リスト:ファウスト交響曲~3人の人物描写~【聴いてみよう】Liszt: Eine Faust Symphonie (A Faust Symphony), S. 108

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リスト:ファウスト交響曲【YouTube】

リスト:ファウスト交響曲 ウラディミール・ユロフスキ ロンドン交響楽団・同合唱団 テノール:マルコ・イェンチュ Marco Jentzsch ロンドン・フィルハーモニック合唱団 2011年BBCプロムス コンサートの模様です。1時間15分1秒の動画で、長丁場ですが、聴き応えがあります。YouTubeに動画があっただけでもラッキーです。
出典:YouTube Liszt – A Faust Symphony – Jurowski Classical Vault 1

リスト:ファウスト交響曲【名盤・おすすめ】

リストのファウスト交響曲は、次の3つの楽章と、神秘の合唱で構成されています。
第1楽章:ファウスト Faust
第2楽章:グレートヒェン Gretchen
第3楽章:メフィストフェレス Mephistopheles
神秘の合唱 ”Alles Vergängliche ist nur ein Gleichnis” 

第1稿:第1楽章から第3楽章の管弦楽のみ。約70分
第2稿:第1楽章から第3楽章の管弦楽の演奏に続き、男声合唱「神秘の合唱」が演奏されます。トータルでは約75分です。ワタシ的には、神秘の合唱を聴かないと終われません。これは必須だと思います。

キリル・カラビツ シュターツカペレ・ワイマール 🥰

リスト:ファウスト交響曲 ~3人の人物描写~ キリル・カラビツ シュターツカペレ・ワイマール 2022年
Liszt: Eine Faust Symphonie (A Faust Symphony), S. 108 Kirill Karabits Staatskapelle Weimar
テノール:アイラム・エルナンデス Airam Hernández Opernchor des Deutschen Nationaltheaters Weimar Landesjugendchor Thüringen

カラビツさんの演奏は、久々に登場した新譜で、録音の良さにうっとりしてしまいました。弦のキレ、木管の響きも、低音のうごめく響きが良く捉えられています。第2楽章のグレートヒェンが、ワタシにとっては鬼門で、すぐに眠くなってしまうのですが、木管と弦の絡みが綺麗です。室内楽的な響きで、瑞々しくしっとり神秘的な演奏で、約18分の楽章が軽快に進みます。

第3楽章のメフィストフェレスも、奥行きのある録音で、弦のつま弾く響きが綺麗に収録されています。弦のピチカートは、もっと強めの方が、もっともっと緊張感が高まりますが~ 素早い木管と風のような弦の動きで、自然と緊張感が高まります。威勢の良いティンパニとシンバル、スピードアップされて、ずっしりと重い雲行き怪しい雰囲気が出てきます。行進曲風の軽やかなフレーズで主題が演奏され、いったん静まりますが、軽快に繰り返します。怪しさ、どろっとした要素も適度にあり、素速いフレーズで勢いがあるのでダレません。現代的というか今風のさらっと感、スピード感やテンポの良さが勝っています。神秘の合唱も、適度な重さもあって聴き応えがありました。

CDカップリング:リスト ファウスト交響曲 テノール:アイラム・エルナンデス ワイマール劇場合唱団、チューリンゲン州立少年合唱団、メフィスト・ワルツ第3番管弦楽編(編曲:ライゼナウアー/カラビツ) 出典:YouTube A Faust Symphony, S. 108 Staatskapelle Weimar – トピック Provided to YouTube by Kontor New Media GmbH

ジャナンドレア・ノセダ BBCフィルハーモニック 😔

リスト:ファウスト交響曲 ~3人の人物描写~ ジャナンドレア・ノセダ BBCフィルハーモニック 2005年
Liszt: Eine Faust Symphonie (A Faust Symphony), S. 108 Gianandrea Noseda  BBC Philharmonic Orchestra

第1稿を採用しているので、「神秘の合唱」は演奏されません。カップリングされている交響詩「ゆりかごから墓場まで」を収録するのであれば、神秘の合唱の約5分追加してほしいというのが本音でしょうか。出典:YouTube Eine Faust-Symphonie in drei Charakterbildern, S. 108, R. 425 ジャナンドレア・ノセダ – トピック Provided to YouTube by PIAS

