ドビュッシー: アルト・サクソフォンと管弦楽のための狂詩曲【名盤・おすすめ】
ジョン・ハール ネヴィル・マリナー アカデミー室内管弦楽団 😘
ドビュッシー: アルト・サクソフォンと管弦楽のための狂詩曲(管弦楽とサクソフォーンのための狂詩曲)
ジョン・ハール ネヴィル・マリナー アカデミー室内管弦楽団 1990年
Debussy: Rapsodie pour orchestre et saxophone John Harle Neville Marriner Academy of St. Martin-in-the-Fields
ハールさんの演奏は、なんとセクシーな楽曲なのだろうと感じた演奏です。アルト・サックスの暖かい音が素敵です。クラシックにおいて、サクソフォーン(サクソフォン、サックス)の協奏曲って珍しいですよね。
サックスは、わりと新しい楽器で、19世紀の1840年頃に、サックスさんって方が造った楽器です。だから、サックスと呼ばれているらしい。モーツァルトやベートーヴェン時代にはなかった楽器だし、夕暮れ時、茫洋とした暖かい空気に包まれたような音色です。ジャズの世界だと必須の楽器でしょうが、クラシックの曲に、こんなに馴染んでいるなんて~ この曲で初めて知ったように思います。なんと魅惑的で、セクシーな音なのでしょう。クラシックに、セクシーなんて言葉は、無縁だと思われそう・・・ですが。
ハールさんの演奏は、音が柔らかく、穏やかで、暖かみのある音色です。オケのなかの一つの楽器として埋もれそうになっていますが、溶け合う感じで好感が持てます。オケ全体が、まあ~るい感覚で響いています。メリハリが少ないとも言えるんだけど、あまり拍の感覚を持たないところが、この楽曲には良いのかもしれません。「パパパ パパパっ」ではなく、「ぱららぁ~ぱららぁ~」って感じで鳴りますね。気怠さが、むふふっう。
この楽曲のなかほどでホルンが吹かれているが、その音にも耳を奪われてしまう。「そそそ~ふぁ ららら~し そそそ そ~ふぁ みれみふぁ~」「み~~ れみふぁみ~ れみふぁみ~ しれみ しらそ しれみ しらそ~」「ふぁ~ れみふぁみ~」このフレーズが大変印象的なのだが、どうも、このハール盤、ホルンと一緒にサックスを吹いているような気がするのだ。他の盤だと、ホルンだけのような気がするのですが。CDのブックレットには、ジョン・ハールによる編曲版だと記載がありました。(ちょっと確信はもてませんが~)
CDカップリング:サクソフォーン協奏曲集 ドビュッシー アルト・サクソフォーンと管弦楽のための狂詩曲、イベール アルト・サクソフォーンと11の楽器のための室内小協奏曲、ヴィラ=ロボス ソプラノ・サクソフォーンと室内管弦楽のための幻想曲、グラズノフ アルト・サクソフォーンと弦楽のための協奏曲、ベネット アルト・サクソフォーンと弦楽のための協奏曲、ヒース ソプラノ・サクソフォーンと管弦楽のための「アウト・オブ・ザ・クール」
出典:YouTube Debussy: Rapsodie for Saxophone and Orchestra, CD 104 ネヴィル・マリナー – トピック Provided to YouTube by Warner Classics
須川展也 デビット・パリィ フィルハーモニア管弦楽団 😍
ドビュッシー: アルト・サクソフォンと管弦楽のための狂詩曲
須川展也 デビット・パリィ フィルハーモニア管弦楽団 1996年
Debussy: Rapsodie pour Saxophone Alto en mi bémol et Orchestre Nobuya Sugawa David Parry Philharmonia Orchestra of London
須川さんの演奏は、録音状態が良く、サックスがオケの前に出てヌケが良く、奥行きを感じて、ゆったり聞こえてきます。オケに埋没、溶解することなく、しっかりとした存在感が明瞭に出て、雰囲気に流されない理知的な面も兼ね備えていて、とっても素敵です。このドビュッシーの楽曲は、オーケストレーションはドビュッシーの死後、ロジェ・デュカスが行っているとCDのブックレットに書かれてありました。また、この演奏は須川さんの編曲したもの。なるほど、オケのスコアは、どうやら未完だったようです。
オケとサックスの位置関係も頃合いで、すーっとした立ち位置がイメージされます。理知的で都会的、スマートな音のノビがあり、分厚い太い響きで圧倒する演奏ではありません。デリケートな色彩感、官能的で、音の響きが幅広ですが、しっかりした安定した一定の幅があります。
