プロコフィエフ:スキタイ組曲「アラとロリー」【聴いてみよう】Prokofiev: Scythian Suite, Op.20, “Ala and Lolly”

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プロコフィエフ:スキタイ組曲「アラとロリー」

プロコフィエフ:スキタイ組曲「アラとロリー」 ジョージ・ペーリヴァニアン スロバキア・フィル 29分39秒の動画です。Prokofiev: Scythian Suite, Op.20, “Ala and Lolly” George Pehlivanian Slovak Philharmonic 出典:YouTube George Pehlivanian conducts Scythian Suite Op. 20 (Prokofiev) RG & Co.

プロコフィエフ:スキタイ組曲「アラとロリー」

アンドルー・リットン ベルゲン・フィル 😘

プロコフィエフ:スキタイ組曲「アラとロリー」 アンドルー・リットン ベルゲン・フィル 2014年
Prokofiev: Scythian Suite, Op.20, “Ala and Lolly” Andrew Litton Bergen Philharmonic Orchestra

A・リットンさんの演奏は、重低音抜群の豪快な演奏です。録音状態も良いので迫力があります。スキタイ組曲「アラとロリー」は、初めバレエ音楽として作曲されたものを管弦楽組曲として再編成されたものです。スキタイ人の太陽信仰を表したものだそうで、第1曲は、凶悪な部分は太陽神ヴェレスを、柔和な部分は娘アラを表します。

第2曲は、スキタイ人がアラへ生け贄を捧げているときに、7匹の悪魔に囲まれた邪神チュジボーグが踊るシーンで、第3曲は、夜の邪神チュジボーグがアラを襲い、月の女神がアラを慰めるもの。第4曲は、勇者ロリーがアラを救い出し、太陽神と勇者ロリーが邪神を打ち負かすと、日の出を迎えることができるというストーリー設定となっています。

プロコフィエフが、なぜ、太陽神を崇める中央アジアのスキタイ人を主人公に、バレエ音楽を創作しようとしたのか、その理由はわかりませんが、太陽神という荒々しく原初的な神をモチーフに、インパクトを与えるダイナミックな管弦楽曲となっています。リットンさんの演奏は、クールな響きのなかで、土埃が立つもわっと感を醸し出しており、リアルな音響効果を楽しむことができます。

CDカップリング プロコフィエフ 交響曲第5番、スキタイ組曲 2014年録音 出典:YouTube Scythian Suite, Op. 20 Bergen Filharmoniske Orkester – トピック Provided to YouTube by Naxos Digital Services

トゥガン・ソヒエフ ベルリン・ドイツ交響楽団 🤩

プロコフィエフ:スキタイ組曲「アラとロリー」 トゥガン・ソヒエフ ベルリン・ドイツ交響楽団 2013年
Prokofiev: Scythian Suite, Op.20, “Ala and Lolly” Tugan Sokhiev Deutsches Symphonie-Orchester Berlin

ソヒエフさんの演奏は、慌ただしくシャープで、前のめりで勢いがあります。「そ~ふぁぁ~ そ~ふぁぁ~」というフレーズを重々しく、上から下へ振り落とすリズムが、肌感覚で感じられ、まるで筋肉隆々の体躯が想像できます。音楽というより運動って感じ。そして、鉄の玉を水平に振り回しているような破壊力も同時に感じます。硬めの音で進むので、より直線的で、テンポアップされて感じられるようです。古代ローマ軍の行進のように聞こえたり、貴金属的な響きで、近未来のSFX映画のBGMのように聞こえたり。かなり多彩。とてもイマジネーションが湧く演奏です。デューン「砂の惑星」の映画のように、静かな近未来像が描かれているようです。

CDカップリング プロコフィエフ 交響曲第5番 2014年、スキタイ組曲 2013年録音 出典:YouTube Scythian Suite, Op. 20, “Ala and Lolly” トゥガン・ソヒエフ – トピック Provided to YouTube by Sony Classical

アラン・ギルバート シカゴ交響楽団 😘

プロコフィエフ:スキタイ組曲「アラとロリー」 アラン・ギルバート シカゴ交響楽団 2007年
Prokofiev: Scythian Suite, Op.20, “Ala and Lolly” Alan Gilbert Chicago Symphony Orchestra

