プロコフィエフ:アレクサンドル・ネフスキー【聴いてみよう】Prokofiev: Alexander Nevsky

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プロコフィエフ:カンタータ「アレキサンドル・ネフスキー」【名盤・おすすめ】

クラウディオ・アバド ロンドン交響楽団 Dec

プロコフィエフ:アレクサンドル・ネフスキー クラウディオ・アバド ロンドン交響楽団 1979年
Prokofiev: Alexander Nevsky Claudio Abbado London Symphony Orchestra メゾ・ソプラノ:エレーナ・オブラスツォワ ロンドン交響楽団合唱団

アバドさんの演奏は、底力があり、聴き応えがあります。プロコフィエフ作曲の「アレクサンドル・ネフスキー」は、元は映画音楽だったものをカンタータにしたもの。圧政に苦しめられる民衆を助けに戦うロシア映画音楽だし、初心者には敷居がメチャ高いです。蒙古からの侵略を受けるという時代背景が色濃く描かれた作品ですが、聴いてみたら意外と聞きやすく、戦闘シーンが盛りだくさん織り込まれています。ロシアからウクライナへの侵攻(戦争)が行われているので(2024年現在)憚られますが、日本史で言うと、鎌倉幕府や室町幕府のような武士時代をイメージした方が良いかもしれません。もっとも場所はロシアですから、馬に乗った騎士軍団のバトルです。

CDカップリング:プロコフィエフ カンタータ「アレクサンドル・ネフスキー」ロンドン響 1979年、スキタイ組曲「アラとロリー」、交響組曲「キージェ中尉」シカゴ響 1977年録音 出典:YouTube Prokofiev: Alexander Nevsky, Op. 7 London Symphony Orchestra Provided to YouTube by Universal Music Group

クルト・マズア ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 😘

プロコフィエフ:アレクサンドル・ネフスキー クルト・マズア ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 1991年 Prokofiev: Alexander Nevsky Kurt Masur Gewandhausorchester Leipzig メゾ・ソプラノ:キャロライン・ワトキンソン、ラトヴィア合唱団 

第1曲「モンゴル治下のロシア」圧政に苦しむロシアというイメージを植え付けるような、ホント、びっくりするぐらいの重々しさ。コントラバスの響きで、どす黒い音が出てきます。弦の音域の広さに圧倒され、ヴァイオリンとコントラバスのお腹に響く音の重量をもろに受けてしまいます。こんなに重いのかと驚かされる響きです。

2 アレクサンドル・ネフスキーの歌:アレキサンドル・ネフスキーという英雄が誕生したシーン。宗教音楽のように清々しいイメージで、ハープの音と共に晴れやかに歌われるもの。1曲目と2曲目の曲の変化が極端で、短編小説を読み飛ばしているかのような展開の速さがありますね。1240年、ネヴァ川で、スウェーデン軍を撃破した模様を描いているそうです。(えっ モンゴルじゃーないの?)

3 プスコフの十字軍:これまたチューバと太鼓の迫力が凄いです。サブタイトルのプスコフの十字軍って言うのは、どうやらドイツ(ゲルマン)の騎士軍らしいですね。 プスコフは、バルト海近くの地方の都市名で、後半はコーラスが入って悲痛な悲しみで覆われます。映画の映像を見る限り、白装束で教会スタイルで祈りを捧げていますが、なんか、妙に真面目くだくて滑稽です。腰まで沼につかって歩いているような、どろぉ~っとした粘りある響き。トロンボーンの悲痛な音と、ドロドロ~と響く大太鼓。風が吹いているような弦は、東洋的なフレーズとなっていますが、言葉にならない重苦しさ。トロンボーンの響きがメインで、これ以上、ダメ押ししないで~っというぐらい、ダメ出し感の強いフレーズが続きます。

4 起て、ロシアの人々よ:この楽章は、コーラス入りで、言葉のとおり。戦意高揚って感じのカンタータです。映画のなかでは、軍隊が行進している時に流れてくる楽曲となっています。

