ブルッフ:スコットランド幻想曲【名盤・おすすめ】
ジョシュア・ベル アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ 🥰
ブルッフ:スコットランド幻想曲 ジョシュア・ベル(弾き振り)アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ 2017年 Bruch: Scottish Fantasy, Op. 46 Joshua Bell Academy of St Martin in the Fields
ベルさんの演奏は、甘美な旋律を、ゆったりと奏で、しみじみと郷愁を味わうことのできるものです。てらいなく、みごとに、朗々と歌いあげていきます。耳にすれば、いっきに引き込まれて、誰もがシアワセな感覚に包まれるだろうと思います。このスコットランド幻想曲、正式には、「スコットランド民謡の旋律を自由に用いた、管弦楽とハープを伴ったヴァイオリンのための幻想曲」といいます。
序章グラーヴェから、ホルンと弦、ハープが流れてきます。他の演奏では、月明かりもない新月の夜、海岸に立っているような悲痛な演奏もありますが、ベルさんのヴァイオリンは、太陽の昇ってくると共に、自身の気持ちを満たそうとしているかのような清々しさがあります。夜明け前の暗さから、射し込んでくる光に身を照らし、指先まで満ちてくるのを待っている感じです。音の流れる時間の経過と共に、満ちてくるものがあります。
CDカップリング:ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番、スコットランド幻想曲 出典:YouTube Scottish Fantasy for Violin and Orchestra, Op. 46 Joshua Bell Provided to YouTube by Sony Classical
ニコラ・ベネディッテイ ロリー・マクドナルド BBCスコティッシュナショナル管弦楽団
ブルッフ:スコットランド幻想曲 ニコラ・ベネディッテイ ロリー・マクドナルド BBCスコティッシュ・ナショナル管弦楽団 2014年 Bruch: Scottish Fantasy, Op. 46 Nicola Benedetti Rory Macdonald BBC Scottish Symphony Orchestra
CDカップリング:ブルッフ スコットランド幻想曲、バーンズ「 やさしくキスをして」 スコットランド民謡「オールド・ラング・ザインバーンズ」「我が恋人は紅き薔薇」スキナー「ハリケーン・セット」The Dean Brig O’ Edinburgh – Banks Hornpipe カニンガム Aberlady カニンガム Mouth Music & Tunes Set カニンガム The Gentle Light That Wakes Me スコットランド民謡「ともに歩もう」 スコットランド民謡「ロッホ・ローモンド」
2014年録音 出典:YouTube Bruch: Scottish Fantasy, Op. 46 Nicola Benedetti Provided to YouTube by Universal Music Group
ジェームズ・エーネス マリオ・ベルナルディ モントリオール交響楽団
ブルッフ:スコットランド幻想曲 ジェームズ・エーネス マリオ・ベルナルディ モントリオール交響楽団 2002年 Bruch: Scottish Fantasy, Op. 46 James Ehnes Mario Bernardi Montreal Symphony Orchestra
CDカップリング:ブルッフ スコットランド幻想曲、ヴァイオリン協奏曲第2番 2002年録音 出典:YouTube Prelude: Grave ジェイムズ・エーネス – トピック Provided to YouTube by NAXOS of America
諏訪内晶子 ネヴィル・マリナ― アカデミー室内管弦楽団 😘
ブルッフ:スコットランド幻想曲 諏訪内晶子 ネヴィル・マリナ― アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ 1996年 Bruch: Scottish Fantasy, Op. 46 Akiko Suwanai Neville Marriner Academy of St Martin in the Fields
諏訪内さんの演奏は、CDデビュー盤です。少し遅めに、ゆったりと演奏されていますが、旋律に癖がなく、素直な演奏と言えるでしょうか。ハイフェッツのような、独特の演歌っぽいこぶし回しはないようです。何かプラスαが欲しいところですが、幾分、ヒンヤリした空気のなか、キリッとした姿勢で立っている姿が想像できます。素直な気持ちの広がりが感じられ、余計な添加物を入れないほうが良いのだろうと、デビュー盤だけに余計そう思いました。
