スクリャービン:交響曲第3番「神聖な詩」【聴いてみよう】Scriabin: Symphony No.3 in C minor, Op.43, “Le Poème Divin”

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スクリャービン:交響曲第3番「神聖な詩」

シリー・ペトレンコ オスロ・フィル 😍

スクリャービン:交響曲第3番「神聖な詩」 シリー・ペトレンコ オスロ・フィル 2015年
Scriabin: Symphony No.3 in C minor, Op.43 – “Le Poème Divin” asily Petrenko Oslo Philharmonic Orchestra

ペトレンコさんの演奏は、すっきりした洗練された魅力があります。スクリャービンといえば、官能的で耽美的。甘い香りが漂い、むせるような熱気と色気、狂気にも似た情熱があって~ というイメージがします。思い込みの激しい、偏見的な意見かもしれませんが、とろんとろんになる演奏を聴いてきたからだと思います。

しかし、ペトレンコさんの演奏は、軽やかで涼しげ、知的な感じと蠱惑的な面があるようです。沼にハマることはないと思いますが、結構、官能的な気配がします。すーっと通る弦や木管の響きに誘われ、芳しい香りに鼻を刺激され、誘われるという感じでしょうか。

溶解したり、沼にハマり込まない理由のひとつに、金管の重さが、沈み込むほどに重く、ぼわーっと響かないという点にあるようです。金管以外の旋律に、気がついたら惑わされ、沼の世界の縁に立っている感じなのです。品の良いスクリャービンという感じでしょうか。どっぷり聴きたい時もありますし、アッサリ淡泊に聴きたい時もありますが、ペトレンコさんは、この二極的な選択ではなく、品良く、男気のある色気で惑わされたいという、別のカテゴリーの魅力的な演奏です。久々に上質な演奏に出会った感がします。

CDカップリング:スクリャービン交響曲第3番「神聖な詩」、第4番「法悦の詩」2015年 出典:YouTube Symphony No. 3, Op. 43 シリー・ペトレンコ – トピック Provided to YouTube by The Orchard Enterprises

ヴァレリー・ゲルギエフ ロンドン交響楽団 😟

スクリャービン:交響曲第3番「神聖な詩」 ヴァレリー・ゲルギエフ ロンドン交響楽団 2014年
Scriabin: Symphony No.3 in C minor, Op.43 – “Le Poème Divin” Valery Gergiev London Symphony Orchestra

ゲルギエフさんの演奏は、想像どおり、重々しく、湿気のある太くて地響きを立てるような金管の音が聞こえてきます。おおっ、やっぱり。なんて豪勢な響きで、ずっしりしています。クリアな録音状態でないのが幸いしたのか、もわっとして雰囲気があります。雰囲気でいいんだ~っと押し切られた感じですが、波が押し寄せる感触の強さがあり、有無を言わさない圧の強さ。

聴き手が、どう受け取れば良いのか考え込んでしまうようでは、この曲は、ダメかもしれません。考えないほうが良いかもしれないです。それに、好き嫌いが分かれてしまう曲が多いです。スクリャービンって。執拗に押し寄せ、次々に重なるように到来して、おまえは、ストーカーかって感じです。また、とらえどころがないので、ぼわっと聴くのが良いかもしれませんね。ゲルギエフさんの演奏は、指揮姿からくる先入観もしれませんが、ワタシ的には、汗臭く、生理的にも合わず、うぷぷぅ~になります

CDカップリング:スクリャービン交響曲第3番「神聖な詩」、交響曲第4番「法悦の詩」2014年録音 出典:YouTube Symphony No. 3 in C Minor, Op. 43, “The Divine Poem” ヴァレリー・ゲルギエフ – トピック Provided to YouTube by harmonia mundi

ミハイル・プレトニョフ ロシア・ナショナル管弦楽団 🥰

スクリャービン:交響曲第3番「神聖な詩」 ミハイル・プレトニョフ ロシア・ナショナル管弦楽団 1996年
Scriabin: Symphony No.3 in C minor, Op.43 – “Le Poème Divin” Mikhail Pletnev Russian National Orchestra

