グノー:聖チェチーリア荘厳ミサ曲【名盤・おすすめ】
グノーの聖チェチーリア荘厳ミサ(仏語:聖セシリア荘厳ミサ曲)は、次の8曲で構成されています。
1 キリエ Kyrie
2 グローリア Gloria
3 クレド Credo
4 オッフェルトリウム Offertorium
5 サンクトゥス Sanctus
6 ベネディクトゥス Benedictus
7 アニュス・デイ Agnus Dei
8 ドミネ・サルヴム Domine salvum
マリス・ヤンソンス バイエルン放送交響楽団 😘
グノー:聖チェチーリア荘厳ミサ曲 マリス・ヤンソンス バイエルン放送交響楽団 2007年
Gounod: Messe Solennelle de Sainte Cécile Mariss Jansons Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks
ソプラノ:リューバ・オルゴナソヴァ Ľuba Orgonášová
テノール:クリスティアン・エルスナー Christian Elsner
バス:グスタフ・バラーチェク Gustáv Belácek
ヤンソンスさんの演奏は、2007年3月、ミュンヘン レジデンスでのヘラクレスホールでのライブ録音です。拍手入りで、第8曲のドミネ・サルヴム(Domine salvum)は、3つに区分されています。第1曲のキリエは、ゆったりと演奏され、じわじわっと足元を確かめるかのように歌われています。すーっと声が入ってくるので、宗教音楽を聴いているという雰囲気が、すぐに漂います。第2曲のグロリアも、かなりゆったり。ソプラノのオルゴナソヴァさんの声は少し控えめなので、力強くても良いかなあと思いますが、コーラスが美しいですね。
第3曲のクレドは、シンプルなフレーズですが、力強い確信に満ちた歌となっています。もう少し速くても良いのですが、インテンポで進み、バックでシーシーっと弦が弾かれているのですが、歩みが重い感じですね。付点のリズム感がなく、ノビが少なめ。ごごごぉ~と低音が響き、痩身のくせに節々が固まって、カラダの硬そうなおじいちゃんの歩みのようです。うーん、このアプローチは、宗教的、歴史的配慮なのかもしれません。
第4曲のオフェルトリウムから、第5曲のサンクトゥスは、コーラスが入り壮大に演奏されます。低音のヌケがよろしくないので、バスドラ(大太鼓)の音が籠もりがち。第6曲のベネディクトスは、ソプラノのソロを含めて、とても静謐に歌われており、第7曲のアニュス・デイは、とても魅力的です。やっぱりコーラスは良いですね。
グノーのミサ曲は全8曲ですが、ラストに「Domine Salvum」付け加えられて演奏されます。「教会の祈り Priere de l’Eglise」、「軍の祈り Prierede l’Armee」、「国家の祈り Priere de la Nation」が歌われます。徐々に後半になって良くなってくる感じでしょうか。CDカップリング:シューベルト:ミサ曲第2番、グノー:聖チェチーリアのための荘厳ミサ 出典:YouTube Gounod Messe solennelle de Sainte Cecile バイエルン放送交響楽団 – トピック マリス・ヤンソンス – トピック Provided to YouTube by NAXOS of America
ハンス・ルドルフ・ツェベレイ ミュンヘン交響楽団
グノー:聖チェチーリア荘厳ミサ曲 ハンス・ルドルフ・ツェベレイ ミュンヘン交響楽団 1996年
Gounod: Messe Solennelle de Sainte Cécile Hans Rudolf Zöbeley Munich Symphony Orchestra
ソプラノ:アンジェラ=マリア・ブラーシ Angela-Maria Blasi
テノール:クリスティアン・エルスナー Christian Elsner
バリトン:ディートリヒ・ヘンシェル Dietrich Henschel
ハンス・ルドルフ・ツェベレイさんは、1931年マンハイム生まれの合唱指揮者で、1960年ミュンヘン・モテット合唱団を設立された方だそうです。グノーは、フランスの作曲家なので、ドイツ臭く(ごめんなさい)にならないかとも思ったのですが、そうでもなかったみたいです。(失礼しました) CDカップリング:グノー 聖チェリーリアの荘厳ミサ曲、ビゼー テ・デウム 1996年 出典:YouTube Gounod: St. Cecilia Mass / Bizet: Te Deum アンジェラ・マリア・ブラーシ – トピック Provided to YouTube by NAXOS of America
