リスト:交響詩全13曲を【サクッと】聴いてみよう。Liszt: Symphonic Poems

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リストの交響詩全13曲を、サクッと聴いてみようと思います。

クラシック音楽のなかに、「交響詩」というジャンルがあります。その創設者的な作曲家であるリストの交響詩は、全部で13曲あるのですが、重要なジャンルのわりには、あんまり人気がないんです。レ・プレリュード(前奏曲)は、ダントツで人気があるのですが、あとは、どうもさっぱり。

で、実際のところ、どうなのよ~ってことで聴き始めたのですが、いつもは一つの曲を、じっくり、ちまちま聴いてきたワタシも、これにはギブアップ。なので、宗旨替え、方向転換して、ひととおり【サクサクっと】聴いてみることにしました。一作品一演奏を基準に聴いてみます。

リストの交響詩全13曲を作曲年順に掲載していきます。なお、一度に聴いて全部コメントは書けないので、順次、アップしていきます。アップしている時には、まだ聴けていない曲もありますが、ご容赦ください。んじゃー頑張りマース!

01 リスト:交響詩「人、山の上で聞きしこと」 🥱

リスト:交響詩「人、山の上で聞きしこと」 ミシェル・プラッソン ドレスデン・フィル 1992年~94年
Liszt: Symphonic Poem No. 1, S95/R412 “Ce qu’on entend sur la montagne” Michel Plasson Dresdner Philharmonie

リストの交響詩「人、山の上で聞きしこと」は、1833年から1835年に作曲されています。何度も改訂を繰り返して1849年に完成。詩人ヴィクトル・ユゴーの詩集「秋の葉」の一篇に基づいています。主人公は、山の中で二つの声を聞きます。一つは、秩序に満ちており、主に向かって喜びに満ちた賛美歌を唱えています。もう一つは、空虚で痛みに満ち、泣き、冒涜と呪いで腫れ上がっています。両方の声は互いに近づき、交差し、溶け合い、最終的には神聖な状態で消えていくという、聖なるもの、俗なるもの、自分の内面の葛藤を、音化したもののようです。

最初は、山の雄大な景色、神秘的な風景、自然の猛威を表す旋律が、次から次へと繰りだされてきます。ホルンが吹かれ、フルート、クラリネットが、爽やかな朝焼けを醸し出し、徐々に清々しい気分となります。ファンファーレが鳴り、太陽が昇るシーンが描かれています。

暗闇のなかを進む道行きのシーンでしょうか。雷に遭遇する怖さ、手探り感も漂ってきます。同じフレーズを繰り返すなかで色彩が変わります。恐怖心、不安な心を抱きつつ、ずーっと歩いて行かなければならないのは、ちょっとツラくなります。心理の変化があります。金管の柔らかい和音が響くと神聖なシーンに変化し、軽やかに晴れやかな雰囲気となり、ふっきれたように、視界が開けた雰囲気が出てきます。堂々と晴れやかな金管が鳴り響いて終わります。

約30分という長い曲なので、ワタシはちょうど真ん中あたりで~ ちょっと眠くなってしまいました。ラストは、清々しい気分になりますが、聴く方も、山に登った気分で、体力勝負ってところでしょうか。リスト自身の実生活は、多くの恋愛が交錯し、ドン・ファンのように思うのですが、聖職に入る気持ちが、もしかしたら既に芽生えていたのかもしれません。理想と実生活のギャップが大きく~ 悩みも深かったのではないでしょうか。

CDカップリング:リスト 交響詩「プロメテウス」、「人、山の上で聞きしこと」、「祭典の響き」 出典:YouTube Symphonic Poem No. 1, S95/R412 “Mountain Symphony”: Ce qu’on entend sur la Montagne ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Kontor New Media

02 リスト:交響詩「タッソー、悲劇と勝利」 😘

リスト:交響詩「タッソー、悲劇と勝利」 ゲオルク・ショルティ パリ管弦楽団 1974年
Liszt: Symphonic Poem “Ce qu’on entend sur la montagne”,”Tasso” Georg Solti Orchestre de Paris

リストの交響詩「タッソー、悲劇と勝利」は、1849年に作曲されています。かつてヴェネツィアで、ゴンドラの船頭が、タッソーの「解放されたエルサレム」という歌を歌っていたのを聞いて、これを主題にしています。最初はピアノ曲の形でまとめた(巡礼の年第2年補遺 「ヴェネツィアとナポリ」 第1番 ゴンドラを漕ぐ女 だと思います)のですが、管弦楽に変更したそうです。

ゲーテは、宮廷詩人として政治的陰謀に巻き込まれてしまう人生に焦点をあてて戯曲に、リストは、詩人の愛と裏切り、精神病院で過ごした人生に焦点をあてて、序曲、交響詩を作曲しています。ふふっ、互いに自身とダブらせてたテーマ設定ですね。リスト自身が、タンク・レディだったのかもしれないのに~ 面白いです。

