バルトーク:ピアノ協奏曲第3番【聴いてみよう】Bartók: Piano Concerto No.3, BB 127, Sz. 119

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バルトーク:ピアノ協奏曲第3番【名盤・おすすめ】

アンドレアス・ヘフリガー スザンナ・マルッキ ヘルシンキ・フィル 😉

バルトーク:ピアノ協奏曲第3番 アンドレアス・ヘフリガー スザンナ・マルッキ ヘルシンキ・フィル  2019年
Bartók: Piano Concerto No. 3, BB 127, Sz. 119 Andreas Haefliger Susanna Mälkki Helsinki Philharmonic Orchestra

ヘフリガーさんの演奏は、サブスクリプションを利用して拝聴しました。ピアノのフレーズは細かく、微妙に弾みます。きちんと1つ1つの音が、つぶさに聞える感じがするので、どうかすると字余り的に聞えます。その後に、オケの木管と共に、ピアノが大きくうねります。ペリアネスさんのピアノとよく似た傾向で、ピアノは打楽器という印象を濃く感じます。ピアノの残響を意識して消しているのではないかと、そう思います。縦にいつも弾んでいますね。

音が硬めに響くので、第2楽章は綺麗なのですが、あまり空間が広がらない感じがします。第3楽章は熱い演奏なのですが、バタバタと音がいっぱい広がって雑味も一緒に感じてしまいます。硬質的なのは良いだけど~ イマジネーションを膨らますまでには至らないでしょうか。もっと遊ばせていただければ、より嬉しいかな~って思いました。

CDカップリング:アマーン ピアノ協奏曲(グラン・トッカータ)、ラヴェル 左手のためのピアノ協奏曲、バルトーク ピアノ協奏曲第3協奏曲 2019年 出典:YouTube Piano Concerto No. 3 in E Major, Sz. 119
アンドレアス・ヘフリガー – トピック Provided to YouTube by NAXOS of America

ハヴィエル・ペリアネス パブロ・エラス=カサド ミュンヘン・フィル 🤩

バルトーク:ピアノ協奏曲第3番 ハヴィエル・ペリアネス パブロ・エラス=カサド ミュンヘン・フィル 2016年
Bartók: Piano Concerto No.3, BB 127, Sz. 119 Javier Perianes Pablo Heras-Casado Münchner Philharmoniker

スペイン出身のピアニストと指揮者の演奏です。ペリアネスさんの演奏は、縦に弾むリズム感が特徴でしょうか。常に弾んでいる感じのする個性的な演奏だと思います。どちらかというと横に、ふわっとした流れる聴きやすい楽曲というイメージがあるのですが、最初は、ワタシのなかで、どうもひっかる演奏でした。ワタシだけかな~ 何かが違うのですが、付点のリズムのつけかた、アクセントの置き方 えーっ、どこがどう違っているのか説明しづらいのですが、共通語ではなく、方言を聴いているような微妙なニュアンスが気になりました。

しかし、聴き進むにつれて、小さく弾んでいるリズムが、ジャズぽいフレーズにさしかかる前に、耳に馴染んできたのです。また、オケも多彩な音が発せられ、耳を傾ければ、多くの情報が入ってくる気がします。いつもなら、内省的で青白く発光しているバルトークの楽曲なのですが、ペリアネスさんの演奏は、明るく、コミカルで、いつもの散歩道を歩いていますって感じで、とてもフランクなのです。

特に第2楽章は聴きどころが満載です。遅めのテンポで静かに進みます。もわっとした空気感のなか、暖かく水滴が落ちるような音が聞え、少しずつ集まって、たまって、小さな流れを作っていく、そんな動きが感じられました。静謐なのだけど、動かない静謐さではなく、プツプツと集まってくる音の生命という感じでしょうか。ミュンヘン・フィルの木管も、パーカッションも、ピアノに呼応して一緒に弾みます。