トマス・ダウスゴー デンマーク国立放送交響楽団 🙂

リスト:ファウスト交響曲 ~3人の人物描写~ トマス・ダウスゴー デンマーク国立放送交響楽団 1999年
Liszt: Eine Faust Symphonie (A Faust Symphony), S. 108 Thomas Dausgaard Danish National Symphony Orchestra
テノール:クリスティアン・エルスナー Christian Elsner デンマーク国立放送合唱団 Danish National Symphony Choir

ダウスゴーさんの演奏は、おでこのデカいメフィストフェレスが、こそっと顔を覗かせているイラストは面白いのですが、シャンドス特有の残響のためか、ちょっともわっとしています。第1楽章も第2楽章も、低弦の響きも、金管も木管も、十分に鳴りきって迫力もありますが、キレキレってわけにはいかないみたい。第3楽章は、もう少しスピード感があれば良かったかもしれません。良い演奏だと思うんですけど。うーん。シャンドスレーベルには、よくお世話になっているし、いろんな演奏を聴く機会も増えたんですけど。今回は、ちょっと残響が気になってしまうワタシでした。
出典:YouTube Eine Faust Symphonie (A Faust Symphony) , S. 108 トーマス・ダウスゴー – トピック Provided to YouTube by PIAS

ダニエル・バレンボイム ベルリン・フィル 😘

リスト:ファウスト交響曲 ~3人の人物描写~ ダニエル・バレンボイム ベルリン・フィル 1998年
Liszt: Eine Faust Symphonie (A Faust Symphony), S. 108 Daniel Barenboim Berliner Philharmoniker
テノール:プラシド・ドミンゴ Plácido Domingo ベルリン国立歌劇場合唱団 Chor der Deutschen Staatsoper Berlin

バレンボイムさんの演奏は、有無を言わせない迫力があります。ワタシが所有しているCDは、五芒星(ペンタグラム)のなかにメフィストフェレスが描かれたもので、イラストに引き寄せられ、テナーのプラシド・ドミンゴさんの声が聴けることに惹かれました。

若気の至り怖いモノみたさ。バレンボイムさんは、ファウスト交響曲とダンテ交響曲の両方をベルリン・フィルで演奏しており、どっしり重みのある演奏です。執拗に追いかけてくる妄想に取り憑かれ、熱にうなされているような気味の悪さも、振り切れるのかと感じるスリリングさもあって、ドラマ性の高い演奏だと思います。ダイナミックでオペラのような演奏です。CDカップリング:リスト ファウスト交響曲、ダンテ交響曲ほか
出典:YouTube A Faust Symphony, S. 108 フランツ・リスト – トピック Provided to YouTube by Warner Classics International 

イヴァン・フィッシャー ブダペスト祝祭管弦楽団 🙂

リスト:ファウスト交響曲 ~3人の人物描写~ イヴァン・フィッシャー ブダペスト祝祭管弦楽団 1996年
Liszt: Eine Faust Symphonie (A Faust Symphony), S. 108 テノール: ハンス・ペーター・ブロホヴィッツ Hans Peter Blochwitz ハンガリー放送合唱団 Conclusion with Final Chorus

イヴァン・フィッシャーさんの演奏は、シャキシャキしています。歯切れ良く進むので聴き疲れがしません。で、第3楽章は、二種類用意されていて、合唱なしの第1稿と、合唱付きの改訂版を別にして第3楽章を演奏しています。他の演奏だったら、神秘の合唱を別のインデックス(トラック)で単独に用意していますが。なので、神秘の合唱だけを聴きたい場合は、下のリンク動画をクリックして、6分過ぎあたりから聴いてください。
↓  神秘の合唱

Wikipediaで調べてみたら、第3楽章後半の「神秘の合唱」ではテノール独唱、男声合唱、オルガン(またはハルモニウム)が加わる。ただし、「神秘の合唱」に入らずに終わることも可能で、リストはそのための短い(8小節)終結部も書いており、この版がたまに演奏されることもあるとのことでした。なるほど! 出典:YouTube Liszt: A Faust Symphony, S.108 ハンス・ペーター・ブロホヴィッツ – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ジュゼッペ・シノーポリ シュターツカペレ・ドレスデン 😘