で、ヴェネツィアの船頭の歌からタッソーの主題が、バス・クラで提示され、これが中心となってタッソーの悲劇を表した前半、高らかな勝利を描いた後半にわかれます。人生の転化、落差を大きく描ききるリストのパワーにいつもながら敬服しちゃいます。冒頭、メチャクチャ暗い出だしで低弦の響きが、ぞぞぞぉ~っと底を掻きあげてきます。演奏は、ショルティさんとパリ管のコンビで、シカゴ響に負けない迫力です。最初は、ウツウツ~ 黒い雲がモコモコ~ で、そっから戦闘場面に突入して、その後、休戦状態のように、だべっ~っと暗い表情になるのです。

バスクラのフレーズが、重いです。で、タッソーにおけるハイライトは、出だし部分が終わったあと、振り子のように振れ出し唸るように「そぉ ふぁみれどし そぉ~ し~れっ し~れっ そぉ~そぉ~」 揺れが大きくなるところでしょうか、また、シャンっ!という音が入り、剣のぶつかり合うシーンが印象的です。

リスト 交響詩「タッソー、悲劇と勝利」 ヘルベルト・フォン・カラヤン ベルリン・フィル 1967年
Liszt: Symphonic Poem “Tasso, lamento e trionfo” Herbert von Karajan Berliner Philharmoniker 

カラヤンさんの演奏は、愛の生活と裏切り、栄華と衰退、悲劇と勝利いう両極を大きく描いています。リストにしても、最後は、祝祭的にトランペットが吹かれて終わるので、終わりよければ全てよしみたいな描き方について、大賛成!ってことかもしれませんが、人生、そんな単純じゃーないでしょ。唐突に終わって勝利? どういうこと?

ここで描かれる勝利は、何を意味しているのか、どうもスッキリしません。リスト作品にツッコミは御法度かもしれませんが、ショルティ、カラヤンご両名とも、二大極限を描く作曲家と、描ききる演奏家が、ダイナミックにタッグを組んで相乗効果を生んでいるように思います。

作曲家が、伝説の詩人と自分自身を重ね、新たな作品を生み出していくのが芸術なのでしょうか。作品からオーラが出ていることは確かみたいです。相乗効果が半端ないですね。リストは、先人たちと同じように、エルサレム奪回を描いた「解放されたエルサレム」を題材にしたのではなく、愛欲に溺れた人を主人公に据え、その後の人生について展開させようとしています。

カラヤンさんの演奏は、華麗なる旋律美、大見得を切って恥ずかしい~ほど。録音に不満が残るものの、楽曲そのものが、映画音楽のようにも聞こえる演奏です。リストが、映画音楽の元祖じゃないかとも思えるほど劇的です。なお、初演から何度か改訂しており、現在、聴かれているのは1854年版です。楽曲のタイトルは「タッソー、嘆きと勝利」「タッソ、嘆きと凱旋」「タッソー、悲哀と勝利」などと訳されています。出典:YouTube Liszt: Tasso – Lamento e trionfo, Symphonic Poem No. 2, S. 96 (After Byron) ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

03 リスト:交響詩「レ・プレリュード」(前奏曲) 🥰

リスト:交響詩「レ・プレリュード」(前奏曲) ジュゼッペ・シノーポリ ウィーン・フィル 1996年
Liszt: Les Préludes, Symphonic Poem No. 3, S. 97 Giuseppe Sinopoli Wiener Philharmoniker

この「レプレリュード」(前奏曲と表記されることもあります)は、人気があります。シノーポリさんの演奏は、 ウィーン・フィルとの演奏で柔らかめ。 序奏部分は優美で、一呼吸おいて、同じフレーズを密やかに上昇していきます。フルートとホルンの響きは大変美しく、弦は柔らかく女性的です。

音の響きは確かに綺麗なのだが、力強さとか意志力と、逞しさとか、アクの強さみたいなモノには、ちょとご縁がありません。開放的で、ティンパニーの鳴りっぷりも印象に残ります。もう少し、テンポアップして演奏していると、メリハリが出たかも~なのですが、これは確信犯的な耽美型の演奏でしょう。世紀末的な様相というか退廃的。

アクの強い大見得を切ったような演奏とは異なり、繊細で叙情的に描かれています。力任せで一辺倒に鳴らす演奏もありますが、シノーポリさんは、オペラのように、壮大に華麗に盛りあげて終わります。出典:YouTube Liszt: Les préludes, S. 97 Herbert von Karajan Provided to YouTube by Universal Music Group

