リヒャルト・シュトラウス:交響詩「マクベス」【YouTube】
アンドレス・オロスコ=エストラーダ hr交響楽団
リヒャルト・シュトラウス:交響詩「マクベス」 アンドレス・オロスコ=エストラーダ hr交響楽団 2014年 ラインガウ音楽祭 (Rheingau Musik Festival) エーベルバッハ修道院での演奏です。2023年の「ラインガウ音楽祭」第36回は、2023年6月24日~9月2日まで開催予定。もうCDを聴く必要がないほど立派な演奏です。
Andrés Orozco-Estrada hr-Sinfonieorchester (Frankfurt Radio Symphony Orchestra) 出典:YouTube Strauss: Macbeth ∙ hr-Sinfonieorchester ∙ Andrés Orozco-Estrada hr-Sinfonieorchester – Frankfurt Radio Symphony
リヒャルト・シュトラウス:交響詩「マクベス」【名盤・おすすめ】
フランツ・ウェルザー=メスト クリーヴランド管弦楽団 😉
リヒャルト・シュトラウス:交響詩「マクベス」 フランツ・ウェルザー=メスト クリーヴランド管弦楽団 2021年
R. Strauss: Macbeth, Op. 23, TrV 163 Franz Welser-Möst Cleveland Orchestra ·
メストさんの演奏は、ライブ盤です。メストさんのR・シュトラウスの演奏には定評があったことと、クリーヴランド管弦楽団も自主レーベルから発売されたので購入してみました。すきっとした音響で、特徴のある出だし、「しふぁ~ しふぁしふぁしぃ~」という短いフレーズを置いて、合間をおいて始まるところが、時代がかった幕開けフレーズとなっています。
昔のハリウッド映画を見るような、格好の良い明るい幕開けです。シェークスピアの四大悲劇の一つとは、ちょっと思えないぐらい明るめの演奏ですが、流麗なフレージングです。派手な音響が入ってきますが、淀むことなく力強くスピーディに進んで行きます。細身の男装麗人風の演奏です。お楽しみの楽曲もあるので聴いてみてください。
CDカップリング:R・シュトラウス 交響詩「マクベス」、「ドン・ファン」、「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」2021年ライブ 出典:YouTube Macbeth, Op. 23, TrV 163 クリーヴランド管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by PIAS
フランソワ=グザヴィエ・ロト、 バーデン・バーデン&フライブルク南西ドイツ放送交響楽団 😘
リヒャルト・シュトラウス:交響詩「マクベス」 フランソワ=グザヴィエ・ロト バーデン・バーデン&フライブルク南西ドイツ放送交響楽団 2013年
R. Strauss: Macbeth, Op. 23, TrV 163 François-Xavier Roth SWR Sinfonieorchester des Südwestrundfunks
フランソワ=グザヴィエ・ロトさんは、古典派の印象が強かったのですが、意外と幅広く振っておられるようです。R・シュトラウスの演奏があるとは、不覚にも知りませんでした。バーデン=バーデン・フライブルクSWR交響楽団という名称、略称ってないのかしら。ドイツの放送局の統合でオケの名称が変わりましたが、まだ馴染めないです。
さて、ロトさんの演奏は、力強い剛毅なマクベスです。一本筋の通った騎士のごとく突き進むパワーが感じられます。間髪入れずに叩かれるティンパニーの気迫、弦の鋭いボーイングに圧倒されます。この強さだと、メンタルも強いだろうと思うのですが、ストーリーとしては、占いに左右され、夫人にそそのかされ、映画「スターウォーズ」のダース・ベイダー卿みたいに、ダークサイドに墜ちた主人公とは思えません。
中間部の行進曲風のところの威勢の良さもあり、疑心暗鬼に陥る主人公とは思えず、心の闇に陥り、誤った道に進んでしまう心理面が描かれているのか、ちょい微妙~です。では、どのように演ずれば、深い心理が描かれるのか、う~ それは難しいです。冒頭から続くテーマを、どう扱っていくのか難しそうですね。ロトさんの演奏は、騎士のような強いマクベスで、ラストのファンファーレも綺麗です。これだとメンタルも相当強そう。劇的な効果の強い演奏です。
CDカップリング:R・シュトラウス 交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」2014年、交響詩「ドン・キホーテ」 チェロ:フランク=ミヒャエル・グートマン2014年、交響詩「マクベス」2013年録音 出典:YouTube Macbeth, Op. 23, TrV 163 SWR Sinfonieorchester des Südwestrundfunks – トピック Provided to YouTube by NAXOS of America