場面ごとに音の揺れがあり、音の上下に伴って、微妙に揺れていきます。オケの弦のフレーズとサックスの響きが、妖しく響き、イメージがどんどん膨らみます。オケの低弦の響きが、きっちり響いているので、そのうえで、サックスが、「らどれ らそみ らどれ らそみ」「らしど みっれ~」 タタタ タタタ・・・と音が乗ってくるんですね。明瞭な境界線がありながら、それを超える揺れ。オケのパーカッションと金管に力強さがあり、サックスの背後から昇ってくるかのようです。この楽曲は、わずか10分程度ですが、海辺で沈むを夕陽を眺めているような、凝縮した時間を感じます。器の大きさ、広さ、自分の居る空間が、ずずーっと広がってくる感じがします。とてもシアワセです。
CDカップリング:吉松隆 サイバーバード協奏曲、グラズノフ サクソフォン協奏曲、ドビュッシー ラプソディ、
ヴィラ=ロボス ソプラノ・サクソフォーンと室内管弦楽のための幻想曲、イベール アルトサクソフォンと11の楽器のための室内小協奏曲 出典:YouTube Debussy: Rapsodie pour Saxophone Alto en mi bémol et Orchestre
須川展也 Nobuya SUGAWA Official Movie Provided to YouTube by Universal Music Group
セオドア・ケルケゾス マーティン・ブラビンズ フィルハーモニア管弦楽団 😘
ドビュッシー:アルト・サクソフォンと管弦楽のための狂詩曲
セオドア・ケルケゾス マーティン・ブラビンズ フィルハーモニア管弦楽団 2002年
Debussy: Rapsodie pour Saxophone Alto en mi bémol et Orchestre Theodore Kerkezos Martyn Brabbins Philharmonia Orchestra
ケルケゾスさんの演奏は、ゆったりとしたフレージングで、色彩的だし、開放感にあふれています。ギリシャ生まれのセオドア・ケルケゾスさんの音は、甘くて、コロコロと吹かれています。この曲は、冒頭からヨナ抜き風の不思議な旋律から始まります。場面は朝なのかな。
弦で弾かれ、鼻にかかった濁音の声で、ふわふわっとサックスに吹かれると、一気に別世界に飛んでいってしまう。背中がゾクゾクしちゃて、むふふ。目覚める頃か、酔っ払ってカフェバーで、煙いな~と思いつつも、耳元に囁くような声で歌われると、誰だって、ころっとなってしまいそうですよね。地中海のリゾート地で、まどろんでいるみたい。シャンシャンと、タンバリンの鈴のような音、クラリネットが、ころころ~ クルーザーで昼寝しているかのような、揺れたリズムもあるし~ ろり~ うとうとしてしまいそう。
ダフニスとクロエのような白昼夢的な演奏です。ケルケゾスさんの演奏したサックスは、ユーリ・シモノフ指揮のロンドン交響楽団とのCDも発売されているようです。開拓していく余地があって~ こりゃ、嬉しい悲鳴でございます。このナクソス盤に収録されているのは、原典版とのことですが、素人のワタシには、どこが、どうなっているのか解りません。一部分が未完だったのかもしれませんが、そうだと補筆が必要でしょうし。編曲と表記しているものもあるので、また、調べてみます。ワタシが所有しているCDは、Music for Saxophone and Orchestra とタイトルされたものです。もちろん、NAXOSでも拝聴できるので、気に入ったら聴いてみてください。
CDカップリング:ドビュッシー アルト・サクソフォンと管弦楽のための狂詩曲、ミヨー アルト・サクソフォンと管弦楽のための組曲「スカラムーシュ」、イベール 室内小協奏曲、ヴィラ=ロボス ソプラノ・サクソフォン、3本のホルンと弦楽のためのファンタジア、グラズノフ アルト・サクソフォン協奏曲、エカテリーニ・カラメッシーニ サクソフォン協奏曲「デュオニュソスの歌」 出典:YouTube Debussy: Rapsodie for Orchestra and Alto Saxophone
Theodore Kerkezos – トピック Provided to YouTube by NAXOS of America
ジャン=マリー・ロンデックス ジャン・マルティノン フランス国立放送管弦楽団 😘
ドビュッシー:アルト・サクソフォンと管弦楽のための狂詩曲
ジャン=マリー・ロンデックス ジャン・マルティノン フランス国立放送管弦楽団 1973年
Debussy: Rapsodie pour Saxophone Alto en mi bémol et Orchestre Jean=Marie Lodeix Jean Martinon Orchestre philharmonique de Radio France
