チャイコフスキー:交響曲第2番「小ロシア」と第3番「ポーランド」【聴いてみよう】Tchaikovsky: Symphony No. 2 in C Minor, Op. 17 “Little Russian” & Tchaikovsky: Symphony No. 3 in D Major, Op. 29, TH. 26 “Polish”

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チャイコフスキー:交響曲第2番「小ロシア」【名盤・おすすめ】

セミヨン・ビシュコフ チェコ・フィル 🥰

チャイコフスキー:交響曲第2番「小ロシア」セミヨン・ビシュコフ チェコ・フィル 2019年
Tchaikovsky: Symphony No. 2 in C Minor, Op. 17 “Little Russian” Semyon Bychkov Czech Philharmonic

ビシュコフさんのチャイコフスキーは、ホント、弦のうねりが、気持ち良く聴くことができます。中欧のしっとりした色彩感があり、穏やかな表情をしつつも、キリリっと締まっています。冒頭のホルンも、ほわっとした音色で、空気を暖かくしており、すぐに引き込まれていきます。その自然に寄り添うような音色は、コンセルトヘボウに負けずとも劣らずで~ 木管も抜群に存在感を感じます。

チャイコの楽曲は、木管を彩りとして使っており、その使い方が巧みです。特に、オーボエが綺麗に輪郭線を描き出しており、そのおかげで立体感が増しています。このビシュコフさんの演奏は、ホルンのふんわか感と、スパイス的な金管、引き締まるティンパニーが組み合わさって、バランスが良いです。うーん。良いですねえ。最近、チャイコフスキーからご無沙汰していたのですが、これはまた聴きたくなってきますね。ビシュコフさんの演奏は、断然お薦め。ビシュコフさんが、こんなに化ける(言葉が悪くてごめんなさい)なんて、思ってもみなかったわ~と、感心して聴かせていただきました。

CDカップリング:チャイコフスキー交響曲全集7枚組BOX 交響曲第1番、2番2019年、第3番2016年、第4番2015年、第5番2017年、第6番2015年、幻想序曲ロメオとジュリエット2015年、フランチェスカ・ダ・リミニ2017年、マンフレッド交響曲2017年、弦楽セレナード2017年、ピアノ協奏曲第1番2017年、ピアノ協奏曲第2番、第3番2019年 ピアノ:キリル・ゲルシュタイン 出典:YouTube Tchaikovsky: Symphony No. 2 in C Minor, Op. 17, TH.25 “Little Russian” チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

クラウディオ・アバド シカゴ交響楽団 😍

チャイコフスキー:交響曲第2番「小ロシア」クラウディオ・アバド シカゴ交響楽団 1984年
Tchaikovsky: Symphony No. 2 in C Minor, Op. 17 “Little Russian” Claudio Abbado Chicago Symphony Orchestra

アバドさんの演奏は、金管が気持ち良いほどに鳴って、パワー炸裂状態のセッションを聴かせてくれます。煌びやかさと、歌って歌う~という愉悦性の高い綺麗な演奏です。チャイコフスキーの交響曲は、4番以降の後半が頻繁に演奏されますが、1番から3番の前半の交響曲は、あまり人気がありません。ベートーヴェンやブルックナーのように、チクルス形式で演奏会を実施するとも思えないし~ ちょっと蚊帳の外ぽい曲になっています。

まあ、確かに。でも、いくら天才作曲家といえ、最初から完璧な作品を書けるとは思えないですよね。で、このチャイコフスキーの2番も、のっけから演歌調で始まります。「らぁ~~  ら~みふぁ そふぁらそ れぇ~み ふぁ~れ」という(調子ハズレの音痴でスミマセン)揺らめいて悲しく、演歌っぽく、主題が執拗に繰り返されます。
かなり効率性の高い主題でして~ 少しフレーズを変えて、テンポをいじって、楽器を変えて主題の使い回しが行われています。単調になりがちな主題を、アバドさんは、あっさり小気味良く進めていきます。金管が、良い声で歌ってくれるので、曲のレベルを維持している感じです。

第2楽章は、木管メインの可愛い楽章で、後年のバレエ音楽作品をイメージさせます。行進曲風だからね~「ハムレット」にも流用されているらしい。可憐な感じを与えます。第3楽章は、快速ステップを踏みながら、弦が強く、ん たー ん たー と引っ張っています。第4楽章は、ど派手なファンファーレ、コラール風で、アハハ~ やっぱり凄い音量で、ゴージャス! 鋭く色彩的で華やかな演奏です。ブラスの音に圧倒されっぱなし。シンプルに音のご馳走が振る舞われます。シカゴ響のブラスの綺麗なこと~ 舞踏会が華やかに繰り広げられている感じが伝わり、もはや綺麗としか言いようのない演奏でした。