04 リスト:交響詩「オルフェウス」 😘

リスト:交響詩「オルフェウス」 ベルナルト・ハイティンク ロンドン・フィル 1968年
Liszt: Symphonic Poem “Orpheus”  Bernard Haitink London Philharmonic Orchestra

リストの交響詩「オルフェウス」は、ホルンとハープ2台のフレーズが大変美しく、リストにしては、珍しい~瞑想的とも言える楽曲です。オルフェウスは、オルペウスとも表記されますが、日本神話の男神・イザナギと一緒に国造りをしていた女神・イザナミが亡くなり、悲しんだイザナギが、イザナミに会いに、黄泉の国 黄泉比良坂(よもつひらさか)に向かうというお話とよく似たような 冥府くだりの話があります。

さて、ハイティンクの交響詩「オルフェウス」は、ハープのあと、すかさず甘いチェロの主題が登場します。「らぁ~ れみふぁ らそふぁ~ みぃふぁれ れぇ~  れぇ~ そらどし ふぁ~そぉ そぉ~ら」もう、この主題だけで、いっきに幻想的な世界に誘われる天上の世界です。ラストには、木管と弦が絡みつきながら、天上に誘います。あっ、冥府だった! わずか10分程度の楽曲ですが、ソロヴァイオリンの美しい調べに胸キュンでした。

この冥府くだりについて、ウィキペディア(Wikipedia)で調べたところ・・・オルペウスの妻エウリュディケーが毒蛇にかまれて死んだとき、オルペウスは妻を取り戻すために冥府に入った。彼の弾く竪琴の哀切な音色の前に、ステュクスの渡し守カローンも、冥界の番犬ケルベロスもおとなしくなり、冥界の人々は魅了され、みな涙を流して聴き入った。ついに、オルペウスは冥界の王ハーデースとその妃ペルセポネーの王座の前に立ち、竪琴を奏でてエウリュディケーの返還を求めた。オルペウスの悲しい琴の音に涙を流すペルセポネに説得され、ハーデースは、「冥界から抜け出すまでの間、決して後ろを振り返ってはならない」という条件を付け、エウリュディケーをオルペウスの後ろに従わせて送った。目の前に光が見え、 冥界からあと少しで抜け出すというところで、 不安に駆られたオルペウスは後ろを振り向き、妻の姿を見たが、それが最後の別れとなった。・・・と書いてありました。

リスト 交響詩「オルフェウス」 ズービン・メータ ベルリン・フィル 1994年
Liszt: Symphonic Poem “Orpheus” Zubin Mehta Berliner Philharmoniker

オルフェウスと言えば、象徴派の画家モローの描いた「オルフェウスの首を運ぶトラキアの娘」を思い浮かべます。

ギリシャ神話に登場する吟遊詩人のオルフェウスは、竪琴の名手だったのですが、妻のエウルキュディケが亡くなった後、女性を避けたことが原因で、酒神のバッカスの女たちに、八つ裂きにされて海に遺棄されました。で、レスポス島に竪琴と一緒に流れ着いたとされています。その流れ着いたところが、モローによって、幻想的に描かれているのです。

モローには、ギリシャ神話を題材にした絵画が多くあり、プロメテウスとかサロメとか、このリストの交響詩「オルフェウス」だけでなく、他のリストの楽曲やR・シュトラウスの題材とかぶって、イメージの相乗効果を生んでくれます。

音楽と絵画 結構、関連することも多いので、絵画作品を見て、リストの楽曲を聴いてみるのも一興かもしれません。主人公のオルフェウスが竪琴の名手だったことから、絵画においても竪琴が(オルフェウスの首は竪琴の上に乗せられています)、リストの曲には、冒頭にハープが登場します。

レプレリュードやマゼッパのような勇壮な交響詩とは違い、ソロのヴァイオリン、クラリネットなどの甘い旋律が満載で、静かな瞑想的な曲です。なのに~ メータさんの演奏は、あまりにも肉厚で、ちょっと唖然。もう少し、控えめというか、繊細さが欲しいところです。幻想的、神秘的というイメージに遠く、トゥッティ、盛りあげてくるところのスピードが遅く、どうもシャープさに欠けるように感じました。甘美な演奏ではあったのですが、 ちょっぴりメタボなオルフェウスって感じでしょうか。

リスト 交響詩「オルフェウス」 ジャナンドレア・ノセダ BBCフィル 2004年
Liszt: Symphonic Poem “Orpheus” Gianandrea Noseda BBC Philharmonic Orchestra

リストの交響詩は、なぜこれほどまでに知名度が低いのでしょう。とっても素敵な素材なのに。演奏会の第1曲目に、協奏曲とシンフォニーの前に演奏されるには、とっても手頃なサイズの楽曲なのです。時間は、わずか10分~15分程度の曲が多い。リストの交響詩は全部で13曲あるのですが、そのうち約半分の6曲は、15分程度の曲なのです。

