ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲【聴いてみよう】Ravel: Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82

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ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲【YouTube】

ボリス・ギルトブルグ クリスティアン・マチェラル フランス国立管弦楽団 ボリス・ギルトブルグさんは、2013年のエリザベート王妃国際ピアノコンクール優勝者です。コンサート動画を拝見して、ホント 左手一本での演奏って、超ムズイと思いました。カラダのバランスが、悪くなりそう。左手だけで弾いているとは感じさせない楽曲であることを、改めて認識しました。重厚な出だしから、引き込まれてしまいます。Boris Giltburg Cristian Măcelaru Orchestre National de France 出典:YouTube Ravel – Concerto for the Left Hand | Giltburg, Măcelaru, ONF

ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲【名盤・おすすめ】

ジャン=エフラム・バヴゼ ヤン・パスカル・トルトゥリエ BBC交響楽団 😍

ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲 ジャン=エフラム・バヴゼ ヤン・パスカル・トルトゥリエ BBC交響楽団 2020年 Ravel: Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 Jean-Efflam Bavouzet Yan Pascal Tortelier BBC Symphony Orchestra

バウゼさんの演奏は、最初からもうワタシの心を鷲づかみにしちゃう。この曲が好きで、何度聞いても飽きないのです。金管の蠢きのところから立ち上ってくるオケの音、この最初のところのエキゾチックさに毎度、悩殺されてしまいます。トルトゥリエさんのオケも、金管が登場するまでの立ち登りが、するっと速いです。で、ピアノのソロに移るところの間合い。バウゼさんのタッチは、さすがにフランス系の作品に精通されておられるだけあって、ソフトです。この微妙な色彩感と、滑るような柔らかさ。

それでいてピアノ音の彩度が高いです。オケは、もうちょっと精緻な方が嬉しいのですが、贅沢は言いません。高揚感があり、激してくるところの速さと厚み。ブラスの咆哮に、派手にシンバルが入ってて熱いですっ。ラテン系の感覚で、適度に荒々しい雰囲気があって、オツな感じがしました。熱くて分厚い胸板男性的なオケと物腰の柔らかいピアノで、ワタシは悩殺されました。

CDカップリング:ドビュッシー ピアノと管弦楽のための幻想曲、ラヴェル ピアノ協奏曲ト長調、左手のためのピアノ協奏曲、マスネ 2つの即興曲、トッカータ、2つの小品、狂ったワルツ 出典:YouTube Concerto in D Major for the Left Hand, M. 82 ジャン=エフラム・バヴゼ – トピック Provided to YouTube by PIAS

ユジャ・ワン フランツ・ウェルザー=メスト ウィーン・フィル 🙂

ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲 ユジャ・ワン フランツ・ウェルザー=メスト ウィーン・フィル 2018年ライブ Ravel: Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 Yuja Wang Franz Welser-Möst Wiener Philharmoniker

ユジャ・ワンさんのライブです。第一次世界大戦終結100年コンサート ライブ盤で、録音状態は万全ではないので、もしお聴きになるのであれば、やはり2015年のチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団との演奏をお薦めします。

CDカップリング:「ヴェルサイユ平和コンサート」 モーツァルト 魔笛序曲、ドビュッシー夜想曲~シレーヌ~、ホルスト 惑星~火星~、ワーグナー神々の黄昏~葬送行進曲~、ラヴェル 左手のためのピアノ協奏曲、V・ウィリアムズ カンタータ「ドナ・ノービス・パーチェム」一部、ベートーヴェン ミサソレムニス~アニュス・ディ~、アイヴィズ 答えのない質問 2018年 フランツ・ウエェルザー=メスト ウィーン・フィル 第一次世界大戦終結100年コンサート ライブ盤 出典:YouTube Ravel: Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 Yuja Wang Provided to YouTube by Universal Music Group

デニス・コジュヒン 山田和樹 スイス・ロマンド管弦楽団 😘

ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲 デニス・コジュヒン 山田和樹 スイス・ロマンド管弦楽団 2017年
Ravel: Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 Denis Kozhukhin Kazuki Yamada Orchestre de la Suisse Romande

コジュヒンさんの演奏は、こだわり抜いた音で、ゆったり弾いておられる気がします。左手は、ワタシ的には、低音の響きが、雄渾に出てくる演奏を好みとするのですが、あまり蠢き、悩み、エネルギーをためて起きあがっていこうという意思の強いものでないようです。金管を除きオケ共々穏やかで静かですし、聴き手にお裾分けする情感や、湧き起こるような何かが伝わってくるようにも感じませんでした。しかし、綺麗な音で、オケと丁寧に、内声部も大事に演奏されているようにお見受けします。

CDカップリング:ラヴェル ピアノ協奏曲ト長調、ガーシュウィン ピアノ協奏曲、ラヴェル 左手のためのピアノ協奏曲 2017年録音 出典:YouTube Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 デニス・コジュヒン – トピック Provided to YouTube by PIAS

ユジャ・ワン リオネル・ブランギエ チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団 😘

ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲 ユジャ・ワン リオネル・ブランギエ チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団 2015年 Ravel: Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 Yuja Wang Lionel Bringuier Tonhalle-Orchester Zürich

細身のオケと、熱情あふれるピアノで、どのような演奏になるのか気になりますね。リオネル・ブランギエさんが、若くしてトーンハレ管のシェフに抜擢されたということに注目しちゃいました。音楽監督も兼任しているって、うーん、オケも急速に若返りを図ってますよねと思っていたら、パーヴォ・ヤルヴィさんに替わっているし。

