スクリャービン:ピアノ・ソナタ第1番【聴いてみよう】Scriabin:Piano Sonata No.1, F Minor, Op.6

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スクリャービン:ピアノ・ソナタ第1番【名盤・おすすめ】

ヴィンチェンツォ・マルテンポ 😘

スクリャービン:ピアノ・ソナタ第1番 ヴィンチェンツォ・マルテンポ 2018年
Scriabin:Piano Sonata No.1 Vincenzo Maltempo 

マルテンポさんの演奏は、ハチャメチャ強くもなく、柔らかいタッチで聴きやすいというのが第一印象です。1985年イタリア生まれのピアニストです。2011年から、シャルル=ヴァレンティン・アルカンのエチュード全曲を録音したという方らしいのですが、凡人ワタシには、ついていけない~っ。まだ、スクリャービンのピアノソナタも、前期でモタモタしている状態です。戦争ソナタまでは聴きたいんですけど、山が高すぎっ。で、この第1番も、ダイナミックですが、優しいフレーズで安心し、ほっこり聴かせていただいる状態です。出典:YouTube Scriabin: Complete Piano Sonatas Brilliant Classics 

マルカンドレ・アムラン 🤩

スクリャービン:ピアノ・ソナタ第1番 マルカンドレ・アムラン 1995年
Scriabin:Piano Sonata No.1 Marc-Andre Hamelin

アムランさんの演奏は、スクリャービンの前期ソナタ、特に1番、2番は、すっばしというぐらいの素っ気なさで、クールに演奏されたという印象で終わりました。1番、2番と、聴き進むにつれて段々と息苦しくなりますね。スクリャービン ピアノ・ソナタ全集CD2枚組BOXを、喜びいさんで購入したものの、実際には、お蔵入りというか冷凍保存状態です。スクリャービンのピアノソナタは、戦争ソナタが有名です。でも、敷居が高いというのがホンネ。で、再び1番から聴き始めました。ここまでに聴いたピアニストごとの、ざっくりとした印象は~

マルテンポさんの演奏は、優しく聴きやすい印象を受けました。アウストボさんの演奏は、うすぼんやりした印象を受けました。アシュケナージさんの演奏は、イライラが爆発して叩きつけられた怖い印象を受けました。シドンさんの演奏は、うねうね、もだえそうになっている印象を受けました。

アムランさんの演奏は、クールで、バタバタ溺れそうな姿を客観的に描いている印象を受けました。まるで、傷ついた保護ネコが、毛を逆立てて、猫パンチを繰り出していますが、時間をかけてケアすれば、そのうち落ちつくさ~ みたいな視線でしょうか。CDカップリング:スクリャービン ピアノソナタ全集 出典:YouTube Scriabin: Piano Sonata No. 1 in F Minor, Op. 6 マルカンドレ・アムラン – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ホーカン・アウストボ 😥

スクリャービン:ピアノ・ソナタ第1番 ホーカン・アウストボ 1990年
Scriabin:Piano Sonata No.1 Håkon Austbø (Hakon Austbo )

アウストボさんは、1948年生まれのノルウェーのピアニストです。アウストボーとも表記されます。その昔、スクリャービンのピアノ・ソナタを廉価版で欲しいと思った時に、ブリリアント(Brilliant)BOX盤を購入しました。ついジャケ買いです。もっとも、スクリャービンのピアノソナタって、前半はちょっぴりロマン派ぽいし、後期になれば様相が変わりますので、全集でなくても良かったかもしれません。

第1番のアウストボさんの演奏は、さっぱり系です。狂おしいほどに、もだえる演奏ではありません。甘いなかにも、ひんやり感があり、古風な感じがします。煌めきを失わない程度に沈み、湖の底で歌われているかのような感じです。リズムや音が丸く、幾分くぐもって聞こえます。音階をあがっていくところは、もっと個性的でも強い意志力があっても良いかもしれませんね。穏やかに丸く収めましょう~って感じです。他盤と聞き比べてしまうと、無難にまとめました~的に聞こえてしまうかも。

CDカップリング:2枚組BOX(原盤はSimax Classics)第1~第10番まで収録されています。YouTubeにおいては、1、4、5、7、9番です。出典:YouTube Scriabin Sonata No. 1, F Minor, Op. 6 ホーカン・アウストボ – トピック Provided to YouTube by The Orchard Enterprises