デイヴィッド・ジンマン チューリヒ・トーンハレ管弦楽団 🙂
リヒャルト・シュトラウス:交響詩「マクベス」 デイヴィッド・ジンマン チューリヒ・トーンハレ管弦楽団 2000年 R. Strauss: Macbeth, Op. 23, TrV 163 David Zinman Tonhalle Orchester Zürich(Zurich Tonhalle Orchestra)
R・シュトラウスの交響詩は、有名な楽曲が多く、演奏に接する機会も多くありますが、知らなかったなぁ~というのが、作品23の「マクベス」です。シェークスピアの戯曲マクベスは、スコットランド王ダンカンの臣下だったが、3人の魔女の予言と、野心家の奥さんにそそのかされ、王を殺害して自分が王位に就くものの、亡霊を見るなど疑心暗鬼にかられ、自滅しちゃう~というストーリーです。そう、ハムレット、オセロ、リア王と共に、四大悲劇の1つ。
聴いてみると、冒頭、出だしが風変わりで面白いですね。まるで、サスペンスドラマ! 「しふぁ~ しふぁしふぁ しぃ~」という短い序奏、いったん静まって~って、この冒頭、すごっ。演出効果ばっちり、つかみの巧い冒頭です。ヴァイオリンの美しい旋律が流れているなか、ダッダンっという鋭い鉄杭のような打ち込み。低弦のどす黒い響きが、常に影のようにつきまとってきます。コントラバスと、ファゴットの亡霊のような響き。煽るような金管です。
予言や占いに振り回され、亡霊を見ちゃう、不安に追い込まれてしまう心理劇を、多くの楽器を使って、サスペンスドラマのように描いていく、その能力の高さに感服です。冒頭の短いフレーズで、いっきに引き込まれ~ 2時間、サスペンスドラマに夢中になっていく~ そんな感じです。
交響詩マクベスは、約20分の楽曲ですが、ストーリーを知って聴くと、ぞっ!とします。マクベスは、最後には亡霊にうなされ、精神状態が悪くなって、幻を見ては手に血糊がつていると思って、ゴシゴシと手を洗おうとするなど、だんだん、危ない状態となり、自業自得で終わっちゃうのです。
真剣に見ていくのは、あまりよくないです。マクベスのように、実際に、人をあやめたりはしないけれど、自分のアタマのなかでは、あれこれ、妄想しちゃうこと・・・ あるよねっ。社会人になって、人からどう見られているのか考え始めると眠れない。自分を深掘りしすぎても眠れない。更年期障害になっても眠れない。ありもしないことを想像するのは・・・やめたほうが良い。ハイ、現代人の方が、眠れない人が多いんです。う~ん、そう考えると、この曲を聴くのは、ダメだね。もっと明るい曲を聴かないと、アカンね。
劇付随音楽とは違い、交響詩というスタイルのなかで、人の心理を描写するという試みは、演奏者の腕次第ってところでしょうか。「マクベス」の方が、「ドン・ファン」(作品20)の2年前には完成していたらしいけど、人気が出なかったらしいのよね~ で、作品番号が逆になってしまったんだけど。やっぱ、人気出ない筈ですよね。でも、2番目に完成させているのだから、天才はたいしたモノです。CDカップリング:R・シュトラウス 交響的幻想曲「イタリアより」、交響詩マクベス 出典:YouTube Macbeth, Op. 23 デイヴィッド・ジンマン – トピック Provided to YouTube by ARTE NOVA Classics
ネーメ・ヤルヴィ ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団 😂
リヒャルト・シュトラウス:交響詩「マクベス」 ネーメ・ヤルヴィ ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団 1989年 R. Strauss: Macbeth, Op. 23, TrV 163 Neeme Järvi Royal Scottish National Orchestra
N・ヤルヴィさんの演奏は、ブラスに底力があり、思い存分に吹ききって、荒々しい風景と心情が表現されており、これは聴き応えがあります。実は、アンタル・ドラティさんの演奏を聴いた時、あまりにも美しいフレージングで、それはそれで聴き応えがあったのですが、主人公の人物像としては、あまりにも、心身共に健康的な英雄像のような気がしたのです。
主人公は、シェークスピアのマクベスです。んじゃー誰の演奏だと、ダークサイドに墜ちて、悩み、もがいてくれるような人物像を描かれているのだろう~ そう思ったときに、ふと、N・ヤルヴィさんを思いついたのです。きっと、ドロドロ~重厚に演奏するに違いないっ! で、サブスクを利用させていただき拝聴しました。
