チャイコフスキー:交響曲第1番~第6番、マンフレッド交響曲【サクッと】聴いてみよう。Tchaikovsky: Symphonies No.1 to No.6 & Manfred

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チャイコフスキー:交響曲第4番~第6番、マンフレッド交響曲【YouTube】

チャイコフスキー:交響曲第4番 セミヨン・ビシュコフ WDR交響楽団

チャイコフスキー:交響曲第4番 セミヨン・ビシュコフ WDR交響楽団 2008年9月19日のコンサートの模様です。43分49秒の動画です。巨匠に近づいてきた~って感じがします。Tchaikovsky: Symphony No.4 In F Minor, Op.36, TH.27 Semyon Bychkov  WDR Sinfonieorchester Köln 出典:YouTube チャイコフスキー:交響曲第4番|セミョン・ビチコフ(ビシュコフ)|WDR交響楽団 WDR Klassik

チャイコフスキー:交響曲第5番 セミヨン・ビシュコフ コンセルトヘボウ管弦楽団

チャイコフスキー:交響曲第5番 セミヨン・ビシュコフ ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 2020年6月19日コンサートの模様です。52分53秒の動画です。あれっ、階段上から降りてこず、下から指揮台にのぼっていかれましたね。ビシュコフさんに限らず、他にもコンサートの動画は、たくさんありますのでご視聴ください。
Tchaikovsky: Symphony No. 5 in E Minor, Op. 64, TH 29 Semyon Bychkov  Royal Concertgebouw Orchestra 出典:YouTube Tchaikovsky – Symphony No. 5 – Semyon Bychkov | Concertgebouworkest Concertgebouworkest

チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」サントゥ=マティアス・ロウヴァリ フィルハーモニア管弦楽団

チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」サントゥ=マティアス・ロウヴァリ フィルハーモニア管弦楽団 47分48秒の動画です。コンサートの日時は記載されていませんでした。

4番から6番までビシュコフさんで、三連発でも良かったのですが、若手指揮者のロウヴァリさんの動画を。ロウヴァリさんは、1985年生まれのフィンランド出身の指揮者です。2017年からエーテボリ響、2020年からフィルハーモニア管の首席指揮者です。で、この6番悲愴は、静かにフェードアウトするので、拍手するタイミングは、指揮者がすっーと手を下におろしてから。このコンサートでは、客席に向かっておじきをしたときに、ちゃんと拍手されていますね。間違っても先走ってブラボーって言わないでね。ま、この楽曲に限らずだと思いますが。
Tchaikovsky: Symphony No.6 in B Minor, Op. 74, TH 30 “Pathétique” Santtu-Matias Rouvali Philharmonia Orchestra 出典:YouTube Tchaikovsky: Symphony No. 6, ‘Pathétique’ Philharmonia Orchestra

チャイコフスキー:マンフレッド交響曲 ヴァシリー・ペトレンコ hr交響楽団

チャイコフスキー:マンフレッド交響曲 ヴァシリー・ペトレンコ hr交響楽団(フランクフルト放送響)
2016年3月18日のコンサートの模様です。1時間2分57秒の動画です。長尺もので不人気なマンフレッドですが、YouTubeに動画があって~ 喜んでいます。おっほーっ やっぱドイツのオケは、ちゃんとアップしてくださってますね。消さないでね~と祈ります。大編成の楽曲で、第4楽章ラストでパイプオルガンも登場します。
Tchaikovsky: Manfred Symphony, Op.58, TH.28 Vasily Petrenko hr-Sinfonieorchester – Frankfurt Radio Symphony
出典:YouTube Tschaikowsky: Manfred-Sinfonie ∙ hr-Sinfonieorchester ∙ Vasily Petrenko hr-Sinfonieorchester – Frankfurt Radio Symphony

チャイコフスキー:交響曲(全6曲+マンフレッド)【名盤・おすすめ】

チャイコフスキー:交響曲第1番「冬の日の幻想」 エフゲニー・スヴェトラーノフ ロシア国立交響楽団

チャイコフスキー:交響曲第1番「冬の日の幻想」エフゲニー・スヴェトラーノフ ロシア国立交響楽団 1990年 Tchaikovsky: Symphony No.1 In G Minor, Op.13, TH.24 “Winter Reveries” Evgeny Svetlanov The State Academic Symphonic Orchestra of Russia