あっ! これで第1楽章からのイメージが繋がりました。オケとピアノの呼応がとても楽しいです。遊び心があり、色彩感も統一されており、とっても良い演奏です。このバルトークのピアノ協奏曲第3番って言えば、ラストの第3楽章が断然楽しいので、その前の休憩みたいな存在だったのですが、いやあ~ オケの鳴り方も情報が多くて、あらら~ 耳にしたことのない音がたくさん。ピアノからも、多くの音が聞えてきます。久々に興奮気味で拝聴しました。

CDカップリング:バルトーク ピアノ協奏曲第3番、管弦楽のための協奏曲 2016年 出典:YouTube Piano Concerto No. 3, Sz 119 パブロ・エラス=カサド – トピック Provided to YouTube by PIAS

ジャン=エフラム・バヴゼ ジャナンドレア・ノセダ BBCフィルハーモニック 🥴

バルトーク:ピアノ協奏曲第3番 ジャン=エフラム・バヴゼ ジャナンドレア・ノセダ BBCフィルハーモニック 2009年 Bartók: Piano Concerto No. 3, BB 127, Sz. 119 Jean-Efflam Bavouzet Gianandrea Noseda BBC Philharmonic

バウゼさんのピアノは、いつもドビュッシーとかラヴェルの演奏を聴くときにお世話になっているのですが、バルトークの演奏を聴くと、ん、んんん、なんだこりゃー! アタマのなかが混乱して、なんか別モノを見ているような、ヘンテコリンな、みょうちくりんな楽曲に聞えてくるのです。読点の打つ場所がズレているというか、横に流れすぎて、旋律がふにゃふにゃしているのか、いつもなら、硬質感のある冷たーい曲なのですが、青天霹靂です。

ワタシのなかの定盤は、ゲザ・アンダさん、コヴァセヴィッチさん、アシュケナージさんのピアノ演奏です。バウゼさんの演奏は、いったいどうなっているのでしょう。なにが、どう弾けば、こんな演奏になるのか、わかりません。縦線が合っていない演奏なのでしょうか、確信犯なのでしょうか、新しい試みをしているところなのでしょうか、いやー どうしたら、このバウゼさんのような演奏になるのでしょう。

誰か教えて~ください。カフカの変身じゃないのですが、甲殻類だったのが、いきなり軟体動物になっちゃった気分で、ワタシは気持ちが悪くなって、ギブアップしちゃいました。今回、サブスクを利用して拝聴したので、内心、ほっとしています。CDカップリング:バルトーク ピアノ協奏曲第1番~第3番 2009年~2010年録音 出典:YouTube Piano Concerto No. 3, Sz. 119, BB 127 ジャナンドレア・ノセダ – トピック Provided to YouTube by PIAS

エレーヌ・グリモー ブーレーズ ロンドン交響楽団 😘

バルトーク:ピアノ協奏曲第3番 エレーヌ・グリモー ブーレーズ ロンドン交響楽団 2004年
Bartók: Piano Concerto No. 3, BB 127, Sz. 119 Hélène Grimaud Pierre Boulez London Symphony Orchestra

グリモーさんの演奏は、ちゃんと自己主張しつつ軽やかに遊び、春風を運んくるような演奏です。このCDは、指揮者ブーレーズさんで決定、ピアニスト三人、オケ三団体という、バラバラのセッションで録音された贅沢な仕様です。ブーレーズさん80歳記念企画が大ヒット。で、バルトークの第3番は、エレーヌ・グリモーさんとロンドン響です。

バルトークならではの独特の和音づかいで、さわさわ~っとした弦をバックに、ピアノが出てきます。回転率が高く、拍の間に動くピアノの節回し、独特の付点のリズム感が良いですね。付点のリズムが、シャキシャキとしており、近未来的というか、ローカル色を排し、もはや全国共通語でしょって感じで、ハイソな感じに仕上がっています。ジャズの要素を含んだ旋律は楽しげです。緻密で粒立ちも良く、密度が濃い演奏です。