プレトニョフさんの演奏は、さらり~とした演奏で、スクリャービンにしては爽やかで、女性的に過ぎるかもしれません。上品でマイルドな金管の響きで始まります。まるで、フィギアスケートの演技のように、細いトレースを描くように可憐で、繊細な弦が滑り出してきます。流れるような旋律が繋がり、なめらかな耳触りです。フレーズが整理されおり、大づかみで軽やかでソフトです。その点では、ロシアのオケとは思えない印象を受けます。ロシアのオケと言えば、バリバリ、崩壊しそうな金管の咆吼というのがお決まりだったように思いますが、時代の移り変わりなのか、指揮者が、いろんなオケで研鑽を積んできた結果なのか、その定説(思い込み)は崩れつつあるようです。

もしかしたら、フランスのオケだと思うかもしれないほどの繊細さ。爽やか~ さらり~ 色彩的で優美な演奏です。さすがに、プレトニョフさんならではの繊細で、情緒あふれる演奏だと思いました。また、時代の推移とグローバル化を感じさせる演奏です。

CDカップリング:スクリャービン交響曲第3番「神聖な詩」1996年、交響曲第4番「法悦の詩」1998年録音 出典:YouTube Scriabin: Symphony No. 3 In C Minor, Op. 43 – “Le Poème Divin” ロシア・ナショナル管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

エフゲニー・スヴェトラーノフ ロシア国立交響楽団 😍

スクリャービン:交響曲第3番「神聖な詩」 エフゲニー・スヴェトラーノフ ロシア国立交響楽団 1996年
Scriabin: Symphony No.3 in C minor, Op.43, “Le Poème Divin” Evgeny Svetlanov Russian State Symphony Orchestra ★ YouTubeにおいては、掲載されていませんでした。

スヴェトラーノフさんの演奏は、ゆったりしたホール感があり、まろやかに響きます。太い音で地の底から響くようなチューバの音が届けられ、続く弦が、優美な世界へと誘います。チューバが太く逞しい男性の腕のよう。ハープによって、ふわ~っと誘われて、そのまま腕に抱かれるという感じでしょうか。(ちょっと想像しすぎ)かなり妖しく困った曲です。

積極的に、とろとろ感を求めてしまうと、やばいですね。どこが神聖な詩なんだと思います。「闘争」「悦楽」「神聖な戯れ」と三つのタイトルからして意味わからん。スヴェトラーノフさんの演奏は、金管の咆哮により、陶酔感が増してきます。まるで、帳が降りた後の世界になっちゃうので、これ以上、コメントは止めておきます。交響曲第3番なのですが、既に、法悦の4番の入り口に立っている感じです。どっぷりと浸かりたい向きには、かけがえのない存在になるかもしれません。あまり積極的につきあうと、抜け出せないヤバさがあります。

イーゴリ・ゴロフスチン モスクワ交響楽団 🙄

スクリャービン:交響曲第3番「神聖な詩」 イーゴリ・ゴロフスチン モスクワ交響楽団 1995年
Scriabin: Symphony No.3 in C minor, Op.43 – “Le Poème Divin” Igor Golovschin Moscow Symphony Orchestra

ゴロフスチンさんの演奏は、重く、硬めのどっしり型です。これまた個性的な始まりで~ 珍しいドスン型。スクリャービンの液体から気体化するような感じではなく、ゴツッとした固定物の塊みたいなものが存在してて、ふわっと流れていきません。気怠さの欠片もない堅物が、ニヤけている、テンポだけがゆったりした感じでしょうか。なんかちょっと違う感じです。これをどう改善したら、らしくなるのかと言われたら、うーん。少なくとも膨らませた感触が欲しいですぅ。ってド素人の感想でした。スミマセン。

CDカップリング:スクリャービン交響曲第3番、第4番 1995年録音 出典:YouTube Symphony No. 3 in C Minor, Op. 43, “Le Divin Poeme” Dmitri Lokalenkov – トピック Provided to YouTube by NAXOS of America

ドミトリー・キタエンコ フランクフルト放送交響楽団 😘

スクリャービン:交響曲第3番「神聖な詩」 ドミトリー・キタエンコ フランクフルト放送交響楽団 1994年
Scriabin: Symphony No.3 in C minor, Op.43 – “Le Poème Divin” Dmitri Kitajenko Radio-Sinfonie-Orchester Frankfurt

キタエンコさんの演奏は、頃合いの良いところに落ち着いた演奏という感じがします。まったり聴かせるところ、はしょって流れるところの「さじ加減」が良い感じなのです。終始まったりしている風でもなく、そこそこ妖艶です。色も綺麗で、なかなかに計算が高いというか、巧い具合に収まってます。甘美な風味だけではなく、歯切れの良さもあり、内声部も良く聞こえてきます。