スヴェトラーノフさんの演奏は、野蛮でイケイケドンドンだろうと、勝手にイメージしていたのですが、まろやかで穏やかな演奏です。豊かな低弦の響きに、甘く切ない旋律が、ゆったり流れてくることからコクのある演奏だと思います。かつては、ロシアのオケの金管咆吼は、恐ろしいほどギンギンだったのですが、これほど変わるのかと驚くほど、まろやかでした。

第1楽章には、「冬の旅についての夢想」というサブタイトルがついています。夢想というより思い出のようで、老境にさしかかった人物が、若い頃の自分を振り返っているようです。いたって堂々と語られており、冬の厳しさとか吹きさらしの雪の嵐など、そんな光景はイメージされません。むしろ暖かさを感じる演奏です。

しかしながら、畳みかけてくる金管パワーが全開のときは、もちろん迫力がありますし、終始ダレることなく進みます。この演奏は、東京におけるライブで交響曲全集(キャニオン)ですが、1993年モスクワでのセッション交響曲全集(EXTON)もあります。いずれもお薦めです。出典:YouTube チャイコフスキー:交響曲第1番 ト短調 作品13「冬の日の幻想 エフゲニ・スヴェトラーノフ – トピック Provided to YouTube by CANYON CLASSICS

チャイコフスキー:交響曲第2番「小ロシア」 クラウディオ・アバド シカゴ交響楽団

チャイコフスキー:交響曲第2番「小ロシア」クラウディオ・アバド シカゴ交響楽団 1984年
Tchaikovsky: Symphony No. 2 in C Minor, Op. 17 “Little Russian” Claudio Abbado Chicago Symphony Orchestra

アバドさんの演奏は、金管が気持ち良いほどに鳴って、パワー炸裂状態のセッションを聴かせてくれます。煌びやかさと、歌って歌う~という愉悦性の高い綺麗な演奏です。チャイコフスキーの交響曲は、4番以降の後半が頻繁に演奏されますが、1番から3番の前半の交響曲は、あまり人気がありません。ベートーヴェンやブルックナーのように、チクルス形式で演奏会を実施するとも思えないし~ ちょっと蚊帳の外ぽい曲になっています。

まあ、確かに。でも、いくら天才作曲家といえ、最初から完璧な作品を書けるとは思えないですよね。で、このチャイコフスキーの2番も、のっけから演歌調で始まります。揺らめいて悲しく、演歌っぽく、主題が執拗に繰り返されます。かなり効率性の高い主題でして~ 少しフレーズを変えて、テンポをいじって、楽器を変えて主題の使い回しが行われています。単調になりがちな主題を、アバドさんは、あっさり小気味良く進めていきます。金管が、良い声で歌ってくれるので、曲のレベルを維持している感じです。

第2楽章は、木管メインの可愛い楽章で、後年のバレエ音楽作品をイメージさせます。行進曲風だからね~「ハムレット」にも流用されているらしい。可憐な感じを与えます。第3楽章は、快速ステップを踏みながら、弦が強く、ん たー ん たー と引っ張っています。第4楽章は、ど派手なファンファーレ、コラール風で、アハハ~ やっぱり凄い音量で、ゴージャス! 鋭く色彩的で華やかな演奏です。

ブラスの音に圧倒されっぱなし。シンプルに音のご馳走が振る舞われます。シカゴ響のブラスの綺麗なこと~ 舞踏会が華やかに繰り広げられている感じが伝わり、もはや綺麗としか言いようのない演奏でした。出典:YouTube Symphony No. 2 in C Minor, Op. 17 “Little Russian” シカゴ交響楽団 – トピック Provided to YouTube by Believe SAS

チャイコフスキー:交響曲第3番「ポーランド」 セミヨン・ビシュコフ チェコ・フィル

チャイコフスキー:交響曲第3番「ポーランド」セミヨン・ビシュコフ チェコ・フィル 2016年
Tchaikovsky: Symphony No. 3 in D Major, Op. 29, TH. 26 “Polish” Semyon Bychkov Czech Philharmonic

ビシュコフさんのチャイコフスキーは、チェコ・フィルの弦に艶っぽさがあり、うっとりします。よくしなり、フレーズの歌い方に品があり、芳醇な香りがします。第3番は、聴かれる機会は少ないのですが、ビシュコフさんに全集として出してもらえて良かったです。土俗的すぎず、木管も金管も、まろやかに響きます。

