オネゲル:交響的断章(運動)「パシフィック231」ほか【聴いてみよう】Honegger: Mouvement Symphonique “Pacific 231”, “Rugby”, H83

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オネゲル:交響的断章(運動)「パシフィック231」【YouTube】

オネゲル:交響的断章「パシフィック231」 ミッコ・フランク フランス放送フィル 2019年10月4日のコンサートの模様です。7分08秒の動画です。出典:YouTube MikkoFranck L’Orchestre philharmonique de Radio France

オネゲル:交響的断章(運動)「パシフィック231」【名盤・おすすめ】

デイヴィッド・ジンマン チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団 🙂

オネゲル:交響的断章(運動)「パシフィック231」 デイヴィッド・ジンマン チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団 1996年
Honegger: Mouvement symphonique “Pacific 231″ David Zinman Tonhalle-Orchester Zürich

オネゲルは、晦渋でとっつきづらい作曲家です。交響曲の典礼風など数曲を聴いて以降、ちょっと~困った状態が続いていたのですが、この「パシフィック231」は、蒸気機関車の走る姿が 描かれているので、文句なくイメージしやすい楽曲です。力強さと煌めきがあり、運動感覚を満してくれる作品なのです。

それにしても~ 物質の運動を音にするなんて、びっくりですよね。人の感情、たとえば、愛の表現だったり、苦悩している姿だったり、祈りを、これまで作曲してきたと思うのですが、ここにきて、現代音楽の先駆けなのでしょうか、運動ねえ~ 動くという状態を音にして表現するとは、奇想天外な発想だったのでわ? 初めの部分の、蒸気機関車が発車する前、車輪がまわり始めるところ、加速していくところなどは、どの演奏もとても面白いです。自分で車を運転しているように興奮します。

ジンマンさんの演奏は、底力があります。特に、チューバの音量が大きく、力強い運動を描いています。金管が総じて前面に出てきており、迫力がありますね。音響の良さもあって、トロンボーン、トランペットの金管の響きがリアルです。大型スピーカーで聴くと、床が揺れるかと思うほど。あっはは~(安普請&経年劣化の我が家なのです)反面、木管の響きは埋もれがちでしょうか。この点はちょっと悩ましいです。

音響状態が良く、奥行きのあるホール感は、聴いてて楽しいです。弦の軋みもあり、車体と風が見えるかのような力強い疾走感があります。いささか金管重視ですが、力強い動きを伝えるための手段として、納得感があります。ジャーンっ! 重量感を感じる演奏でした。もっと繊細な描写ができそうですが、全体的にバランスが難しそうな楽曲です。

CDカップリング:交響曲第2番、交響的断章第第2番ラグビー、交響的断章第3番、モノパルティータ、夏の牧歌、交響的断章第1番パシフィック231 1996年録音 出典:YouTube Honegger: Pacific 231 チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

マリス・ヤンソンス オスロ・フィル 😘

オネゲル:交響的断章(運動)「パシフィック231」 マリス・ヤンソンス オスロ・フィル 1993年
Honegger: Mouvement symphonique “Pacific 231″ Mariss Jansons Oslo- Filharmonien (Oslo Philharmonic Orchestra)

オネゲルのパシフィック231は、蒸気機関車が走り出して、次の駅に到着するまでを描写したものですが、どっしり重厚な音で構成された演奏えはなく、見通し良く、未来へ向かって走り出すかのような軽やかで、意欲的な推進力があります。いろんな楽器が聞えて、リズムがあわさって回転していきます。

ヤンソンスさんの演奏は、N・ヤルヴィさんの黒光りした重みのある蒸気機関車の動きではなく、金管の煌めきとパーカッションの煌めきにより、アルミニウム合金製の鉄道車両。超伝導リニア新幹線みたいですね。スマートで機能的。密度高く詰まって聞こえますが、旋律が、複数の線として表れてくると、車体の先頭部分で、風が流線型を描いて舞うように分かれていきます。ハイ、とても格好の良い演奏でした。