ジョルジュ・プレートル 新フランス放送フィル 🥰
グノー:聖チェチーリア荘厳ミサ曲 ジョルジュ・プレートル 新フランス放送フィル 1983年
Gounod: Messe Solennelle de Sainte Cécile Georges Prêtre Nouvel Orchestre Philharmonique de Radio France
ソプラノ:バーバラ・ヘンドリックス Barbara Hendricks
テノール:ローレンス・デイル Laurence Dale
バリトン:ジャン=フィリップ・ラフォン Jean-Philippe Lafont
プレートルさんの演奏は、純度が高くダイナミックで、ヘンドリックスさんの声が素敵です。第1曲のキリエは、静謐で、のびやかに優美に歌われています。第2曲のグロリアは、ヘンドリックスさんの美声が、バックのハミングのなかで、ゆったり清らかに歌われています。速めのテンポで力強くコーラスが歌われ、やがてテノールが加わります。管弦楽のみとなってテノールが、そしてバリトンが絡んみ二重奏に。またソプラノが加わる感じです。オーボエが、旋律をトレースするように吹かれ、最後にはコーラスが入って燦然とします。
第3曲のクレドは、オケが力強く荘厳に奏でられ、晴れやかさが出てきます。コーラスが、ユニゾンで歌われるのは場面は、大変美しく、ん~っちゃっちゃというリズムで、低音の金管が力強くリズムを刻みます。対旋律を奏でてくるところは美しく、気持ち良くコーラスが歌われています。弦のユニゾンは力強いです。中間部分で、ちょっとテンポをあげていきます。急発進のようで、少し驚いちゃったのですが、ふわっとした感覚が残っており、音が発せられてからの余韻が心地良く感じられます。第4曲のオフェルトリウムは、オルガンが主になっているもの。
第5曲のサンクトゥスは、テナーの艶のある声が魅力的です。そっとコーラスが入ってきており、ここは鳥肌モノの演奏です。うつくしーーっ。第6曲のベネディクトゥスは、ソプラノが一人で歌われる短い楽章ですが、続けて第7曲のアニュス・デイ、第8曲のドミネ・サルヴムまで、いっきに聴かせる見せ場となっています。
プレートルさんの演奏は、清潔で敬虔さが感じられて素敵です。平明な楽曲なのですが、この平明さが命って感じであり、心にストレートに届きます。穏やかで暖かみがあり、素直に美しいと感じられる演奏です。また、コーラスの美しさと共に、大太鼓、オルガンが奏でられることから、荘厳さが増しています。出典:YouTube バーバラ・ヘンドリックス – トピック Provided to YouTube by Warner Classics
イーゴリ・マルケヴィチ チェコ・フィル 😨
グノー:聖チェチーリア荘厳ミサ曲 イーゴリ・マルケヴィチ チェコ・フィル 1965年
Gounod: Messe Solennelle de Sainte Cécile Igor Markevitch Ceska filharmonie
ソプラノ:イルムガル・ゼーフリート Irmgard Seefried
テノール:ゲルハルト・シュトルツ Gerhard Stolze
バス:ヘルマン・ウーデ Hermann Uhde
マルケヴィチさんの演奏は、1966年の録音なので多少古めかしいのですが、豊かに響いて奥行き感があり、コーラスもしっかり聞こえてきますが、幾分、押し出しの強い堅牢な演奏だと思います。第1曲のキリエは、雲がわいてくるかのように、優雅にゆったりと歌われています。第2曲のグロリアは、ソプラノ、テナーの声が入ってきますが、音質が硬めで、コーラスは、しっかりとしたセンテンスの区切り感があります。フランス系の楽曲ですが、柔らかさが少なく、浮遊感、さらっとした柔らかさの感覚は少なめです。
第3曲目のクレドになると、縦割りのカッチリ感が一層、際だってくるようです。ベートーヴェンの宗教曲に近くなってしまうような感じでしょうか。どこか力が入って、弦が、キッ キッ シャッ シャッ・・・強っ。コーラス主体となっている箇所でも、硬めに塗り固めていくかのような感覚です。う~ん、ちょっと違うような(気がする)それ以降、第5曲サンクトゥスやベネディクトゥスも、唾を飲み込んでしまうほと、テンポをぐぐっと落として、荘厳に歌われます。
えっ、平明な優しいミサ曲だというイメージが、崩壊してしまうほど、マルケヴィッチさんの演奏は、かなり厳つい演奏でした。(まっ、想像できる範囲ではありましたが) 出典:YouTube Gounod: Messe solennelle de Ste. Cécile