へっ? じゃ、どこのオケに行ったの? リヨン? まあ、そんな感じで、CDを購入して積んで置いたのがまずかったです。サラリーマンの終身雇用制度は、もはや崩壊していますが、もちろん指揮者なんて、どこかのオケを踏み台にして昇っていく野心満々の人でないと務まらないお仕事だろうし、ピアニストも人気商売だとも思います。この上昇気流にある二人の演奏だからこそ、注目も集まっているわけだと思います。

しかし、若い指揮者を煽る、火花が散るのを想像していましたが、冷徹に走るピアノです。意外と中間部分が速めに演奏されています。粘りけや浮遊感を混在して欲しかった気もしますが、なかなか新鮮で良かったです。CDカップリング:ラヴェル ピアノ協奏曲ト長調、フォーレ バラード嬰ヘ長調、ラヴェル 左手のためのピアノ協奏曲 出典:YouTube Ravel: Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 Yuja Wang Provided to YouTube by Universal Music Group

ピエール=ロラン・エマール ブーレーズ クリーヴランド管弦楽団 😘

ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲 ピエール=ロラン・エマール ピエール・ブーレーズ クリーヴランド管弦楽団 2010年 Ravel: Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 Pierre-Laurent Aimard Pierre Boulez The Cleveland Orchestra

エマール盤は、2曲の協奏曲がライブ盤である。冒頭、コントラファゴットのうめき声が、うぅうぅ~ ごぉごぉ~っと出てくる。この序奏部分は、かなり丁寧に描かれているというか、こんなに長いものだったのかと、驚いてしまった。テンポがゆったりしており、うねり感が半端ない。

音の分離も良いのだろう、超低音の響きが、しっかり入っている。で、段々と大きく膨らんで、膨らんで~ 金管が、濃厚なとろみ感を出して吹かれており、粘り気がすごい。まあ、この序奏部分の弱音での重低音のうごめき感は、ホント、半端なく、すさまじい執念が籠もって、籠もって~ 怨霊のように宿っている感じがする。

で、エマールさんのピアノが出てきた時には、暗闇のなかの静寂感が漂っており、ヒンヤリした空気感がある。左手一本で弾かれている協奏曲だが、しっかりとしたタッチで、深い音が聞こえてくる。ゴツン ゴツンとした響きではなく、カッチリした楷書体の音で、カツンっとした硬質的な粒立ちだ。

オケの方は、金管のプラッター音も、機敏ではあるのだが、色彩的には、さほどカラフルなものではなく、キラッとした光の反射のようなものは、あまり感じない。オケもピアノも、あの序奏部分とはうってかわって、重量級の演奏ではなく、さっぱりした、淡泊で薄口な感じ。熱気を帯びていないので、面白みには欠けてしまう。あの序奏部分は、いったい何だったんだ。と、思いつつも、とても丁寧なフレージングで、清冽な感じを受ける。かなり密度の高い音が、ピアノからも、オケからも発せられ、音が多いと思ってしまった。オケもピアノも、音が浮き出ているというか、互いを相殺して、埋もれていかない感じ。

多彩な音が、ゆるやかなフレーズのなかで、キラッとして奏でられており、スピード感はないが、それよりも、音の全部を見せている感じで、他盤よりも音が綺麗に聞こえる。演奏者の勉強用 レファレンス盤になりそうだ。

行進曲風の場面になると、少し活発になるのだが、元気がないというか、テンポは均一的で、洒脱な、しゃれっ気はないし、むふふっ~というような色香は感じない。素っ気ないというか、遊び心が少ないというか、まさしく、教科書どおりというか。音は多いのに、リズミカルではなく、弾まないというか、ピアノはピアノの譜面を弾いてるし、オケは、違うフレーズを弾いているという感じで、通常なら、つまんないっと、ひとこと言ってしまうところ。

でも、オケの方は、幾重にも、旋律の層が分かれており、う~ん。これは合わせるのが難しそうだな~とか、オケのシンバルが登場すると、なんだか、お寺さんの仏具の鳴り物 妙鉢って感じのシンバル音がしているな~とか。聞き込めば、多彩な音が、盛り込まれて、それらがそれぞれ主張しつつ、綺麗に聞こえてくるように思う。

るで、音のレントゲンのよう・・・。透けて見えるというより、細部に、きめ細かな音像が浮かんでいるって感じ。あまり音が多すぎても、我が輩の耳は、ついて行けないし、妙に見えすぎて、いささか疲れてしまうのが、ホンネ。かなり聞き込んだ後に聴けば良いような、上級編って感じにも思うが~ そういう意味では、演奏家さんたちのお勉強ツールかもしれないと思いつつ、結構、面白そうやん。って世界が広がるような気もする。当盤に愉悦性を求めても、まあ、得られない気もするが、今後の期待を込めて~また、拝聴しましょう。

CDカップリング:ラヴェル 左手のためのピアノ協奏曲、ピアノ協奏曲ト長調、組曲「鏡」 出典:YouTube Ravel: Piano Concerto For The Left Hand In D, M. 82 ピエール=ローラン・エマール – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

クレール=マリ・ル・ゲ ルイ・ラングレー リエージュ・フィル 🤩

ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲 クレール=マリ・ル・ゲ ルイ・ラングレー リエージュ・フィル 2004年
Ravel: Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 Claire-Marie Le Guay Louis Langrée Orchestre Philharmonique de Liège

マリ・ル・ゲさんのピアノは、力強くピアノの低音の響きが、ゴワゴワ、ゴボゴボ~っとしています。でも、乾いた音として聞こえ、パワーのある響きです。各演奏家で異なる響きが面白く、この序奏だけで聴き比べてみたくなります。また、オケも煌びやかで軽やかな金管を奏でてくれるので、一層、暗さが引き立ちます。単なる光と影という世界ではなく、音の質量の違いが、すごく感じられますね。まるで二極化された世界から、地の底を、どうやって這い上がってくるんだろうと気にしていると、結構、小走りで駆け上がってくるんです。どひゃー。オケが応援団みたい。ワクワクしちゃって、楽しくって、やめられません。