CDカップリング:2枚組BOX 1枚目が1993年の録音でオネゲル、2枚目が1997年の録音でクルト・ヴァイルの作品が収められています。オネゲル 交響曲第2番、交響曲第3番「典礼風」、パシフック231 ヤンソンス オスロ・フィル 1993年、クルト・ヴァイル 交響曲第2番、ヴァイオリン協奏曲、クルト・ヴァイル 「マハゴニー家の興亡」組曲 ヤンソンス ベルリン・フィル 1997年 ヴァイオリン:フランク・ペーター・ツィンマーマン) 出典:YouTube Pacific 231 “Mouvement symphonique No. 1″ マリス・ヤンソンス トピック Provided to YouTube by Warner Classics

ジャン・フルネ オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団 🥰

オネゲル:交響的断章(運動)「パシフィック231」 ジャン・フルネ オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団 1993年
Honegger: Mouvement symphonique “Pacific 231″ Jean Fournet Radio Filharmonisch Orkest(Netherlands Radio Philharmonic Orchestra)

フルネさんの演奏は、走り出す前の出発進行っ!って感じの描写から、繊細に描かれています。蒸気機関車の動き出しの描写が巧いです。機関車の車軸が動きかける、うぐっ うぐぐぅ~と回転していくところの雰囲気が伝わってきます。録音は、少しくぐもっている感じですが、木管の温かみある音色が、もわっとした雰囲気、蒸気や煙を吐き出している感じがします。最初の他盤のように強烈な個性を発したり、猛烈なパワーはありませんが、いったん走り出すと、軽快で、結構なスピードで走って行きます。

温かみのある音が幸いしているのか、蒸気機関車が生き物的に聞こえます。木管の動きが素早いので、風を切って走っているような感覚が生まれます。最後のパワーアップしていくところは、とても力強く盛り上がっていきます。黒い鉄の塊が、機械的に動いているだけでなく、客観的に擬人化され、運動として聴くことができるようです。ティンパニは使われていないのですが、銅鑼や大太鼓が登場し、熱っぽさをもって走っています。オケのリズム、旋律がバランス良く調整され、6分23秒という演奏のなかに、生き物(蒸気機関車)の動きを存分に楽しむことができました。

CDカップリング:オネゲル 交響的楽章第2番「ラグビー」、第1番「パシフィック231」、コンチェルト・ダ・カメラ、夏の牧歌、交響曲第3番「典礼風」 出典:YouTube Honegger Pacific 231: Mouvement Symphoique
ジャン・フルネ トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ネーメ・ヤルヴィ デンマーク国立交響楽団 😂

オネゲル:交響的断章(運動)「パシフィック231」 ネーメ・ヤルヴィ デンマーク国立交響楽団 1992年
Honegger: Mouvement symphonique “Pacific 231″ Neeme Järvi · Danish National Symphony Orchestra

ネーメ・ヤルヴィさんの演奏は、ぶほぉ~ん ぶほぉ~ これじゃー まるで船やん! 重量がありすぎて、メチャ大きくて重すぎる気がします。いや、これぐらいの重めの演奏でないと、黒々とした鋼鉄の蒸気機関車の迫力にならないと言われるかもしれません。うーん。そうかも。

チューバの太い音を始め金管は大活躍しています。奥行き感はあるものの、少し残響多めの録音状態です。なので、機関車本体の輪郭が弱まった感じがしますが、雰囲気が出て良いのかもしれません。蒸気と煙が出てくるんだから、雰囲気づくりに適しているのかもしれず。(ポジティブ思考で考えよう)聴いてて、なかなかに楽しめちゃうのですが、繰り返して聴いても、やっぱり冒頭は、船にしか聞えてきません。

ぶわわ~ ぶわわっ ぼっぼぼぉ~ 擬音が正確かどうかはともかく、エログロ的な、ぬめっとした生物体のようでリアルです。小さな精密機械とは違うので、ヤルヴィさんの演奏は、これで良いのかもしれません。運動も確かなのでしょう。(蒸気機関車に乗った体験は、旅行でわざわざ乗ってみた唯一の体験のみです)CDカップリング:オネゲル 交響曲第3番、5番、パシフィック231 1992年 出典:YouTube Pacific 231 ネーメ・ヤルヴィ – トピック Provided to YouTube by PIAS

ミシェル・プラッソン トゥールーズ市立管弦楽団 🥰

オネゲル:交響的断章(運動)「パシフィック231」 ミシェル・プラッソン トゥールーズ市立管弦楽団 1991年
Honegger: Mouvement symphonique “Pacific 231″ Michel Plasson Orchestre national du Capitole de Toulouse