ギルバートさんの演奏は、底力があり、すごい音で響きます。徐々にテンポアップして、シンバルの音が、パチパチしてて、目の前で火花が散っているって感じがします。ただ、足元が乱れ、バシャバシャした感覚が残るので、あまりスマートな印象を受けないです。少しシャンシャンすぎて、力任せに行っちゃった感じがします。テンポは速めですが、バーバリズムのノリ感は多少薄いかもしれません。なぜなんだろう~ でも、プロコフィエフの楽曲を演奏してくれるだけで嬉しいです。

CDカップリング:ヨーヨー・マとシカゴ響によるシルクロード・シカゴ ブロッホ ヘブライ狂詩曲シェロモ、シャラフ ケルレンの伝説、ルー・ハリソン 琵琶協奏曲、プロコフィエフ スキタイ組曲等 出典:YouTube Ala i Lolli Suite, Op. 20, “Skifskaya syuita” (Scythian Suite) シカゴ交響楽団 – トピック Provided to YouTube by NAXOS of America

ヴァレリー・ゲルギエフ キーロフ歌劇場管弦楽団 😒

プロコフィエフ:スキタイ組曲「アラとロリー」 ヴァレリー・ゲルギエフ キーロフ歌劇場管弦楽団 2002年
Prokofiev: Scythian Suite, Op.20, “Ala and Lolly” Valery Gergiev Kirov Orchestra of the Mariinsky Theatre

ゲルギエフさんの演奏は、お下劣です。第1曲「ヴェレスとアラへの崇拝」から、粗くばらっとしています。他の演奏よりは土俗性や重量感があるように感じますが、整った感じはしません。最初だけ度肝を抜く速さなのですが、どろっと重くなります。ジャンジャン、ンッジャジャというような音の洪水、荒ぶる神=指揮者というイメージですが、キレが甘く、温く感じるのです。その反面、どろっと重みがあり、多少粗くても、濁りが好ましいと感じる向きには、良いのではないでしょうか。ワタシは、スマートな方を選びますが。

CDカップリング:プロコフィエフ スキタイ組曲「アラとロリー」、カンタータ「アレキサンドル・ネフスキー」2002年録音 出典:YouTube Prokofiev: Scythian Suite, Op.20 – “Ala and Lolly” ヴァレリー・ゲルギエフ – トピック Valery Gergiev – Topic Provided to YouTube by Universal Music Grouック

サイモン・ラトル バーミンガム市交響楽団 🤩

プロコフィエフ スキタイ組曲「アラとロリー」 サイモン・ラトル バーミンガム市交響楽団 1992年
Prokofiev: Scythian Suite, Op.20, “Ala and Lolly” Simon Rattle City of Birmingham Symphony Orchestra

ラトルさんの演奏は、スピードで持っていかれます。硬質感のあるリズミカルさで、スリリングで面白いです。ストーリー性とか土俗性は無縁ですが、シンプルに、わくわくしてきます。第1曲「ヴェレスとアラへの崇拝」は、快速で軽やかに速く演奏されています。軽くストレートで硬め、シャンシャンする感覚です。乾いているだけに、発火しやすいようで、静まった場面から、熱い火花が再度湧きおこり、星が煌めく夜空になるという展開の速い演奏です。

第2曲「邪教の神、悪の精霊の踊り」(チュジボーグと悪鬼の踊り)では、ティンパニのあと、シンコペーションでトランペット、トロンボーンによる鳴りっぷりの良い金管が聞こえます。奥行き、一段高いところから鳴っているように感じられ立体的です。

第3曲「夜」では、弱音で奏でられ綺麗です。ひんやり透明度が高く、弦とチェレスタなど不思議な旋律が続きます。木管の残響に囲まれ、音が空中で上下左右に動き、自由な方向へ飛んでいくような感覚です。各楽器が一つの生命体のように動いて、弦の流れる響きのなかに存在します。規則正しく鳴る音があり、素早く動く旋律、リズムの異なる茫洋とした旋律が、混じることなく交わります。単なる茫洋とした空気感では違います。