CDカップリング:チャイコフスキー 交響曲第2番、幻想序曲「テンペスト」出典:YouTube Symphony No. 2 in C Minor, Op. 17 “Little Russian” シカゴ交響楽団 – トピック Provided to YouTube by Believe SAS

ヘルベルト・フォン・カラヤン ベルリン・フィル 🙂

チャイコフスキー:交響曲第2番「小ロシア」ヘルベルト・フォン・カラヤン ベルリン・フィル 1979年
Tchaikovsky: Symphony No. 2 in C Minor, Op. 17 “Little Russian” Herbert von Karajan Berliner Philharmoniker

今となっては、古めかしい録音になってしまいましたが、アナログ、デジタル初期のチャイコフスキーと言えば、もっぱらカラヤンさんの全盛期かな~と思います。ローカル色は濃くありませんが、歌謡風旋律の歌い方は堂に入ったものですし、豪快で華麗という路線だと思います。

チャイコフスキーの交響曲うち、後期4番~6番は、数多く演奏されていますが、初期の1番 これはまあ良い曲だと思いますが、2番、3番は影が薄く、特に2番は、うーん、真剣に演奏できんわと、指揮者やオケは思うのではないかと思います。チャイコは初心者向けというイメージもあるかもしれません。ホント、シンプルな曲とは思いますが、大作曲家の片鱗は出てますよね。第4楽章は、壮大な序曲「1812年」に似たど派手な楽章です。チャイコフスキーの前期交響曲であっても、手を抜かず、美しく仕上げてくる手腕、やっぱりカラヤンさんは、たいしたものです。

CDカップリング:チャイコフスキー交響曲全集、序曲1812年 録音1966年 出典:YouTube Tchaikovsky: Symphony No. 2 in C Minor, Op. 17, TH. 25 “Little Russian” ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

リッカルド・ムーティ ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 😘

チャイコフスキー:交響曲第2番「小ロシア」リッカルド・ムーティ ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1978年
Tchaikovsky: Symphony No. 2 in C Minor, Op. 17 “Little Russian” Riccardo Muti New Philadelphia Orchestra

ムーティさんは、歌謡風主題を、丁寧に柔らかく繰り返して歌っています。とても親近感のわくもの。ロシア民謡「母なるヴォルガを下りて」というフレーズをアレンジしたものだそうですが、何度も、楽器を変えて繰り返されるため、じわじわっと耳に染みこんでいきます。ちょと冗長すぎるのですが、ティンパニーがバンバン叩かれてくるので、展開していかない楽章ですが、引き締まって豪快です。最終直前で、チューバが参加し、バンバン鳴らした後、再び主題が戻ってきて、寂しくコーダに入っちゃう。

第2楽章は、木管が強調され、可愛い行進曲となっています。第3楽章は、行進曲風の軽やかなスキップ「た ンた ンた ンた」と繰り返すフレーズがあり、バレエ風味も加わります。主題となるのは、ヴァイオリンの軽やかなスキップと、妖精が舞っているような、フルートの軽やかなフレーズでしょうか。劇付随音楽のような妖精が舞う雰囲気がします。異なる主題を、ムーティさんは綺麗に描き分けています。

第4楽章は、バンバン どろどろどろぉ~ん! 驚くような大層なファンファーレ、コラール風に演奏されます。ムーティ盤でも、ティンパニーのロールは驚きです。どひゃ~ すごい。シンプルな音で、これだけご大層にフレーズを作り上げていくかぁ~と驚く作品で、ホント、エネルギー温存しているというか、省力化、エコ化の巧い作品です。また、ノリの良いムーティさんのタクトで、より一層、軽やかに歌われ開放的になり、シンプルさが誤魔化されてしまいます。あはは~ いやいや、シンプルな素材を、豪華に仕上げていただいた料理だったと思います。
 
CDカップリング:チャイコフスキー 交響曲全集 EMI原盤7枚組BOX 出典:YouTube Tchaikovsky Symphony No. 2 in C Minor, Op. 17 “Little Russian” New Philharmonia Orchestra – Topic Riccardo Muti – Topic Provided to YouTube by Warner Classics