でも、改めて楽器編成をみたら、ハープやティンパニー、打楽器の種類も相当数が必要になるようです。これでは、演奏する機会も少ないのもやむを得ないのかも。R・シュトラウスの楽曲が、メインというコンサートの時にしか、取り上げてもらえないかもしれません。

さて、ノセダさんの演奏は、最近の全集なので録音状態は良く、角笛のようなホルンとハープが絡み、とても幻想的な世界に誘われます。物語の主人公の持つ竪琴のイメージなので、ハープは、冒頭からほぼ出ずっぱり。ハープの伴奏のうえを、いろんな楽器が登場する感じですし、劇的な展開を見せず、長調と短調の交差でほぼ終始します。ハープのグリッサンドやアルペジオを聴くと、自然界の動物たちや冥府の主でさえも、うっとりすることでしょう。

もう少しテンポアップしてもらって巧いオケで聴きたいですけど。ラスト近くになると、低音の響きを豊かに響かせ、地底から盛りあげ穏やかに幕を閉じます。わずか10分程度の短い楽曲ですが、もっと長い間、夢を見させてもらいたいように感じられます。勇壮なリストも良いですが、この穏やかで幻想的な楽曲は、ワタシ的にはお薦めです。出典:YouTube Orpheus, Symphonic Poem No. 4, S. 98 ジャナンドレア・ノセダ – トピック Provided to YouTube by PIAS

05 リスト:交響詩「プロメテウス」 😘

リスト:交響詩「プロメテウス」 ゲオルク・ショルティ ロンドン・フィル 1977年
Liszt: Symphonic Poem “Prometheus” Georg Solti London Philharmonic Orchestra

ショルティさんの演奏は、録音年こそ古いのですが、他の演奏に比べて金管の迫力が違います。

ギリシャ神話で、プロメテウスは、オリュンポスの神々から火を盗み、人類に、技術、知識、文明をもたらしたとされています。そのため、
オリュンポスの神々の王ゼウスは、永遠の責め苦に処しました。

ギュスターブ・モロー「プロメテウス」
Gustave Moreau:Prometheus 1868年

プロメテウスは、岩に縛り付けられ、ゼウスの象徴である鷲が、彼の肝臓を食べるために使わされました。肝臓は、人間の感情の中心であると考えられていたそうです。彼の肝臓は一晩で再生するので、永続的に鷲に啄まれることになります。

最終的に、プロメテウスはヘラクレスによって解放されるのですが、この毎日続く鷲に啄まれる責め苦の様子が、冒頭から出てくる印象的な不協和音で表現されています。曲のなかで、何度も不協和音が出てくるので、どうやら、聴衆には不評だったそうです。毎日、鷲に啄まれる苦痛を表現するためなのだから、嫌がられる感情は、ある意味、成功なのだと思います。

リスト:交響詩「プロメテウス」 クラウディオ・アバド ベルリン・フィル 1994年ライブ
Liszt: Symphonic Poem “Prometheus” Claudio Abbado · Berliner Philharmoniker

ライブ盤なので、さほど録音がよくないのですが~ 楽曲としては、少し長いかな~と思います。責め苦を描くということに関しては、一定の理解はできたと思うのですが、ストーリー展開がイマイチ、わかりづらいです。まあ、毎日鷲がやってきては、腹を突かれるという苦行が続くので、ヤナ展開ですよねえ。いつまで続くのよぉ~。

06 リスト:交響詩「マゼッパ」 🥰

リスト:交響詩「マゼッパ」 ヘルベルト・フォン・カラヤン ベルリン・フィル 1961年
Liszt: Symphonic Poem “Mazeppa” Herbert von Karajan Berliner Philharmoniker

交響詩「マゼッパ」のストーリーは、ギリシャ独立戦争にインスピレーションを得たヴィクトル・ユゴーの詩「レ・オリエンタレス」の第34番「マゼッパ」が元になっているそうです。ポーランド貴族の妻との情事に巻き込まれて罰せられたイワン・マゼパの伝説的な人生、前半は、若いマゼッパが、情事の責任をとらされて、裸で馬の背中に縛り付けられ放たれたもの。後半は、コサックに助けられ、コサックの首領となって、ウクライナ解放の戦いに起ちあがるというストーリーだそうです。

カラヤンさんの演奏も、冒頭は、マゼッパをくくりつけた馬が走る描写、将来を考えるような静かな場面、闘争、トランペットのファンファーレ以降は、勝利の行進という場面展開になっており、全般的に勇壮な演奏となっています。録音が古いというの難点ですね。

リスト:交響詩「マゼッパ」 キリル・カラビツ シュターツカペレ・ワイマール 2018年
Liszt: Symphonic Poem “Mazeppa” Kirill Karabits Staatskapelle Weimar

