ツェムリンスキー:抒情交響曲【聴いてみよう】Zemlinsky: Zemlinsky: Lyrische Symphonie, Op.18(Lyric Symphony)

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ツェムリンスキー:抒情交響曲【名盤・おすすめ】

クリストフ・エッシェンバッハ パリ管弦楽団 🥰

ツェムリンスキー:抒情交響曲 クリストフ・エッシェンバッハ パリ管弦楽団 2005年
Zemlinsky: Lyric Symphony Christoph Eschenbach Orchestre de Paris
ソプラノ:クリスティアーネ・シェーファー Christine Schafer バリトン:マティアス・ゲルネ Matthias Goerne

エッシェンバッハさんの演奏は、すごい音響効果があります。SACDサラウンド! ホントすごい。劇場の特等席に座っているみたいですね。また、バリトンのゲルネさんの声が、うはっ。マゼールさんの演奏で登場されていた、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウさんのよう。良きお声の持ち主です。著名な方だとは思うのですが、なにせ、めったに声楽楽曲は聴かないのですが、ご馳走にありついたかのよう。ワタシの駄耳は釘付けになりました。

久々に、抒情交響曲で、とろけましたので、みなさんにご紹介したく~ 掲載しました。ワタシは、サブスクを利用して拝聴しました。YouTubeを利用して拝聴しましたが、とても良い録音状態です。出典:YouTube Lyrische Symphonie (Lyric Symphony) , Op. 18: II. Mutter, der junge Prinz - クリスティーネ・シェーファー – トピック Provided to YouTube by NAXOS of America

ジュゼッペ・シノーポリ ウィーン・フィル 😂

ツェムリンスキー:抒情交響曲 ジュゼッペ・シノーポリ ウィーン・フィル 1995年
Zemlinsky: Lyric Symphony Giuseppe Sinopoli Wiener Philharmoniker
ソプラノ:デボラ・ヴォイド Deborah Voigt バス、バリトン:ブリン・ターフェル Bryn Terfel

シノーポリさんの演奏は、マーラーの長大な交響曲のように、大柄で見栄えのする演奏です。これぐらい大きく演じなければ、曲に負けるように思っていたのか、世紀末の終焉を物語るかのよう。爛熟しすぎた果実が、もはや落ちる寸前というような感じがします。とろみ感で充満しており、むせっかえるようなライブ演奏です。

率直に言って、時代かかった演奏で驚かされます。恥ずかしいぐらいにオーバーで、フルカラーになった昔の史劇を見ているかのよう。オペラ的、演劇、映画で例えるなら、ベン・ハーか、天地創造みたいな、どちらも上半身裸で主人公が登場しますが、健康的で筋肉質の俳優が出てくるのではなく、官能的でエロティックな内容です。ワーグナーのトリスタンのような、耽溺型の楽曲と演奏でしょうか。

そして、交響曲って感じではなく別モノです。いろんな要素がてんこ盛りで、私小説風。シノーポリとウィーン・フィルという組み合わせだからこそ、出来た演奏という感じもします。もし、バーンスタインさんだったら、どのように振っていたでしょう。もっと濃厚かもしれません。

ちなみに、第5楽章と第6楽章の歌詞の一部を抜粋引用しておきます。・・・愛する人よ、君の甘い愛の鎖から解放しておくれ。流れるワインのような口づけ、重々しいお香のような想いが、私を窒息させる。・・・最後の歌を書き終えたら別れましょう。夜が明けたら、今夜のことは忘れましょう。この腕に抱こうとした人は、いったい誰だったのかしら。夢はつかみどころのないもの。愛を求めるこの手が、空しさを抱きしめ・・・って感じです。いかがでしょうか。お聴きいただけますか。出典:YouTube Zemlinsky: Lyrische Symphonie, Op. 18 ブリン・ターフェル – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ミヒャエル・ギーレン 南西ドイツ放送交響楽団 🙂

ツェムリンスキー:抒情交響曲 ミヒャエル・ギーレン 南西ドイツ放送交響楽団 1994年
Zemlinsky: Lyric Symphony Michael Gielen SWF Symphony Orchestra
ソプラノ:ヴラトゥカ・オルザニク Vlatka Orsanic バリトン:ジェイムズ・ジョンソン James Johnson