リスト:ファウスト交響曲 ~3人の人物描写~ ジュゼッペ・シノーポリ シュターツカペレ・ドレスデン 1995年
Liszt: Eine Faust Symphonie (A Faust Symphony), S. 108 Giuseppe Sinopoli Staatskapelle Dresden
テノール:ヴィンソン・コール Vinson Cole ドレスデン国立歌劇場合唱団 Dresden State Opera Chorus

シノーポリさんの演奏は、ドレスデンのゼンパーオーパーで行われたコンサートのライブ録音です。第1楽章25分09秒、第2楽章19分08秒、第3楽章22分54秒、計67分11秒です。数字だけを見ると短めなのですが、聴くと長いという印象を受けました。耽美型の演奏ですが、線が細く、悩める心情が震えている感じがします。「グレートヒェン」では、木管主体とした緩楽章ですが、クラリネット、オーボエなどの柔らかい木管が聴けますが、儚げで寂しい雰囲気はするものの淡々としている感じです。「メフィストフェレス」では、木管のパコパコとした軽快な音が響き、コミカルな行進曲風で、ぐさっと刻み込む演奏を期待していたのですが、ちょっとなあ。

せっかく心理学や精神分析を専門としてきた指揮者なのに~ ファウストなのに~。シノーポリならではの細やかな描き方が、聴き手のワタシには解らなかったのかもしれませんが、ワタシ的には平凡な演奏だと思いました。リストなんだから、もっと大芝居を打ってくれないと思っちゃいました。

でも、多分、ワタシの強欲なんだと思います。繊細すぎてつまんなかった演奏でしたという感想を述べるワタシの方が、ずーっと平凡ですよね。あっ、神秘の合唱は、オルガンが綺麗に入っており聴き応えがあります。ここだけ聴くだけでも良いかもしれません。(ちょっと邪道ですが)で、CDジャケットのイラストもナイスです。
出典:YouTube iszt: A Faust Symphony, S.108 シュターツカペレ・ドレスデン – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

サイモン・ラトル ベルリン・フィル 😘

リスト:ファウスト交響曲 ~3人の人物描写~ サイモン・ラトル ベルリン・フィル 1994年
Liszt: Eine Faust Symphonie (A Faust Symphony), S. 108 Simon Rattle Berliner Philharmoniker
テノール:ペーター・ザイフェルト Peter Seiffert プラハ・フィルハーモニー男声合唱団 Prague Philharmonic Chorus

ラトルさんの演奏は、テンポ良く、サクサクと進み、 ちょっとリストの演奏にしては軽いかもしれません。しかし、最初に聴く一枚としてはお薦めだと思います。当盤は、ラトルさんとベルリン・フィルの初顔合わせ演奏だったと思います。低弦は、ゴリっとした歯ごたえのあるもので、堅牢さが感じられます。しかしながら、フレージングは軽めで、サクサク。ヴァイオリンは、スイスイ軽やかに舞っています。楽章の最後になって、ようやく火が着いた感じになります。そこまでは長いです~。

第2楽章の「グレートヒェン」は、木管のソロは美しいのですが、なにせ第1楽章の「ファウスト」だけで30分近くあるので、ダレてしまいました。第3楽章の「メフィストフェレス」は、とっても軽快です。まるで羽根のはえた妖精のようで、オジサン風に呟きながら、不気味に近づいてくる悪魔をイメージしていたのに拍子抜け。あれま。

「神秘の合唱」は、さすがにベルリン・フィルという様相を示しており、力強く、全ての儚きものは単なる比喩に過ぎず~っと歌いあげていきます。ペーター・ザイフェルトさんの声を、じっくり聴きたいのですが、登場は、あっという間に終わります。「すべての過ぎ去るものは、ただの映像にすぎない」で、ラストで拍手が入ってきたので、ライブ録音だったのかと気づいた次第です。