プラッソンさんの演奏は、低音の響きも良く、確実に動きかけたというリズムが感じられます。金管と低弦のコラボが、きっちりしているので、正確な動きとして見えてきます。まるで、歯車が合わさって、動きかけている感じが、リアルに伝わってくるのです。また、アクセントがついているので、前に向かって回転しているのがわかります。良いですね~ この動きは機敏で、運動機能がバッチリ。加速してトップにのぼってくる運動機能もあり、キチンと安定走行になっている感もあり、これ良い演奏ですよ。

バズーンらしき楽器が、息づかい荒く吹かれ、途中シンバルが鳴っていますし、オーボエが、蛇遣いのように、ふにゃふにゃ~と鳴っているし、フルートも吹かれているし、弦も忙しそう。金管が、段々と高揚していくなか、細かい中声部が、細かい動きをしているし・・・ 大きな音の波動だけでなく、内の音が、重なってホント蠢いているって感じで動きます。 確かに、蒸気機関車のような図体のデカイ機械を動かそうと思えば、車輪を回すために、いろんなパーツが、それぞれの役目を担って動いているわけですものね~。

軽やかな金管のフレーズで、流線状の風の雰囲気も感じますし、線状態となって走っている姿が、とても格好の良いものに感じられます。生命体というより、精密機械的な演奏です。高速鉄道なみに感じられる面も。もしかして、N・ヤルヴィさんは、本物の蒸気機関車に乗った体験はあるけど、若い指揮者は、蒸気機関車を知らないですよね。

CDカップリング:オネゲル シェイクスピアの劇「テンペスト」のための前奏曲、交響詩 夏の牧歌、交響的黙劇「勝利のオラース」、交響的断章 パシフィック231、ラグビー、メルモッツ 組曲第1番「アンデス越え」、組曲第2番「大西洋横断飛行」1991年 出典:YouTube Honegger: Pacific 231 – 1. Mouvement symphonique トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

セミヨン・ビシュコフ パリ管弦楽団 😑

オネゲル:交響的断章(運動)「パシフィック231」 セミヨン・ビシュコフ パリ管弦楽団 1991年
Honegger: Mouvement symphonique “Pacific 231″ Semyon Bychkov Orchestre de Paris

ビシュコフさんの演奏は、少し荒々しい機械的な演奏です。各楽器が互いに主張しているようで、多少荒く感じるのです。ギチギチに縦のラインを合わせている雰囲気でもなく、各楽器の主体性にまかせたのでしょうか。ざっくりした感覚ですね。細かな金管のパッセージなどは、さほど精緻な感じがしないため、もったいないかも。

CDカップリング:「Paris 1920」というCD プーランク バレエ音楽「牝鹿」、ミヨー バレエ音楽「屋根の上の牛」、オネゲル 交響的楽章第1番「パシフィック231」1991年 出典:YouTube Honegger: Pacific 231, H. 53
パリ管弦楽団 トピック Quatuor à cordes de l’orchestre de Paris – Topic Provided to YouTube by Universal Music Group

シャルル・デュトワ バイエルン放送交響楽団 🥰

オネゲル:交響的断章(運動)「パシフィック231」 シャルル・デュトワ バイエルン放送交響楽団 1982年
Honegger: Mouvement symphonique “Pacific 231″ Charles Dutoit Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks

デュトワさんの演奏は、蒸気機関車の動きは、重々しい鉄の塊というより、ちょっと明るめで軽やかな動きです。大井川鉄道で、一度、蒸気機関車に乗ったことがあるのですが、その時の印象は、真っ黒な鉄の塊が、モクモクと黒い煙を吐いて動き、 格好良いなと思う反面、不気味ですらありました。

で、この楽曲は、わずか7分程度の作品ですが、蒸気機関車が動き出すところから、加速し、トップスピードで快速に走り、そして次の駅に止まるまでが描かれています。最初の出だしは、金属が軋む音 「れみっ そらっ れみっ」って感じで、金管とヴァイオリンの高音で鳴り始め、その後、チューバの「ぼわ~っ」とした音が鳴って、ああ、これが蒸気が吹き上がる音か~と思う描写があります。