第2楽章の静謐で、内省的な楽章で、とても聴き応えがあります。弦楽器の二声によるコラールって感じで呼応して美しいのです。しなやかに暖かみと奥行きがあります。弱音のピアノが、すわ~っと響くので、イメージが大きく膨らんで行きます。オーボエが神秘的に響き、鳥のさえずりのなかで、森の奥で瞑想しているかのような雰囲気です。ストイックで、虚無的な空間だと思わせる演奏もありますが、グリモーさんは、静かに佇み、心を平穏に保って座っている感じがします。

第3楽章のロンド形式の楽章は、「う ぱぁーぱー ぱ ぱー ぱぱぱ」というリズム感が最高に楽しい楽章です。グリモーさんのピアノは、熱くなりすぎず理知的だ。血湧き肉躍る快感を求めている方には、残念かもしれませんが、オケの方で、いろんな楽器が、多層的に聞こえてくるので面白いと思います。ここで、パコパコっと木管が鳴っているんだとか、弦の補強された音、アクセントを使って強調されている音が、よく聞こえます。

ティンパニだけでなく、大太鼓のドスンっ、複雑なリズムがワクワク感を生みます。ピアノのソロも柔らかく弾んでおり、柔らかくチャーミングに主張します。これだけの音が飛び交うなかで、なんてチャーミングな音で、彩りを添えてくれるのでしょう。激しい火柱が立つような音の洪水のなかで、血湧き肉躍る原始的で蛮行を繰り返す付点リズムのなかで、まるで、水遊びをしているかのようなピアノです。あぁ~面白いっ。それにしても、三人の有名なピアニストを差し置いて、ブーレーズさん一人でCDジャケットに収まっています。確かに重鎮には違いないが、満足げに笑う姿が、なんとも大胆不敵!ハイ、この企画には満足しています。

CDカップリング:バルトーク ピアノ協奏曲1番:ツィメルマン ブーレーズ シカゴ交響楽団 2001年、2番:アンスネス ブーレーズ ベルリン・フィル 2003年、3番:グリモー ブーレーズ ロンドン交響楽団 2004年
出典:YouTube Bartók: Piano Concerto No. 3, BB 127, Sz. 119 ピエール・ブーレーズ トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

マルタ・アルゲリッチ デュトワ モントリオール交響楽団 😍

バルトーク:ピアノ協奏曲第3番 マルタ・アルゲリッチ シャルル・デュトワ モントリオール交響楽団 1997年
Bartók: Piano Concerto No. 3, BB 127, Sz. 119 Martha Argerich · Charles Dutoit · Orchestre Symphonique de Montréal

アルゲリッチさんの演奏は、ピアノの節回しが、ワタシのなかでは刷り込み済みになってしまっています。現在の演奏では、ちょっと間合いが違うようなのですが、残響の響きのなかで夢幻的に鳴るピアノが、イマジネーションをかき立てるのです。もわっとしているなかで響くピアノが、不気味でもあり妖しげでもあり~というところが魅力ですね。
あまりに全てクリアなバックでピアノを弾かれちゃうと、ワタシ的には魅力が半減しちゃうかもしれません。

とは言っても、最近のピアノ演奏も聴かないと~。いや、やっぱりアルゲリッチさんでしょ。葛藤しつつも、また、ここに戻ってしまうのです。やっぱり、第3楽章で火柱が立つのですが、わかっているのに、何度聞いても一緒になって燃えちゃいます。3楽章で燃えないような演奏は、速攻、ダメじゃん!となりかねません。既に、客観的な評価なんて出来るはずもなく、論外、即退場ですが、あはは~。好きなモノは好きです。また、第2楽章の夜の雰囲気だけピックアップして、聴き比べても楽しい楽曲です。また、鎮火したら他の演奏を聴いてみましょう。

CDカップリング:プロコフィエフ ピアノ協奏曲第1番、第3番、バルトーク ピアノ協奏曲第3番 1997年
出典:YouTube Piano Concerto No. 3 in E Major, Sz. 119: III. Allegro vivace モントリオール交響楽団 – トピック Provided to YouTube by Warner Classics