CDカップリング:ラヴェル ピアノ協奏曲ト長調、左手のためのピアノ協奏曲、シュールホフ ピアノと小オーケストラのための協奏曲、第2番(作品43WV66) 出典:YouTube Ravel: Piano concerto in G major, M. 83 クレール=マリ・ル・ゲ – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

フセイン・セルメット エマヌエル・クリヴィヌ フランス国立リヨン管弦楽団 😢

ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲 フセイン・セルメット エマヌエル・クリヴィヌ フランス国立リヨン管弦楽団 1998年 Ravel: Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 Huseyin Sermet Emmanuel Krivine Lyon National Orchestra

セルメットさんは、1955年トルコ生まれのピアニストです。おとなしめの演奏で静かに潜行してから、オケが立ち上ってくるところは、そこそこパワーが出てきますが、直接的な音響ではなく微妙に終わる感じです。で、ピアノは短いフレーズで途切れてしまって、ぱらら ぱらら えっ、音の隙間が丸見えとなり、ちょっと興ざめしてしまいます。オケの金管は、細かいパッセージを吹き続けて、これは良いわと驚き喜んだり、木管のフレーズが良く聞えてきたり、スネアの細かい振動に痺れたり、コーラングレの響きに耳をそばだてたり、ワタシの焦点はオケが行きがち。

肝心のセルメットさんのピアノは、前半は、かなり内省的で、静かに呟き、雨音のようなピアノです。しかし、中間部分、行進曲風のところにさしかかったあたりから、変貌していきます。影に隠れていたようなピアノが、徐々に活発的に動き始めるのです。来たーっ、やっと目覚めたーっ! 

綺麗にコロコロ転がってみたり、んちゃ んちゃ~ リズムを得て、オチャメに木管とコラボをします。この変貌は楽しいですね、ウツウツ、ボソボソの呟きと、チャンバラごっこをしているような活発な面との落差が大きく、内外、陰陽のハッキリした演奏です。外向的に振る舞おうとすればするほど、傷ついてしまう人(ピアノ)のようで、繊細な演奏となっています。ラストは明るく終わるのですが、心もカラダも傷ついていたようで、なんだか同調してしまい、哀しくなっちゃいました。長めの19分25秒の演奏です。

CDカップリング:ラヴェル ピアノ協奏曲ト長調、左手のためのピアノ協奏曲、クープランの墓(管弦楽版)出典:YouTube Concerto pour la main gauche in D Major, M. 82 リヨン国立管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by naïve classique

コチシュ・ゾルターン フィッシャー ブタペスト祝祭管弦楽団 😘

ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲 コチシュ・ゾルターン イヴァン・フィッシャー ブタペスト祝祭管弦楽団 1996年 Ravel: Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 Kocsis Zoltán Ivan Fischer Budapesti Fesztiválzenekar(Budapest Festival Orchestra)

コチシュさんと言えば、ハンガリー三羽烏(カラス)と称されるお方である。シフさん、コチシュさん、ラーンキさんこの三人のなかで、哀しいことに2016年に亡くなってしまって、すごい損失感があります。これから、バルトークをしっかり聴こうと思っていたので、ショックでした。(って、お勉強は進んでません)

で、専門はバルトークという感じです。バルトークは、なかなかに晦渋で、とっつきづらく難しく~ いや、バルトークの曲自体が難しいので、聞き込めていないのだが、ラヴェルは好きである。この左手は、単楽章だ。冒頭、コントラバスとファゴットの恐ろしいほど低音の蠢きが聞こえる。そこから、じわじわ~っと音が動き、頭を出して、急速に太陽が昇ってくるかのような輝きを生んでいく。

コチシュ盤のオケは、幾分、シャンシャンという音というか、金属片の輝きのようだが、少し荒々しい。ピアノは、いたって穏やかだ。 ガツンっと強く入ってくるのかと思いきや、そろっと音を置いて入ってくる。

落ち着いているというか、腰が据わっているというか、じわじわ~っと、聞かせてくれる優しい間合いがある。録音状態は良いが、焦点は、少し奥まっている感じで、ピアノの音は、あまり前面に出てきていない。

ホールの中央より少し後ろの方に座っている感じがする、ライブ盤かな~っと思うような録音である。で、ピアノの音とオケの音のバランスが、自然な感じがするので、他盤のような、ドスン ドスンっという、ティンパニーの激しい音や、どす黒い暗黒の世界、そこから、光が射し込んでくる~という、劇的な展開というか、リアル感は乏しい。

オケの厚みは、さほど感じず、どろっとした感覚ではなく、さっぱり乾いた雰囲気がある。金管の短いパッセージも乾いており、凶暴さとも感じる荒れた面もあり。その代わり、ピアノのソロの部分の、じわじわ~っと、繊細な音は、それは掌で大切に育てていかなければならない~というような感じで、軟らかい、ふわっとした音で奏でられる。コチシュ盤のききどころは、このオケが関与しないピアノのソロ部分で、思わず息を止めて静かに耳を傾けてしまう。

中間部分は、行進曲風のリズムが生まれてくる。歯切れ良く、リズミカルに進む。金管の、ぱぁっとはじける音が、ジャズっぽさを表しているし、ガチョウのような木管の音が聞こえたり~えっ?と感じるほど、テンポもぐぐっと落として、タメて~ 間合いを十分に、気怠さも良く表現されている。ふぁ ぷあぁ~ という、とぼけた音や、のらりくらり~っとした間合いもあるし、ジャズっぽさ表現は、本場ものとは違うが、なんとかしようと~頑張っていると思われる。