ロリン・マゼール ウィーン・フィル 😲

チャイコフスキー:交響曲第2番「小ロシア」ロリン・マゼール ウィーン・フィル 1964年
Tchaikovsky: Symphony No. 2 in C Minor, Op. 17 “Little Russian” Lorin Maazel Wiener Philharmoniker

マゼールさんの鬼気迫る演奏です。録音状態は良くクリアですが、高音域の硬くキレ抜群の切り込んでくる演奏には、恐ろしさを感じます。金管の咆吼に、のけぞり、ラストではドン引きです。交響曲第2番を聴く前に、1番を聴いたのですが、いや~ 強烈な演奏です。真剣勝負って感じで熱い演奏でした。あまりに生々しく、すごみがあって圧倒されたのですが、2番も、ハイ、熱い演奏です。

アナログからデジタルに、リマスタリングされたCDを所有しているのですが、とってもリアルで、大音量になったときの甲高い響きが気になりますが、およそ1960年代の録音とは思えないほどのクリアさで、キッパリ、淡麗辛口で、寒風吹きさらしのなかでに、ワタシは、歩くっ!っていう感じの強い意思を感じさせる演奏です。ウィーン・フィルを振っているのですが、流麗な演奏はぶっ飛んでいます。第2番は、もっさりした曲ですが、金管も弦も前のめりになって走り、金管の咆吼は、まるでロシアのオケ並み、スヴェトラーノフ盤かと思うほどの強いぶっ放しでした。

もちろん、強く吹いてても、そこはVPOなので、もちろん文句のつけようがありません。強くて硬くて、同じようなフレーズが続くため、正直、ちょっと辟易しちゃうのですが、そんなこと、おかまいなし。容赦なく突き刺さる演奏です。まあ、騙されたと思ってお聴きくださいね。交響曲全集4枚組BOX 出典:YouTube Tchaikovsky: Symphony No. 2 Maazel & VPO (1964) Deucalion Project

チャイコフスキー:交響曲第2番「小ロシア」【解説】

チャイコフスキーの交響曲第2番(作品17)は、1872年に作曲されています。とても陽気な楽曲で、三つのウクライナ民謡を用いているため、当時のモスクワの著名な音楽評論家ニコライ・カシュキンから、「小ロシア」というニックネームがつけられたそうです。しかし、とっても失礼なネーミングですよね。昔だからこんなネーミングにしたのかもしれませんが、21世紀では考えられないわ~。1880年に大幅改訂し、第1楽章は大幅に書き換え、他楽章も改訂されているそうです。

第1楽章 ハ短調 4/4拍子→ 2/2拍子 序奏付きソナタ形式:雄壮な主題は、R=コルサコフが演奏会用序曲「ロシアの復活祭」で用いた旋律を活用しています。呈示部は、変ホ長調で締めくくられ展開部に。展開部では2つの主題が聞こえますが、保続音によって第2主題に引き戻されます。第1主題を繰り返さずコーダに第1主題を持ち込んでいます。

第2楽章 変ホ長調 4/4拍子 三部形式:オペラ「ウンディーネ」の結婚行進曲として作曲されたもので、中間部に民謡「回れ私の糸車」が引用されています。後に「ハムレット」劇付随音楽にも流用されているもの。

第3楽章 ハ短調 3/8拍子→ トリオ 2/8拍子 三部形式:スケルツォの楽章で、トリオ(中間部)とコーダがあります。民謡風に響く楽章です。

第4楽章 ハ長調 2/4拍子 ロンド・ソナタ形式:短いが悠々としたファンファーレの後に民謡「鶴」が引用されており、これが第1主題となっており、変奏して進行します。第2主題は、ヴァイオリンで提示されるもの。第2主題はフルートとヴァイオリンによって演奏されます。この2つの主題が絡み合いながら発展します。最後は、プレストのコーダで大きくクライマックスを築いて締めくくられています。

チャイコフスキー:交響曲第3番「ポーランド」【名盤・おすすめ】

セミヨン・ビシュコフ チェコ・フィル

チャイコフスキー:交響曲第3番「ポーランド」セミヨン・ビシュコフ チェコ・フィル 2016年
Tchaikovsky: Symphony No. 3 in D Major, Op. 29, TH. 26 “Polish” Semyon Bychkov Czech Philharmonic