相反するモノが、整然と幾何学的に組み合わさって、並ぶ筈もないのに並んでいるような錯覚。幾何学的な構造なのに、ちゃんと抒情的で。なんだか、見えるものしか信じていないのに、不思議な世界が、うっ、そこにあるじゃん。そんな感じです。もちろん機能美が第一ですが。

第4曲「ロリーの進軍と太陽の行進」(ロリーの輝かしい出発と日の出)では、凝った旋律が続き、飽きずに解きほぐすことに注力できます。ミュート付きのリズムが交差して滑稽です。バレエ音楽が元にあったということで、他盤では、イメージを描いて聴いてきましたが、ストーリー性よりも自動で動くチェスゲームのよう。そうそう、ロビン・ウィリアムズ が主演していた映画「ジュマンジ JUMANJI」を見ているみたい。

ジュマンジって、双六のようなボードゲームで、投げたサイコロの目だけ数を進み、止まったところに書かれた文字が、実際に起こるという、お子ちゃま向け映画です。象が走ってきたり、ジャングルに迷い込んだり、奇想天外な映画ですが、ワタシは、とっても楽しく拝見しました。ボンボコ ボンボコ~という太鼓の音が鳴っているところがミソ。
いずれにしても、あっと言う間に終わってしまうので、何度も繰り返して聴いちゃいました。飽きません。

CDカップリング:プロコフィエフ 交響曲第5番出典:YouTube Prokofiev Scythian Suite, Op. 20 セルゲイ・プロコフィエフ – トピック Provided to YouTube by Warner Classics

クルト・マズア ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 😂

プロコフィエフ:スキタイ組曲「アラとロリー」 クルト・マズア ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 1991年 Prokofiev: Scythian Suite, Op.20, “Ala and Lolly” Kurt Masur Gewandhausorchester Leipzig

マズアさんの演奏は、あまりの賑々しい響きに驚きます。ゲヴァントハウスですよね~。低音から超高音域まで、適度に粘度があり、重さがあるため土俗性が感じられます。第1曲「ヴェレスとアラへの崇拝」は、けたたましく派手な響きで、荒々しくキレて、前につんのめる速さがあります。熱い演奏で、シャンシャン鳴っているのが印象的です。

第2曲「邪教の神、悪の精霊の踊り」(チュジボーグと悪鬼の踊り)は、歯切れの悪いモゴモゴ感がありますが、もう少しトロンボーンが響けば力強く感じたかもしれません。蠅が飛んでいるように、弦が弱々しくすばやく動きます。アクの強さが感じられて面白いです。

第3曲「夜」は、エキゾチックで、重低音の刻みが不気味さを加味します。ひんやり感、生ぬるい感触の両面があり、じと~っとした感覚と、もわもわっとした感覚。動物的な蠢く感覚、夏の夜に聴くと、より、じっとり~しそうです。

第4曲「ロリーの進軍と太陽の行進」は、短い旋律が押し寄せて迫力があります。低音から高音域のレンジ幅が大きく、パーカッションや木管など良く通ります。実は、あまり期待していなかったのですが、「夜」の怪しげな霊的な雰囲気、第4曲の日の出のシーンは、良く描けていました。なによりも、ゲヴァントが、はっちゃけて演奏しているのが、とても意外で良かったです。

CDカップリング:カンタータ「アレキサンドル・ネフスキー」、アラとロリー 1991年録音 出典:YouTube Prokofiev Scythian Suite, Op. 20 クルト・マズア – トピック Provided to YouTube by Warner Classics International

ドミトリー・キタエンコ デンマーク国立交響楽団 🙂

プロコフィエフ:スキタイ組曲「アラとロリー」 ドミトリー・キタエンコ デンマーク国立交響楽団 1990年
Prokofiev: Scythian Suite, Op.20, “Ala and Lolly” Dmitri Kitajenko Danish National Symphony Orchestra

キタエンコさんの演奏は、もっとビリビリ鳴って欲しい気がしますが、シャンドス特有の柔らかい響きで、直接的な音が緩和される傾向にあるようです。言葉を換えると、耳に優しい~ってことになります。これは好み~ですよね。
金管の動きは、しっかり届けられるので、冷静に聞く分には良いと思います。勢いだけで、ジャンジャカ鳴っている演奏は、他盤に任せてしまいましょう。CDカップリング:プロコフィエフ スキタイ組曲「アラとロリー」、カンタータ「アレクサンドル・ネフスキー」1991年録音 出典:YouTube Scythian Suite, Op. 20 Dmitri Kitajenko – トピック Provided to YouTube by PIAS