コントラバスの「どっ ふぁっ れっ しっ」と、蠢く音が鳴り始め、段々と加速。「んっ ぱっぱっ んっ ぱっぱっ」と、金管や低音の木管が、「しっし ふぁっふぁ しっし ふぁふぁ」と、弦が弾き始めます。
不協和音の塊のような曲ですが、大雑把なリズムと、蠢く細かな刻みが入っています。

ホルンが吹かれて、あっ、蒸気が噴き上がった~とか、トランペットが車軸が動いている様を描いているようだ~とか、リアルなイメージとして感じられます。加速して、安定した速度になると、弦が規則正しく上下して、ピストン運動のようになっています。場面展開が速いんです。だって駅と駅の間が7分程度なんだもん。(=この楽曲の演奏時間です)すぐに加速して、トップにギアが入って、安定走行して減速ってことになります。このスピード感に馴れないと、ついていけないっ!

オケが、イコール蒸気機関車になりきっているワケではないでしょうが、他のオネゲルの楽曲に比べたら、イメージしやすいですね。子供から大人、初心者であっても、この楽曲を聴いてイメージするのは何?って訊ねたら、答えは、蒸気機関車!と、正解になると思います。ふむ、納得させるだけの高い描写です。「それふぁ~ それふぁ~ ふぁ~ れふぁ~ ど~ しふぁ~」トロンボーンとホルンだと思うが、段々と、機関車が止まるらしく、動きが緩くなっていくのも、しっかり描かれています。

スケッチとして大変細かい。大太鼓が叩かれた後の、ブレーキ具合もリアルです。この楽曲の楽譜は、どーなっているんだろう。 規則正しく、オタマジャクシが、上に行ったり、下に下がったりして、並んでいるのでしょうか。耳がよければ、もっともっと、細かい動きがリアルに感じられるのだろうと思います。金管の大きなフレーズのなかに、木管が細かく吹かれたり、弦が上がり下りしていたり。単純な音の並びでは、蠢く様は描けないと思います。デュトワさんの演奏も、ざっくり~ 鉄の塊の運動体というだけでなく、とても細かな動きも感じられ、興味がつきないものとなっています。それだけ、簡潔で調和した演奏だとも感じられます。わかりやすい形になって伝わってきてきますね。聞き比べが楽しい楽曲です。

CDカップリング:2枚組BOX オネゲル 交響曲第1番~5番、交響的断章第1番「パシフィック231」、第2番「ラグビー」出典:YouTube 3 Symphonic Movements : I Pacific 231 シャルル・デュトワ トピック Provided to YouTube by Warner Classics International

ルイ・フレモー バーミンガム市交響楽団 😉

オネゲル:交響的断章(運動)「パシフィック231」 ルイ・フレモー バーミンガム市交響楽団 1974年
Honegger: Mouvement symphonique “Pacific 231″ Louis Fremaux City of Birmingham Symphony Orchestra

フレモーさんは、ラトルさんの前の指揮者だったです。で、細かい~ 70年代中頃の録音なのですが、滅茶苦茶細かい動きが収録されてて驚きます。なに、これっ! 蒸気機関車が発車する前の音からして、唸るような細かな描写がされています。で、一歩一歩進む、車軸が回ってくるところの動きが、細かい描写となって音になって出てきています。ひゃーっ。トップスピードになっているところも、リズムが半端なく刻まれています。

恐るべしバーミンガム市響です。金管の運動機能も良いですね。ラトルさんが、基礎基盤を創ったことに異論を挟む気はありませんが、オケとして、しっかり、できとるやんっ!と見直しちゃいました。スミマセン。それまでは、無名の田舎のオケだと思ってました。ごめんなさい。

CDカップリング:ラヴェル ボレロ、ドビュッシー 牧神の午後への前奏曲、デュカス 魔法使いの弟子、サン=サーンス 死の舞踏、シャブリエ 狂詩曲スペイン、サティ3つのジムノペディ オネゲル パシフィック231 リトルフ 交響的協奏曲第4番第2楽章、オッフェンバック パリの生活序曲 出典:YouTube Pacific 231, H. 53 ルイ・フレモー – トピック Provided to YouTube by Warner Classics