ビシュコフさんのチャイコフスキーは、チェコ・フィルの弦の艶っぽさがあり、うっとりします。しなりの良さというかフレーズの歌い方に品があり、芳醇な香りがします。久々に気持ちよくチャイコフスキーを聴けた気がします。第3番は、ほとんど聴かれることもないように思いますが、しっかり全集として出してもらえて、よかったな~と思います。ビシュコフさんのチャイコはお薦めです。土俗的すぎず、木管も美しいです。金管もほどよく咆哮します。

もっとキツくて、ド派手な金管の咆哮が好き~というマニアックな方にとっては、えーっ イマイチじゃんということになるかもしれませんが~ あっはは。他の指揮者にお進みください。チェコフィルの音は、ホント良いですね。一度、マーラーの3番を生で拝聴することがありましたが、思わず、泣いちゃった記憶があります。それも、グジュグジュになるほど感動して泣きました。このチャイコの3番は、そこまで美しい楽曲ではないのですが、するっとビシュコフさんの演奏だと、聴けちゃいます。そのひっかりのなさが、退屈、冗長という言葉に繋がるのかもしれませんが、まあ、それは作曲家のせいです。ラストの金管の和音は、うーん。良いですねえ。ラストだけで充分かも。いやいや、せめて第5楽章は聴いてみてくださいね。

CDカップリング:チャイコフスキー交響曲全集7枚組BOX 交響曲第1番、2番2019年、第3番2016年、第4番2015年、第5番2017年、第6番2015年、幻想序曲ロメオとジュリエット2015年、フランチェスカ・ダ・リミニ2017年、マンフレッド交響曲2017年、弦楽セレナード2017年、ピアノ協奏曲第1番2017年、ピアノ協奏曲第2番、第3番2019年 ピアノ:キリル・ゲルシュタイン 出典:YouTube Tchaikovsky: Symphony No. 3 in D Major, Op. 29, TH.26 “Polish”
セミヨン・ビシュコフ – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ロリン・マゼール ウィーン・フィル

チャイコフスキー:交響曲第3番「ポーランド」ロリン・マゼール ウィーン・フィル 1964年
Tchaikovsky: Symphony No. 3 in D Major, Op. 29, TH. 26 “Polish” Lorin Maazel Wiener Philharmoniker

マゼールさんとVPOのチャイコフスキーの交響曲である。録音状態は良い。強奏のところでは、ちょっと詰まった感じがするが、まずまず。はじめは6番「悲愴」のみを購入したのだが、後期の交響曲4~6番を購入し、ダブリ買いを承知のうえで、やっぱり前期の1番から3番までも聴きたいと思って、 結局、全集BOXを買ってしまったというものだ。ちょっと癖のある演奏だが、やっぱり若い頃の演奏は、血気盛んな勢いのある、突っ込み鋭い演奏だと思う。

この全集は、ロミオとジュリエットが、カップリングされているが、マンフレッドも聴きたかったかも。チャイコの前期の交響曲は、めったに聴かないのだが、当盤は、勢いがあって良いと思う。3番って、超マイナーな楽曲で、するっと聴いても、耳には優しいが、さっぱり残らない。中間楽章は、どうしても蛇足って感じがしちゃうし、5つも楽章は要らないよね~と思ってしまう。まあ、第1楽章から、第5楽章まで、飛ばしちゃっても良いかな~って感じだ。(そんな聴き方は、さすがにマズイ。)次回は、もう少し、しっかり聴きます。スミマセン。
CDカップリング:交響曲全集4枚組BOX 交響曲5番のみ1963年録音で、それ以外は1964年の録音である。
出典:YouTubeTchaikovsky: Symphony No. 3 `Polish`, Maazel & VPO (1964) Deucalion Project

ヘルベルト・フォン・カラヤン ベルリン・フィル 😘

チャイコフスキー:交響曲第3番「ポーランド」ヘルベルト・フォン・カラヤン ベルリン・フィル 1977年~79年
Tchaikovsky: Symphony No. 3 in D Major, Op. 29, TH. 26 “Polish” Lorin Maazel Wiener Philharmoniker

あまり聴きませんというか、ほとんど、チャイコフスキーの3番は聴かないですね。冗長的なので、漫然と聴いていると、ラストの楽章の迫力は、すごい圧倒されます。チャイコフスキーの爆発的で、コニャックの匂いでも漂ってきそうな土俗的な迫力があり、金管の咆哮は、次の4番に続くものです。度肝を抜かれる感じで、どひゃーん! 主題の後ろで弦が、カシっとリズムを刻んでいるのですが、独特ですね~。