ネーメ・ヤルヴィ ロイヤル・スコティッシュ管弦楽団 😂

プロコフィエフ:スキタイ組曲「アラとロリー」 N・ヤルヴィ ロイヤル・スコティッシュ管弦楽団 1988年
Prokofiev: Scythian Suite, Op.20, “Ala and Lolly” Neeme Järvi Royal Scottish National Orchestra

パパ・ヤルヴィ(ネーメさん)の演奏は、これは、ムリっ、ムリムリ、ゼッタイ転けますというスピードで突き進んでいく演奏です。ホントこの冒頭、確信犯的なスピードで危険すぎます。まっ 速いとは想定していましたが、予想以上です。第2曲「邪教の神、悪の精霊の踊り」は、ティンパニが叩かれたあと、シンコペーションでトランペット、トロンボーンによる印象的なファンファーレになります。

一気に、シーンと静まりかえり、無重力世界に放り出された感じがする曲です。オーロラを見ているような不思議さ、透明度の高い空気、揺れ動くさまが綺麗です。で、弱音すぎて聞こえないよぉ~と、ぶつぶつ言っている間に、音の洪水に呑み込まれます。

冷たさと重量の重さに、宙で浮いている感じがします。アラのお出ましシーン、フルートは、幻想的な和音に彩られているようです。雰囲気で得したって感じもしますが、ここでは残響少し多めが良い方向に働いたかもしれません。バランスを整えるのって、難しそうです。

CDカップリング:プロコフィエフ「アレクサンドル・ネフスキー」1987年、スキタイ組曲「アラとロリー」1987年録音 プロコフィエフ交響曲全集4枚組BOX、スキタイ組曲、バレエ音楽「鋼鉄の歩み」からの組曲、カンタータ アレクサンドル・ネフスキーもあります。出典:YouTube Ala et Lolli Suite, Op. 20, “Scythian Suite” ネーメ・ヤルヴィ – トピック Provided to YouTube by PIAS

アンドレ・プレヴィン ロサンゼルス・フィル 🥰

プロコフィエフ:スキタイ組曲「アラとロリー」 アンドレ・プレヴィン ロサンゼルス・フィル 1987年
Prokofiev: Scythian Suite, Op.20, “Ala and Lolly” André Previn Los Angeles Philharmonic

プレヴィンさんの演奏は、軽量級なのですが、大編成だとわかる広がり感があります。第1曲「ヴェレスとアラへの崇拝」では、シャッキシャキの快速で進み、切り込みが鋭くダイナミックです。適度にボリュームをあげないと、迫力が楽しめない曲で、ご近所さん迷惑な悩ましい楽曲です。けたたましいシーンから、一気に、宇宙遊泳をしているような感覚に変貌します。この変貌ぶりが魅力のひとつです。

第2曲「邪教の神、悪の精霊の踊り」では、打楽器の波打つような響きのなかで、悪魔との戦いになるのでしょうか、まるでSFX映画のワンシーンのような場面に突入します。プレヴィンさんの演奏は、重々しい重量感より、スピードと切迫感で、テンションの高さが感じられるもの。またこのティンパニが良い響きで~ 細かい響きが先に来て、どどどっと打ち込まれます。

第3曲「夜」は、プロコフィエフ特有の浮遊感が、たまりません。暖かみがあり、夜空を見あげて疲れを癒しているかのよう。いや、そんな優しくはなく、邪悪な神が、官能的に迫ってくる感じでしょうか。音の広がりがあるため、浮遊感がより一層感じられます。

第4曲「ロリーの進軍と太陽の行進」では、大編成のオケの迫力、ホール感の豊かさにより、響きの大きな波動のようなモノが感じられます。縦横無尽に走りってきた人々が、絵巻物のように表現されているのでしょうか。約20分の曲ですが、聴き手を、ちがう時空間に飛ばす能力に長けています。スペクタル性もあり、狭い世界では納まらない大きさを感じます。