CDカップリング:ブルッフ ヴァイオリン協奏曲、スコットランド幻想曲 Bruch: Scottish Fantasy, Op. 46 諏訪内晶子 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group
タスミン・リトル ヴァーノン・ハードリー ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団
ブルッフ:スコットランド幻想曲 タスミン・リトル ヴァーノン・ハードリー ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団 1996年 Bruch: Scottish Fantasy, Op. 46 Tasmin Little Vernon Handley Royal Scottish National Orchestra
CDカップリング:タスミン・リトル 2枚組BOX ドヴォルザーク ヴァイオリン協奏曲、ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番 1990年リリース、スコットランド幻想曲 ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団 、ラロ ヴァイオリン協奏曲 ハンドリー ロイヤル・リバプール・フィル 1997年リリース 出典:YouTube Scottish Fantasy, Op. 46 タスミン・リトル – トピック Provided to YouTube by Parlophone UK
五嶋みどり ズビン・メータ イスラエフ・フィル 🙂
ブルッフ:スコットランド幻想曲 五嶋みどり ズビン・メータ イスラエル・フィル 1993年
Bruch: Scottish Fantasy, Op. 46 Midori Zubin Mehta · Israel Philharmonic Orchestra
みどりさんの若い頃の演奏で、ちょっぴり甘く粘っこさがあります。きっとメータ、イスラエルとのコラボだからだと思うのですが~ お好みにもよりますが、後に残る甘いスィーツのようです。CDカップリング:シベリウス ヴァイオリン協奏曲、ブルッフ スコットランド幻想曲 1993年録音 出典:YouTube Scottish Fantasy, Op. 46 Midori Provided to YouTube by Sony Classical Germany PF
サルヴァトーレ・アッカルド マズア ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 😘
ブルッフ:スコットランド幻想曲 サルヴァトーレ・アッカルド マズア ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 1977年 Bruch: Scottish Fantasy, Op. 46 Salvatore Accardo Kurt Masur Gewandhausorchester Leipzig
アッカルドさんの演奏は、悲哀の情緒たっぷりの演奏で、暗く分厚い雲の垂れ込めた空、スコットランドの荒れた大地に、ひとり立っている(立たされている)感じです。泣きたくなる心境になります。テンポはゆったりしており、すーっと沈み込んでいきます。旋律は柔らかく牧歌的なのですが、ハープとフルートと弦楽で奏でられる旋律は、物思いに耽っているというより、どうしようと悲嘆に暮れている感じです。
ヴァイオリンの二重奏のように奏でられる、郷愁を誘う主題は、古いスコットランド民謡から、アレンジされ取り入れられているとのことだが、原曲は、「Auld Rob Morris」年老いたロブ・モリス という曲、「Through the Wood Laddie」スルー・ザ・ウッド、ラディーという曲ではないかと言われているそうです。
第2楽章は、三拍子の舞曲で、ソロ・ヴァイオリンが旋律を歌います。勇壮な低弦の舞曲で、「Dusty Miller」粉まみれの粉屋という曲を元にしているそうです。
第3楽章 ここは、「I’m a Doun for Lack O’Johnnie」ジョニーがいなくて、がっかり という民謡を元にしているそうです。とても親しみやすい旋律で、可愛く、ハープも入って乙女チックに歌います。執拗なほどに繰り返すのですが、これがまた物悲しさを呼びます。