ギーレンさんの演奏ですから、客観的でさっぱり系、淡々と綴っていく演奏です。奥行き感もあり、充分に聴き応えがあります。ギーレンさんの演奏されたCDは、この南西ドイツ放送響だけでなく、オルフェオから出ているウィーン放送響との演奏もあります。ベルクの作品がカップリングされているので魅力的でした。

CDカップリング:ツェムリンスキー 叙情交響曲、ベルク 叙情組曲からの3つの楽章、ベルク アルテンベルクの絵はがきの文による5つの管弦楽伴奏歌曲(作品4) 出典:YouTube Lyric Symphony in Seven Songs Op. 18: V.~Ⅶ
ジェームズ・ジョンソン – トピック Vlatka Oršanić – トピック Provided to YouTube by ARTE NOVA Classics

リッカルド・シャイー コンセルトヘボウ管弦楽団 😘

ツェムリンスキー:抒情交響曲 リッカルド・シャイー コンセルトヘボウ管弦楽団 1993年
Zemlinsky: Lyric Symphony Riccardo Chailly Royal Concertgebouw Orchestra
ソプラノ:アレッサンドラ・マーク Alessandra Marc バリトン:ホーカン・ハーゲゴール Håkan Hagegård

シャイーさんの演奏は、陰陽のどちらかといえば、もちろん陽です~という演奏になります。しなやかで優美なフレージングが持ち味で、芳醇でコクのある華やかさが前面に押し出されており、密やかさとか隠微さという言葉には、あまりご縁のない雰囲気です。こそこそと内緒にできない性格というのかなあ、社交的で、外交的、コミュ力の強い男性というイメージが、まず最初に立ち上ってくる感じです。まあ、明るくて良いんですけど。

一般的な日常生活を送る分には、こういう性格は好まれるのだと思います。でも、違うよねえ。あまりに健康的すぎて、うーん。クラシック音楽を聴くときは、ある意味、非日常的な恋愛感情を、むふむふとアタマのなかでイメージさせるという楽しみがあるのです。このシャイーさんの演奏を聴いていると、秘密に隠しておきたい心情には、ちょっとなれない気がします。

これじゃ内密にしておきたい恋愛はできないなという雰囲気でしょうか。内省的で、揺れる謎めいた愛情表現とは異なる気がします。では、このツェムリンスキーの抒情交響曲に相応しい演奏とは・・・ えっ、むずかしいっ!
出典:YouTube Zemlinsky: Lyrische Symphonie, Op. 18 Concertgebouworkest Provided to YouTube by Universal Music Group

ボフミル・グレゴール チェコ・フィル 😔

ツェムリンスキー:抒情交響曲 ボフミル・グレゴール チェコ・フィル 1987年~88年
Zemlinsky: Lyric Symphony Bohumil Gregorc Czech Philharmonic Orchestra
ソプラノ:カラン・アームストロング Karan Armstrong バリトン:イヴァン・クスニエル Ivan Kusnjer

グレゴールさんの演奏は、ゆったりしています。マーラーの「大地の歌」と似ているとも言われるようで、ツェムリンスキー自身が、マーラーの「大地の歌」の伝統に属する作品だと言っていたそうなのです。しかし、形式的には似ているようですが、内容的には全く異なるように思います。マーラーは諦念や達観の世界だけど、ツェムリンスキーは濃厚な愛の表現なので~ だれがみても真逆ではないでしょうか。えっ、裏の裏を読めって? うーん。

管弦楽とソプラノとバリトンのための「抒情交響曲」は、インドのラビンドラナート・タゴールの詩によるものです。タゴールさんという名前は知っていても、詩は読んだことがないので、ワタシはブックレットを拝読しました。抒情という言葉から受けるイメージは、おおむね、静的で穏やかで透明度の高い、スピリチュアルな感じでしょう。しかし、この曲は、妖艶すぎて鼻血が出ちゃう感じです。

シェーンベルクのような青白い亡霊のような愛の語らいとか、バルトークの中国の役人のように、こりゃー殺人じゃんという亡霊的な妖しさではありません。あまりにも人間くさく、エロスの世界が広がりすぎて、脳天がやられそうになります。若い年齢で聴くと、う~ 勉強が手につかず、好ましくないかも。