CDカップリング:スクリャービン交響曲全集、ピアノ協奏曲、前奏曲「夢」1992年~94年録音 出典:YouTube Symphony No. 3 in C Minor, Op. 43, “Le Poème Divin” hr交響楽団 – トピック Provided to YouTube by RCA Red Seal

ウラディーミル・アシュケナージ ベルリン放送交響楽団 😘

スクリャービン:交響曲第3番「神聖な詩」 ウラディーミル・アシュケナージ ベルリン放送交響楽団 1990年
Scriabin: Symphony No.3 in C minor, Op.43 – “Le Poème Divin” Vladimir Ashkenazy Radio-Symphonie-Orchester Berlin

アシュケナージさんの演奏は、弦の流麗さが気持ち良く、金管の響きがまろやかに溶け込み、バランスの良い演奏だと思います。弾力性の良いしなやかさがあるので、曲線的なうねりを感じることができます。液体が沈殿かするようなトロトロ状態にはならず、ところどころ強調される金管の分厚い和音で、インパクトを残します。何度も繰り返し聴き進むと、どこかモノ足らなさを感じるかもしれませんが、好みに左右されるところが大きいかも。

神秘的な雰囲気も醸し出されていますが、息の長い旋律から軽やかに飛び跳ね、速い展開に進むスピード感もあります。テンポは、大胆なほど大きく変化し、ギアチェンジをこまめに行っているようです。最初聴いた時は、細切れのような印象を受けたのですが、跳躍が大きいので、ベトベトした感覚に陥らないので聞きやすいように思います。

CDカップリング:スクリャービン 交響的楽章「夢」、交響曲第3番「神聖な詩」、第4番「法悦の詩」(作品54)1990年録音 出典:YouTube Scriabin: Symphony No. 3 in C minor, Op. 43 – “Le Poème Divin” ベルリン放送交響楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ネーメ・ヤルヴィ デンマーク国立放送交響楽団 😘

スクリャービン:交響曲第3番「神聖な詩」 ネーメ・ヤルヴィ デンマーク国立放送交響楽団 1990年
Scriabin: Symphony No.3 in C minor, Op.43 – “Le Poème Divin” Neeme Järvi Danish National Symphony Orchestra

N・ヤルヴィさんの演奏は、重くどっしりしていますが、金管の音質が華やかに響きます。金管の歌いっぷりも勢いがあり、弦よりもずーっと重きにおかれた存在です。さすがにパパ・ヤルヴィさん。ずっしり重いのですが、テンポも変えて、一辺倒な表現はしません。揺れもあり、繊細さもあり、ガッツもあるという多彩さ。シャンドス特有の残響があるため、幾分、明晰さに欠ける嫌いがあるので惜しい気がしますが、充分に、聴き応えがあります。

CDカップリング:アレンスキー 組曲第2番管弦楽編、スクリャービン 交響曲第3番「神聖な詩」1990年録音
出典:YouTube Symphony No. 3 in C Minor, Op. 43, “The Divine Poem”
ネーメ・ヤルヴィ – トピック Provided to YouTube by PIAS

リッカルド・ムーティ フィラデルフィア管弦楽団 🤩

スクリャービン:交響曲第3番「神聖な詩」 リッカルド・ムーティ フィラデルフィア管弦楽団 1988年
Scriabin: Symphony No.3 in C minor, Op.43 – “Le Poème Divin” Riccardo Muti Philadelphia Orchestra

ムーティさんの演奏は、フィラデルフィア管の煌びやかさと、軽やかさがあります。特に、金管と弦、双方に抜群の煌めきがあるので、他を圧倒してきます。豊かな色彩感、スマートさ。軽やかに颯爽と進みます。序奏から第1楽章は、明るさが前面に出て、チューバの音でインパクトを与えます。どす黒さや重々しさはありません。また、よく歌います。短めのフレーズをうまく繋いで滑るよう。下の弦が、速めに、上の弦の旋律にするりと潜り込んできて、切れ目なし繋いでいくようです。なので、軽やかで綺麗。

また、波のなかで揺らぐ感じがします。ティンパニの音を波頭にして、まるで帆掛け船のように進みます。この巧さには舌を巻いちゃいます。ハープの音を添えて、余計キラキラ~。丸みのある他の演奏とは異なり、柔らかいエッジを感じつつ、ダイナミックな大波も描きます。