この楽曲は、ちょっと重みがあった方が嬉しいかもしれません。リストだし、ファウストだし。で、自分の不勉強を棚にあげて言うのもなんですが~ 劇付随音楽っぽいので、ストーリーを知っておくと、より有意義です。一応、演奏時間を記しておきます。第1楽章26分45秒、第2楽章20分05秒、第3楽章16分04秒、神秘の合唱5分55秒 トータル68分49秒という演奏時間です。ちなみに、バーンスタイン(ボストン響)は77分03秒、ムーティ盤は76分38秒です。
出典:YouTube A Faust Symphony, S. 108 Simon Rattle Provided to YouTube by Warner Classics

アンドラーシュ・リゲティ リスト音楽院管弦楽団 🙂

リスト:ファウスト交響曲 ~3人の人物描写~ アンドラーシュ・リゲティ リスト音楽院管弦楽団 1994年
Liszt: Eine Faust Symphonie (A Faust Symphony), S. 108 Andras Ligeti Franz Liszt Academy of Music Orchestra
テノール:アンドラーシュ・モルナール Andras Molnar ハンガリー国立歌劇場合唱団 Hungarian State Opera Chorus

アンドラーシュ・リゲティさんは、1953年生まれのハンガリーのヴァイオリニスト兼指揮者で、ブダペスト交響楽団の首席指揮者等として活躍された方です。神秘の合唱は、7分29秒という長大さです。しっとりと恰幅良く演奏されています。第3楽章までは、小編成かと思うオケの響きでした。出典:YouTube Eine Faust-Symphonie in drei Charakterbildern, S108/R425 ヤッシャ・ホーレンシュタイン – トピック Provided to YouTube by NAXOS of America

リッカルド・シャイー コンセルトヘボウ管弦楽団 😘

リスト ファウスト交響曲 ~3人の人物描写~ リッカルド・シャイー コンセルトヘボウ管弦楽団 1991年
Liszt: A Faust Symphony (Eine Faust Symphonie) Riccardo Chailly Royal Concertgebouw Orchestra 
テノール:ハンス・ペーター・ブロッホヴィッツ オランダ放送合唱団 Netherlands Radio Choir

シャイーさんの演奏は、サクサクと進むスポーティな演奏です。リストのおかげで、文学的な素材が音楽と融合して、世界観が大きく広がったと思うし、ワタシとしても、想像世界が大きく膨らみます。クラシック音楽が好きになった理由の一つとして文学、絵画的世界との融合だと思っています。しかし、いかんせん、難解な交響曲の一つ。リストのファウスト交響曲。この曲は、何度聴いても、なんか、とらえどころがなく、ぼわーっと聴いては終わってしまうというパターンを繰り返していました。

第1楽章の「ファウスト」だけで、シャイー盤で約28分です。全曲を通して聞くと一時間を超えちゃいます。最初は、金管のフレーズしか耳に残らない状態です。金管を伴って奏でられる主題は、恰好が良いのですが、そのほかの主題は、ワーグナーのように同じモチーフを用いているわけでもなく、メフィストフェレスが登場してくる第3楽章では、ファウストと重なって、パロディっぽいフレーズとして、悪魔のささやき風に登場します。心のなかの悪魔的存在、心のなかの二面性を表しすので、より一層複雑なワケです。

最後、声楽が入ってくる「神秘の合唱」では、悪に打ち勝つという構図なので、輝かしさを放ちますが、悪魔的世界に吸い込まれそうな気配があるので、ふっと隙間を見ると恐ろしい世界が広がってしまいます。ところで、シャイーさんの演奏は、その隙間が意識下になく、スポーティで、まるで映画を見ているようなのです。

映画「スターウォーズ」も、ある意味、ファウストを下敷きにしているよなぁって思います。暗黒の闇、ダークサイドに落ちたダースベーダーは、ありゃ、メフィストファレスだ~! そう、ワタシは勝手に思っているのです。シャイーさんの演奏が、ハリウッド映画音楽のようだと言うつもりはありませんが、まあ、ある意味、さっぱり解りやすく、サクサク進む方が、世情にはマッチしているかもしれません。ラトル盤と同様に、最初に聴くのにお薦めです。録音状態も良いので。そうそう、神秘の合唱は、第3楽章に引き続いて演奏されます。約16分過ぎあたりから始まります。出典:YouTube Liszt: A Faust Symphony, S.108 Concertgebouworkest Provided to YouTube by Universal Music Group