ハイ、大正解っ! 我ながらあっぱれ~。ドンシャン、ジャンジャン、バリバリ~ ラストに近づいてくるにつれて、血なまぐさく、どど どーんっと墜ちております。速攻で聴き比べていただけるので、よろしければ、ドラティ→N・ヤルヴィさんの演奏で、一度お聴きください。違いが歴然としています。
CDカップリング:R・シュトラウス 交響詩マクベス、薔薇の騎士ワルツ第1番、第2番 二つの大きな歌作品44 出典:YouTube Macbeth, Op. 23, TrV 163 ネーメ・ヤルヴィ – トピック Provided to YouTube by PIAS
ロリン・マゼール ウィーン・フィル 🥰
リヒャルト・シュトラウス:交響詩「マクベス」 ロリン・マゼール ウィーン・フィル 1983年
R. Strauss: Macbeth, Op. 23, TrV 163 Lorin Maazel Wiener Philharmoniker
マゼールさんの演奏は、整理して聴きやすくなっていますが、楽曲自体が分厚く、ジャンジャン鳴ります。初演で失敗したという交響詩「マクベス」ですが、さてどうでしょうか。冒頭は、金管のふわっとしたフレーズから、いったん静まって ドラマティックに始まります。
ティンパニのロールと金管が重なって、どすぐろい響きでスタート。ヴァイオリンのキレのある響きが、メリハリをつけており、格好良いと思います。コントラバスの響きと、それに呼応するトランペットの短いフレーズが、リズミカルに響いています。確かに凝った作りのようで、金管とティンパンニが、ごつく~ どぉん どぉん どぉ~んと響きます。
主題(場面)が変わると、フルートやクラリネットが、すーっと入ってきますが、相変わらずティンパニは、どす黒く叩かれています。フルートの二重奏、ヴァイオリンの美しいフレーズが入ってきて、柔らかさが、いっぷくの清涼剤となっています。金管の使い方は、R・シュトラウスの楽曲だとすぐにわかります。また、ツァラのように、ヴァイオリンを単独で弾かせる場面があり、弦をフレージングし、パイプオルガンのような響きが完成でしょうか。独自性が色濃く出ている演奏だと思います。この演奏のキーパーソンは、ティンパニです。
CDカップリング:R・シュトラウス家庭交響曲、交響詩マクベス 1993年録音 出典:YouTube R. Strauss: Macbeth, Op. 23, TrV 163 Herbert von Karajan Provided to YouTube by Universal Music Group
アンタル・ドラティ デトロイト交響楽団 😌
リヒャルト・シュトラウス:交響詩「マクベス」 アンタル・ドラティ デトロイト交響楽団 1982年
R. Strauss: Macbeth, Op. 23, TrV 163 Antal Doráti Detroit Symphony Orchestra
ドラティさんのマクベスは、流麗で迫力もあるのですが、どうもイメージ的に綺麗すぎて、強欲に駆られて魂を売った人物が主人公とは、ちょっと思えない感じがします。善い人物から抜けきらない(だから亡霊にうなされるんだよ~とは思うのですが)救いがたい絶望に陥るとか、とても、メンタル弱い人には感じませんでした。劇的な演奏なのですが、心身共にタフで英雄の姿を描いているように聞えちゃいます。
マゼールさんの演奏のように、疑心暗鬼となって、ついに夢遊病者となっちゃう雰囲気がありますが、派手に鳴らしすぎてしまうと、重くて聞きづらくなりそう。でも、流麗な演奏だと、どうも、マクベスとはマッチしない感じになり、このバランスが難しいようです。大盤振る舞いのてんこ盛りの楽曲のようで、人気がないのも、さもありなん。かな。
CDカップリング:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」、交響詩「マクベス」 出典:YouTube R. Strauss: Macbeth, Op. 23, TrV 163 デトロイト交響楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group
ルドルフ・ケンペ シュターツカペレ・ドレスデン 😘
リヒャルト・シュトラウス:交響詩「マクベス」 ルドルフ・ケンペ シュターツカペレ・ドレスデン 1973年
R. Strauss: Macbeth, Op. 23, TrV 163 Rudolf Kempe Staatskapelle Dresden
ケンペさんとカペレ(ドレスデン国立歌劇場管弦楽団)は、名盤として名高い演奏です。EMIから発売されていた9枚組BOXはお宝モノとして所有しています。アナログの最後の方の録音で、上昇気流に乗る龍のごとく、弦の流麗なフレージングと、雷のようなティンパニーの鋭い叩き方(とても心臓に悪い)、渋い低弦のかすれ声など、久々に聴いて、オペラの序曲を聴いているようでした。爽やかでリズミカルです。マクベスのどろっとしたダークサイド的な演奏ではなく、鋭い打音は入ってきますが清々しい演奏です。