アンドラーシュ・シフ イヴァン・フィッシャー ブダペスト祝祭管弦楽団 😘

バルトーク:ピアノ協奏曲第3番 アンドラーシュ・シフ イヴァン・フィッシャー ブダペスト祝祭管弦楽団 1996年 Bartók: Piano Concerto No. 3, BB 127, Sz. 119 András Schiff Iván Fischer Budapest Festival Orchestra

シフさんの演奏は、いつも穏やかな表情で、余計なモノがついていません。オケは、木管がよく聞こえます。木管フレーズが主になる箇所も多いのですが、印象としてはちょっと単調で、バランス的にちょっと出過ぎでしょうか。金管は、まあまあかなあ。ピアノは、ホントよく弾みます。素人なので巧く言えませんが、えっ ここで弾むんか~と驚いたりして新鮮です。第2楽章も、第3楽章は、聴きどころ満載です。オケが、もう少し精緻であれば、もっと嬉しかったかもしれません。もう少しデリケートに伴奏してよぉ~と言いたくなりました。再録して欲しいです。CDカップリング:バルトーク ピアノ協奏曲第1番~第3番 1996年録音 出典:YouTube Piano Concerto No. 3 in E Major, Sz. 119 アンドラーシュ・シフ – トピック Provided to YouTube by Warner Classics International

イェフィム・ブロンフマン エサ=ペッカ・サロネン ロサンゼルス・フィル 🙄

バルトーク:ピアノ協奏曲第3番 イェフィム・ブロンフマン エサ=ペッカ・サロネン ロサンゼルス・フィル 1994年 Bartók: Piano Concerto No. 3, BB 127, Sz. 119 Yefim Bronfman Esa-Pekka Salonen Los Angeles Philharmonic Orchestra ★ YouTubeにおいては、1番という表記になっていますが、第3番の誤りです。

ブロンフマンさんの演奏は、しゃくりあげるように小刻みに飛び跳ねます。ソロになると、しゃくりあげて前につんのめって転んでいきます。えっ、変なのぉ。冒頭で、こけちゃって~ オケ全体が、カクカク~っと蝶番が外れてしまった感じがします。テンポが速くなったり、硬いのか柔らかいのか、いったいどっちなん? 感覚が一定しない状態で進みます。色彩感も乏しいし、なんかねえ。録音状態も、褒められたものではないのですが、グラミー賞を受賞したCDなんですよね。

ピアノには文句タラタラなのですが、伴奏のオケは、多彩な音が入っており、メッチャ面白いです。ピアノの旋律の裏で、低弦が唸っていたり、表裏に大忙しである。あまりジャズっぽくは鳴ってくれない悲しさがあり、ちょっと硬い気がしますが、おちゃめには振る舞えないようで、洒脱には遠い感じがします。

第2楽章は、内省的で、宗教的なフレーズが静かに聞こえてくるもの。ポツンっと雨粒のようなピアノが入ってきます。他盤で聴くと、神秘的な音が響き、映像が浮かんでくるのですが、ブロンフマン盤は、モノトーンで、音のない世界に放り込まれているかのよう。水滴が落ちていくのを見ているのですが、水面に落ちても響かないんです。音が吸収されているような虚無感が漂っています。なんだか修行僧のようにストイック。木管が吹かれると、生命体が生まれてきたかのように響き、蘇生できます。

第3楽章は、俄然、生き返ったみたいに、ピアノも活き活きしてきます。土俗性、色彩感は、ほぼなし。ワタシのイメージと違いますねえ。中間部の数学的、幾何学的模様のところは、オケが綺麗です。主題が入れ替わり、立ち替わりで流れていくのですが、つなぎが、ぱっくりと空いています。 もう少し勢いがあっても良いように思いますし、他盤だと、多彩な世界を積極的に提示してくれるのですが、どうも関心がないようです。

CDカップリング:バルトーク ピアノ協奏曲第1番~第3番 出典:YouTube Piano Concerto No.3, BB 127, Sz. 119
イェフィム・ブロンフマン – トピック Provided to YouTube by Sony Classical 