セルジュ・ボド チェコ・フィル 😁

オネゲル:交響的断章(運動)「パシフィック231」 セルジュ・ボド チェコ・フィル 1960年、63年
Honegger: Mouvement symphonique “Pacific 231″ Serge Baudo Česká filharmonie (Czech Philharmonic)

ボドさんと言えば、オネゲルの交響曲なのですが、ここではパシフィック231を~ 古い録音なので、他盤に迫力もスキルも及びませんが、ポポポ・・・と進む小型の観光電車のような感じです。小型の蒸気機関車かな。きっと打楽器類が、ポコポコしているせいで、そう感じるのでしょう。低弦の響きに迫力がなく、また、チューバはいたっけという案配なのです。この打楽器は、何を使っているのでしょう。ほんと、打楽器はへぼいのですが、朗々と吹かれている金管は格好良かったです。ところで、このCDジャケットの絵なのですが、うん? 蒸気機関車ではなく、未来の高速鉄道ですよね。(変なところに、突っ込まないで~)

CDカップリング:オネゲル交響曲全集、交響的断章1番「パシフィック231」、「夏の牧歌」、「喜びの歌」1960年、63年 出典:YouTube Pacific 231. Symphonic Movement (Pacific 231. Mouvement symphonique no 1) Serge Baudo, Czech Philharmonic – トピック Provided to YouTube by Supraphon

オネゲル:交響的断章(運動)「パシフィック231」【解説】

オネゲルの「パシフィック231」(Pacific 231)は、1923年に作曲されています。タイトルの「パシフィック231」とは、蒸気機関車の車軸配置をあらわしています。フランス式で 「231」と表現される車軸配置は、アメリカ式では「パシフィック”Pacific”」という呼称で、先軸、動輪、後軸の軸数が順に2-3-1のものだそうです。

オネゲルのスコアには、「300tもの重量を持つ蒸気機関車がゆっくりと動き出し、加速してフルスピードになり、また停車する様子を表している」と解説されています。でも、オネゲル自身は描写音楽的な解釈を否定しており、当初は単に「交響的断章(仏語:Mouvement Symphonique)」として作曲したのだそう。でも脱稿後に、「ロマンチックな考えが頭に浮かんだので」、「パシフィック231」のタイトルを与えたんだって。その方がわかりやすいですよね。

で、オネゲルの機関車好きは、つとに知られたところで、「私は常に蒸気機関車を熱愛してきた。私にとって機関車は生き物なのであり、他人が女や馬を愛するように、私は機関車を愛するのだ」と言っていたそうです。蒸気機関車が出発します~ 約7分で次の駅に。乗った気分を楽しんでください。

ちなみに、オネゲルの「交響的断章(運動)」は、全部で三曲あります。

第1番 1923年作曲「パシフィック231」 Symphonic Movement No. 1 H 53 Pacific 231  
第2番 1928年作曲「ラグビー」 Symphonic Movement No. 2  H 67 Rugby
第3番 1933年作曲 サブタイトルなし。 Symphonic Movement No. 3 H 83

いちばん面白いのは、第1番のパシフィック231ですが、第2番のラグビーと第3番を【サクッと】聴いてみます。

オネゲル:交響的断章(運動)「ラグビー」

マリオ・ヴェンツァーゴ ベルン交響楽団 🤩

オネゲル:交響的断章「ラグビー」 マリオ・ヴェンツァーゴ ベルン交響楽団 2015年 Musiques Suisses
Honegger: Mouvement symphonique “Rugby” Mario Venzago Berner Symphonieorchester

マリオ・ヴェンツァーゴさんの演奏は、カラフルでとても楽しいです。録音状態も抜群に良いです。もっと弾んでもよいかもしれませんが、金管の綺麗さにうっとり~ ボールの受け渡しについて、もっと焦点をあてて聴くべきでした。
CDカップリング:オネゲル 交響的断章 第2番「ラグビー」、交響曲第3番「典礼風」、交響曲第5番「3つのレ」2015年録音 出典:YouTube Rugby: Rugby, “Mouvement Symphonique No. 2″ Berner Symphonieorchester – トピック Provided to YouTube by NAXOS of America

ミシェル・プラッソン トゥールーズ市立管弦楽団 😘

オネゲル:交響的断章「ラグビー」 ミシェル・プラッソン トゥールーズ市立管弦楽団 1991年
Honegger: Mouvement symphonique “Rugby” Michel Plasson Orchestre national du Capitole de Toulouse