この演奏は、サブスクを利用して拝聴したものです。録音が新しいのが魅力です。期待に違わずオッケーということですが、このCDのメインは、リストの未完で終わった歌劇「サルダナパール」を初演、世界初録音という偉業でした。
オペラまで、ちょっと今は手がのびませんが~ また機会がありましたら拝聴したいと思います。

リスト:交響詩「マゼッパ」 ベルナルト・ハイティンク ロンドン・フィル 1968年
Liszt: Symphonic Poem “Mazeppa” Bernard Haitink London Philharmonic Orchestra

ハイティンクさんの演奏は、重くて湿気ている感じです。カシカシカシと弦のフレーズが丁寧に弾かれていますが、颯爽とした勢いが鈍いですね。かなりイマイチでしょうか。交響詩「マゼッパ」の冒頭で鳴るムチは、馬にくくられて追放されるシーンを描いたものだと思うのですが、どうもスピードが出ていません。これでは、太った体躯を騾馬にくくられた、鈍くさそうなおっチャンです。ハイティンクさんとリストとの相性、アカンのと違うかなあ。

リスト:交響詩「マゼッパ」 ズービン・メータ ベルリン・フィル 1994年
Liszt: Symphonic Poem “Mazeppa” Zubin Mehta Berliner Philharmoniker

メータさんの演奏は、スピード感もあり、カチッとした硬質感のある演奏です。さすがに巧いわ、やっぱりBPOですからね~ バッチリ。ライブのため、奥行き感が少なめですが、粘り腰で低音が豊に入っています。トロンボーンもチューバも、重々しく、太く、ぐい~っとした筆圧で、堅牢で雄渾に演奏されています。カラヤンのような、シャキシャキ感や鋭さはありませんが、ゆったり力強さを感じさせるもの。木管の音が透き通って優美ですし、畳みかける勢いも、音の上り下りのパワーも、スピードも適度にあります。それでも、もっと~頑張れっと言いたくなってしまうところは、聴き手のワタシの性分でしょうか。

リスト:交響詩「マゼッパ」 ジャナンドレア・ノセダ BBCフィル 2006年
Liszt: Symphonic Poem “Mazeppa” Gianandrea Noseda BBC Philharmonic Orchestra

ノセダさんの演奏は、総体的にまろやかに感じられる演奏です。金管パワーより、弦の活躍がわかる演奏というか、金管のあと、低弦でカシカシと下りてくるところなど、筋肉質で逞しくトルク感があります。チューバ、ティンパニーは炸裂していますが、内声部の細かな動きが綺麗に見えてくる珍しい演奏です。ただ、インデックスが細かく分かれていて、えーーっ10分程度で4つも区別するぅ。

リストの交響詩「マゼッパ」について、ウィキペディア(Wikipedia)で調べてみたら、
・・・ウクライナの英雄マゼーパを題材とした、ユーゴーの叙事詩「マゼッパ」に基づく標題音楽である。マゼッパは、実在の人物で、イヴァン・マゼーパさんという。・・・ウクライナ・コサックの棟梁になって以後、コサック国家の復興を目指して領土拡大に成功し、ウクライナの文化、とりわけ正教会の発展に大きく貢献した。独立したコサック国家を成立させる努力がために、ボフダン・フメリニツキーに次ぐ、ウクライナ第2の英雄と考えられている。 ・・・と書かれてあった。

1700年~21年、スウェーデン・バルト帝国とロシア、デンマーク、ノルウェー等との戦い(大北方戦争)が起こり、イギリスやポーランド、オスマン帝国まで参戦して、ヨーロッパ大陸の北東地域で戦争が起こった。結果は、スウェーデンの敗北で終わっており、ロシアが勝利して 、その後覇権が及ぶことになる。とありました。詳しいことは、歴史大好きサイト等に放浪していただき知識習得に努めていただけると~ サイワイです。

「マゼッパ」のピアノ版を聴いてみよう。リスト:超絶技巧練習曲集第4番 🥰

リスト:超絶技巧練習曲集第4番「マゼッパ」 アリス=紗良・オット2008年
Liszt: 12 Etudes d’exécution transcendante, S. 139 – No. 4, Mazeppa Alice Sara Ott

リストの交響詩「マゼッパ」は、1851年に作曲されています。ピアノ作品である「超絶技巧練習曲」第4番 (S.139-4)の方が有名かもしれません。ピアノ連弾、2台のピアノのための編曲もあります。この超絶は、全曲弾けるピアニストも、まれなほどの難曲です。交響詩のコーナーですが、参考に~。聞き惚れてください。さすが、オットさんのピアノは、若い瑞々しい演奏で迫力あります。聞き惚れてください。