もっと派手な金管の咆哮が好き~という方にとっては、イマイチだと感じられるかもしれませんが、チェコ・フィルの音は、ホント良いですね。もちろん3番だけでなく全ての曲が美しく、レベルの高い演奏です。ラストの金管の和音は、特に美しかったです。せめて第5楽章を聴いてみてくださいね。CDカップリング:チャイコフスキー交響曲全集 出典:YouTube Tchaikovsky: Symphony No. 3 in D Major, Op. 29, TH.26 “Polish” セミヨン・ビシュコフ – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

チャイコフスキー:交響曲第4番 シャルル・デュトワ モントリオール交響楽団

チャイコフスキー:交響曲第4番 シャルル・デュトワ モントリオール交響楽団 1988年
Tchaikovsky: Symphony No.4 In F Minor, Op.36, TH.27 Charles Dutoit Orchestre Symphonique De Montreal

デュトワさんの演奏は、洗練された明るい金管と、木管が美しいです。チャイコの4番は、冒頭から、賑々しく悲痛な叫び声からスタートします。いきなりの悲鳴で、聴いててツラクなるのですが、まあ、そこを過ぎたら、和音の美しい金管の響き、のびやかな弦が聞こえてきます。また、フレーズ終わりの語尾の締め方が気持ち良く、さらっとして流麗です。デュトワのチャイコなんぞ~と、言われるかもしれませんが、初めて聴く方にとって、いきなりの悲鳴はねえ~ びっくりしますよね。

金管の和音は、柔らかくクリーミーですが、弦は、力強くリズムを刻み、鋭く深めです。木管の登場で、平穏を取り戻し、虹がかかったかのような明るい表情に変わります。全体的にしなやかな演奏ですが、楽曲特有の落差の大きい表情づけがあります。第3楽章の弦のピチカートはリズミカルで、次の楽章に、間髪入れず、ド派手に突入していきます。

第4楽章では、シャンシャンとしたシンバルと、バスドラ(大太鼓)のドスンっという迫力ある音で、ドキッとさせられます。木管のチャーミングな音と、豊かな色彩感、流麗に歌う歌謡的な旋律、シャキシャキ感と軽やかな身のこなしが印象的です。いわゆるロシア臭さはありませんが、聴き応えのある演奏だと思います。CDカップリング:チャイコフスキー交響曲第4番、フランチェスコ・ダ・リミニ 出典:YouTube Tchaikovsky: Symphony No.4 In F Minor, Op.36, TH.27 モントリオール交響楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

チャイコフスキー:マンフレッド交響曲 リッカルド・シャイー コンセルトヘボウ管弦楽団

チャイコフスキー:マンフレッド交響曲 リッカルド・シャイー コンセルトヘボウ管弦楽団 1987年
Tchaikovsky: Manfred Symphony, Op.58, TH.28 Riccardo Chailly Royal Concertgebouw Orchestra 

チャイコフスキーのマンフレッド交響曲(作品58)は、1885年に作曲されています。交響曲第4番と第5番の間に作曲された楽曲で、イギリスの詩人バイロン(Byron)が、1817年に書いた劇詩「マンフレッド」を元にした標題交響曲です。

アルプス山脈のユングフラウの城郭を舞台に、 マンフレッドと魔女、聖霊たちの形而上学的対話が展開されるものです。神ほどの万能感を獲得したマンフレッドは、愛する人を失うという過去を持っており、その悲痛な記憶を無くしたくて、精霊を呼び出し、「忘却」をくれと要求します。精霊たちは、それはできないと言い、「獲得」は自由なのに「喪失」は思いのままにならぬと悟ったマンフレッドは、「喪失」の最高形態である「死」の問題に立ち向かうのでありました。というものです。

バイロンの「マンフレッド」による標題交響曲という企画は、バラキレフが考えたものでしたが、どうやら自分の手に余ると思ったらしく、自身は作曲しようとせずにベルリオーズへ話をもちかけます。しかし、断られたため チャイコフスキーに話を持って行ったようです。