ゲオルク・ショルティ シカゴ交響楽団 🤩

リスト:ファウスト交響曲 ~3人の人物描写~ ゲオルク・ショルティ シカゴ交響楽団・同合唱団 1986年
Liszt: Eine Faust Symphonie (A Faust Symphony), S. 108 Georg Solti Chicago Symphony Orchestra
テノール:ジークフリート・イェルザレム Siegfried Jerusalem Chicago Symphony Chorus

ショルティさんの演奏は、馬力のある戦車軍団なのですが、猛烈に速くて、すばしっこい戦車で、あっという間に過ぎ去っていく感じです。キャタピラーが回転度数の高い戦車です。まあ、第3楽章のメフィストフェレスと神秘の合唱を一緒にしているのですが、YouTubeで聴くと約22分58秒になっています。

第1楽章だけで5つもの主題が登場し、第3楽章になると、それが使い回されて、めくるめく楽章になっていきます。はれぇ~ 今、どの場面なんだと考える暇を与えないで、するっと変化するため、怒濤のごとく攻め立てられて陥落しちゃう感じです。いっきに、甘いグレートヒェンの主題が回想され、するするっと神秘の合唱が始まるわけです。

はあ、今日もやられちゃった。速すぎて目が回り、耳が置いてきぼりをくらい、パイプオルガンの荘厳な響きにやられちゃった~と思いつつ、ハイ終了! まっ、いつもこんな感じで、ショルティさんの演奏には煙を巻かれます。それでも好きですね~ この演奏。文学においても音楽においても、思想的にも影響を及ぼした永遠の課題みたいなテーマですが、まあ、とにかく聴かないとねえ~ つべこべ言わず聴かないと。(と、自分にいいきかせています。)出典:YouTube Liszt: A Faust Symphony, S.108 ジークフリート・イェルザレム – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

アンタル・ドラティ コンセルトヘボウ管弦楽団 🥰

リスト:ファウスト交響曲 ~3人の人物描写~ アンタル・ドラティ コンセルトヘボウ管弦楽団・同合唱団 1982年 Liszt: Eine Faust Symphonie (A Faust Symphony), S. 108 Antal Doráti Royal Concertgebouw Orchestra
テノール:ラヨス・コズマ Lajos Kozma Chorus Of The Royal Concertgebouw Amsterdam

ドラティさんの演奏は、メッチャ長い楽曲を、サクサクと進んでいくので、聴きやすいと思います。正しくは、聴き疲れしないで済むかな~ってことなのですが。あはは~ ホント 第2楽章になると途端に眠くなっちゃって。演奏会で取り上げられたとしても、うーん 行くかどうか迷うかもしれません。このファウスト交響曲~ テーマ、素材がデカイです。よくこんな素材を、音楽に取り込もうって発想がすごすぎ。

ゲーテの戯曲「ファウスト」を主題にしており、思想的、哲学的とも言える深い素材です。避けても通れないのは十分承知していますが、ぼやきたくなるような世界観が広がっています。とりあえず書棚から本を取り出して戯曲を読み、何度か繰り返して聴いみますが。まあ、やっぱ難しいですねえ。そうそう、ドラティさんの演奏は、コンセルトヘボウ管の機敏な動きと豊かな音響なので聴きやすいと思います。長いので、とりあえず第3楽章(神秘の合唱が続けて演奏されます)22分34秒という速さなので、そこだけでも聴いていただけると嬉しいです。出典:YouTube Liszt: A Faust Symphony, S.108 Concertgebouworkest Provided to YouTube by Universal Music Group

リッカルド・ムーティ フィラデルフィア管弦楽団 😍

リスト ファウスト交響曲 ~3人の人物描写~ リッカルド・ムーティ フィラデルフィア管弦楽団 1982年~83年 Liszt: A Faust Symphony  (Eine Faust Symphonie) Riccardo Muti Philadelphia Orchestra
テノール:イェスタ・ヴィンベルイ Gösta Winbergh ウェストミンスター・クワイヤーカレッジ男声合唱団 Westminster Choir