ちょっぴり、クサイ演出でしょうけど。いや、ホントは下手なだけだったりして~ 小太鼓の軽快な響き、ちょっと、シンバルのシャーンと鳴り響く、ゴージャスな派手なオケ。粗めの 豪快なオケと、かつ繊細なピアノかな~っと思う。彩度を落とした、少し、くすんだ音の装飾音が、とても印象に残る。柔らかな、襞の細やかな、さらっとした、繊細なタッチが、オケのなかに、埋もれることなく、微妙なバランスのなかで溶け合うようになっているところが、すごい。

角が取れた丸い音とは違うし、硬質感はあるが、硬くないし、くすんだ音色で、溶けそうなところがあるのだが、溶けてはないし。 鋭く、かつんかつんとしたタッチでもないし、形がクッキリしないのだけど、繊細さが感じられ、リズミカルで、なんと例えれば、うまく伝えられるのか。う~ん。とっても難しいのだが。 華麗でも、派手に、キラキラした、クリスタル系の煌めきがあるわけもない、硬いんじゃーないのだ。しっくり~ 慣れ親しんだ、ちょっぴりクラシカルなシックな音質で、長年、木が磨かれて、ちょっと、風合いが出てきた太めの柱みたいな、ピアノの雰囲気がある。オケは、ちょっとイマイチかなあ。総体的には、歌舞伎役者のような、派手さはないし、ぐぐ~っと引き寄せるような演技派でもないし、ご大層な演奏ではないが、ソロの部分の繊細さは、さすが。聞かせてくれます。

CDカップリング:ラヴェル ピアノ協奏曲ト長調 1995年、左手のためのピアノ協奏曲 1996年、ドビュッシー ピアノと管弦楽のための幻想曲 1995年 出典:YouTube Ravel: Piano Concerto For The Left Hand In D, M. 82
チャンネル:コチシュ・ゾルターン – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

クリスティアン・ツィマーマン ブーレーズ  ロンドン交響楽団 🥰

ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲 クリスティアン・ツィマーマン ピエール・ブーレーズ  ロンドン交響楽団 1996年 Ravel: Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 Krystian Zimerman Pierre Boulez London Symphony Orchestra

オケも巧いし聴かせどころを聴かせてくれて~ もちろんピアノも、左手1本とは、とっても思えない。格好が良い。おみごとっ。千両役者っ!カップリングされているピアノ協奏曲ト長調と、この左手のための協奏曲では、オケが違う。ブーレーズさんの指揮だけど、クリーヴランド管とロンドン響である。 それにしても、欲張りなディスクで、ピアノ協奏曲が2曲と、高雅にして感傷的なワルツが聴けるので、このCD1枚で、優雅に演奏会に行った気分だ。

で、ピアニストのツィンマーマンさん。表記が混在してて、ツィマーマンともツィメルマンと呼ばれることがあるが、このサイトでは、ツィマーマンさんて書いておく。さて、左手は、単楽章だが、3つの部分に分かれている。冒頭のフレーズでは、弱々しい低く呻く声が聞こえてくるが、弦と金管が合わさってくると、艶のある響きとなって、いきなり明るく煌めいてくる。 まるで太陽がいきなり、水平線から昇ってきたような感じで、まぶしいぐらいだ。金管の伸びやかで、すーっと伸びてくる、勢いの良さと、心持ち太い線のしなやかな響きが聞こえてくる。それが、う~ん。伸びて伸びて~ ぐいっと、キレ良く、締めくくる。

で、すかさず、ツィマーマンさんのピアノが、力強くクリアーに入ってくる。ゴンゴン、ドスンドスンという、荒々しい気配で入ってくるのではなく、さすがにスマートだ。ワタシの勝手な予想では、幾分弱々しいかもしれないな~かと思っていたのだが、さにあらず。この曲想独特の展開、つまり、地下で蠢くカオス的な、混沌とした雰囲気から、一気に、派手なぐらいに荘厳に光が射し込んでくるような場面の変化が、これは、格好良いのだ。

臭いぐらいに派手で、そのくせ、格式高くやってくれないと、この曲の最初は決まらない。ツィマーマンさんのピアノも、オケも、なんとも爽快で、こりゃ~ 格好良いのである。 この格好の良さは、金管の音色と色彩度だろうと思う。

ピアノも、低音のガツンとした、ガッツのある音が入ってくる。そして、グリッサンドなんて大見得を切る歌舞伎役者のように、爽快極まりなく、胸がスカっとするぐらい決まっているのだ。う~ん。こりゃ凄い。少し幅の利かした、豊かな音量と音質で、拍手!って感じ。ツィマーマンさん、よくぞ、見栄を切ってくれた~。

(ハッタリをかます。このかましかたが、やっぱ年輪というか熟練というか、良い味の品のあるハッタリなのである。やっぱ~巧いんだ。)ティンパニーもメチャ大きく入ってくるし、こりゃ~良いわ。オケも、力強いし、ピアノも決まっているし、全体的に勢いもノビもあるし、きらめき度も高いし、ホント、格好が良い。

録音状態も良いし、音の広がり感も満足。ピアノも、左手だけで演奏されているとは思えないほど、豊かな音量で収録されているし、聴き応えがある。星が瞬いているような音の煌めき。間合い。粒立ちの良さと、力強い押し込み。いろんな要素を、それぞれの場面で使い分けるテク。これを全体の構成を把握して、その場面、場面で、多彩に使い分けているように思える。それに、これ、ホントに左手だけで弾いているのか? と耳を疑ってしまう。

通常だと右手の音、左手の音になるだろうと思われる音があるのだけど、その両方に役割分担されているであろう音に、間合いがあるような気がするのだ。うまく言えないんだけど、左手1本で弾くわけだから、ついつい繋がってしまうだろうに、通常のように、普通に、右手、左手で弾いているように、わけて聞こえてくるんだよね。音も、他の盤で聞くより多いんじゃーないかと思うほど、細かな音が聞こえてくるんだけど~