イルムガルト・ゼーフリート – トピック チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 Provided to YouTube by Universal Music Group
ジャン=クロード・アルトマン パリ音楽院管弦楽団 🥰
グノー:聖チェチーリア荘厳ミサ曲 ジャン=クロード・アルトマン パリ音楽院管弦楽団 1963年
Gounod: Messe Solennelle de Sainte Cécile Jean-Claude Hartemann Orchestre de la Société des Concerts du Conservatoire
ソプラノ:ピラール・ローレンガー Pilar Lorengar
テノール:ハインツ・ホッペ Heinz Hoppe
バス:フランツ・クラス Franz Crass
アルトマンさんの演奏は、古い録音ですが、リマスタリングされており、奥行き感、コーラスとソロ、オルガンの響きも良く、のびやかに明るく歌われています。とっても平明で、わかりやすく伸びやかに朗々と歌われます。キリエ、グローリアと続いていきますが、レクイエムとは異なります。
ちなみに、ウィキペディア(Wikipedia)を少し引用すると、ミサ・ソレムニス(Missa solemnis 盛儀ミサ)は、ミサの名称の一つ。典礼文を唱えて行われる「読唱ミサ(missa lecta)」、歌唱によって行われる「歌ミサ(missa cantata)」に対し、主司式司祭と助祭・副助祭による読唱ミサに、合唱による歌ミサを伴うものを呼ぶ。音楽用語としては「荘厳ミサ曲」と訳されることも多いが、日本カトリック教会では、現在は荘厳ミサを廃して「盛儀ミサ」を正式名としている。音楽作品としては、ベートーヴェンのものが有名である。とありました。
グノーの聖チェリーチア荘厳ミサ曲は、とても優しく、柔らかく、前向きに明るく、幸福に満ちあふれています。美しいコーラスが入るハートフルな楽曲です。確かに、複雑な旋律があるわけでもないし、対位法を駆使したという旋律でないのですが、シンプルなだけに、ソロもコーラスも美しく聞こえることが求められます。 オルガンは荘厳に響き、管弦楽とコーラス、オルガンがまろやかに調和するのが、怖ろしく魅力的なのです。 特に、第3曲のクレドは、合唱が力強くユニゾンで歌われ、うるっときちゃいます。
合唱をされる方には、お馴染みの曲かもしれませんが、まったく知らない方でも、聴いてすぐに好きになれちゃう楽曲だと思います。アルトマンさんの演奏は、そのハートフルさでは随一と言っても過言ではないように思います。何度繰り返し聴いても、そのたびにシアワセ感に包まれるような楽曲、演奏ではないでしょうか。ワタシ的にはお薦めです。
CDカップリング:グノー 聖チェチーリア荘厳ミサ曲、グノー 9つの管弦楽のための小交響曲(バルビローリ ハレ管弦楽団 1958年)出典:YouTube Classical Music/ /Reference Recording
グノー:アヴェ・マリア
グノーのアヴェ・マリア(ラテン語:Ave Maria)は、1859年にシャルル・グノーが、J・S・バッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻の「前奏曲第1番 ハ長調 BWV 846」を伴奏に、ラテン語の聖句「アヴェ・マリア」を歌詞に用いて完成させた声楽曲です。19世紀フランスの歌曲では、しばしば演奏され録音される機会も多いものです。また、多くの楽器で演奏されています。
ルチアーノ・パヴァロッティさんの声で~
出典:YouTube Gounod: Ave Maria, CG 89a Luciano Pavarotti Provided to YouTube by Universal Music Group
J・S・バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻第1曲 BWV 846 前奏曲・四声のフーガ
Präludium und Fuge C-Dur BWV 846 ピアノ:アンドラーシュ・シフ
出典:YouTube J.S. Bach: The Well-Tempered Clavier, Book 1, BWV 846-869 – Prelude and Fugue in C Major, BWV 846 アンドラーシュ・シフ – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group
グノー:聖チェチーリア(聖セシリア)荘厳ミサ曲【解説】