すぐに口ずさむことのできる、パン パッ パパ パララ~っというリズムなのですが、曲が終わったら即座に消滅しちゃいます。(単なる記憶力の悪さを露呈) ちょっと退屈しちゃう場合は、ラストの第5楽章だけを取り出して聴いても良いと思います。カラヤンは、チャイコフスキーの交響曲第3番は繰り返して録音していないので、唯一の録音になります。

CDカップリング:チャイコフスキー 交響曲全集4枚組BOX 1975~79年録音 全集以外にも、単体で、チャイコフスキー交響曲第3番、スラヴ行進曲、イタリア奇想曲とのカップリングもあります。1966年、3番は77年、78年、79年録音です。出典:YouTube Tchaikovsky: Symphony No. 3 in D Major, Op. 29, TH. 26 “Polish” ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

チャイコフスキー:交響曲第3番「ポーランド」【解説】

チャイコフスキーの交響曲第3番(作品29)は、1875年に作曲されています。有名なピアノ協奏曲第1番を完成させた数ヶ月後に、交響曲第3番の作曲を開始しており、1876年にはバレエ音楽「白鳥の湖」を完成させているので、チャイコフスキーが、波に乗って作曲していた頃の作品です。珍しいニ長調という調で始まっており、二つのスケルツォの楽章を含め、全部で5つの楽章で構成されているという珍しい形をとっています。

なお、ポーランドというニックネームがありますが、これは第5楽章の主題に、ポーランドの舞曲である「ポラッカ(ポロネーズ)」のリズムが採用されているためで、作曲家の意思ではなく、イギリスで付与されたものだそうです。

第1楽章 ニ短調 4/4拍子→ ニ長調 4/4拍子 序奏付きソナタ形式:序奏は、葬送行進曲の長めのもので、低弦のピッツィカートの響きにつれて、高弦が序奏主題を奏でます。管楽器に受け渡されて発展し、ニ長調の主部へ入ります。第1主題は、シューマンの曲を思わせるような明るい楽想で、経過部を経て、全合奏で提示されます。第2主題は、ロ短調でオーボエにより優美に提示されるもの。木管に引き継がれて発展し、展開部は、これら二つの主題を使いクライマックスを築きます。コーダに入ると、畳みかけて閉じられます。

第2楽章 変ロ長調→ ト短調 4/3拍子 複合3部形式:ワルツまたはその原型のレントラーの様式で、主部だけで、三部形式になっています。主要主題は、レントラーによるもので副主題はワルツ風。「ハムレット」の付随音楽(作品67b)の第2幕への間奏曲として転用されています。中間部は、小刻みで、コーダは主部の副主題で始まり、断片的に主要主題が奏されて曲は閉じられます。

第3楽章 ヘ長調→ ニ短調 4/3拍子 自由なソナタ形式:牧歌的な第1主題がニ短調、第2主題は変ロ長調です。展開部はほとんどなく、経過的に通過してすぐに再現部です。再現部は、二つの主題が、第1主題は短いのに対し、第2主題は、ドラマチックになっています。 コーダは、第1主題の動機が断片的に現れるもの。

第4楽章 ロ短調 4/2拍子 三部形式:通常のスケルツォと違って、4/2拍子、軽やかで舞うような楽想で、トロンボーンによる長いソロがあります。中間部(トリオ)は行進曲調、主部が復帰し、コーダではトリオが再び現れます。

第5楽章 ニ長調 4/3拍子 ロンド形式(A-B-A-C-A-A’(フーガ)-Coda:ポーランドの舞曲であるポロネーズのリズムによって特徴づけられる楽章で、力強い主要主題(A)で開始されます。第1副主題(B)は、コラール風のもので、美しく荘重なもの。寂しげな第2副主題(C)はロ短調で控えめに登場します。主要主題が復帰すると、長大なフーガになります。曲調が緩やかになり、壮大なコーダになだれ込みます。第1副主題が全合奏で演奏され、全曲のクライマックスを形成し、追い込むように華々しく終わります。

チャイコフスキー:交響曲第2番「小ロシア」、第3番「ポーランド」【ディスク情報】

1964年 マゼール ウィーン・フィル Dec
1978年 ムーティ フィルハーモニア管弦楽団 Brilliant
1979年 カラヤン ベルリン・フィル G
1984年 アバド シカゴ交響楽団 SC
2019年 ビシュコフ チェコ・フィル Dec

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