第4楽章 ここでは「Hey Tuttie Tattie」は、 ロバート・バーンズの「Scots wha hae Wallace bled」(ウォレスとともに血を流したスコットランドの民よ)という曲が元になっているそうです。ヴァイオリンとオケが、同じ主題を奏で、しゃがれた声で、切々と歌いきるところが浪漫でしょうか。お酒を飲み過ぎて、声をつぶしたような、しゃがれた男の歌ですねえ~ ふと、スコッチウィスキーが飲みたくなっちゃう。
そして、聴いているうちに、騎士道精神みたいなモノが、フツフツとイメージに浮かんできます。アッカルドさんのヴァイオリンは、繊細なのですが、子どもの頃に読んだウォルター・スコットの「アイバンホー」に出てくる黒騎士を思い出しました。スコットランドの民謡は、ここでご紹介しているスコットランド幻想曲だけではなく、ベルリオーズの序曲「ロブ・ロイ」にも影響を与えているそうです。
CDカップリング:ブルッフ ヴァイオリン協奏曲全集2枚組BOX ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番、2番、ヴァイオリンと管弦楽のためのセレナード、3番、スコットランド幻想曲 1番と2番、スコットランド幻想曲1977年、3番、セレナード1978年録音 出典:YouTube Bruch: Scottish Fantasy, Op. 46 サルヴァトーレ・アッカルド – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group
アルトゥール・グリュミオー ハインツ・ワルベルク ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 😘
ブルッフ:スコットランド幻想曲 アルトゥール・グリュミオー ハインツ・ワルベルク ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1973年 Bruch: Scottish Fantasy, Op. 46 Arthur Grumiaux Heinz Wallberg New Philharmonia Orchestra
グリュミオーさんの演奏は、秋空のような透き通った清々しい音で綴られます。とても健全で、晴れやかさを感じるフレージングです。紡ぎ出される音は、そのまま人格とイコールではないかと思います。落ち着いてて、楽章にあまり変化は見られないのですが、第1楽章を拝聴するだけでも、充足するに足りる大らかさ、朗らかさ、柔和な表情がありました。CDカップリング:ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番、スコットランド幻想曲 1973年録音 出典:YouTube Bruch: Scottish Fantasy, Op. 46 アルテュール・グリュミオー – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group
チョン・キョンファ ルドルフ・ケンペ ロイヤル・フィル 😥
ブルッフ:スコットランド幻想曲 チョン・キョンファ ルドルフ・ケンペ ロイヤル・フィル 1972年
Bruch: Scottish Fantasy, Op. 46 Kyung-Wha Chung Rudolf Kempe Royal Philharmonic Orchestra
キョンファさんの演奏は、満身創痍で、泣きの涙という感じです。暗くて、やりきれなさが漂ってくるのですが、しかし、毅然としてて萎えてない感じが、ヒシヒシ。怖いくらいに強いので、グサッと来ます。序章部分のグラーヴェでは、まるで、ぱらり~っと髪がほつれ、前に垂れてしまったような暗い表情です。オケの鋭い咆吼があるのですが、り穴が開いてしまった絶望感が漂い、沈むような旋律が出てきます。オケも嶮しいのですが、デビューまなしの演奏とは思えないようなキョンファさんの悲しみの表情に、驚きます。
第1楽章は、柔らかい牧歌的な旋律で、しっくりした歌謡です。第2、第3楽章は、華やかな表情に変わり、高音域の張りの強さ、オケの明るい音質が印象に残ります。ただ、どこかに悲しさがあり、暗さを引きずっている音の表情がありし、胸が詰まります。オケは、甘いフレーズを存分に盛り込んでくるのですが、ヴァイオリンは、人知れず悲しみを引きずっているようです。
第4楽章は、跳躍感のある演奏です。ハイランドの風景が広がっているとか、単なる風景からくるイメージではなく、そこを通り越して、自分を抑制している強さと脆さが見え隠れします。オケは勇壮で、広がりを見せるのに反し、内に向かうヴァイオリン。切々と歌われるので、ぐっと胸にきます。