第2楽章は、ちょっと、耳がだれてしまって緩みがちに。もう少しスピードがあれば嬉しかったかな。で、第3楽章になると、軽快な「ん、たたた、たーら」と弾むトランペットの音が入ってくるので蘇ります。ハープの柔らかい色彩が、光のように降り注いできます。金管の細い音が、朝日を浴びているような感覚にさせてくれ、シアワセ感を満喫する感じになってきます。ムーティさんの演奏は、とても健康的です。オケの明るい色調を、このまま素材として生かし切った感じで、とても楽しめました。重くじとっとした妖艶さとは無縁の健やかな演奏です。

CDカップリング:スクリャービン交響曲全集 ブリリアント(Brilliant Classics)レーベル3枚組BOX(EMI原盤)
単発CDカップリング:スクリャービン交響曲第3番、チャイコフスキーロメオとジュリエット 1988年録音
出典:YouTube Scriabin: Symphony No.3 in C minor, Op.43 – “Le Poème Divin” アレクサンドル・スクリャービン – トピック Provided to YouTube by Warner Classics

レイフ・セーゲルスタム ロイヤル・ストックホルム・フィル

スクリャービン:交響曲第3番「神聖な詩」 レイフ・セーゲルスタム ロイヤル・ストックホルム・フィル 1989年
Scriabin: Symphony No.3 in C minor, Op.43 – “Le Poème Divin” Leif Segerstam Stockholm Philharmonic Orchestra

CDカップリング:スクリャービン ピアノ協奏曲 ローランド・ペンティネン、交響曲第3番「神聖な詩」 1989年録音 出典:YouTube Symphony No. 3 in C Minor, Op. 43, “Le Divin Poème” Stockholm Philharmonic Orchestra – トピック Provided to YouTube by PLATOON LTD

ジュゼッペ・シノーポリ ニューヨーク・フィル 🙄

スクリャービン:交響曲第3番「神聖な詩」 ジュゼッペ・シノーポリ ニューヨーク・フィル 1988年
Scriabin: Symphony No.3 in C minor, Op.43 – “Le Poème Divin” Giuseppe Sinopoli New York Philharmonic

シノーポリさんの演奏は、序奏部分は適度にインパクトがあり、テンポ良く、なだらかに流れていきます。甘い歌謡風の旋律もまずまず歌っています。細やかにメリハリをつけて演奏され、あれこれ工夫しているようなのですが、センテンスが短いのが気になります。どこどなく散文的なのです。旋律が絡みついて、ねっとりして、まとわりつくような感覚が欲しいのですが、全体的にバラバラしてて、砂で造ったお城に居るみたいです。

CDカップリング:スクリャービン 交響曲第3番「神聖な詩」、第4番「法悦の詩」1988年録音 出典:YouTube Scriabin: Symphony No.3 in C minor, Op.43 – “Le Poème Divin” ニューヨーク・フィルハーモニック – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ダニエル・バレンボイム パリ管弦楽団 🙂 

スクリャービン:交響曲第3番「神聖な詩」 ダニエル・バレンボイム パリ管弦楽団 1987年
Scriabin: Symphony No.3 in C minor, Op.43 – “Le Poème Divin” Daniel Barenboim Orchestre de Paris

バレンボイムさんの演奏は、じっとり重く、ずずずーっと引きずって歩いている感じで、スピード感がないので聞いているうちに、ツラくなってきます。オヤツの食べ過ぎでメタボ体質になっちゃったような緩さ。うーん。さほど妖艶でも魅惑的でもないし、横になってTVばっかり見ているから、そうなるんよって感じです。まあ、そういう曲なんだと割り切れば、高音域にふった響きですが、案外、立派な演奏です。

CDカップリング:スクリャービン交響曲第4番「法悦の詩」1986年、第3番「神聖な詩」1987年録音 出典:YouTube Symphony No. 3 in C Minor, Op. 43 “Divine Poem” Daniel Barenboim Provided to YouTube by Warner Classics International

エリアフ・インバル フランクフルト放送交響楽団 🙂

スクリャービン:交響曲第3番「神聖な詩」 エリアフ・インバル フランクフルト放送交響楽団 1978年
Scriabin: Symphony No.3 in C minor, Op.43 – “Le Poème Divin” Eliahu Inbal Frankfurt Radio Symphony