で、中間部分のミリタリー調のフレーズも、金管が巧い。リズミカルで、コミカル。「ふぁみれ どしらそっ・・・」「っふぁふぁふぁみれ~」 世俗的っぽく、そのくせ、オチャメだ。多彩な楽器で構成されていて、各楽器が、口々に吹かれ、弾かれ、いろんな音が聞こえてくる。グリッサンドの、パラパラパラ~ 「タタタ タタタ タタタっ」

これが、うるさくなく~ ペチャペチャ、クチャクチャ~ 楽しげに聞こえてくるから不思議だ。良い演奏だなあ。楽しい。適度な重量感、重厚さと、煌めき、繊細さ。体が自然と動いてくるし~ かといって、音の数理的な整理が巧いのか~良くワカンナイんだけど、理論的に、構成的に、♪が並んでいるような雰囲気もあって、プロット(脚本)を生かした演技って感がするのだ。筋書きの巧い演劇を見ているような~ 気持ちの良さを感じるなあ。

構成力、それを見せて貰っているような面白い感覚というか、それと、マジックショーを見ているような痛快さ。騙されているのに、面白いって感じる、なーんか、ちぐはぐな感覚に楽しめちゃう。ぐわ~っと、外に向かって音が飛び跳ねていくんだけど~ 自由闊達な勢いの良さが、聴いている体にも、自然に入ってくるような、外内両方に、縦横無尽さが面白い。 むはは~ やっぱ面白い楽曲だ~。

皮がパリパリしてて、中がジューシーという水餃子のような。いやいや、柔らかい生クリームが入っているような、カスタード・シュークリームを食べているような感じで、う~ん。思わず唸ってしまった。まっ こんな単純な例えで、申し訳ないのですが~ 言いたいことは解っていただけるだろうか。相反する要素が、当然のように、必然のごとく、そこに存在する。巧いっ。やっぱ巧い。文句のつけようがない。

痛快なほどに笑えるほどに、完璧っ。運動機能も抜群だし、オケの持っている陽気な色彩感が、うんうん。良いです。3部目のピアノソロは、ハイ、これも聴き応えあり。人間業とは思えないほど、音がたくさん聞こえてきて、ペダルの使い方わかんないですけど、アルペジオが繋がって、左手1本なのに、メチャメチャ、たっぷりと外に向かって広がって、広がって~ 

最後、オケの金管と打楽器と一緒になって、はじけて終わります。宇宙的な壮大なイメージが湧いてくるし、そのくせ、めちゃ、カラフルで、オチャメで~ いひひっ。この構成の見事さに、やられますねえ。壮大な宇宙的な場面展開が、最初と、最後にあって、のけぞるほどに豪快に、ぶちかまされる。で、中間は遊びの要素をたっぷり詰まってて、最後の一歩手前では、繊細さが詰まってて~ホント、ミクロ、マクロの相乗効果抜群のベクトル この再現の能力には参りました。壮大なイメージで、そのくせ繊細さが同居してて~ はあ。やられました。脱帽。短い楽曲なので、何度でも繰り返して楽しめちゃうし飽きません。しばらく、この盤に、はまってます。

CDカップリング:ラヴェル ピアノ協奏曲ト長調、高雅にして感傷的なワルツ(ブーレーズ クリーヴランド管弦楽団 1994年)出典:YouTube Ravel: Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 チャンネル:クリスティアン・ツィマーマン – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ジャン=イヴ・ティボーデ デュトワ モントリオール交響楽団 😘

ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲 ジャン=イヴ・ティボーデ シャルル・デュトワ モントリオール交響楽団 1995年 Ravel: Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 Jean-Yves Thibaudet Charles Dutoit Orchestre Symphonique de Montreal

録音状態は良い。柔らかい良いピアノなのだけど、ピアノとオケの色彩感覚が違うような気がするこのラヴェルの左手は、単楽章だが、内容的には3つの部分に分かれている。まず冒頭で低弦と、コントラファゴットがモゴモゴと蠢き、ホルンの暗闇から立ち上がってきて、弦や金管が合わさって、大きな高揚感を生んでいく。

コントラファゴットの不気味な音色が印象的だ。このティボーデ盤は、よく綺麗に録音されているな~と感心しちゃうほど、オケの音色は、極めてクリアーだ。ホルンのフレーズの合わさり方も、靄がかかっているなかでの響きが感じられる。また、木管と重なるところもクリアーだし、ヴァイオリンが 入ってくると、一気に色彩が変わるところも見事だ。

その後、トロンボーンやトランペットのファンファーレ風なフレーズで、頂上に登ってオケが解散する。この盤は、デュトワさんの振っているモントリオール響の煌めきのある軽やかな響きが、かなり印象に残る。ねちっこくされると、なんとも、アメリカ映画っぽく、世俗的になりかねないんだけど、シャープで爽やかに、鮮やかなほどの煌めき感が気持ち良い。新鮮で明るいし、色彩感は断然良いのだ。

で、肝心のティボーデさんのピアノは、オケに比べると、くすんでて甘いし、柔らかい音色だ。色彩的には中庸で、冒頭のフレーズが終わって、ちょっと間をおいて、ピアノが、低音の方へと「タタタ タカタカ タ~」と下りていく ところの重量感は、ちょっと軽めかもしれない。ピアノの出だしで、ガツンっと一発かましてくれないところは、残念だ。ガツン、ドシンっと来ないので、モノ足らない感じがするのだ。でも、色彩感ではピアノとオケは補完しあっている。