CDカップリング:ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番、スコットランド幻想曲 出典:YouTube Bruch: Scottish Fantasy, Op. 46 チョン・キョンファ – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group
ヤッシャ・ハイフェッツ マルコム・サージェント 新ロンドン交響楽団 😘
ブルッフ:スコットランド幻想曲 ヤッシャ・ハイフェッツ マルコム・サージェント 新ロンドン交響楽団 1961年 Bruch: Scottish Fantasy, Op. 46 Jascha Heifetz Malcolm Sargent New Symphony Orchestra of London
ハイフェツさんの演奏は、多分、名演奏なんだと思います。旋律のこぶし回しが、すぽっとハマります。独特の間合いとタメ感があり、気がつけばハマっていたという感じで惚れます。CDカップリング:ブルッフ スコットランド幻想曲、ヴュータン ヴァイオリン協奏曲第5番(作品37) 出典:YouTube Scottish Fantasy, Op. 46 ヤッシャ・ハイフェッツ – トピック Provided to YouTube by RCA Red Seal
ブルッフ:スコットランド幻想曲【解説】
ブルックのスコットランド幻想曲 Schottische Fantasie(作品46)は、1879年から80年にかけて作曲されています。ヴァイオリンとオケのための協奏的作品で、正式名称は、「スコットランド民謡の旋律を自由に用いた、管弦楽とハープを伴ったヴァイオリンのための幻想曲」です。
サラサーテに献呈されていますが、ヨアヒムにより初演されています。ハイフェッツが好んで演奏したことから人気を博するようになったようです。てっきりスコットランドへの旅行が、作品へ反映されたものと思っていたのですが、さにあらず。書物によりスコットランド民謡と出会いよるものだそうです。
序奏と4つの楽章で構成され、演奏時間は約30分。
序奏 グラーヴェ
序章 グラーヴェ 変ホ短調 4/4拍子 コラール風の旋律に始まり、甘美だが物悲しいテーマが独奏ヴァイオリンによって奏でられます。
第1楽章 変ホ長調 3/4拍子 オケの前奏に続いて、スコットランド民謡の “Thro’ The Wood, Laddie”(森を抜けて、若者よ)を基調としたメロディーが奏でられます。この主題は、後の楽章にも現れます。
第2楽章 ト長調 2/3拍子 ソナタ形式 舞曲風の楽章で、バグパイプを思わせる空虚五度に乗って、ソロヴァイオリンが、 “Dusty Miller”(粉まみれの粉屋)をもとにした旋律を奏でます。第1楽章主題が回想されて、次の楽章に切れ目なしで続きます。
第3楽章 変イ長調 4/4拍子 三部形式 ”I’m a Doun for Lack O’Johnnie”(ジョニーがいなくてがっかり)をもとにした親しみやすい歌謡風の楽章です。
第4楽章 変ホ長調 4/4拍子 ソナタ形式 冒頭の主題は、スコットランドの非公式な国歌の一つである “Scots wha hae”(スコットランドの民よ)の変形だそうです。この主題と、ハ長調で提示される抒情的な主題の二つが華やかに変奏され、展開されていきます。ヴァイオリンと共に、ハープが良い働きをしている楽曲です。
ブルッフ:スコットランド幻想曲【ディスク情報】
1961年 ハイフェッツ マルコム・サージェント ロンドン新交響楽団 R
1972年 チョン・キョンファ ケンペ ロイヤル・フィル Dec
1973年 グリュミオー ハインツ・ワルベルク ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 Ph
1977年 アッカルド マズア ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管 Ph
1993年 五嶋みどり メータ イスラエル・フィル SC
1996年 タスミン・リトル ヴァーノン・ハードリー ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団 EMI
1996年 諏訪内晶子 ネヴィル・マリナ― アカデミー室内管弦楽団 Ph
2002年 ジェームズ・エーネス マリオ・ベルナルディ モントリオール交響楽団 CBC
2014年 ニコラ・ベネディッテイ ロリー・マクドナルド BBCスコティッシュナショナル管弦楽団 Dec
2017年 ジョシュア・ベル 弾き振り アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ SC
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