インバルさんの演奏は、クリアで引き締まった音が、直球勝負と言わんばかりに飛んできます。金管の鳴りっぷりも良く、キレもあってよさげです。夢幻的な世界、妖艶な世界から、イメージ的には遠い指揮者だと思うのですが、明晰で淡々としています。まあ、淡々としていても、それなりに、うっとりさせられる要素のある曲なので、何度か繰り返して聴くうちに、特徴的なフレーズが耳を刺激し、耳がピクンと動くような状態になると思います。インバルさんの演奏だと、他の作曲家と同じような距離感で、つきあいができるかもしれません。良し悪しは別として。

CDカップリング:スクリャービン 交響曲第1番1979年、第2番1978年、第3番「神聖な詩」、第4番「法悦の詩」1978年録音 出典:YouTube Scriabin: Symphony No. 3 in C minor, Op. 43 – “Le Poème Divin” hr交響楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group 

キリル・コンドラシン コンセルトヘボウ管弦楽団 🙂

スクリャービン:交響曲第3番「神聖な詩」 キリル・コンドラシン コンセルトヘボウ管弦楽団 1976年
Scriabin: Symphony No.3 in C minor, Op.43 – “Le Poème Divin” Kirill Kondrashin Royal Concertgebouw Orchestra
★ YouTubeにおける配信は、見当たりませんでした。

コンドラシンさんの演奏は、ライブ盤です。テンポの良さで聞かされます。副題が「神聖な詩」となっている第3番は、「闘争」「悦楽」「神聖な戯れ」の三つの楽章になっていますが、実際には大きな一つ楽章(単楽章)でしょうか。続けて最後まで演奏され、区切りがありません。

冒頭のチューバの大音量で驚かされ、「れ・ど・れ ふぁら~しっしー (ふぁれ~れれ~)」「そ・ふぁ・そしどれみ~(しそ~そそ~)」 (←音は定かではありません。)不思議な和音がばらけて登場。ハ短調なんだけどねえ。とても不思議な和音です。これが、神秘和音の走りみたいなモノかしらん。コンドラシンさんの演奏は、推進力があって、弦の動きが生命線のよう。そして、沈没することなく、綺麗な弦で綴られます。

「闘争」というタイトルとは裏腹に、甘味の多い演奏で、ショスタコのような闘争的ではないです。エロチックな闘争。いわば、男女の絡み合いでしょうか。淡い夢とは異なり。かなりリアルなストーリーがイメージされます。楽章ラストで、鳥が鳴いて朝を迎えてしまう。まだ眠いよねえ~と、アクビが出ちゃう。とにかく、夜に聴くのがよろしい。

第2楽章は、区切りがつかないまま、まだ「悦楽」状態です。四管編成の木管群が頑張って、中音域に厚みがあります。元々、ヴァイオリン主体の旋律が無いに等しく、次の旋律が予測不能で、従来の知識や経験を頼りに、マジメに聴いてしまうとダメのようです。混乱しちゃう。これは、直感も動員せずに、流れのままに~ がよろしいようで。さすがに、コンドラシンさんにおいても、とろけてしまい、自堕落に陥りそうです。

最後、冒頭から、何度も登場するチューバの「れ・ど・れ ふぁら~しっしー」で終わります。(音痴でごめんなさい)このフレーズは、神のように雄大に、インパクトの強いもの。しかし、何度も繰り返されるうちに、神々しさが脱け落ち、おたわむれに。

ミヒャエル・ギーレン 南西ドイツ放送管弦楽団 😅

スクリャービン:交響曲第3番「神聖な詩」 ミヒャエル・ギーレン 南西ドイツ放送管弦楽団 1975年
Scriabin: Symphony No.3 in C minor, Op.43 – “Le Poème Divin” Michael Gielen South West German Radio Symphony Orchestra, Baden-Baden

ギーレンさんの演奏は、硬派です。シャキシャキした弦がメインで、茫洋とした恍惚感に陥る世界には、ご縁がありませんという風です。溶解している世界ではなく、どこか、次元の違う世界に居るようです。すっきり系の序奏から始まり、余韻を残した間合いのあと、弾むような弦のリズム、絡み合いながら出てくる旋律、浮かびあがる副旋律、シャキシャキした歯ごたえのある旋律。構成している各声部が、さっぱり洗われ、拭われて素地として出てきます。厳めしいドイツ風の縦割り構造体として。