チャイコフスキーは、この題材を、しばらく忘れていたようですが、1985年に着手しています。バラキレフは、なんだかんだと口を挟んできたようですが、きっぱり断っているようです。(口を挟むくらいなら、バラキレフ自身が作曲したらいいのに~ 変なヤツですよね。)で、結局、とても長大な作品ができあがりました。なんと約1時間の大作で、大編成オケが必要です。ハープ2台に、コーラングレなど木管多彩、パイプオルガンにタムタム(銅鑼)、鐘まで必要って。えっ、どこで鐘が鳴ってたっけ?(という不勉強さ → YouTubeの動画を見て知りました。第3楽章後半でした。)

シャイーさんの演奏は、ちょっと派手めの曲ですが、品良くまとまっているように思います。芯のある低弦の響きと、木管のシルキーな響きに、つい、うっとりしてしまい、主人公マンフレットの苦悩を忘れそうになります。

第1楽章は「アルプスの山中をさまようマンフレッド」というサブタルですが、場所はユングフラウです。スイスの有名な観光地、クライネ・シャイデックからアイガー北壁を見上げて、ユングフラウヨッホまで電車で登り、頂上からアレッチ氷河を一望にすることができる絶景のところ。アイガーと連なっているアルプスの山々は、壮大で一大パノラマなのです。そんな風景を思い浮かべて、シャイーさんの演奏を聴くと、つい、優美な世界に浸りきり、苦悩を描いたものというよりは、ワタシ的には観光気分となってしまいました。

バイロンの書いた劇詩が元になっており、影響を受けた次世代の芸術家が、気宇壮大なロマンティックな音楽を作りあげたわけで~ 人として、どう生きるべきか、などという答えの出ない怖ろしいテーマを、過酷な自然のもとを彷徨し、愛や死、夢や幻から逃れ、罪の意識からの救済を求める過程を描いたものです。ハイ、とても重いテーマです。

第2楽章はアルプスの妖精、第3楽章は山人の生活、第4楽章はアリマーナの地下宮殿というタイトルがついています。でもね~ バイロンの作品を読んだわけでもないし、イメージもイマイチ、ハテナなので、コメントを書くのもどうかと思うのですが、単純に、雰囲気をつかめて嬉しいかなって思いました。ロメオとジュリエット、ハムレット等のように、馴染みのあるストーリーに則した音楽とは言えず、気宇壮大なテーマを音楽に仕立てるのはちょっと無謀かと~ ついていけない楽曲の一つかもしれません。

同じアルプスが舞台となるR・シュトラウスの「アルプス交響曲」だったら、山を登ってくだってくる登山の一日を描写したものなので、イメージは湧きますが、哲学的、形而上学的な音楽は、ちょっと難しいですね。絵画や劇詩を含めた文学の世界が、音楽と融合するのは面白いのですが、日本昔話の桃太郎のようにはいかず。ワタシには理解が進みませんでした。マンフレッドの主題、悲劇の主題、山の霊の主題等があり、形を変えて登場したり~ 楽章によって登場人物が変わるので、多くの主題が登場して、とても複雑です。

演奏自体としては、豊かなホールのなかで、劇を見ている気分にはなれるので、一度トライしてみてください。こういう楽曲って、音情報だけでは難しく、概要やストーリーを知っていないと敷居が高いです。最後は、救済のシーンが描かれているので、ほっとしますが、パイプオルガン付きで、大編成の楽曲が終わります。出典:YouTube Tchaikovsky: Manfred Symphony, Op.58, TH.28 Concertgebouworkest Provided to YouTube by Universal Music Group

チャイコフスキー:交響曲第5番 ダン・エッティンガー シュトゥットガルト・フィル 

チャイコフスキー:交響曲第5番 ダン・エッティンガー シュトゥットガルト・フィル 2019年
Tchaikovsky: Symphony No. 5 in E Minor, Op. 64 Dan Ettinger Stuttgarter Philharmoniker

チャイコフスキーの交響曲第5番は、とても素敵な楽曲で、穏やかで美しく、整った演奏が期待されます。ダン・エッティンガーさんは、1971年生まれのイスラエル出身の指揮者です。東京フィルの常任だったそうですね。エッティンガーさんの演奏を、ワタシは、サブスクで初めて拝聴しましたが、まるでオペラを聴いているかのようなチャイコで、ワタシ的には、良い印象を持ちました。久々に酔えました。

