ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」【YouTube】
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」 ヴァイオリン:ユリア・フィッシャー Julia Fischer ピアノ:Yulianna Avdeeva ユリアンナ・アヴデーエワ 2021年6月11日演奏の模様です。1983年ドイツ生まれのヴァイオリニストです。ブラームスはヴァイオリン協奏曲、二重協奏曲のCD(PentaTone)が発売されています。
出典:YouTube Brahms | Violin Sonata No. 1 in G major op. 78 – Julia Fischer, Yulianna Avdeeva Südtirol in concert
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」【名盤・おすすめ】
ヴィクトリア・ムローヴァ ピョトル・アンデルシェフスキ 🥰
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」ヴィクトリア・ムローヴァ ピョトル・アンデルシェフスキ 1995年 Brahms: Violin Sonata No.1 in G Major, Op.78 Viktoria Mullova Piotr Anderszewski
第1楽章 ムローヴァさんの演奏は、瞬間的に情念がわき起こります。しかし、それを抑えている感じがするのです。さりげなく一歩引いている感じ~ ここまで、しっとりと奏でてくるとは思っていませんでした。そして、ピアノの伴奏も素晴らしい。スマートでキレのあるフレージングで、さりげなく演奏されています。高音域へとのびていくところもさりげないです。涼しい風に聞こえますが、高いところに昇ると畳みかけてくる熱いものがあります。
声が裏返った、その瞬間に燃える。えっ!ツンデレ風のムローヴァさんが変貌した。弱音のフレーズとの差が大きく、大人の女性という感じがありあり。ピアノも同じで、さりげないフレージングで、さらさら、さらさら~っと、やりすごしていく場面と、熱く、うぅ~んっと呻き声をあげて歌う。これは、やられてしまいましたね。熱い情熱というより、こりゃ~情念だわって感じです。いかにも秘めたる恋慕、想いが詰まっている感じが、すごくします。恋心を、この曲に託しましたというのがありあり。聴き応えがあります。
第2楽章 ピアノとヴァイオリンが、寂しげにカラダを風に任すような感じで、揺れながら歌い始めます。この最初の「どぉ~れ どぉ~し」という出だしのフレーズが、身を預けたいという意思を感じます。心が揺れている。それが、少し喜びに変わり、心の豊かさに変わる瞬間がありますね。晴れ晴れとした気持ちに変わる瞬間、堂々とピアノと対等に歌いはじめて力強さに変わるのです。いや~ あの悶える悩みは、どこへ行ったの。どうして、そうダイナミックに変わることができたの。自分が愛していることに確信がもてたということかなあ。愛することに誇りを持っている。それでいながら、一抹不安がよぎって来ます。
ムローヴァさんの恋愛の経験も重なっているんでしょうね。で、それが伝わってきて、そうそう、その気持ちわかるよね~ 不安だよね~というのを感じます。自信を持っている時と、不安になる時と、夜の寂しさなんかも落差の大きさが、この演奏に繋がっているように思えます。でもね、その気持ちが、とても素直に、感情の発露として表現できるようになったわけで。ヴァイオリニストとしても成長できたみたいで~ なんだか羨ましいような気持ちに。うふ。よかったねって思います。感性がとても豊かで、気持ちが乗り移った演奏だと思いました。
第3楽章 フレーズの語尾が消えます。すっと消えるのです。また、ピアノもすーっとさりげなく寄り添っており、柔らかく、風のようになだからかに素速く弾かれています。ここでは、ヴァイオリンとピアノが一心同体という感じがしてきます。風のようなヴァイオリンに、すっと後に続いて小雨が降っているような。すーっと、もりあがり熱くなる瞬間がありますが、ほんと一瞬です。
さりげないというよりも、形でないことを喜んでいるような雰囲気がします。情念をぶつけるというのではなく、悲しみとか嬉しさとかが描かれているのではなく、感情が昇華しちゃった感じで、すごい演奏です。ちょっと勘ぐってしまうような演奏で~ しっかり、恋慕が愛に変わるかのようで~ これは、やられました。女性的な熱いものが感じられ、じわっと涙目になってしまいました。シャンソンを歌っているようにも感じる演奏でした。