ピアノは、沈みがちなフレーズ、さらっとしているフレーズにおいて、常に憂いが含まれている。 ソロとしての雰囲気は、バッチリだ。でも、左手だけで演奏される楽曲だし、ピアノの左端にある超低音が、ガシン、ガツンと響いて来ないと、この楽曲としては、インパクトに欠けちゃう嫌いがある。そう、面白くないんだよなあ。ペダリングは、短めなのかもしれない。中間部のリズム感は、まずまず。ミリタリー調に金管のキレはあるのだが、総体的に、ドンドンっと入ってるとこも、なーんかパワー不足。なんか乗りきれてないのかもしれない。

中間部は、可愛いフレーズもあるし、ミリタリー調はあるし、ソフトさもあるし、ちょっとジャズっぽい風味もあって~ 複合的に織り込まれた面白い楽曲なのだが、どうも、ノリノリ感っていうのが、なーんか体に伝わってこない。ワタシ的には、ちょっぴり残念。最後のピアノのソロは、柔らかく、ドビュッシーのピアノ曲を聴いているような、くすみが感じられる。音はタップリ詰まっているが、穏やかで、おとなしめ。

ピアノのソロとして聴く方が聴き応えはあるように思うんだけどなあ。オケはオケで、なかなか良く響くし、音もタップリ入っているんだけど。なんか~ ピアノと、オケが合ってないような気がするのだ。オケは、バンバンに行きましょうって誘っているのに、ピアノは内気で~ 全体的には柔らかい陽射しを感じさせる雰囲気で。爽やかで、金管や弦の華やかさの香りは、やっぱり~オケの色彩だろうし。そういう意味では、1部、3部は、輝かしく、外向的に広がって、とても気持ちが良い 。

それに、中間部のリズミカルさは、幾分抑え気味で~ なんか不完全燃焼って感じが否めない。 ティボーデさんのピアノと、デュトワさんの振るオケでは、色彩感覚が、異なっているのではないだろうか。ソフトフォーカスされた、ちょっぴり憂いのある左手だと思うが、この盤を聴くと、ピアノとオケと、性格の不一致という感じがしちゃう。でも、ラストは、壮大な拍手が入っている。むふっ 性格はマッチングしなくても、やっぱ、補完しあって成功なんだろう。

CDカップリング:ラヴェル 左手のためのピアノ協奏曲、オネゲル ピアノ小協奏曲(コンチェルティーノ)、フランセ ピアノ小協奏曲(コンチェルティーノ)、ラヴェル ピアノ協奏曲ト長調 出典:YouTube Ravel: Piano Concerto For The Left Hand In D, M. 82 Jean-Yves Thibaudet Provided to YouTube by Universal Music Group

フランソワ=ルネ・デュシャーブル ミシェル・プラッソン トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団

ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲 フランソワ=ルネ・デュシャーブル ミシェル・プラッソン トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団 1995年 Ravel: Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 François-René Duchâble Michel Plasson Toulouse Capitol Orchestra

CDカップリング:ラヴェル ピアノ協奏曲ト長調、左手のためのピアノ協奏曲、ドビュッシー 幻想曲
出典:YouTube Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 フランソワ=ルネ・デュシャーブル – トピック Provided to YouTube by Parlophone (France)

ルイ・ロルティ ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス ロンドン交響楽団

ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲 ルイ・ロルティ ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス ロンドン交響楽団 1989年 Ravel: Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 Louis Lortie Rafael Frühbeck de Burgos  London Symphony Orchestra

CDカップリング:ラヴェル 左手のための協奏曲、ピアノ協奏曲ト長調、フォーレ バラード嬰ヘ長調(ピアノとオケ版) 出典:YouTube Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス – トピック Provided to YouTube by PIAS

ミシェル・ベロフ アバド ロンドン交響楽団 😘

ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲 ミシェル・ベロフ クラウディオ・アバド ロンドン交響楽団 1987年
Ravel: Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 Michel Béroff Claudio Abbado London Symphony Orchestra

ワタシが所有しているCDは、いまいちヌケが良くない録音です。重々しい演奏で、ラヴェルというより、カッチリしすぎた演奏で、ドイツ臭くて、鬱々している。冒頭、低弦と、コントラファゴットが、モゴモゴ~っと、どす黒くうねってくる。スターウォーズのダースベーダーが、格好良く登場するのとは違って、暗黒の世界だが、どこか、火山の溶岩ドームのような粘りけがある。コントラファゴットだと思うが、すっごく 暗い。音にならない音という感じヴァイオリンの明るい弦の音とノビが出てきて、そして金管の色がついてくると、一気に晴れる。

この辺りの音の広がり、一気に広がる開放感、太陽がまるで昇ってくるような楽器の使い方だが、上に伸びていこうとするフレーズなのに、どこか足取りが重い。カラフルな音ではあるのだが、うっ 重い。なんだか音が混濁しているような気がする。せっかく、昇ってきて頂点を描くところで、抜けきらない、広がり感が少ない音で~ あららぁ。足を引きずっているかのような粘りけと重さがあり、「どぉ~しぃ~ みそら しぃ~」「らぁ~」と響く金管の音と、シャーンっという響きが金属っぽい。

ベロフさんのピアノは、出だしが、オケの響きの方が重く、響きに重なってしまってて、聞こえづらい。せっかく格好良く出ようとしているのに、音が聞こえないなんて~ なーんて、もったいない。特に、高音の音が、粒立ちよく叩かれておらず、聞こえない。オケの音量に負けないように、頑張っているって感じがするのだが、う~ん。確かに、ガツンと出てくれないとダメなんだけど、オケが重すぎて、また、ピアノのゴンゴンした低音の響きが硬い。総体的には、意外と硬くて、重くて、がっしりしているという感じだ。 テンポも遅め。