CDカップリング:R・シュトラウス管弦楽曲全集 出典:YouTube Macbeth, Op. 23, TrV 163 ルドルフ・ケンペ – トピック Provided to YouTube by Warner Classics
リヒャルト・シュトラウスの交響詩「マクベス」【解説】
R・シュトラウスの交響詩「マクベス」(作品23)は、彼の最初の交響詩で、シェークスピアの悲劇「マクベス」を題材として作曲されています。1886年~89年にかけて作曲されましたが、初演で好評を得られず、完成から2年後、2作目の交響詩「ドン・ファン」が成功した後に改訂されました。改訂は、展開部と再現部に、手が加えられたそうです。そのため作品番号が逆になっています。
【参考】R・シュトラウスの交響詩 7作品
作品20 交響詩「ドン・ファン」、作品23 交響詩「マクベス」、作品24 交響詩「死と変容」、作品28 交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」、作品30 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」、作品35 交響詩「ドン・キホーテ」、作品40 交響詩「英雄の生涯」
「ニューグローブ音楽大事典」の項目執筆者ブライア・ギリアムは、本作品について、新しい道であろうがなかろうが、「マクベス」は、演奏会場のレパートリーとして、確固たる地位を見出すことに失敗した。後続の2作品である「ドン・ファン」と「死と浄化」には、主題の説得力や、音楽の運びの確信に満ちた筆致が、歴然としているのに、「マクベス」には、どれも欠けている。
しかも、内声を抑えて主要主題を浮かび上がらせようと試みて、管弦楽法に手を加えたにもかかわらず、それでも「マクベス」は、響きの明瞭さにおいて「ドン・ファン」や「死と浄化」に太刀打ちできていないと書いんだそうです。
あらら~ とても痛烈ねえ。確かに聴いてみると、どうも、ぱっとしない。R・シュトラウスの交響詩は人気が高く、コンサートでの演奏もCDも数多く発売されていますが、このマクベスだけは、なんだか蚊帳の外という気がします。
マクベスは、ご存知のとおり、ハムレット、オセロー、リア王と並ぶシェイクスピアの四大悲劇の一つ。スコットランドの荒野において三人の魔女に出会い、将軍マクベスは、いずれ王になる方だと言われます。その後、予言の一つがあたり、次第に野心に目覚め、嫁にそそのかされ、主君である国王を殺害し、自分が国王になってしまう。
その後、亡霊に悩まされ、夫人もノイローゼに。そして、自滅していくというストーリーです。この題材をもとに、R・シュトラウスは交響詩を、ヴェルディは、オペラ「マクベス」(四幕)を作曲しています。なお、イギリスの演劇関係者の間には、劇場内で「マクベス」の名を口にすると、災いが起きるというジンクスがあるそうです。で、いまでもマクベスのことを、「The Scottish play」と呼びかえる方もおられるのだとか。真偽のほどはわかりませんが、人間って、欲につらされると弱いですね。呪われる~ということに起因するみたい。ゲンの悪い楽曲ですが~ シェークスピアを語るうえでは外せない~。四大悲劇のひとつです。
映画「マクベス」について
出典:YouTube Macbeth Official US Release Trailer (2015) – Michael Fassbender War Drama HD
Rotten Tomatoes Trailers ロッテントマト うーん、映画の評価はイマイチだったの?
映画「マクベス」 2012年 監督:ジョエル・コーエン デンゼル・ワシントン、フランシス・マクドーマンド
ほかにも多々ありそう。オーソン・ウェルズ主演(1948年)の白黒映画もあるのだけど、やっぱりゲンが悪そうなので掲載はやめておきます。クワバラクワバラ~。
リヒャルト・シュトラウス:交響詩「マクベス」【ディスク情報】
1973年 ケンペ シュターツカペレ・ドレスデン EMI
1982年 アンタル・ドラティ デトロイト交響楽団 Dec
1983年 マゼール ウィーン・フィル G
1989年 N・ヤルヴィ ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団 CHANDOS
2002年 ジンマン チューリヒ・トーンハレ管弦楽団 Arte Nova
2013年 フランソワ=グザヴィエ・ロト バーデン・バーデン&フライブルク南西ドイツ放送交響楽団 HÄNSSLER
2021年 フランツ・ヴェルザー=メスト クリーヴランド管弦楽団 TCO
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