ムーティさんの演奏は、76分38秒というクレジットで長めです。大きなスケールで、たっぷり歌われており熱演です。ワタシが所有しているEMI輸入盤は、あまり録音状態が良くなく、くぐもっているのですが、YouTubeだとどうでしょう。ライトモチーフのように、ファウストの主題が繰り出され、不気味にそろり~と出てきます。弦の歌い方が巧く、表情づけが細やか。人の息遣いのようにチェロが響き、ぞくぞくしちゃいます。語り口の巧さ、弦のうねり、クレッシェンドしていくところ、威勢よく奏でるところなどにメリハリがついています。「どぉっ ふぁっ それふぁ~ (ドドドン)」まっ、ここだけが威勢の良い楽曲とも言えますが。

低弦のピチカート、緊張感と、木管が出てきて「られみし れぇ~ られしれ~ れっどぉ~しら・・・」と、主題が出てくるところは、どろどろっといた雰囲気があり、一筋の光が見えてくるような神秘性なども感じられるもの。そこから、一気に開放的に、ドラマティックに一種コミカルに描いていくところは、ダイナミックで、うぉ~んと、力があって、起伏の大きな波となって、炎のように立ちのぼっていきます。地底から音が炸裂して、ひきずり落とされるかのような怖さもあり、地獄の釜が開いたかのような感じで魑魅魍魎なモノたちが出てきそうな~ あはは。

妄想に取り憑かれてしまったようです。第2楽章のグレートヒェンでは、オーボエが美しい。オーボエとクラリネット、そして弦に引き継がれていくところは、オペラのシーンのようです。第3楽章は、低弦の蠢くようなフレーズと、ヴァイオリンのピチカートで幕を開けますが、スピーディーに駆け巡るもので、今まで聴いた主題が、雰囲気を変えて、変奏曲のように巡ってきます。英雄になりきって誇大妄想狂のように、想いだけが膨張し、気分が、ジェットコースターのように、あがりくだりします。阿鼻叫喚だったり、躁鬱状態でもありますが、神秘の合唱が始まると美しい分散和音が奏でられ、世界が変わります。

主題をちりばめて、ストーリー性を持たせ、時空間を支配します。ダイナミックで、素速く急展開を見せていく手腕は、大きく曲線を描いて、垂直に登りくだりするので、怖ろしいほど、縦に横にと揺さぶられます。人の感情のツボを知っているかのように、見透かしたように押さえてくるところは、下手な映画を見ているよりも、映像が浮かんでくるものです。金管に馬力がある演奏の方が、ゼッタイ有利だよな~と思います。えへっ、結局、馬力勝ちですかね。
出典:YouTube Liszt: A Faust Symphony, S.108 リッカルド・ムーティ – トピック Provided to YouTube by Warner Classics

レナード・バーンスタイン ボストン交響楽団 😅

リスト:ファウスト交響曲 ~3人の人物描写~ レナード・バーンスタイン ボストン交響楽団 1976年
Liszt: Eine Faust Symphonie (A Faust Symphony), S. 108 Leonard Bernstein Boston Symphony Orchestra
テノール:ケネス・リーゲル Kenneth Riege タングルウッド祝祭合唱団 Tanglewood Festival Chorus

バーンスタイン(ボストン響)の演奏は、劇的ではあるのですが、鬼門は第1楽章と第2楽章です。ここは我慢比べになります。演奏時間は、第1楽章29分41秒、第2楽章23分02秒、第3楽章24分20秒 計77分03秒です。レニーさんの演奏は、情熱の火の塊のように思い入れたっぷりで、分厚い弦の響きで、雄壮なフレーズを奏でます。そして、弱音になった時に、ぽっかりと空虚感が生まれ、鬱々として悩めるファウストの心情が良く出ている気がします。