07 リスト:交響詩「祭典の響き」 🤗

リスト:交響詩「祭典の響き」 ベルナルト・ハイティンク ロンドン・フィル 1968年
Liszt: Symphonic Poem “Festklänge” Bernard Haitink London Philharmonic Orchestra

リスト:交響詩「祭典の響き」 クルト・マズア ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 1977年
Liszt: Symphonic Poem “Festklänge” Kurt Masur Gewandhausorchester Leipzig

シラーの戯曲「芸術への忠誠」が上演された際に、その序曲として作曲し、初演されています。しかし、内実は、同棲生活をしていたヴィットゲンシュタイン伯爵夫人と近く結婚することを想定して、そのための祝典序曲として書かれたものだそうです。うふっ、なんと自分たちの結婚を祝うための曲だったんですね。結果的に、結婚はできなかったそうですが、曲としては、タイトルどおり、ティンパニーが勇壮に叩かれ、祝祭行進曲という感じのマーチ風の曲想です。晴れやかなファンファーレ風の金管も入っており、曲としては、華やかで明るく聴きやすいものです。

基本的には陽気なハ長調で、華やかな行進曲風の主題1で、繰り返された後、半音階的で甘いフレーズである主題2が登場します。続いてちょっぴりノスタルジックな主題3が出てきます。弦によって2と3が演奏されます。主題2は何度か流れますが雰囲気が変わっていますね。約20分の楽曲です。ハイティンクさんは19分54秒の演奏ですが、マズアさんの演奏は、4分04秒の短縮版です。

出典:YouTube Liszt: Festklänge, symphonic poem No. 7, S.101 ベルナルト・ハイティンク – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group 出典:YouTube Festklänge, S. 101 クルト・マズア – トピック Provided to YouTube by Warner Classics

08 リスト:交響詩「英雄の嘆き」

09 リスト:交響詩「ハンガリー」 🙄

リスト:交響詩「ハンガリー」 ベルナルト・ハイティンク ロンドン・フィル 1968年
Liszt: Symphonic Poem “Hungaria” Bernard Haitink London Philharmonic Orchestra

リストの交響詩「ハンガリー」は、リストが作曲した9番目の交響詩で、1854年に作曲されています。原題の”Hungaria”は、ハンガリーのラテン語名、最初は「ハンガリー風の大行進曲」というピアノ曲でしたが、交響詩にして初演は大成功だったそうです。ん? そうなの? 豪華で派手なオーケストレーションで、ある意味国家の権威を誇り、士気を鼓舞するかのような楽曲って感じでしょうか。結論から言うと、最初は我慢、我慢~です。8~9分は、すっ飛ばして聴きたい気分になります。

そう、交響詩「ハンガリー」の欠点(なんと偉そうな発言)は、最初が長いこと。同じような音型にちょっと変化をつけて進んで行くのですが、長い導入部は、ファゴット、ホルン、低弦でニ短調、金管のファンファーレで始まるところはロ長調です。低弦で奏でられ、振り子のように上下していくなかで、ようよう行進曲風になります。金管の和音は綺麗なのですが、どうも長いと感じてしまいます。

ホント、鬱々とした沈痛で、もそもそしています。「そふぁ~みふぁ そぉ~」(音は正確ではありません)という音型を巧く変化させながら、徐々にテンポを速め、同音連打って感じでスピードをあげて高揚感を出してきます。シンプルな構成ですが、1曲のなかに、展開部、再現部って感じで繰り返されます。行くなら、はやくチャッチャと進んで欲しいのですが、モゴモゴと木管の暗い、じめっと暗雲立ちこめるかフレーズが続くところがねえ。その暗さを突き破ってくるのが、行進曲風のフレーズです。

スタートして9分間ぐらい、モゾモゾしていて、ようやく金管ファンファーレになってきます。華麗なるファンファーレが、愛国心というか、華やかな祝祭ムードを盛りあげてきますが、ようやく晴れ晴れ~ 高揚感が出てくるところからは、さすがに、高らかに金管が咆吼し、テンポアップされ大円団になって、銅鑼がシャーンっと鳴って終わります。この見得を切る様相は、やっぱり、リストですね。この曲には、短縮形がオプションで二種類あるそうです。

リスト:交響詩「マゼッパ」  ジャナンドレア・ノセダ BBCフィル 2006年
Liszt: Symphonic Poem “Mazeppa” Gianandrea Noseda BBC Philharmonic Orchestra

10 リスト:交響詩「ハムレット」 🙂

リスト:交響詩「ハムレット」 ズービン・メータ ベルリン・フィル 1994年
Liszt: Symphonic Poem “Hamlet” Zubin Mehta Berliner Philharmoniker