大地の歌は漢詩だし、諦念や達観した老境の男性が主人公という感じがしますが、このツェムリンスキーの抒情交響曲は、抒情どころか、どっろどろ~スクリャービンの「法悦の詩」と同じやんと思ったりします。単純にとろとろ系の楽曲だと断言するには迷いがありますが、どうみても現実的、世俗的です。

耽溺、耽美的な演奏を好むのであれば、シノーポリ。明るいシャイー。アクの強い多彩なマゼールの演奏があります。さっぱり系の客観的な立ち位置で聴くのだったら、ギーレンだと思います。この味付けの濃いのが好きな方には、グレゴールさんの演奏は、薄口と言わざるを得ません。せっかく聴くのであれば、この曲には、やっぱり濃厚な味付けが求められるでしょうか。

出典:YouTube Lyrische Symphonie in sieben Gesängen nach Gedichten von Rabindranath Tagore, Op. 18 Ivan Kusnjer – Topic Provided to YouTube by Supraphon

ロリン・マゼール ベルリン・フィル 🥰

ツェムリンスキー:抒情交響曲 ロリン・マゼール ベルリン・フィル 1981年
Zemlinsky: Lyric Symphony Lorin Maazel Berliner Philharmoniker
ソプラノ:ユリア・ヴァラディ Júlia Várady バリトン:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ Dietrich Fischer-Dieskau

マゼールさんの演奏は、これは、もはやオペラ! バリトンに、フィッシャー=ディースカウさんを起用しており、冒頭より迫力ある雄渾な演奏で、ダイナミックです。ツェムリンスキーの濃厚エロティックな楽曲というより、ワーグナーを聴いている気分になります。ヘナヘナしていると怒られそうなほど、エネルギー発散の強い、猛烈にガッツのある演奏です。

筋肉隆々の腕に抱きしめられたい気分にはなりますが、憂いなどぶっ飛ばせ~という感じなので、迷いや悩んでいる暇など与えられない、自己肯定型の男性主導型の演奏だと感じます。少し力任せ的で強引かな~と、聴いているうちに反発したくなるのですが、旧態依然とした男性社会の構造のなかだと、こうなっちゃうかしら。(まあ、これはこれで喜びを~ 笑)ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウさんの歌声に、やられちゃってください。

出典:YouTube Zemlinsky: Lyrische Symphonie, Op. 18 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ツェムリンスキー:抒情交響曲【解説】

ツェムリンスキーの「抒情交響曲」 Lyrische Symphonie(作品18)は、1922年に作曲された声楽つき交響曲です。マーラーの漢詩を題材にした「大地の歌」と同じように、ラビンドラナート・タゴールの英語散文詩「園丁」のドイツ語版から選ばれた相聞歌を題材にして、二人の歌手が歌い交わします。歌い手の男女は、恋愛について語らい、すれ違いを続けて、意思疎通ができずに終わってしまいます。このような展開になるように、作曲者自身によって、詩の配列を変えているようです。

ツェムリンスキーの抒情交響曲は、7つの楽章から成り、全曲を通して演奏すると約45分という楽曲です。作曲のもとは、ラビンドラナート・タゴールの詩によるソプラノ、バリトン独唱とオーケストラのための7つの歌です。

第1楽章 「わが心、穏やかならず」  Ich bin friedlos, ich bin durstig nach fernen Dingen
第2楽章 「お母様、若い王子様が」 O Mutter, der junge Prinz
第3楽章 「お前は夕暮れの雲」  Du bist die Abendwolke
第4楽章 「いとしいお方、私に話して下さい」 Sprich zu mir, Geliebter
第5楽章 「恋人よ、お前の甘い口づけから解き放してくれ」 Befrei mich von den Banden deiner Süße, Lieb
第6楽章 「最後の歌を歌い終えたら、お仕舞いに」 Vollende denn das letzte Lied
第7楽章 「安らぐがよい、わが心よ」  Friede, mein Herz