ウラディーミル・アシュケナージ 😱

スクリャービン:ピアノ・ソナタ第1番 ウラディーミル・アシュケナージ 1984年
Scriabin:Piano Sonata No.1 Vladimir Ashkenazy

アシュケナージさんの演奏は、いきなり熱く始まります。激しく、エネルギッシュで、ツンツン突っ張っている感じです。意外だな~って思います。ワタシには中庸というイメージがあったのですが、ここでは、荒々しく危ない熱さです。で、自分自身の怒りに疲れてしまったのか、第2楽章に入ると、鬱状態になって沈み込んでしまい、ぬけ殻になって虚無感が漂っています。ボソボソと語っている姿は、ショパンの影響が色濃く残っているといいますが、左手のボソボソ感は、干からびた皮状態で~ むむむっ。これはアカン。味気のないものです。

第3楽章は、ラフで速い演奏です。音が濁ってもおかまいなし。草書体的の演奏で、焦燥感MAXのテンションの高さです。後半は、多少甘みが出てきますが、鬱々していながらもテンションの高さは維持してて、ツンツン、あっけらかーん!これは、計算づくかもしれませんが、頭痛持ちのような尖った演奏です。

第4楽章は、間髪入れずに前楽章から続きます。葬列のような楽章で、ますます暗く、沼地に立っているかのよう。湿気と濁った匂いを感じます。救いがないやんかーっという楽曲となっており、他の演奏よりも鬱々している度合いは高いです。躁鬱の差の度合いが大きくて、とってもついていけません。ヤダっこんな演奏。

スクリャービンの前期ピアノ・ソナタは、多少、甘いだろうと思い込んでいたワタシが、いけなかったのかもしれませんが、焦燥感と異様なテンションの高さの後、急激に落ち込んで抜け殻。何かに憑依されたような演奏でした。前半は、狂気の沙汰という感じで雑味のある演奏。後半は、魂の抜け殻。うーん、アシュケナージさんで、この演奏です。スクリャービンのピアノ・ソナタを、今後、聴いていけるのでしょうか。すっかり自信喪失です。

CDカップリング:ピアノ・ソナタ第1番 1984年、第2番「幻想ソナタ」1977年、第3番 1972年、第4番 1977年、第5番 1972年、第6番 1982年、第7番「白ミサ」1977年、第8番 1983年、第9番「黒ミサ」1972年、第10番 1977年 YouTubeにおいては、スクリャービン ピアノソナタ第1番、4つの小品、ソナタ第6番、第8番のカップリングです。出典:YouTube Scriabin: Piano Sonata No.1 in F minor, Op.6 ウラディーミル・アシュケナージ – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ロベルト・シドン 😂

スクリャービン:ピアノ・ソナタ第1番 ロベルト・シドン 1968年
Scriabin:Piano Sonata No.1 Roberto Szidon

スクリャービンのピアノソナタ第1番は、甘いフレーズが流れてきます。爆発気味で始まりますが、右手のフレーズは、キラキラ感があります。後期作品とは、全く印象が異なり、ノスタルジックで、ショパン似です。シドンさんの演奏は、起伏が大きく、がっつり気合い入れて、 ガンガン強打するところと、ふにゃふにゃ~ とろけちゃう場面があり、この身ぶり手ぶりの大きさに笑えてしまいます。

いまどき、このスタイルで演奏するぅ~?と思いつつも、ウネウネ、もだえそ~になっているところが、他盤とは違うので、面白く聴けちゃいます。ウツウツしているなかに、煌めきが顔を覗かせては、すっといなくなる。甘い主題の筈なのにメチャ激しくうねる。うぷぷ~。エネルギッシュで、自由奔放で、羨ましいような情感の起伏が表出されます。社会人だったら、もう少し、自分の感情を抑えてね~という社会で生きているので、ホント、うらやましいっ。ため口で喋っても怒られない芸人さんのよう。

突然、ぐわ~っと駆けのぼり、ストンと墜落しちゃうような、ホント、受け狙いかと思うような、テンションの高さです。ハチャメチャ風に豪快に鳴り響き、つきあうには、ちょっと疲れますが、この1番は、全体が甘めなので、ハイハイ。わかりますよぉ~と、許容範囲に収まる感じでしょうか。

