ放し、にぎにぎしくタンバリンを打ち鳴らされ、熱く煽られています。ラフマニノフのラストの楽曲を、大衆向けTV番組のように、かなり賑々しい楽曲にしちゃって果たして良いのかどうか。楽天的な楽曲にした感の演奏ですが、それが、アメリカに渡ったラフマニノフさんの哀しさなのかもしれません。深読みしすぎかもしれませんが。

CDカップリング:ラフマニノフ 交響曲、管弦楽作品集3枚組BOX ラフマニノフ 交響曲第1番 1975年、交響詩「死の島」 1975年、交響曲第2番 1973年、ヴォカリーズ 1975年、歌劇「アレコ」間奏曲 1976年、歌劇「アレコ」女たちの踊り 1976年、交響曲第3番 1976年、交響的舞曲 1974年 出典:YouTube Symphonic Dances, Op. 45 アンドレ・プレヴィン – トピック Provided to YouTube by Warner Classics

キリル・コンドラシン モスクワ・フィル 😘

ラフマニノフ:交響的舞曲 キリル・コンドラシン モスクワ・フィル 1963年
Rachmaninov: Symphonic Dances, Op. 45 Kyrill Kondrashin Moscow Philharmonic Orchestra

コンドラシンさんの演奏は、あっと驚くほど速い、バッサバッサ パッシャパシャと切っていくフレージングです。この時期の演奏で、この速さ。ゲルギエフ ロンドン響の演奏と比べると、なんとゲルギエフ盤の鈍重な演奏か、うーんと唸ってしまいます。快刀乱麻という感じで、白黒映画で、西部劇を見ている感じです。ある意味、颯爽としてて格好が良いのですが、ラフマニノフの心情やいかに~ よよよっと泣けてきそうだけど。いや、コンドラシンさんは、そんな女々しい演奏はしないのです。出典:YouTube Symphonic Dances, Op. 45 モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by NAXOS of America

ラフマニノフ:交響的舞曲【解説】

ラフマニノフの交響的舞曲(作品45)は、1940年に作曲されたラフマニノフ最後の作品です。交響曲1番や「徹夜禱」からの引用や、ラフマニノフが好んで引用してきた「怒りの日」の旋律が出てきてます。怒りの日は、交響曲2番と3番、交響詩「死の島」、鐘、ヴォカリーズ、パガニーニの主題による狂詩曲などにも引用されています。1楽章ではアルト・サクソフォン、サックスや3楽章では鐘が使われ、約35分の躍動感のある楽曲です。

第1楽章 ハ短調 形式はほぼ三部形式(ソナタ形式の要素もあり) 弦楽器のうえに木管楽器によって主題が断片的に表れ、全奏したのち、行進曲調のリズムになります。木管楽器によって主題が提示され、弦やピアノを加えて変奏され発展し、中間部では嬰ハ短調に転じます。オーボエとクラリネットの動機に続いて、サクソフォンが哀愁ある旋律を歌い、バスクラリネットが暗雲が垂れ込めてきますが、最初の主題が回帰します。ハ長調に転調したコーダでは、交響曲第1番1楽章の主題が回想されて、静かに曲を閉じます。

第2楽章 ト短調 三部形式 ワルツの楽章となっており、不安な雰囲気を帯びたファンファーレから始まります。ファンファーレによって中断し、ヴァイオリンが導入の楽句を弾いて主題に入ります。幻想的な雰囲気と、絡む対旋律が不安な気分を高めていきます。冒頭のファンファーレが再び登場し、新しいワルツの旋律を導き出しますが、不安な気分は残り、テンポをあげてコーダ。

第3楽章 三部形式 ロ短調に始まり、主部でニ長調に変わります。スケルツォ的な性格で、調性やリズムが変化し、怒りの日の主題も随所に表れます。ファゴットが主題の断片を出し、フルートと鐘の響きが応えます。ニ長調のスケルツォ風の主題が提示された後、変奏風になりピッコロとシロフォンで提示されるホ短調の旋律が絡みます。中間部は、憂鬱なワルツ的旋律が歌われ、オーボエによって主部への回帰が提示され、怒りの日の旋律となります。スケルツォ風の主題と、低弦の第2主題(ニ短調)の再現、コーダ直前で「徹夜禱」第9曲のアレルヤの引用がなされて曲を閉じます。

ラフマニノフ:交響的舞曲【ディスク情報】

1963年 コンドラシン モスクワ・フィル PROFIL
1975年 プレヴィン ロンドン交響楽団 EMI
1983年 アシュケナージ コンセルトヘボウ管弦楽団 Dec
1983年 マゼール ベルリン・フィル G
1989年 アンドルー・リットン ロイヤル・フィル VIRGIN
1990年 デュトワ フィラデルフィア管弦楽団 Dec 
1992年 ヤンソンス ペテルブルク・フィル EMI
1992年 テミルカーノフ サンクトペテルブルク・フィル R
1995年 スヴェトラーノフ ロシア国立交響楽団 CANYON
1997年 プレトニョフ ロシア・ナショナル管弦楽団 G
1997年 アンドルー・デイヴィス ストックホルム・フィル FINLANDIA
1998年 ポリャンスキー ロシア国立交響楽団 CHANDOS
2004年 テミルカーノフ サンクトペテルブルク・フィル Warner
2006年 ビシュコフ ケルンWDR交響楽団 PROFIL
2009年 ゲルギエフ ロンドン交響楽団 LSO
2009年 ヴァシリー・ペトレンコ ロイヤル・リヴァプール・フィル AVIE
2010年 ラトル ベルリン・フィル EMI
2011年 P・ヤルヴィ パリ管弦楽団 E
2013年 ドミトリー・キタエンコ ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団 OEHMS
2017年 ヤンソンス バイエルン放送交響楽団 BR
2018年 ヤニック・ネゼ=セガン フィラデルフィア管弦楽団 G

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