交響的断章第1番の パシフィック231(Pacific 231)は、旋律ではなくリズミカルな要素の強い曲です。で、この第2番のラグビーは、少し明るい快活な曲ですが、反復する音という点では、同じ傾向にあるように思います。オネゲルは、フットボールか、ラグビーにするか迷ったそうですが、「ラグビーでは、私はまったく逆の考えに駆られていました。機械のほぼ体系的な進歩に対して、私は人間の動きの多様性、つまり突然の急上昇、停止、飛行、曲がりを対比させたかったのです。」と言っていたそうです。二つの主題があり、ボールをパスするように、主題を楽器間に受け渡ししているものです。あはは~ なるほど、ナイス、アイディア! しかし、ラグビーボールが、このスピード(テンポ)で飛んできたら、ん? 怖いかも。出典:YouTube Honegger: Rugby (Mouvement symphonique No. 2) ミシェル・プラッソン – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

オネゲル:交響的断章(運動)第3番

デイヴィッド・ジンマン チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団 😘

オネゲル:交響的断章第3番 デイヴィッド・ジンマン チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団 1996年
Honegger: Mouvement symphonique No. 3 H 83 David Zinman Tonhalle-Orchester Zürich

第3番になると、あまりイメージが湧きませんね。サブタイトルもないため、うーん、単なる運動組織なんだろうかと思ったりします。現代音楽に近づいてきたな~という感じです。サックスが使われているのか、もわんとした空気感が出てくるのですが、底に貼り付きそうな、そうでもない不思議感覚となります。

CDカップリング:交響曲第2番、交響的断章第第2番ラグビー、交響的断章第3番、モノパルティータ、夏の牧歌、交響的断章第1番パシフィック231 1996年録音 出典:YouTube Honegger: Pacific 231 チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ヘルマン・シェルヘン ロイヤル・フィル 🙂

オネゲル:交響的断章第3番 ヘルマン・シェルヘン ロイヤル・フィル 1954年
Honegger: Mouvement symphonique No. 3 H 83  Hermann Scherchen Royal Philharmonic Orchestra

シェルヘンさんの演奏は、かなり古い録音ですが、1番から3番まで収録されていてます。軋んだ音が凄いので悲痛な感じを与えますが、意思力を感じさせるもの。沈んだ木管フレーズが悲しいです。参考に~ CDカップリング:オネゲル 交響的断章(運動)第1番~第3番、テンペスト、交響詩夏の牧歌、喜びの歌、ストラヴィンスキー ペトルーシュカ 1954年録音 出典:YouTube Honegger: Mouvement symphonique No. 3 Royal Philharmonic Orchestra Provided to YouTube by Universal Music Group 

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー ベルリン・フィル 🙂

オネゲル:交響的断章第3番 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー ベルリン・フィル
Honegger: Mouvement symphonique No. 3 H 83  Wilhelm Furtwangler Berlin Philharmonic Orchestra

オネゲルの交響的断章(運動)は、1933 年に作曲されています。初演は、同年3月に、フルトヴェングラーによって初演されたとのことなので~ YouTubeで見つけたので掲載します。意外なところでフルヴェンさんにお会いしました。録音年とかは調べていません。出典:YouTube Mouvement Symphonique No. 3 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by The Orchard Enterprises

オネゲル:交響的断章「パシフィック231」ほか【ディスク情報】

1954年 ヘルマン・シェルヘン ロイヤル・フィル MCA 1番~3番
1960年 ボド チェコ・フィル Sup 1番
1974年 ルイ・フレモー バーミンガム市交響楽団 EMI 1番
1982年 デュトワ バイエルン放送交響楽団 E 1番、2番
1991年 ビシュコフ パリ管弦楽団 Ph 1番
1991年 プラッソン トゥールーズ市立管弦楽団 G 1番、2番
1992年 N・ヤルヴィ デンマーク国立交響楽団 CHANDOS 1番
1993年 フルネ オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団 De 1番、2番
1993年 ヤンソンス オスロ・フィル EMI 1番パシフィック231
1996年 ジンマン チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団 Dec 1番~3番
2015年 マリオ・ヴェンツァーゴ ベルン交響楽団 Musiques Suisses 第2番ラグビー

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