5 「氷上の激戦」:最も有名な楽曲は、第5曲は「氷上の激戦」のシーンです。白装束の十字軍、チュートン騎士団(ドイツ騎士団)をチュード湖で撃破した模様を描いています。映画のカメラは、地平線を映し出し、空にはぽっかり雲が浮かんでいます。岩に仁王立ちスタイルで立つアレクサンドル・ネフスキー。白十字軍が、馬に乗って走って攻めてきますが、その騎士隊が走ってくる状況のところで、この曲が使われており、映画のコマ送りは、へっ?と思うほど。駒落ちしているみたいで~ 動きがギクシャクしていますね。でも、もちろんコンピューターのグラフィックではありません。戦闘シーンは、人海戦術です。

まるで、蒸気機関車の走るようなフレーズが、繰り返して流れてきます。キッシ キッシっと、軋む音や回転する音が機械的で、すごい長回しのシーンです。重そうな剣を振り回しているだけの迫力ないシーンですが、氷のうえで馬が滑って転倒するし、馬の蹄をイメージする「パカパカ」の音効果、力任せで闘う壮絶な戦いでありまして~ 最後には斧を取り出してガツンっ! 一発撃ち込むというシンプルさ。あはは~ 英国のエクスカリバー 円卓の騎士のような騎士道を描いたものかと錯覚しそうです。

ちなみに、1932年に作られた映画を「You Tube」で見たのですが~ あまりにも長くて、とほほ。氷上の激戦がハイライトシーンらしく壮絶です。十字軍はバケツ型の兜をかぶり、ネフスキーはソフトクリーム型兜をかぶっています。これがなんだか面白くて目を引いてしまいました。

白い十字軍と黒い鉄の帷子を身につけたロシア軍が、入り乱れての戦い。モノクロ映像ですが、結構クリアに見ることができましたね。もちろん、ロシア語なので台詞はわかりません。日本の大昔の映画を見ているみたいで~滑稽でオチャメな場面があります。興味のある方は「Александр Невский / Alexander Nevskij」で、検索してみてください。最後には、一騎打ちで、打ち負かすのですが、バケツ型兜が壊れるのには、ひひぇ~っ。なんじゃーこりゃ! なはは~。1938年の映画は下でご紹介しておきます。 

6 死人の野:この場面は、戦って死んだ人を悼む歌(メゾ・ソプラノ)となっています。

7 アレクサンドルのプスコフ入城:映画の最後、英雄を讃える歌で力強く歌われます。第2曲とよく似たフレーズですが、銅鑼がシャーンっ。「みれどぉ~ど どれみふぁそ~」シャーンっ! マズアさんの演奏は、子供の声も入っているようで、勇壮だが未来を感じさせる明るさがあります。聴きどころは、もちろん銅鑼の音ですが、鉄琴、木琴などのパーカッション群の動きと、コーラスの入った勇壮なフレーズが交錯しています。

CDカップリング:プロコフィエフ カンタータ「アレクサンドル・ネフスキー」、スキタイ組曲「アラとロリー」 出典:YouTube Prokofiev : Alexander Nevsky Op.78 クルト・マズア – トピック Provided to YouTube by Warner Classics International

シャルル・デュトワ モントリオール交響楽団 😘

プロコフィエフ:アレクサンドル・ネフスキー シャルル・デュトワ モントリオール交響楽団 1990年 
Prokofiev: Alexander Nevsky Charles Dutoit Orchestre Symphonique de Montreal
メゾ・ソプラノ:ヤルド・ファン・ネス Jard van Nes

プロコフィエフの「アレキサンドル・ネフスキー」は、映画音楽だったものをカンタータにしたものです。通常は、管弦楽曲として組曲に改編するのでしょうが、声楽、合唱を加えてカンタータに仕上げています。素材のなじみのなさと30分以上の楽曲になるため、とっつきづらさがあります。

今日は、デュトワ盤を聴いてみましたが、さらっとした演奏です。浅めの息づかいです。ロシアを舞台に寒くて、重々しい騎士軍団バトルというよりは、西部劇とまでは言わないけれど、草原を軽やかに走る群という感じがします。その分、颯爽としたスピード感、軽やかさが感じられるものです。録音の良さとシャープさは、期待どおりでしょう。モノトーンの映画にはない、色彩感溢れり美しく演奏されています。本来なら、宗教戦争とも思える情景が続きますので、もっと重厚さが欲しいかもしれません。