ロンデックスさんの演奏は、くぐもったなかでの柔らかさ、ふわっとしたまろやかな空気感、幻想的なもこもこ感があります。「アルト・サクソフォンと管弦楽のための狂詩曲」という曲は、いつ聴いても気持ちの良い曲で、わずか10分から15分程度の小品なのですが、別世界に行ってリラックスできるような雰囲気があります。
アルトサックスという楽器の音は、包み込むような大きさがあり、声の良さとしか表現しようがないほど。ホント、アルト・サックスは、声の良い人なのです。こんな人が隣にいてくれていたら、毎晩、楽しいだろうなあ~ カウンター越しに、さりげなく喋ってくれるマスターみたいというか、カフェでシェイクしてくれたら、ワタシ、毎晩、通ってしまいそうです。須川さんの演奏のように、抜けの良い録音ではないのですが、明確なオケの音が特徴で、トライアングルの響き等、筋の通った音として響いています。ちょっと和風に聞こえ、音がとれそうでとれないドビュッシーの不思議な旋律に戸惑わされ酔ってしまいます。
サックスと言えば、当然、ジャズだと思い込んでいたところに、ドビュッシーが書いたモノ(作品)があるってことを、教えてもらっただけで、ワタシにとっては感謝でしょうか。昔、最初に聴いたCDだったと思います。ロンデックスさんの演奏は、気怠さというより、控えめな清潔さを感じます。
出典:YouTube Debussy: Rapsodie (for orchestra with saxophone solo) 1998 Remastered Version
ジャン・マルティノン – トピック Provided to YouTube by Warner Classics
ドビュッシー:アルト・サクソフォンと管弦楽のための狂詩曲【解説】
ドビュッシーのサクソフォンと管弦楽のための狂詩曲は、もともとは、アンドレ・カプレ、ヴァンサン・ダンディなど、多くの作曲家に作曲を依頼していたアメリカのサックス奏者エリーズ・ホールが、ドビュッシーに、サックスのための曲を依頼したことが発端になっています。1901年に依頼されたのに、サクソフォーンに魅力を感じなかったのか、ドビュッシーは気乗りせず、放置状態だったようすです。
1911 年ソロとピアノの形式で完成し、1919 年にジャン・ロジェ・デュカスが編曲しています。1918年にドビュッシーが亡くなった後、ジャン・ロジェ=デュカスが、1919年にフルオケ用に編曲しているのです。最終的に「狂詩曲」として、1919年5月に初演されました。
Wikipedia(ウィキ)においては、このサクソフォンと管弦楽のための狂詩曲、クラリネットと管弦楽のための第一狂詩曲、神聖な舞曲と世俗的な舞曲の三曲は、独奏と管弦楽のための協奏的作品と表現されています。管弦楽曲とも言えるし、協奏曲とも言えるかもしれませんが、デュカスによって管弦楽編曲が行われ、色彩的で表情豊かな素敵な楽曲になりました。
サックス(サクソフォン)の協奏曲 こんなにもありました~。
ちなみに、サックス(サクソフォン)の協奏曲は、次のとおりウィキペディア(Wikipedia)にリスト化されていました。意外と数多くあるようです。この他にも、日本人作曲家にも多くの作品があります。まだまだ、クラシックの世界も広いです。無限大に続くかのよう~ また、聴いて楽しみましょう。
ドビュッシー:アルト・サクソフォーンと管弦楽のための狂詩曲
イベール:アルト・サクソフォーンと室内管弦楽のための小協奏曲
グラズノフ:アルト・サクソフォーンと弦楽オーケストラのための協奏曲
ボザ:アルト・サクソフォーン小協奏曲
クレストン:アルト・サクソフォーンと吹奏楽のための協奏曲
トマジ:サクソフォーン協奏曲
ダール:アルト・サクソフォーンと吹奏楽のための協奏曲
シェッフェル:サクソフォーンとオーケストラのための協奏曲
カプースチン:アルト・サクソフォンと管弦楽のための協奏曲 作品50
フローラン・シュミット:アルト・サクソフォーンとピアノ(管弦楽)のための「伝説」
ルイス・デ・パブロ:コントラバス・サクソフォーンとオーケストラのための「色彩」
ドビュッシー:アルト・サクソフォンと管弦楽のための狂詩曲【ディスク情報】
1973年 ロンデクス マルティノン フランス国立放送管弦楽団 EMI
1990年 ハール マリナー アカデミー室内管弦楽団 EMI
1991年 マクリスタル トルトゥリエ アルスター管弦楽団 CHANDOS
1994年 フルモー クリヴィヌ 国立リヨン管弦楽団 DENON
1996年 須川展也 パリィ フィルハーモニア管弦楽団 EMI
2002年 ケルケゾス ブラビンズ フィルハーモニア管弦楽団 NAXOS
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