音の間合いは面白いが、ところどころ、はっきりしない音があったりする。左手1本だが、右手の役割を果たすべきフレーズが、もっと強調されても良いんじゃーないかと思うんだけどな。 ちょっと主となるフレーズが、低音と同じ質感をもっていて重い。 パラパラパラ~っと展開の速いところは、スピード感があって、とっても綺麗に弾けている。オケの鳴りっぷりは、う~ん。どこかアラっぽい。「そっらぁ~ そどっ しっふぁっ~どみそぉ れれ~みどっ ふぁ~」というフレーズは、音が、まろやかではなく、粗野で綺麗な音が出てない。ティンパニーには勇壮さがあるのだが、丁寧じゃないよねえ。パパパっ・・・と金管のパッセージの部分も、なんかねえ。粗い。それに、ピアノも、粒立ちがハッキリしない。

ペダルで濁ってしまい、まるで、濁った水のなかを歩いているような気分になってしまう。指が立って、カチンと叩かれているのだろうか。ソロ部分も、綺麗だが、明るさに欠けており、鬱々してて、どこか傷まみれで歩いているような気分だ。録音状態はまずまず良いのだが、ヌケがよろしくない。明晰な録音とは言い難く、クリアーではない。少しデットかな。ミリタリー調の部分は軽快ではあるが音が暗い。ちっとも、楽しくならないんですけど。

ラヴェル特有の明るい色彩感あふれる音で、演奏されてなくて~ ワタシ的には期待はずれ。この楽曲は、グロテスクさも持ち合わせてはいるが、洒落っけのある踊るフレーズもあるわけで、全体的に足取りが重いのは、どうかなあ。 ジャズっぽい即興性のあるフレーズもあるんだし。もっと洒落てても良い筈だと思うんだけど。モゴモゴ、鬱々してて~ 間合いと、うえに伸びる音、長く伸ばす音に、弾力性が無いって感じがする。ピアノにもオケにも、ノビ感、柔軟性に欠けているかもしれない。

フレーズの裏で、タッタ タッタ タッタ・・・と、打楽器的に使われているシーンもあるのだが、音が弾まないんだよね。いろんな要素が詰まった、おもちゃ箱みたいな楽曲だが、透明度は高くないし、活き活きしてない、瑞々しくないっていうか、 オケが主役になってしまって、野性的な要素も、行進風にも鳴っているんだけど、どことなく中途半端。ソロ部分は、繊細さもあるが、すぐに暗く沈んでしまって~

ある意味、うつうつ~としてて瞑想的だ。ワタシ的には、ラヴェルは、もっと弾んで欲しい気がする。で、オケは、どこか映画音楽ぽい感じで仕上がっているような感覚だ。特に金管は、いただけない。おいおい、映画の録音かい。そういう意味では、安っぽい感じがして、格調高い洒落っけが感じられず。ワタシには、楽しくないです。スミマセン。

CDカップリング:ラヴェル ピアノ協奏曲ト長調、左手のための協奏曲(ピアノ:ベロフ 1987年)、バレエ音楽「ジャンヌの扇~ファンファーレ~」、古風なメヌエット、クープランの墓(管弦楽版) 出典:YouTube Ravel: Piano Concerto for the left hand in D Major チャンネル:マルタ・アルゲリッチ – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

パスカル・ロジェ シャルル・デュトワ モントリオール交響楽団

ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲 パスカル・ロジェ シャルル・デュトワ モントリオール交響楽団 1982年
Ravel: Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 Pascal Rogé Charles Dutoit Montréal Symphony Orchestra

CDカップリング ラヴェル ピアノ協奏曲ト長調、左手のためのピアノ協奏曲、古風なメヌエット、海原の小舟、ジャンヌの扇 ファンファーレ 出典:YouTube Ravel: Piano Concerto in D for the Left Hand, M.82 シャルル・デュトワ – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

レオン・フライシャー 小澤征爾 ボストン交響楽団

ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲 レオン・フライシャー 小澤征爾 ボストン交響楽団 1990年
Ravel: Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 Leon Fleisher Seiji Ozawa Boston Symphony Orchestra

スピード感はありませんが、フライシャーさんが右手を負傷して復活した後のレコーディングだったようです。CDカップリング:ラヴェル 左手のためのピアノ協奏曲、プロコフィエフ ピアノ協奏曲第4番、ブリテン ディヴァージョン 2枚組BOXや、23枚組レオン・フライシャー全集があります。出典:YouTube Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 レオン・フライシャー – トピック Provided to YouTube by Sony Classical

ジャン=フィリップ・コラール ロリン・マゼール フランス国立管弦楽団

ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲 ジャン=フィリップ・コラール ロリン・マゼール フランス国立管弦楽団 1978年 Ravel: Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 Jean-Philippe Collard  Lorin Maazel French National Orchestra

CDカップリング:ラヴェル ピアノ協奏曲ト長調、左手のためのピアノ協奏曲、ピアノ曲「鏡」1978年
出典:YouTube Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 ジャン=フィリップ・コラール – トピック
Provided to YouTube by Warner Classics

アンドレイ・ガヴリーロフ サイモン・ラトル ロンドン交響楽団

ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲 アンドレイ・ガヴリーロフ サイモン・ラトル ロンドン交響楽団 1977年
Ravel: Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 Andrei Gavrilov Simon Rattle London Symphony Orchestra

CDカップリング:プロコフィエフ ピアノ協奏曲第1番、ラヴェル 左手のためのピアノ協奏曲 1977年 出典:YouTube Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 アンドレイ・ガヴリーロフ – トピック Provided to YouTube by Warner Classics

モニク・アース ポール・パレー フランス国立管弦楽団 

ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲 モニク・アース ポール・パレー フランス国立管弦楽団 1965年
Ravel: Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 Monique Haas Paul Paray Orchestre National de France