第2楽章の「グレートヒェン」では、木管を主体とした緩楽章で、木管ソロは、なかなかに聴き応えがあります。ふわっとした空気感に包まれ、なまめかしさも感じられます。弦が絡むと優美なフレーズとして流れ、低弦の厚みが乗っかってくると花開く感じに。第3楽章の「メフィストフェレス」では、軽妙で狡猾な雰囲気が漂います。劇が始まった~という感のする最終楽章で、あがりくだりする激情的な演奏となっています。

主題が、入れ替わり立ち替わり登場した後、神秘の合唱が始まります。全体的な配分としては、もう少し第2楽章が速めであっても良かったかもしれませんね。出典:YouTube Liszt: A Faust Symphony, S. 108 マックス・ホウバート – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ヤッシャ・ホーレンシュタイン BBCノーザン管弦楽団

リスト:ファウスト交響曲 ~3人の人物描写~ ヤッシャ・ホーレンシュタイン BBCノーザン交響楽団 1972年
Liszt: Eine Faust Symphonie (A Faust Symphony), S. 108 Jascha Horenstein BBC Northern Symphony Orchestra
テノール:ジョン・ミッチンソン John Mitchinson The Men’s Voices of the BBC Northern Singers
出典:YouTube Faust Symphony, S. 108 Various Artists – Topic Provided to YouTube by IDOL

エルネスト・アンセルメ スイス・ロマンド管弦楽団

リスト:ファウスト交響曲 ~3人の人物描写~ エルネスト・アンセルメ スイス・ロマンド管弦楽団 1967年
Liszt: Eine Faust Symphonie (A Faust Symphony), S. 108 Ernest Ansermet Orchestre de la Suisse Romande テノール:ヴェルナー・クレン Werner Krenn ローザンヌ・プロ・アルテ合唱団 Choeur Pro Arte de Lausanne

CDカップリング:リスト ファウスト交響曲、村の居酒屋での踊り メフィスト・ワルツ第1番、夜の行列 1967年録音、交響詩フン族の戦い1959年、マニャール交響曲第3番 1968年録音 2枚組BOX 出典:YouTube Liszt: A Faust Symphony, S.108 スイス・ロマンド管弦楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

レナード・バーンスタイン ニューヨーク・フィル 😘

リスト:ファウスト交響曲 ~3人の人物描写~ レナード・バーンスタイン ニューヨーク・フィル 1960年
Liszt: Eine Faust Symphonie (A Faust Symphony), S. 108 Leonard Bernstein New York Philharmonic Orchestra
テノール:チャールズ・ブレスター Charles Bressler コーラル・アーツ・ソサエティ Choral Art Society

録音は古いのですが、メフィストフェレスにおける、おどろおどろしさは抜群で、竜巻に呑み込まれるかのようです。これは良いですねえ。シャンシャン、ジャンジャン進みます。劇的な要素があって、ぐいぐい引き込まれます。やっぱレニーさんは巧いです。神秘の合唱でのテナーは、か細い声ですが、これがこの時期としては普通の録音かもしれません。あとはリマスタリングできててバッチリです。パイプオルガンもラストで豪勢に鳴ります。
出典:YouTube A Faust Symphony, S. 108 (2017 Remastered Version) Leonard Bernstein Provided to YouTube by Sony Classical

リスト:ファウスト交響曲 ~3人の人物描写~【解説】

リストのファウスト交響曲(S.108)Eine Faust-Symphonie in drei Charakterbildern nach Goethe, mit Schlusschor S.108は、合唱を伴う交響曲で、三人の人物描写(人物像)による~という副題がついています。全三楽章から構成され、演奏時間は、合唱のない管弦楽だけの第一稿が約70、第二稿の男声合唱付きが約75分という、とっても長いもの。

ベルリオーズから、ゲーテの戯曲ファウストを薦められ、ファウストの劫罰を献呈されたのを契機に、1854年に作曲を開始、1857年に神秘の合唱が加えられ最終決定稿は1880年に完成しています。物語の筋を追うのではなく、題名にあるように、三人の主要な登場人物の性格描写を各楽章にあてめたものです。八つの主題と複数のモティーフを循環的に用いて描写したものです。