う~ん、しかし、この構造物の中身を見ても、あまり面白いわけがありません。自分の家を建てる際に、耐震や免震化の状況を通り一遍、把握し納得すると、それ以上納得することがないように。縦糸重視から抜け出せず、優美に流れず、芯の硬い音として感じられます。どこか、ゆで加減をミスったパスタを食べさせられている感じです。

銅鑼がシャーンと鳴って展開するところは、変わり身が速く、普通なら、とろりと響くところも恍惚感がなく。かなりドライです。まあ、ギーレンさんが、スクリャービンを演奏するだけでも驚きなので、専門家向けの演奏かと思います。

CDカップリング:スクリャービン 交響曲第3番「神聖な詩」1975年、ブゾーニ「悲歌的子守歌」1995年、ラヴェル「海原の小舟」1997年、ストラヴィンスキー「ロシア風スケルツォ」1998年録音 出典:YouTube Symphony No. 3 in C Minor, Op. 43, “Le Divin Poeme” SWR Sinfonieorchester des Südwestrundfunks – トピック Provided to YouTube by NAXOS of America

スクリャービン:交響曲第3番「神聖な詩」【解説】

スクリャービンの交響曲第3番「神聖な詩」(作品43)は、1902年から1904年頃に作曲されています。三つの楽章で構成されていますが、実質は、序奏があるので四つのセクションです。それぞれフランス語でタイトルを与えられており、連結され休むことなく演奏されます。

第1楽章「闘争」Introduction~I. Luttes (Struggles): まず序奏があり、トロンボーンを主に低音域でのモットーとなる強烈な主楽想が登場します。そしてトラペットが応答したところで、ヴァイオリンと木管楽器が入ってきます。その後、主楽想の変形がヴァイオリンに登場し、低音に引き継がれてクライマックスを築きあげていきます。

讃美歌調の主題が登場し、木管楽器とヴァイオリンが低音の伴奏にあわせて第2の旋律を歌います。長いトレモロに乗って 「ドレスデン・アーメン」を連想させる主題が登場し、トランペットが伴奏に合わせて、いくつもの主題を原形で示します。再現部の後、激しい伴奏に合わせてホルンとヴァイオリンの主楽想が戻り、第1楽章の締め括りは激しく、減衰したあと第2楽章に入ります。

第2楽章「悦楽」II. Voluptés (Delights): ゆるやかで甘美な旋律は、木管楽器とホルンに現れ、トランペットが先行楽章の信号音を繰り返します。情熱的になっていくが、ホルンの力強いパッセージに打ち破られます。ホルンのパッセージは喜びを表し低音がトランペットの信 号音を転回させて響かせているうちにフィナーレに至ります。

第3楽章「神聖なる遊戯」III. Jeu divin (Divine Play): 弦楽器のきびきびしたリズムに合わせて、トランペットが信号音の変奏を響かせます。木管楽器とホルンによる和音伴奏に、第2の旋律がオーボエとチェロに登場しますが、いきなり最初の旋律が戻ってきて中断されます。展開部後、 ホルンのエピソードと転回された信号音が戻ってきます。第1楽章の主楽想が戻り、ユニゾンによる信号音に合わせて終結します。約47分の楽曲です。神秘主義というよくわからない世界に傾斜する直前、いや、もう入りかけてるような、妖しくて、甘くて~ とろとろに溶解しそうな曲です。

スクリャービン:交響曲第3番「神聖な詩」【ディスク情報】

1975年 ギーレン 南西ドイツ放送交響楽団 HANSSLER 
1976年 コンドラシン コンセルトヘボウ管弦楽団 ETCETRA 
1978年 インバル フランクフルト放送交響楽団 Dec
1987年 バレンボイム パリ管弦楽団 E
1988年 シノーポリ ニューヨーク・フィル G 
1989年 レイフ・セーゲルスタム ストックホルム・フィル BIS
1988年 ムーティ フィラデルフィア管弦楽団 EMI
1990年 N・ヤルヴィ デンマーク国立放送交響楽団 CHANDOS
1990年 アシュケナージ ベルリン放送交響楽団 Dec
1994年 ドミトリー・キタエンコ フランクフルト放送交響楽団 R  
1995年 ゴロフスチン モスクワ交響楽団 NAXOS
1996年 スヴェトラーノフ ロシア国立交響楽団 EXTON  
1996年 プレトニョフ ロシア・ナショナル管弦楽団 G
2014年 ゲルギエフ ロンドン交響楽団 LSO 
2015年 ワシリー・ペトレンコ オスロ・フィル LAWO

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