CDカップリング:プロコフィエフ 交響曲第6番、スキタイ組曲「アラとロリー」 出典:YouTube Prokofiev: Scythian Suite, Op. 20 – “Ala and Lolly” LA Phil Provided to YouTube by Universal Music Group

クラウディオ・アバド シカゴ交響楽団 😘

プロコフィエフ:スキタイ組曲「アラとロリー」 クラウディオ・アバド シカゴ交響楽団 1977年
Prokofiev: Scythian Suite, Op.20, “Ala and Lolly” Claudio Abbado Chicago Symphony Orchestra

アバドさんの演奏は、シカゴ響のパワーで圧倒されます。第1曲「ヴェレスとアラへの崇拝」では、山頂から岩が転がり落ちてくるみたいで、ドスンっと尻餅をついて、また転がっていく感じです。荘厳な太陽神というより、荒ぶる神という雰囲気です。娘のアラは、厳かにフルートにより、お出ましになるようです。

第2曲「邪教の神、悪の精霊の踊り」では、ティンパニが叩かれたあと、シンコペーションで、トランペット、トロンボーンによる威勢良く演奏されます。ブラスによる勇壮な主題が終わると、鉄琴、オーボエによる東洋風の旋律がリズミカルに描かれます。オチャラケ風の弾むリズムで、邪悪な神と言われようが、愉快に、チャンチャカ チャンチャカ チャカ チャカぁ~!と、大声をあげています。

第3曲の「夜」は、途中で1オクターブ以上離れて跳躍するようです。で、チェレスタ。夜は、やっぱりチェレスタが登場しないと雰囲気が出ません。ひんやり感はイマイチですが、夜の雰囲気はあります。亡霊が登場するようでもなく、神秘的な感覚も違いますね。ぼわん~とした砂漠のようです。

第4曲「ロリーの進軍と太陽の行進」では、アラさまが逃げまどい、勇者がクラリネットで登場するのか、いずれにせよ、エキゾチックな音が詰まっています。シカゴ響ならではのパワーを見せつけられ、低重音の地響きパワーで圧倒されます。ロンメル将軍の戦車軍隊、北アフリカの砂漠を走るって感じでした。

カップリング:プロコフィエフ カンタータ「アレキサンドル・ネフスキー」79年、交響組曲「キージェ中尉」77年、スキタイ組曲「アラとロリー」1977年録音 出典:YouTube Prokofiev: Scythian Suite, Op.20 – “Ala And Lolly”
シカゴ交響楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ワルター・ウェラー ロンドン・フィル 🥰

プロコフィエフ:スキタイ組曲「アラとロリー」 ワルター・ウェラー ロンドン・フィル 1974年~78年
Prokofiev: Scythian Suite, Op.20, “Ala and Lolly” Walter Weller London Philharmonic Orchestra

ウェラーさんの演奏は、きちんとテンポを整えてきます。前につんのめって、ムリな快速で飛ばすという演奏ではないですね。きちんとしているのに、金管の力強さと、自由度があり、気持ち良く内声部の細かな音も感じられて、とても素敵な演奏です。団子に鳴ってないところが凄いです。この曲って、日本神話で例えるなら、素戔嗚尊みたい。

めちゃ激しく荒々しく、猛々しいです。「そぉ~ふぁ~(ドン) そぉ~ふぁ~(ドン)」「らしど~れ ど~れふぁそそ そ~そそ~そ~」音の洪水で溢れかえっています。シンバルは鳴るわ、トランペットとトロンボーンの咆哮、ティンパニと、シンバルで、ジャンジャン バリバリ、ドドド ドンっ。ンッジャジャ ンジャジャ。擬音ばかりがつづきます。頭の上で、大きな太刀を振り回されている気がします。これが、当初バレエ音楽だったとは。どんな舞台芸術になっていたのか、全く想像ができません。