CDカップリング:2枚組BOX プロコフィエフ カンタータ「アレクサンドル・ネフスキー」1990年
交響組曲「キージェ中尉」 1990年、組曲「3つのオレンジへの恋」 1992年、交響的絵画「夢」 アシュケナージ コンセルトヘボウ 1985年、束の間の幻影 バルシャイ編曲 マリナー アカデミー室内管弦楽団 1972年、バレエ音楽「石の花」ハイライト版 シルヴィオ・ヴァルヴィーゾ スイス・ロマンド管弦楽団 1966年 出典:YouTube Prokofiev : Alexander Nevsky Op.78 モントリオール交響楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

映画「アレクサンドル・ネフスキー」


総体的に、ズドンドンっ鳴る重低音とジャーンっと響く銅鑼の音。ド迫力です。ゲヴァントハウスの重い音が効果的です。「Apex」からCDが発売されていますが、原盤はテルディック(TELDEC)。太い厚みのある音で力任せに押しまくる。1938年の白黒映画の映像を拝見すると、やはり音だけで聴いているよりも臨場感があります。

出典:YouTube アレクサンドル・ネフスキー 1938年の白黒映画です。Александр Невский (Full HD, исторический, реж. Сергей Эйзенштейн, 1938 г.) チャンネル:Киноконцерн “Мосфильм”Смотрите наши фильмы на сайте  https://cinema.mosfilm.ru/ 全編約1時間43分 55分頃から、チュード湖である氷上の戦いが始まります。

プロコフィエフ:カンタータ「アレクサンドル・ネフスキー」【解説】

映画のストーリーがあり、下記のように七つの楽章に区分されています。

1 モンゴル治下のロシア Russia under the Mongolian Yoke
2 アレクサンドル・ネフスキーの歌 Song about Alexander Nevsky
3 プスコフの十字軍 The Crusaders in Pskov
4 起て、ロシアの人々よ Arise ye Russian People
5 氷上の戦い The Battle on the Ice
6 死の原野  The Field of the Dead
7 アレクサンドルのプスコフ入城 Alexander’s Entry into Pskov

ストーリーのなかで出てくるロシアのプスコフ(Pskov)というのは、下地図の赤い丸印のあたりです。(薄い黄色いエリアは、ロシアです)エストニアとロシアとの国境からは東へ20kmしか離れておらず、中世には国境防衛と国境貿易でロシア有数の大都市として繁栄を謳歌していた都市のようです。

古代にはプレスコフ(Пльсковъ)と称し、2003年には1,100年祭が開催されているという歴史を持っています。1241年暮れにはドイツ騎士団に征服されますが、アレクサンドル・ネフスキーは、チュド湖上の戦いで騎士団を破り、翌年の初めに解放したといいます。ロシアでチュド湖と呼ばれるのは、エストニアではペイプシ湖と呼ばれ、国境にある湖のこと。ここで、1242年、ドイツ騎士団を相手にネフスキーが率いるノヴゴロド公国が戦った場所で、氷上の戦い(Battle of the Ice)として知られる決戦の舞台です。ちなみに、今年(2021年)9月、プー●●大統領は、この湖畔に建設されたアレクサンドル・ネフスキーの記念碑除幕式に出席したということでした。

ネフスキー生誕800年の記念として碑が建設されたのです。共同通信社の記事には、写真つきで掲載されておりました。ちなみに、ネフスキーの戦争相手はドイツ騎士団ですが、ローマ・カトリック教会の公認した騎士修道会の一つで、12世紀後半、聖地パレスチナに巡礼するキリスト教信者を護衛し、病院を設立する目的で設立された団体です。メンバーは、一般的にはチュートン騎士として知られ、中世には聖地やバルト海地域で十字軍の騎士修道会として活動しています。プロイセンなどを統治し東方植民の先駆けとなったもの。テンプル騎士団、聖ヨハネ騎士団と共に、中世ヨーロッパの三大騎士修道会の一つだそうです。まあ、そんな歴史的背景を調べたうえで、楽曲を聴いた方が良いのでしょうが~ そこまで歴史に詳しいわけでもないので、あとは割愛させていただきます。

プロコフィエフ:カンタータ「アレキサンドル・ネフスキー」【ディスク情報】

1979年 アバド ロンドン交響楽団 Dec 未掲載
1991年 マズア ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 TELDEC
1990年 デュトワ モントリオール交響楽団 Dec

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