興味のある方は、ラビンドラナート・タゴールの園丁という詩から、抜粋されているようなので、こっそり読んでみてください。WEBで英語で読めます。検索キーワードは、タゴール Rabindranath Tagore 園丁 The Gardener です。もちろんブックレットがあったほうが、歌詞の意味がわかるので、日本語翻訳付きの演奏を聴く方が理解が進むかもしれません。歌唱つきなので難しいですが、なんとなく聴いていても、エロティックさを感じちゃう楽曲です。

アルバン・ベルクの弦楽四重奏曲「抒情組曲」との関連

アルバン・ベルクは、ツェムリンスキーの抒情交響曲に触発され、弦楽四重奏曲を作曲しています。アルバン・ベルクの弦楽四重奏曲「抒情組曲」は、1926年に作曲されており、第4楽章において、ツェムリンスキーの抒情交響曲第3楽章からの引用があります。第6楽章にも、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」からの引用があるそうです。
では、ここで、ツェムリンスキーの抒情交響曲第3楽章と、ベルクの第4楽章を聴いてみましょう。

ツェムリンスキー:「抒情交響曲」第3楽章

ツェムリンスキー 「抒情交響曲」第3楽章 ロリン・マゼール ベルリン・フィル 1981年
Zemlinsky: Lyrische Symphonie, Op. 18 – 3 Lorin Maazel Berliner Philharmoniker バリトン:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ Dietrich Fischer-Dieskau

アルバン・ベルク 弦楽四重奏曲「抒情組曲」第4楽章

ベルク 弦楽四重奏曲「抒情組曲」第4楽章 Lyric Suite: IV. Adagio appassionato
アルバン・ベルク弦楽四重奏団 Alban Berg Quartett

いかがでしたか? ワタシは、マゼール盤のフィッシャー=ディースカウさんの声にうっとりしていまい~ ベルクの弦楽四重奏曲は、ぶっとんでしまいました。あっはは~ 本家本元とも言えるアルバン・ベルク弦楽四重奏団の演奏なのですが、もう少し聞き込んでみないといけませんね。ご参考になりましたら幸いです。ベルクの「抒情組曲からの三つの楽章」(管弦楽曲)は、またの機会にさせていただきます。出典:YouTube Lyric Suite: IV. Adagio appassionato 
アルバン・ベルク弦楽四重奏団 – トピック Provided to YouTube by Warner Classics

声楽(コーラス等)の入った交響曲は。

日本人にとっては、声楽入りの楽曲は敷居が高いですよね。ベートーヴェンの合唱は耳タコ状態、マーラーの交響曲は慣れているでしょう。でも、その他の楽曲は、少し馴染めない曲かもしれません。コーラスの入った交響曲、声楽が入った交響曲は数えると多くあります。ベートーヴェンの第9だって合唱付きというタイトルそのままで声楽が入っています。順不同で思いつくまま列記させていただくと次のとおりです。結構あるんですね~。また機会を見つけて聴いていきたいと思います。お粗末でした。謝。

マーラー 交響曲第2番「復活」、第3番、第4番、第8番「一千人の交響曲」、大地の歌
メンデルゾーン 交響曲第2番「賛歌」
リスト ファウスト交響曲、ダンテ交響曲
ストラヴィンスキー 詩篇交響曲
ショスタコーヴィチ 交響曲第2番「十月革命」、第13番「バビ・ヤール」、第14番
スクリャービン 交響曲第1番
シマノフスキー 交響曲第3番「夜の歌」
ベルリオーズ 劇的交響曲「ロメオとジュリエット」「葬送と勝利の大交響曲」
黛俊郎「涅槃交響曲」 歌というより声明
シベリウス クレルヴォ交響曲
アッテルベリ 交響曲第9番
V・ウィリアムス 海の交響曲、第3番「田園」、南極交響曲
グレツキ 交響曲第2番、第3番
ニールセン 交響曲第3番「ひろがりの交響曲」第2楽章

ツェムリンスキー:抒情交響曲【ディスク情報】 

1981年 マゼール ベルリン・フィル 
1987~88年 ボフミル・グレゴル チェコ・フィル D 
1993年 シャイー コンセルトヘボウ Dec 
1994年 ギーレン 南西ドイツ放送管 ARTE NOVA
1995年 シノーポリ ウィーン・フィル G
2005年 エッシェンバッハ パリ管弦楽団 Capriccio

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