低弦の響きに厚みがあり、それでいて重くならないように旋律を綺麗に繰り出してきます。淀みがなく、さらっとした感覚で、流麗に歌われており、金管の迫力もあって嬉しいです。これは良いわっ! ホルンももちろん、第2主題になってくるとため息が出ちゃうほどの美しさです。

木管の入り、旋律の受け渡しもスムーズだし、適度に粘っこく歌われています。切々と畳みかけてくるところが良いですね。綺麗に線を紡いでおり、弾力ある撚れ具合の良い糸のようです。この撚れた感覚が、妙に気持ちをくすぐってきます。第2楽章が好きなのですが、この楽章だけで、やられちまいました。ワタシ的には快感~って感じでした。

CDカップリング:チャイコフスキー ピアノ協奏曲 ピアノ:ファビオ・マルティノー Fabio Martino 、交響曲第5番 出典:YouTube Symphony No. 5 in E Minor, Op. 64, TH 29 シュトゥットガルト・フィルハーモニー管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by NAXOS of America

チャイコフスキー:交響曲第5番 ジークフリート・クルツ ツュターツカペレ・ドレスデン

チャイコフスキー:交響曲第5番 ジークフリート・クルツ ツュターツカペレ・ドレスデン 1978年
Tchaikovsky: Symphony No. 5 in E Minor, Op. 64 Siegfried Kurz Staatskapelle Dresden

チャイコフスキーの交響曲のなかで、ワタシが一番好きなのは、第5番です。前項で比較的最近のダン・エッティンガーさんの演奏をご紹介したので、ちょっと古い演奏ですが、クルツさんの演奏をご紹介します。クルツさんの演奏は、品の良い楷書体の演奏で、ちょい地味だけどバランスの整った演奏だと思っています。スルメのように聴けちゃいます。

シュターツカペレ・ドレスデンの美しい暖かい音が聴けて、たまらない一枚です。人肌の暖かみの感じさせるチャイコフスキーで、極寒のイメージはありません。感じるままに情景を述べるとしたら、晩秋、落ち葉が重なった道を、一人静かに逍遙している感じがします。ふかぶか~っとした響きで、まったりまろやか。弦も低弦から豊かに響き、木管は小気味よく吹かれています。

第2楽章では、ホルンが絶品で、耽美すぎず、さらり~と吹かれています。ペーター・ダムさんのソロでしょうか。遠くから、懐かしい角笛のような音が聞こえてくるのです。森の奥で響く木霊のように、ホルンとオーボエが吹かれており、木々の葉が揺れる森の情景で、鹿になった気分です。

第3楽章は、なめらか、なだらかに滑るように流れていきます。クラリネットとオーボエ、木管が、ことのほか速く演奏されています。引き合いに出して申し訳ないのですが、例えば、インバルさんだと、ヴァイオリンの四連符が、ペコペコペコペコ。ショルティさんだとガシガシガシガシなのですが、ふふっ、羽根が生えているようです。

第4楽章は、じわっと立ちあがっており、おとなしく地味だと感じるのですが、ホルンの対旋律が聴き応えがあったり、仕掛けは充分です。弦があわさってくるところとか綺麗です。ティンパニは大きい音で鳴らしていませんが、緊張感が適度にあり、じわじわっと音量とリズムを乗せていくところが憎いです。気がついたらテンションがあがっていますね。強引さは皆無です。ティンパニの一撃で煽る演奏もありますし、必死の形相でガシガシ弾いて煽ってくる演奏もありますが、ナチュナルな運動体となっています。

ガシャーン、ドカーンっというような音はなく、職人技のように精緻に綺麗にまとめられ、品良くスマートで、自然に煽られ~ 気がついたら熱くなっておりましたという感じでしょうか。俗に言うロシア臭さ、演歌調の演奏ではありませんが、中音域に厚みがあり、木管のできが他とは違うようです。気持ちの良いおもてなしを受けた気分で、目立たないところ、きちんとアタリマエに出来ている、そんな質の良さを感じます。(ちょっと褒めすぎたかも)

出典:YouTube Symphony No. 5 in E Minor, Op. 64 Staatskapelle Dresden Topic シュターツカペレ・ドレスデン トピック Provided to YouTube by Kontor New Media GmbH

チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」 ユーリ・テミルカーノフ サンクトペテルブルク・フィル

チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」ユーリ・テミルカーノフ サンクトペテルブルク・フィル 1992年
Tchaikovsky: Symphony No.6 in B Minor, Op. 74, TH 30 “Pathétique” Yuri Temirkanov St. Petersburg Philharmonic Orchestra

テミルカーノフさんの演奏は、特に第4楽章が、ゆったり演奏されています。人肌の暖かみを感じる演奏で、膨らませては萎むを繰り返し、減衰していく感じです。ゲルギエフさんとも、ムラヴィンさんとも違う方向性で、厳しいながらも、どこか暖かさを失わない、情感のバランスが整った演奏です。

チャイコフスキーの交響曲第5番も、第6番悲愴も、名曲で~ 良い演奏が目白押しです。どれが一番って言えないのがホンネで、カラヤンも良いしなあ~と言いかけるとキリがないので。ここでは、四種類の演奏を掲載します。ご了承ください。選びきれないデス。CDカップリング:チャイコフスキー ロメオとジュリエット、交響曲第6番 出典:YouTube Symphony No. 6, Op. 74 in B Minor “Pathétique” ユーリ・テミルカーノフ – トピック Provided to YouTube by RCA Red Seal

チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」 ヴァレリー・ゲルギエフ マリインスキー歌劇場管弦楽団

チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」 ヴァレリー・ゲルギエフ マリインスキー(旧キーロフ)歌劇場管弦楽団 1995年 Tchaikovsky: Symphony No.6 in B Minor, Op. 74, TH 30 “Pathétique” Valery Gergiev Mariinsky Orchestra

第3楽章は、速いテンポで、金管の音がリアルに聞こえて、かなり生々しいです。ピリオド楽器の金管の割れ音は、大嫌いですが、このロシアンブラス ぶっとい割れ音は、聴いてて興奮します。完全にエキサイトしちゃって、金管の音に耳が貼り付いて取れないですねえ。

第3楽章だけを繰り返して聴きましたが、えへっ何度聞いても、やっぱ嬉しくなっちゃいます。いかにも品のない聴き方だと思いますが、この速さとブラスの方の必死さに、手に汗握って聴いちゃう感じです。子供の頃から、この第3楽章が異様に好きでした。自己矛盾しててお恥ずかしい。
CDカップリング:チャイコフスキー交響曲第6番悲愴、ロメオとジュリエット 1997年 出典:YouTube Tchaikovsky: Symphony No. 6 In B Minor, Op. 74, TH.30 マリインスキー劇場管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」 エフゲニー・ムラヴィンスキー レニングラード交響楽団

チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」エフゲニー・ムラヴィンスキー レニングラード交響楽団 1960年
Tchaikovsky: Symphony No. 6 in B Minor, Op. 74, TH 30 “Pathétique”  Evgeny Mravinsky Leningrad Philharmonic Orchestra

ムラヴィンスキーさんの演奏は、昔っから名盤中の名盤とされていたもので、フリッチャイさんのベルリン放送響と共に、ずーっと聞き続けられてきた演奏です。チャイコフスキーの交響曲と言えば、筆頭にムラヴィンスキーさんの演奏が挙げられていました。数種類のCDが発売されていますが、60年代のグラモフォンレーベルを。威厳のある演奏で、精緻でキレッキレのスピードが特徴で、勢いに飲み込まれて圧倒されてしまいます。中途半端な気持ちでは聴けず、また涙なしでは聴けないです。

まだまだ未熟で、情緒的に安定していなかったワタシの青春時代、クラシックを聴き始めた駆け出しの頃というか、そんな頃に、音楽の友社から出版されていたムック本を購入し、名盤だというので聴いた懐かしい一枚です。もちろん、現在、所有しているのはリマスタリング盤CDで、1960代初頭とは思えない良い状態だと思います。LP時代のジャケットを採用したCDで、ワタシにとっては神棚に飾っておかなきゃ~というような一枚なのです。

第1楽章は、うごめく低音のフレーズで、硬く冷たい大地から、恐ろしい形相で立ちのぼってくる龍のよう。ぞっとするような凍りつく肌合いです。第2楽章は、ゆったりめのテンポで進みます。第3楽章は、これは強烈で~ スピード感がハンパなく、何が凄いかというと、やっぱり弦のキレ味と金管の鋭い咆吼でしょうか。圧倒的破壊力のあるチューバを含めた金管の重厚な響き。畳みかけてくるクレッシェンド、巌のようにキリキリ盛りあがってくる嶮しさ。そして、周りを巻き込みながら突き進んでいく、覚悟を決めて決死の形相で突撃してくるかのような強さ。