で、第2楽章は、完全に憔悴しきって抜け殻です。文字通りヌケガラ。ありゃりゃ~ えらい沈みこんでて救いようがないほど。まあ、あれだけ第1楽章で、子供のように、はしゃいでいたら疲れますよね。第3楽章は、ゴツンゴツンと、左手がブツブツと文句を吐き出してきます。暴力的な言葉を放言中、右手は、左手の言葉を煽っているかのように響き、文句は階段をのぼっていく。 ツンツン、トゲトゲ。どうやら怒っているらしいが、再びヌケガラに。

第4楽章は、どっぷりお疲れモードです。左手の音が鐘のように響き、こりゃ葬式じゃん。エネルギーがゼロになったらしく音が消え去り、あっ、昇天しちゃった? 鐘が鳴り始めてあーあ。葬列の歩みとなりました。なんじゃーこりゃ。ああ、終わってしまいましたね。ご愁傷さまでしたと言おうとしたら、だめ押しの「しそそ~」なんだーこの作品っ。ホントに若書き作品ですか。うーん、シドンさんの演奏は、情感タップリ入れ込んで、聴くのは、ちょっと億劫になります。つきあうと疲れます。でも、うねうね、もだえそうになっているところが、ある意味、面白く聴けました。ピアノ・ソナタ第1番から、これかぁ~ 疲れそうですね。

CDカップリング:1番~10番、幻想ソナタ嬰ト短調、ピアノ・ソナタ変ホ短調 3枚組BOX 出典:YouTube Scriabin: Piano Sonata No.1 in F minor, Op.6 ロベルト・シドン – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

スクリャービン:ピアノ・ソナタ第1番【解説】

スクリャービンのピアノソナタ第1番(ヘ短調 作品6)は、1892年に作曲されています。過度のピアノの練習によって、右手を傷めたためか、ヘ短調という暗い調性が選ばれており、神に対するスクリャービンの個人的な申し立てなのだそうです。(あんなに練習したのに~ 報われない思いが爆発した?)4つの楽章で約19分のソナタです。

第1楽章 暗く、情熱的に開始しますが、終結部は絶望に落ち込みます。変イ長調による憂鬱な第2主題が登場し、やがて呈示部を非常に壮麗に締めくくります。不穏な展開部の後で、再現部で2つの主題が再登場。形を変化して転調を経て第2主題は、ヘ長調に。静かな楽章終止は最後に引き伸ばされた和音が、ヘ長調の主和音に落ち着くまでヘ短調、ヘ長調を逡巡します。

第2楽章 ハ短調の第2楽章は、三部形式による悲しい緩徐楽章で、ハ長調の主和音によって、ひっそりと終わります。

第3楽章 急速なプレスト。ヘ短調で、圧縮されたロンド形式。興奮の冷めない楽章で、変イ長調による甘美な中間部によって束の間、解放されますが、解決されない終結部に向かって怒りに満ちた連打が響きます。ヘ短調の緩やかな最終楽章に至ります。

第4楽章 ショパンの葬送ソナタの第3楽章に似た葬送行進曲です。暗闇は、ヘ短調による寒々とした楽章終止で晴れることがなく、最終和音は、ヘ音とハ音だけの空5度を、両手のオクターヴで響かせ、短調か長調なのかわからない終わり方となります。

スクリャービンの前期ピアノソナタは、幻想的で複雑な調べですが、甘い響きがして聴きやすいです。聴き進むにつれて、髪の毛が逆立ちはじめ、あーついていけへん!(と叫ぶ羽目になります)鬱々として若いエネルギーが爆発! 疲れて抜け殻です。(アンタ怒りすぎやねん。)感情のコントロール、バランスは大事ですね。

スクリャービン:ピアノ・ソナタ第1番【ディスク情報】

1968年 ロベルト・シドン G 
1972年 アシュケナージ Dec 
1990年 ホーカン・アウストボ Brilliant Classics
1995年 マルカンドレ・アムラン Hyperion
2018年 ヴィンチェンツォ・マルテンポ Brilliant Classics 

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