第1楽章 ファウスト Faust:自由なソナタ形式 五つの主題があります。第1主題は、レント・アッサイの序奏を持つチェロとヴィオラで、神秘的世界の謎を解明しよう瞑想しているところ。第2主題は、ヴァイオリンが、エネルギッシュに奏するもので、情熱的で闘争的な姿、第3主題は、オーボエとクラリネットで、情愛に対する欲求 第4主題は、クラリネットとホルンで始まり、憧れに満ちた自然と人生への愛。第5主題は、第1の主題の後半部からもたらされたもので、自然と人生の愛を歌うファウストの姿となっています。

第2楽章 グレートヒェン Gretchen:三部形式で、第1楽章とは対照的にグレートヒェンの愛らしく、いじらしい性格が描写されています。ここでは、新しくグレートヒェンの二つの主題が加わります。

第3楽章 メフィストフェレス Mephistopheles:第1楽章より複雑な構成で、ソナタ形式に則っています。全てを否定し、人間を嫌い、戯画化してしめ、破滅させるメフィストフェレスは、ファウストのネガティヴな姿を投影したものです。まあ、裏というか自分の心の闇ですね。新しい要素がほとんど登場せず、ファウストの主題が、パロディ化したものだったり、不気味でグロテスクなものとして表現されます。主題のパロディ化は、ベルリオーズの幻想交響曲第5楽章における固定楽想(イデー・フィクス)の扱いに通じるところがあります。最終稿になった際に追加された「神秘の合唱」は、天の神が悪に打ち勝ち、暗黒から光が差し込んで、大団円を迎えるというものです。

単純に善悪の区別ができない、深い深層心理の世界でもあり、難題で永遠のテーマですが~ これを音楽にするっていう奇想天外な発想にびっくりです。自分の深層心理、潜在意識を突き詰めたところで、社会生活とのバランスがとれるのか、かなり疑問で、避けて通りたくもありますが、何かアクシデント等があった際には、意外と素顔の自分が出たりします。で、1854年のオリジナル版(第1稿)は、神秘の合唱がありませんが、三年後に、この合唱を追加することで、内省的でありながらも、前を向いて進もうとする意思が感じられるようになりました。

神秘の合唱 Alles Vergängliche
テノールのソリストは、救いの力を強調し、オルガンの持続的な和音をバックに、合唱団とオーケストラの輝かしい輝きで終わります。合唱のテキストは、マーラーの交響曲第8番の終わりと同じです。記載しておきます。

Alles Vergängliche Ist nur ein Gleichnis; Das Unzulängliche, Hier wird’s Ereignis; Das Unbeschreibliche, Hier ist’s getan; Das Ewig-Weibliche Zieht uns hinan. 
すべては一時的なもの それは単なる寓意にすぎません。達成できないものは、ここでそれが実現するでしょう。説明できないものは、ここでそれは達成されます。永遠の女性らしさ 私たちを高みに引き寄せます。

リスト:ファウスト交響曲~3人の人物描写~【ディスク情報】

1960年 バーンスタイン ニューヨーク・フィル SC
1967年 アンセルメ スイス・ロマンド管弦楽団 Dec
1972年 ヤッシャ・ホーレンシュタイン BBCノーザン管弦楽団 BBC
1976年 バーンスタイン ボストン交響楽団 G
1982年 ムーティ フィラデルフィア管 EMI 
1982年 ドラティ コンセルトヘボウ管弦楽団 Dec
1986年 ショルティ シカゴ交響楽団 Dec
1991年 シャイー コンセルトヘボウ Dec
1992年 インバル ベルリン放送交響楽団 DENON 未掲載
1994年 アンドラーシュ・リゲティ リスト音楽院管弦楽団 NAXOS
1994年 ラトル ベルリン・フィル EMI
1995年 シノーポリ シュターツカペレ・ドレスデン G
1996年 イヴァン・フィッシャー ブダペスト祝祭管弦楽団 Ph
1998年 バレンボイム ベルリン・フィル TELDEC
1999年 トマス・ダウスゴー デンマーク国立放送交響楽団 CHANDOS
2005年 ノセダ BBCフィル CHANDOS
2022年 キリル・カラビツ シュターツカペレ・ワイマール AUDITE

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