威厳のある響きで、ホント圧倒されます。渾身の力で突き進む突撃隊長のようで、振りだしてくる音は、鋼の刃のようなのです。どひゃん~でしょ。ワタシ的な想い出もあるし、拙い言葉の限りをつくしたところで、表現できそうにもないのですが、ぐぐっと胸をつかまれ、ぐいっと睨まれ、身動きがとれない、金縛りにあったかのような演奏です。

で、第4楽章は、ふぅぅ・・・っと、力が抜けて脱力してしまうのですが、三つの楽章の研ぎ澄まされた刃に恐れをなして、緊張感マックスから、一気に解き放たれるからこその脱力感です。一瞬で抜けて、なえなえっと萎えます。ホント、刃物のような精緻な弦、金管の速いパッセージ。ザラザラした音で、一糸乱れずというアンサンブルで演奏されており、何かに憑依されたかのような、狂気すら感じる演奏です。そうそう聴ける演奏ではありません。最初に聴く演奏としては、ゼッタイにお薦めしませんが、何かの折にお聴きください。

出典:YouTube Tchaikovsky: Symphony No. 6 in B Minor, Op. 74, TH 30 – “Pathétique” レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」 フェレンツ・フリッチャイ バイエルン放送交響楽団

チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」フェレンツ・フリッチャイ バイエルン放送交響楽団 1960年
Tchaikovsky: Symphony No. 6 in B Minor, Op. 74, TH 30 “Pathétique”  Ferenc Fricsay Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks

フリッチャイさんの演奏は、ベルリン放送交響楽団との演奏(1959年録音)の方が有名かもしれませんが、ここではバイエルン放送響との演奏を。で、第4楽章は、なんとも言えない雰囲気を漂わせて進みます。身震いするほどのフレージングです。とことん慟哭させられて悲しいわけでもないのですが、神々しい感じがします。繊細ですわーっとした空気を震わせ音が流れてきます。これでライブ演奏なので超驚きました。これは鳥肌モノ。この第4楽章は是非聴いてみてください。CDカップリング:チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番、交響曲第6番悲愴
出典:YouTube  Symphony No. 6 in B Minor, Op. 74, TH 30 “Pathétique” バイエルン放送交響楽団 – トピック Provided to YouTube by NAXOS of America

チャイコフスキーの交響曲は、第1番~第6番と、マンフレッド交響曲があります。交響曲全集として数多くCDが発売されていますが、マンフレッド交響曲は除外されることが多いです。後期の4番~6番が人気が高く、この内、5番、6番「悲愴」が、圧倒的に人気があるように思います。

交響曲第1番「冬の日の幻想」ト短調 作品13 1866年作曲 1874年改訂
交響曲第2番「小ロシア」ハ短調  作品17 1872年 1879年改訂
交響曲第3番「ポーランド」ニ長調 作品29 1875年作曲
交響曲曲第4番 ヘ短調 作品36 1877年~78年作曲
マンフレッド交響曲 作品58 1885年作曲
交響曲第5番 ホ短調 作品64 1888年作曲
交響曲第6番「悲愴」ロ短調 作品74 1893年作曲

チャイコフスキーの楽曲は、通俗的に初心者向けと言われるようですが、うーん、どうでしょう。交響曲だけでなく、三つのバレエ音楽(白鳥、眠れる森の美女、くるみ割り人形)も有名ですし、ピアノ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲、弦六、弦楽四重奏曲など、名曲がいっぱいありすぎて、悲鳴をあげたくなるような状況です。綺麗な旋律で聴きやすく、口ずさめる曲が多いですね。チャイコは、メロディーメーカーで、ワタシ的には、ハズレの少ない作曲家のように思います。また、ボツボツ聴いて行きます。

YouTubeにおいても、コンサートの模様が掲載されています。オケに偏りが出ることや公式以外は、できる限り避けて、ここでは掲載しました。ウクライナ情勢等も考慮して掲載したつもりです。今後、動画が新しく掲載された場合は、追加したりしますので、宜しくお願いします。

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