邪悪なモノが、荒ぶる神と戦うシーン、黒い羽根を広げて、空を舞っているような気配がしますし、ミュート付きのトランペットが鳴っているなかで、フルートやチェレスタが鳴っていたり、スケール大きすぎ。ウエラーさんの巧みな指揮で、不思議な世界が大きく広がり、色彩感覚も豊かに再現されています。木管の響きが、特に綺麗に聞こえてくるので、透明感もあり、太陽を表す鉄琴、チェレスタ、弦の響きが美しくブレンドされ、光線が遙かに伸びていきます。おみごとでした。

CDカップリング:プロコフィエフ交響曲全集、ロシア序曲、スキタイ組曲、組曲「三つのオレンジへの恋」4枚組BOX 1974年~78年録音 出典:YouTube Prokofiev: Scythian Suite, Op. 20 – “Ala and Lolly” London Philharmonic Orchestra Provided to YouTube by Universal Music Group

ズデニェク・コシュラー チェコ・フィル 🥰

プロコフィエフ:スキタイ組曲「アラとロリー」 ズデニェク・コシュラー チェコ・フィル 1973年
Prokofiev: Scythian Suite, Op.20, “Ala and Lolly” Zdeněk Košler Česká filharmonie

コシュラーさんの演奏は、綺麗に内声部まで聞こえることと、几帳面なチャンチャカチャン的なフレージングで進みます。ふふっ、これはこれで、滑稽で面白味があります。ドラティさんの演奏のように、迸るエネルギーではなく、几帳面に積み上げていくパワーという感じがします。夜明けのような静まった場面の綺麗さは、半端なく、地面から静けさが立ち上ってくる雰囲気で、音が湖面に張り付いているようです。第2曲も、几帳面に進みます。直情的ではなく、客観的に描かれていますが、誇らしげに凱旋している行進曲となっています。

コシュラーさんの演奏は、爆発するエネルギー自体ではなく、宗教的儀式の場面、凱旋行進の立ち会い人のような雰囲気がします。この演奏されている空間、オケの後ろに、映像が映っているかのようです。直情的に訴えてくるリアル感のある演奏も大好きですが、コシュラーさんのように、バランスを整え、ハチャメチャにならない映像的な演奏は、とても貴重だと思います。とても興味深く、楽しく拝聴することができました。

CDカップリング:プロコフィエフ交響曲全集、スキタイ組曲「アラとロリー」4枚組BOX 出典:YouTube Scythian suite, Op. 20 セルゲイ・プロコフィエフ – トピック Provided to YouTube by Supraphon

エルネスト・アンセルメ スイス・ロマンド管弦楽団 🙂

プロコフィエフ:スキタイ組曲「アラとロリー」 エルネスト・アンセルメ スイス・ロマンド管弦楽団 1966年
Prokofiev: Scythian Suite, Op.20, “Ala and Lolly” Ernest Ansermet Orchestre de la Suisse Romande

アンセルメさんの演奏は、いつも以上に熱くエネルギッシュです。第1曲の後半、娘アラが登場する静まった場面での描写が、とても幻想的に描かれています。

CDカップリング:プロコフィエフ ロメオとジュリエット組曲 1961年、放蕩息子組曲 1966年、シンデレラ組曲 1961年 スキタイ組曲 1966年、交響曲第5番 1964年録音 出典:YouTube Prokofiev: Scythian Suite, Op. 20 – “Ala and Lolly” スイス・ロマンド管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

アンタル・ドラティ ロンドン交響楽団 😁

プロコフィエフ:スキタイ組曲「アラとロリー」 アンタル・ドラティ ロンドン交響楽団 1957年
Prokofiev: Scythian Suite, Op.20, “Ala and Lolly” Antal Doráti London Symphony Orchestra

ドラティさんの演奏は、冒頭の速さにのけぞり、目玉が飛び出しそうです。マーキュリー(レーベル)の良い録音で聴き応えがあり、レアな音が、シャンシャン鳴り響き、騒々しい! パーカッション群が頑張って勢いがあります。ホンマに、これ1957年の録音なのぉ~ うっそ。これ以上望むべくもない音なのです。うかっと、イヤフォンで聴いていたら、アタマから耳から、火花が飛び出していきます。まずは、冒頭の部分が危険箇所です。