CDカップリング:ブラームス ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」、2番、3番 出典:YouTube Brahms: Sonata for Violin and Piano No.1 in G, Op.78 ヴィクトリア・ムローヴァ – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group
チョン・キョンファ ペーター・フランクル 🥰
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」チョン・キョンファ ペーター・フランクル 1995年
Brahms: Violin Sonata No.1 in G Major, Op.78 Kyung-Wha Chung Peter Frankl
第1楽章 キョンファさんの演奏は、もっとテンションの高いものかと思っていたのですが、意外としっとりと、しとやかな大人の雰囲気が漂っています。ピアノが柔らかくパンパンっと鳴らすのを合図に、ヴァイオリンが歌い始めます。屈折気味のウジウジしたブラームスの渋い楽曲ではなく、快活で、素直な明るい旋律です。なんだか、クララさんに、好きだ~ 好きだ~っと、言い続けているみたいで、ちょっと微笑ましいですね。
ヴァイオリンとピアノで、掛け合う場面があり、そこでも、素朴に嬉しさがあふれているようで、親しみやすさを感じます。まるで、鼻歌を歌っているかのような優しい旋律です。キョンファさんの演奏も、いつもの苛烈なイメージが影を潜め、穏やかで、甘すぎず、激しすぎず、しっとりと演奏されています。
第2楽章 ピアノが、教会の鐘が遠くから鳴っているようですが、揺れる心情が、切々と奏でられています。ブラームスらしく、渋めの旋律で、翳りのあるため息まじりです。振り切るかのような気合いある旋律が入ってきます。なるほど、この鬱々とした心境を、断ち切りたいのねって感じです。センチメンタルな感情を、ピアノは断ち切りたいようですが、ヴァイオリンは、うねっと~鬱屈した感じのかすれ声で、沈み込んでしまって。あっ~立ち直れません状態に。ヴァイオリンの重音の和音が、とても美しい楽章です。
第3楽章 このヴァイオリン・ソナタには、高音域は、あまり登場しません。幅の狭い音域のなかで、歌うように奏でていきます。軽やかな沈んだ声で歌っているようです。「雨の歌」という歌曲だそうです。雨が降ると裸足になってはしゃいだ、子ども時代を懐かしむという内容らしいのですが、キョンファさんの演奏を聴いていると、やはり雨が降っているわけではなさそう。暖かみもあって、そっと包み込むような大人の歌なのです。さらっと展開しながら、歌い、すっと消えていく、う~ん やっぱ大人ですよね。
ほとよい関係の愛情表現ですね。ある程度の距離感を保ちつつ、遠くから見守ってますよ~という感じの優しさがあって、感情を爆発させていません。また、極めてタイトで、ツライほど落ち込んでもいません。過剰なまでのストイックな感情でもなく、安定感のある重音、さりげない和音が聞こえて終わります。キョンファさんのヴァイオリンは、感情の発露を前面に出してくるのかと思っていましたが、さにあらず。大人の落ち着いた表現の演奏です。深々としつつ、さらっとした旋律美。情感を控えめに漂わせて歌っており、より一層魅力的な演奏だと感じました。
CDカップリング:ブラームス ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」、2番、3番 出典:YouTube Brahms Violin Sonata No. 1 in G Op. 78 チョン・キョンファ – トピック Provided to YouTube by Warner Classics
アンネ=ゾフィ・ムター アレクシス・ワイセンベルク 😘
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」アンネ=ゾフィ・ムター アレクシス・ワイセンベルク 1982年
Brahms: Violin Sonata No.1 in G Major, Op.78 Anne-Sophie Mutter Alexis Weissenberg
第1楽章 ムターさんは、1963年生まれのヴァイオリニストです。この録音当時は二十歳頃。ピアノは、ワイセンベルクさんで、超驚きの組み合わせです。最初は、少し硬めのヴァイオリンの旋律でしたが、ピアノに導かれて、ムターさんのヴァイオリンは、大きく、ふくよかに歌っていきます。さすが有名なピアニストですね。サポートが上手です。