シェークスピアの4四大悲劇といえば、ハムレット、オセロ、リア王、マクベスです。なので、リストの交響詩「ハムレット」は、とても重々しく、恨み節が満載という楽曲になるのは、まあ、当然といえば当然でしょうか。リストの交響詩のなかでも、抜きん出て暗くて重~い楽曲です。

メータさんの演奏は、力強い弦とティンパニーのリアルな打音で、劇的要素の高い演奏に仕上がっています。冒頭で、一音鳴ったあと、しばらく間をあけて木管が吹かれます。低弦の蠢き、チェロやヴィオラ、コントラバスが、とても不気味に奏でられています。で、トロンボーンが登場して、いきなり活気づくという展開です。中間部は、フルートとヴァイオリンの甘い語らいがあります。

クラリネット、フルートの二重奏などが、憩いの場。ヴァイオリンとフルートの語らいが、オフェーリアとの絡みを描いていますが、すぐに鬱々しており、切迫感を煽るかのように煽られていきます。メータ盤は、適度にスピードがあるため、間延びしないで聞けるように思います。この曲においては、録音状態が良く、低弦の分厚い音がリアルに響きます。ベルリン・フィルの力強い弦の響きが魅力です。

ベルナルト・ハイティンク ロンドン・フィル 1970年 
Liszt: Symphonic Poem “Hamlet” Bernard Haitink London Philharmonic Orchestra

リストの交響詩「ハムレット」は、シェイクスピアの戯曲「ハムレット」を題材にしています。ヴァイマールで戯曲が上演されたのを観て、序曲として作曲しようと思ったそうです。1858年に完成したものの、ハンス・フォン・ビューローは「演奏に適さない」と言われたそうで、今でも、演奏される機会は少ないようです。劇の筋をなぞるのではなく、ハムレットの性格描写に重点を置いており、堅固な意志で復讐の機会を伺う一方「蒼ざめて、熱っぽく、天と地の間を漂いながら、疑念と優柔不断に囚われた人物」という描写をしているそうです。

ホルンのゲシュトップフトのひずんだ響きで、陰鬱に始まります。弦楽器の二度上行を組み合わせた動機が、各パートに受け渡され、この動機は後にも活用されています。この二度上行を基本にした第1動機と、符点リズムが特徴的な第2動機が絡まり合いながら発展していくところは面白いですね。激しい展開のなか、オフェーリアを象徴するドルチェ、変ニ長調の楽節が、木管楽器によって唐突に二回現れます。力強いトゥッティが急速に静まると、主要動機が葬送行進曲の形で現れ、力なく終わります。

演奏時間は、わずか14分程度の楽曲なのですが、ストーリーを知っているので、心理的な葛藤シーンとしては解りますし、展開も巧いと思います。極めて暗く鬱々とした主題と、激する気分の主題、そして結末。演奏としては、これ以上、劇的にできないでしょうし~ 悩ましいでしょうか。同じ素材なら、チャイコフスキーの幻想序曲「ハムレット」の方が、少し甘めのフレーズがあり優美です。リストは、ややシュールで躁鬱傾向を感じましたが、どうでしょう。

11 リスト:交響詩「フン族の戦い」

12 リスト:交響詩「理想」

13 リスト:交響詩「ゆりかごから墓場まで」 😇

ベルナルト・ハイティンク ロンドン・フィル 1970年 Liszt: Symphonic Poem “Von der Wiege bis zum Grabe”
Bernard Haitink London Philharmonic Orchestra

リストの交響詩「ゆりかごから墓場まで」は、まるで社会福祉のお題目みたい。改めてWikipediaで調べてみると、「from the cradle to the grave」第二次世界大戦後のイギリスにおける社会福祉政策のスローガンなんだって。

リストの交響詩は、ドイツ語で「Von der Wiege bis zum Grabe」です。で、ハンガリーの画家ジッチ・ミハーイ(Mihaly Zichy / 1827-1906)の同名の絵画を題材にした標題音楽なのです。まぎらわしいわ。「ゆりかご」→「生の闘争」→「墓場へ」という三部構成になっていて、聴いてみると曲調が大きく変化しているのがわかります。

アールパード・ヨー ブダペスト交響楽団 1986年 Liszt: Symphonic Poem “Von der Wiege bis zum Grabe”
Árpád Joó Budapest Symphony Orchestra

左図が、リストがインスピレーションを受けた「ゆりかごから墓場まで」という作品です。エッチングかな?
Mihály Zichy Von der Wiege bis zum Grabe – Du berceau jusqu’au cercueil (1881) ハンガリーの画家 ジッチ・ミハーイ



この絵画作品から、リストは最後になる交響詩を作曲しています。曲は、「ゆりかご」「生存のための闘争」「墓へ:来世のゆりかご」という三部に分かれているのです。

うーん。天才の思考についていけないのですが、絵画としては、上下三層になっているのはわかりますよね。
一番下が生まれた時、中央部が青年、壮年時代、一番上が天上の世界が描かれているのだと思います。