CDカップリング:ラヴェル ピアノ協奏曲ト長調、左手のためのピアノ協奏曲、ソナチネ、高雅にして感傷的なワルツ(ピアノ曲はモノ)1955年 出典:YouTube Ravel: Piano Concerto For The Left Hand In D, M. 82 – Lento – Andante – Allegro – Tempo 1 モニク・アース – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

サンソン・フランソワ クリュイタンス パリ音楽院管弦楽団 😂

ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲 サンソン・フランソワ アンドレ・クリュイタンス パリ音楽院管弦楽団 1959年 Ravel: Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 Samson François André Cluytens Orchestre de la Société des Concerts du Conservatoire

フランソワさんの演奏は、ゴロゴロ、モゴモゴ 不気味な暗澹たる空気感が怖い。超低音の蠢きと「しぃ~ふぁどそぉ~ ふぁらし~ ふぁどそぉ~ ふぁらし~ふぁどそぉ~」というボリュームアップする弦。さらに軋んだ金管の「みそふぁみ~ みそそふぁみ~」という絡み。ごごごぉ~っという土石流のような響きを伴った高揚感なので、ものすごくインパクトがあります。軋んだあとの破裂は、醜い音です。ムンクの叫びのような軋みと歪み。

その合間にガツンと割り込んでくるピアノ。雷のような硬くて鈍くて、ガツンっと一発! ごつい響きのパンチをくらってノックダウン。1959年の録音ですが、キラキラした緩やかなフレーズへの変貌、洒脱の効いた楽しさ、カラダいっぱいに表現される明るさ、頑張っちゃう行進曲、ノリ感のあるリズム 手拍子を打ちたくなるような陽気さ。

第一次世界大戦で、右手を失ったピアニスト ウィトゲンシュタインさんの怨念、憎悪も入っているのかな~って思うのと、戦争が終結した平和を祈る気持ちも入っているのかもしれません。フランソワさんのピアノは、なにごとも、中途半端にやらないダイナミックな演奏で、多彩な楽曲のなかの両極端を追求し、表現した演奏だと思います。

CDカップリング:ラヴェル 左手のためのピアノ協奏曲、夜のガスパール(水の精、絞首台、スカルボ) 出典:YouTube Piano Concerto for the Left Hand in D Major, M. 82 サンソンフランソワ – トピック Provided to YouTube by Warner Classics

ラヴェル:「左手のためのピアノ協奏曲」【解説】

ラヴェルの「左手のためのピアノ協奏曲」(作品82)は、第一次世界大戦で右手を失ったピアニスト、パウル・ウィトゲンシュタインの委嘱を受けて作曲されたものです。ピアノ協奏曲ト長調と並行して作曲して1930年に完成し、翌年初演されています。単一楽章の3部構成で、オーケストラパートをピアノ編曲した自筆譜の表紙には、「混じりあったミューズたち」(musae mixtatiae)と記されているそうで、叙情的な音楽、ジャズ、スケルツォ、行進曲など、異なる様式の音楽が並置された性格を示唆したものとのこと。

ニ長調 4/4拍子で、コントラバスとチェロの和声とコントラファゴットの旋律という超低音で始まります。管弦楽が高揚し、最高に盛り上がったところで、ピアノが登場し華やかなカデンツァを奏します。全体的に、1部は可憐なイメージで、2部はジャズ的にピアノが演奏されており、3部では1部の主題が回帰するものの、すぐに、ピアノの非常に長いカデンツァになります。

ラヴェル独特の精緻な技巧が、左手のみで演奏され、最後は2部の動きが再度繰り返され、瞬時に終わります。とても重厚な出だしであること、和音の美しさ、ジャズの雰囲気など多彩な楽想が、わずか20分弱のなかにパッケージされており、ゆったりと甘美でうっとり。とても左手だけで奏でられるとは思えない楽曲と演奏です。ちなみに、ウィトゲンシュタインが委嘱した作品は、他に、プロコフィエフのピアノ協奏曲第4番、ブリテンのディヴァージョンズ、R・シュトラウスの家庭交響曲余録があります。また、聴いてみましょう。

ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲【ディスク情報】

1959年 フランソワ クリュイタンス パリ音楽院管弦楽団 EMI
1965年 アース パレー フランス国立放送管弦楽団 G
1977年 ガヴリーロフ ラトル ロンドン交響楽団 EMI
1978年 コラール マゼール フランス国立管弦楽団 EMI
1990年 レオン・フライシャー 小澤征爾 ボストン交響楽団 SC
1982年 ロジェ デュトワ モントリオール交響楽団 EMI
1987年 ベロフ アバド ロンドン交響楽団 G
1989年 ロルティ ブルゴス ロンドン交響楽団 CHANDOS
1995年 デュシャーブル プラッソン トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団 EMI
1995年 ティボーデ デュトワ モントリオール交響楽団 Dec
1996年 ツィマーマン ブーレーズ ロンドン交響楽団 G
1996年 コチシュ フィッシャー ブタペスト祝祭管弦楽団 Ph
1998年 セルメット クリヴィヌ フランス国立リヨン管弦楽団 NAIVE
2004年 クレール=マリ・ル・ゲ ルイ・ラングレー リエージュ・フィル ACCORD
2010年 エマール ブーレーズ クリーヴランド管弦楽団 G
2015年 ユジャ・ワン ブランギエ チューリッヒ・トーンハレ管 G
2017年 デニス・コジュヒン 山田和樹 スイス・ロマンド管弦楽団 PENTATONE
2018年 ユジャ・ワン フランツ・ウェルザー=メスト ウィーン・フィル G
2020年 バヴゼ ヤン・パスカル・トルトゥリエ BBCフィルハーモニック CHANDOS


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