大人びて歌う、ちょっぴり背伸びしたヴァイオリン。渋いピアノの伴奏のうえを、大きなフレーズで歌おうとしています。まさか、あのワイセンベルクさんとは思えないほど控えめな伴奏です。そもそも、伴奏するようなピアニストではない~ですよね。ムターさんのヴァイオリンは、少し硬い気がしますが、次楽章に入ると、大人のフレージングになっていきます。
第2楽章 ヴァイオリンが主題を奏でる時には、抒情的に、しみじみ、音を置いていくようにピアノが鳴ります。付点のリズムを挟むところは短調で、ヴァイオリンは、悲劇のヒロインのように、嘆き節を奏でて濃い表情となります。ここは、ピアノの間合いで奏でているのか、ピアノのゆったりとした旋律が、ヴァイオリンを導いているようですね。
第3楽章 繰り返して歌っていく楽章です。テンポを速めに歌って、控えめつつも熱い演奏です。旋律の終わりに差し掛かるとき、ふわっとした間合いがあります。狂おしいほどに~っ好きと歌われているようで、何度、繰り返したら気が済むのだろうというほど、ブラームスらしく、ちょっと執拗です。この楽章は、力を抜いて、柔らかくテンポを落として、重音を奏でており細かい配慮がされています。総体的には、 ワイセンベルクさんのピアノに導かれ、ムターさんのヴァイオリンが歌っており、最初は、 少し硬めの音だったのだが、ピアノによって、解き放たれ、自由に少し大きく、ふっくらしたフレーズへと変貌していったように思います。また、一歩、成長したね~と言っているようなピアノの演奏でした。
CDカップリング:ブラームス ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」、2番、3番 出典:YouTube Brahms Sonata for Violin and Piano No. 1 in G Major, Op. 78 Anne-Sophie Mutter Provided to YouTube by Warner Classics
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」【解説】
ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番(作品78)は、1879年(46歳頃)に作曲されています。最初、1853年頃にイ短調のヴァイオリン・ソナタを作曲したのですが、自分の判断で破棄。その後、時間を経て完成しています。1877年に交響曲第2番が、78年にはヴァイオリン協奏曲、続いてこの曲が作曲されています。「雨の歌」という通称は、第3楽章冒頭の主題が、ブラームス自身による歌曲「雨の歌 Regenlied」「余韻 Nachklang」主題を用いているためです。「雨の歌」は、クララ・シューマンが特に好んでいた歌曲で、それを引用することで、クララへの思慕の念を表現したというのが通説のようです。
第1楽章 ト長調 やや凝った複雑なソナタ形式による楽章で、軽やかで抒情的な雰囲気をもつ第1主題と、活気のある第2主題で展開されます。
第2楽章 変ホ長調、三部形式で叙情と哀愁が入り交じる緩徐楽章で、民謡風の旋律がピアノで奏され、ヴァイオリンが加わって哀愁を歌います。第1部は葬送行進曲風の調べで、この旋律は第3部で再び回帰してきます。
第3楽章 ト短調-ト長調 歌曲「雨の歌」と「余韻」に基づく旋律を主題としたロンドです。主題は、第1楽章の第1主題と関連があり、また第2エピソードとして、第2楽章の主題を用いるなど全曲を主題で統一しています。全三楽章の構成で、演奏時間は約27分です。
ブラームスにとっては、意味深なラブレターですね。音楽に込めたラブレターです。作曲家ならではの愛の告白が、切々と歌われて泣きの涙に。恋心を音楽で表現することで、愛を告白し、現実と理想の狭間を埋める。いや~ 凡人にはできない行為ですが、後年まで残る音楽家の愛情表現を、聴取できることに感謝します。
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」【ディスク情報】
1982年 ムター ワイセンベルク EMI
1991年 オーギュスタン・デュメイ マリア・ジョアン・ピリス G
1995年 チョン・キョンファ ペーター・フランクル EMI
1995年 ムローヴァ ピョトル・アンデルシェフスキ Ph
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