第2曲の「邪教の神、悪の精霊の踊り」(チュジボーグと悪鬼の踊り)は、どろどろの音ではなく、砂漠を走る戦車軍団みたいに、気持ち良く(って言って良いのか迷いますが)、ジャジャジャと、キャタピラーが回るような音を立てて進みます。ちょっと子供っぽいですが、戦闘的な気分になります。(アカンで~ そんな好戦的な発言は)

CDカップリング:プロコフィエフ スキタイ組曲「アラとロリー」、組曲三つのオレンジへの恋、YouTubeにおけるカップリング:5枚組BOX ストラヴィンスキー ペトルーシュカ、春の祭典、四つのエチュード、プロコフィエフ スキタイ組曲「アラとロリー」ロンドン響57年、三つのオレンジへの恋 ロンドン響 57年、交響曲第5番 ミネアポリス響59年、ガーシュウィン「パリのアメリカ人」ミネアポリス響、コープランド ロデオ、シュラー パウル・クレーの主題による7つの習作 60年、ブロッホ シンフォニア・ブレーヴェ 1960年録音 出典:YouTube Prokofiev: Scythian Suite, Op. 20 – “Ala and Lolly” London Symphony Orchestra Provided to YouTube by Universal Music Group

プロコフィエフ:スキタイ組曲「アラとロリー」

プロコフィエフのスキタイ組曲「アラとロリー」(作品20)は、1916年に作曲され、初演されています。元々は、スキタイ人(ポントス・カスピ海草原エリア、騎馬民族が栄えたエリアらしい)を題材としたバレエ音楽「アラとロリー」として作曲したのですが、ディアギレフに、ストラヴィンスキーの「春の祭典」の二番煎じだと言われて断わられたそうです。そのため、バレエにはならず、演奏会用の管弦楽組曲「スキタイ組曲 アラとロリー」として、書き直したとのこと。楽曲は、四つの楽章から構成され、約20分の楽曲です。編成の大きなオケが必要となっています。

1 ヴェレスとアラへの崇拝(ヴェレスとアラへの讃仰)The Adoration Of Veless And Ala
野蛮で色彩的な音楽は、スキタイ人の太陽信仰を表しており、兇暴な部分は太陽神ヴェレスを、柔和な部分は太陽神の娘アラを表しているとのこと。

2 邪教の神、悪の精霊の踊り(邪神チュジボーグと魔界の悪鬼の踊り)The Enemy God And The Dance Of The Spirits Of Darkness スキタイ人がアラに生贄を捧げていると、7匹の魔物に取り囲まれた邪神チュジボーグ(魔界の神と、その悪魔たち)が、野卑な踊りを舞い始める。

3 夜 Night 邪神チュジボーグは夜陰に乗じてアラを襲い、さらおうとう。月の女神たちがアラを慰める。

4 ロリーの進軍(出発)と太陽の行進(ロリーの輝かしい出発と日の出) The Glorious Departure Of Lolly And The Sun’s Procession スキタイ人の勇者ロリーが、アラを救いに現れる。太陽神ヴェレスがロリーに肩入れして、チュジボーグを打ち負かす。勇者と太陽神が勝ち、日の出を表す音楽によって組曲が終わりとなります。プロコフィエフ版「春の祭典」のような作品です。

プロコフィエフ:スキタイ組曲「アラとロリー」

1957年 ドラティ ロンドン交響楽団 Mercury
1966年 アンセルメ スイス・ロマンド管弦楽団 Dec
1973年 コシュラー チェコ・フィル SUP
1974年~78年 ワルター・ウェラー ロンドン・フィル Dec
1977年 アバド シカゴ交響楽団 G
1987年 プレヴィン ロサンジェルス・フィル Ph
1988年 N・ヤルヴィ ロイヤル・スコティッシュ管弦楽団 CHANDOS
1991年 マズア ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 TELDEC
1992年 ラトル バーミンガム市交響楽団 EMI
2002年 ゲルギエフ キーロフ歌劇場管弦楽団 Ph
2007年 アラン・ギルバート シカゴ交響楽団 CSO
2013年 トゥガン・ソヒエフ ベルリン・ドイツ交響楽団 SC
2014年 アンドルー・リットン ベルゲン・フィル BIS
2019年 ドミトリー・キタエンコ ザグレブ・フィル OEHMS 未掲載

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