リストの交響詩「ゆりかごから墓場まで」は、前作の第12番目の交響詩「理想」から、20年ほど経った1881年に作曲されています。いつもの派手で勇壮な楽曲ではなく、うっそーっと思うほど作風が変わっています。室内楽的な雰囲気で、とても優しいフレーズが詰まっているのです。あの大編成の交響詩から、変容を遂げて、ヴァイオリン、ヴィオラ、フルート、ハープが使われ、穏やかで美しい旋律で満ちています。

中間部分の「生存のための闘争」は、力強い弦のフレーズから始まります。美しい旋律美がありますが、やっぱり、勇壮に金管が奏でられています。ラスト部分は、やっぱ暗くなってしまいますが~ 低弦の響きが漂います。チェロのソロで終わってしまうところが悲しいところですが、リストの人生と重なってみえてくる面があり、この作品を、変なタイトルだな~と終わらせず、もう少し聴いて見たい、もう少し深く感じたいと個人的に感じました。楽曲としても、次の時代の萌芽を感じるところもありますね。

リストの交響詩13曲を聴いてみて~【まとめ】

リストの交響詩13曲を聴いてみた結果、それぞれの項目で記載しているのですが、簡単にまとめ~をしておきます。
やっぱい聴き応えのあるのは、レプレリュード、そして超絶技巧練習曲集第4番で有名なマゼッパ。
この二つは、確かに聞き応えもあり、記憶に残りやすいと思います。続いて良かったのは、ワタシ的にはオルフェウスです。抒情的なフレーズなので意外性でアリだと思います。ラストの「ゆりかごから墓場」が作曲スタイルが変わっているので興味をひきました。

いずれの作品も、金管の使い方が似ており、どの曲がどうだったか、うーん、すぐに忘れそうです。また、いっときに聴くには疲れます。もう少し時間をとって、ポツポツと聞くべきでした。反省です。

概念や思想を音化するのは難しいですね。交響曲とは違うジャンルを確立して、題材(元ネタ)を元に、ストーリーだてて音化するというのは、斬新な発想だと思います。バレエ音楽、戯曲のBGM、映画音楽などに繋がっていく、素晴らしい偉業だと思います。ただし・・・ やっぱストーリーを先に理解していないと、うわっつら~になりそう。

例えば、国宝の仏像に会いに行くとき、手を合わせることそれ自体素晴らしいことですが、もし、薬師如来さまなら、手に何を持っておられるのかぐらいの知識は持っていたいもの。やっぱり予備知識は必要だと、今回学びました。
聴いて良かった曲については、また、じっくり聴いてみたいと思います。ではまた~。

リストの交響詩全13曲 作曲年とタイトル

リストは、標題音楽として、「交響詩」というジャンルを確立しました。全部で13曲の交響詩を作曲していますが、交響詩「レ・プレリュード」以外は、あまり演奏される機会は多くありません。
Wikipediaからの引用して、全タイトルと作曲年を掲載しておきます。

『人、山の上で聞きしこと』(Ce qu’on entend sur la montagne) S.95/R.412, 1848-56年 [約30分]
『山岳交響曲』(Berg-Symphonie) とも。
『タッソー、悲劇と勝利』(Tasso, lamento e trionfo) S.96/R.413, 1848-54年 [約21分]
『前奏曲』(Les préludes) S.97/R.414, 1848-53年 [約15分]
『オルフェウス』(Orpheus) S.98/R.415, 1853-54年 [約11分]
『プロメテウス』(Prometheus) S.99/R.416, 1850-55年 [約13分]
『マゼッパ』(Mazeppa) S.100/R.417, 1851-54年 [約16分]
『祭典の響き』(Festklänge) S.101/R.418, 1853年 [約20分]
『英雄の嘆き』(Héroïde funèbre) S.102/R.419, 1849-54年 [約27分]
『ハンガリー』(Hungaria) S.103/R.420, 1854年 [約23分]
『ハムレット』(Hamlet) S.104/R.421, 1858年 [約14分]
『フン族の戦い』(Hunnenschlacht) S.105/R.422, 1856–57年 [約15分]
『理想』(Die Ideale) S.106/R.423, 1857年 [約27分]
『ゆりかごから墓場まで』(Von der Wiege bis zum Grabe) S.107/R.424, 1881-82年 [約14分]

★ じっくり聴けていないので、コメントは未掲載です。スミマセン。
07 リスト:交響詩「祭典の響き」
08 リスト:交響詩「英雄の嘆き」
11 リスト:交響詩「フン族の戦い」
12 リスト:交響詩「理想」

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