グノーの聖チェチーリア荘厳ミサ(聖セシリア荘厳ミサ曲)Messe solennelle en l’honneur de Sainte Cécile 1855年に初演されています。チェチーリアは、キリスト教(特にカトリック教会)において、音楽家と盲人の守護聖人とされます。宗教曲ながらオペラのように聞こえる優しい曲です。正式にはフランス語読みの聖セシリアだと思います。
第1曲 キリエ 管弦楽の静かな導入に続いて、合唱が優しく「主よ、憐れみたまえ」を歌います。独唱の三重唱が加わります。
第2曲 グローリア 四つに区分されます。①合唱のハミングをバックにソプラノがグローリアを歌います。②合唱が「我ら主を褒め称え」と歌います。独唱の三重唱が「主の大いなる栄光」を歌います。繰り返されてクライマックスが形成されます。③オーボエに先導されたバスが「ただ一人の御子であるイエス」と歌います。テノール、ソプラノの独唱、合唱が加わって「ミゼレーレ」を歌います。④ ②における歌唱が反復され「あなただけが主」と歌われます。
第3曲 クレド 冒頭部分に、合唱で「われは唯一の神を信」が歌われます。静まったあとに独唱の三重唱が「聖霊により、処女マリアにより肉体をうけて人となり」を歌います。続いて独唱三重唱が「十字架にかけられ」を歌います。
徐々に明るく、合唱のアルトが「聖書にありし如く三日目に復活された」と歌い、復活が語られます。六声部に分かれて「死者の蘇りと、未来の命を待ち奉る」と歌われ、ハープが奏でられて終わります。
第4曲 オッフェルトリウム オーケストラのみで間奏曲のような存在です。ミサの典礼にはない曲です。
第5曲 サンクトゥス テノールのソロで「聖なるかな」が歌われ、合唱が加わります。もりあがったところで、最後の審判を象徴するトロンボーンが吹かれます。ハープも入ってクライマックスを築きます。
第6曲 ベネディクトゥス 静かな楽章で、ソプラノ独唱で「主の御名のもとに来るものは祝福される」が歌われます。六声部の合唱がコラール風に、そして「いと高きところまでホザンナ」が歌われます。
第7曲 アニュス・デイ 短い前奏曲のあと、合唱で「世の罪を除きたもう神の子羊」が歌われます。テノールがミサの典礼にはない「主よ私はあなたの宮のもとに入るには値しません」と唱え、合唱とソプラノにより繰り返されて、最後は「アーメン」と唱和して終わります。
第8曲 ドミネ・サルヴム ミサの典礼にはない部分です。合唱によって「教会の祈り」、「軍の祈り」、「国家の祈り」が、順番に歌われます。管楽器と打楽器が使われて劇的です。
聖チェチーリアは、初期キリスト時代、三世紀頃に殉教した女性の聖人で、音楽家の守護聖人としても有名です。ローマ貴族だったのですが、夫とその弟をキリスト教に改宗させたということで処刑されることになりました。初めは、蒸し風呂で窒息させよう~という刑を受けたが死なず、三度斬首されたが首が落ちなかったといいます。
ワタシがローマに行った際、バチカンの南に位置するトラステヴェレ地区には、サンタ・チェチーリア教会(サンタ チェチーリア イン トラステヴェレ教会 Santa Cecilia in Trastevere)があり、ここには、ルネサンスの彫刻家ステファノ・マデルノの聖セシリアの大理石像があります。たまたま日曜日だったので、結婚式が執り行われており、彫刻を見ることはかなわわず~ 残念でした。
ちなみに、Wikiによると楽器編成は次のとおりです。声楽:ソプラノ、テノール、バス、混声合唱 木管楽器:フルート2、ピッコロ、オーボエ2、クラリネット2、 ファゴット4 金管楽器:ホルン4、トランペット2、コルネット2、トロンボーン3 打楽器:ティンパニ、シンバル1、 大太鼓 弦五部、ハープ6、オルガン えっ ハープ6台も要るの? バスドラム(大太鼓)など。オクトバス(コントラバスより一オクターブ下のデカい弦楽器です)は、ベネディクトゥスとアニュス・デイのみ使用されるそうです。アイキャッチ画像は、次のところから借用しました。By Sébastien Bertrand from Paris, France – Flickr, CC BY 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1800444
グノー:聖チェチーリア荘厳ミサ曲【ディスク情報】
1963年 ジャン=クロード・アルトマン パリ音楽院管弦楽団 EMI
1965年 マルケヴィッチ チェコ・フィル G
1983年 プレートル フランス放送ニュー・フィル E
1996年 ハンス・ルドルフ・ツェベレイ ミュンヘン交響楽団 HÄNSSLER
2007年 ヤンソンス バイエルン放送交響楽団 BR
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