ピーター・ドノホー サイモン・ラトル バーミガム市交響楽団 😘

バルトーク:ピアノ協奏曲第3番 ピーター・ドノホー サイモン・ラトル バーミガム市交響楽団 1992年
Bartók: Piano Concerto No. 3, BB 127, Sz. 119 Peter Donohoe Simon Rattle City of Birmingham Symphony Orchestra

1楽章 バーミンガム市響時代のラトルさんの演奏で、ピアノは、ドノホーさんである。ラトルさんとドノホーさんとの組み合わせは、ストラヴィンスキーの楽曲でもあったように思う。改めて、ドノホーさんのことを、ウィキで調べてみると~ バーミンガム市響に打楽器奏者として在籍され、1982年のチャイコフスキーコンクールで第2位だったことから、ピアニストとして注目を集めたそうです。

で、ラトルのお気に入りのピアニストの一人として、演奏会や録音で共演を重ね、2002年、ベルリン・フィルの演奏会でも共演を果たしたそうです。レパートリーも協奏曲だけで160曲を数えるという、多才な方なのです。しかし、ピアノ協奏曲だけで160曲って・・・ そんなにあるの?

この楽曲に関しては、ワタシ的には、静かに湖面をすーっと歩いて行くというか、湖面のうえを撫でるかのような、ひんやりした空気感を醸し出すような演奏が好きなのだが、ドノホー盤は、明るくて元気で~ ちょっとバタバタしすぎじゃないかなあ。と思う。ティンパニーが、そろっと叩かれるなか、 ピアノが奏で始めます。付点のリズムが入ってくるのですが、あまり弾んでいるような感じがなく、オケの方も分厚い響きです。金管のフレーズに、ジャズの要素が入っており楽しい曲です。打楽器の要素もあって、バンバンと叩いている場面もあります。重たい音の打音です。

第2楽章は、教会のコラール風な響きが充満してくる楽章で、内省的な旋律です。ここでは、神妙で慎重に演奏されています。第3楽章は、リズミカルで、パワフルにはじけちゃう楽しい楽章です。ピアノの熱さは控えめにしつつも、テンポが速く、ノリノリ感が出て、熱くなったり冷えたりを繰り返します。

見通しの良いオケで、ピアノとの掛け合いも、とっても楽しいものとなっています。歌謡風、フーガ風、警告音のようなアラームのようなフレーズなど、いろんな色彩を持つ主題が、目白押しで出てくるところが面白く。重い打音ですが、飄々としており、重量級ですが愉悦性の高い演奏だと思います。CDカップリング:バルトーク ピアノ協奏曲第1番 1992年、第2番 1990年、第3番 1992年 出典:YouTube Bartok: Piano Concerto No. 3, Sz.119
バーミンガム市交響楽団 トピック Provided to YouTube by Warner Classics

ゾルターン・コチシュ イヴァン・フィッシャー ブダペスト祝祭管弦楽団 🙄

バルトーク ピアノ協奏曲第3番 ゾルターン・コチシュ イヴァン・フィッシャー ブダペスト祝祭管弦楽団 1984年 Bartók: Piano Concerto No. 3, BB 127, Sz. 119 Zoltán Kocsis Iván Fischer Budapest Festival Orchestra

コチシュさんの演奏は、カクカク 指の節が折れ曲がっているような節回しで、ちょっと肌に合いません。どうも第1楽章でいつも躓いてしまいます。波に乗れない嫌いがあって、ワタシとはちょっと~。スミマセン。
出典:YouTube Bartók: Piano Concerto No. 3, BB 127 (Sz.119)  コチシュ・ゾルターン – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ウラディーミル・アシュケナージ ショルティ ロンドン・フィル 🤩 

バルトーク ピアノ協奏曲第3番 ウラディーミル・アシュケナージ ショルティ ロンドン・フィル 1979年
Bartók: Piano Concerto No. 3, BB 127, Sz. 119 Vladimir Ashkenazy Georg Solti London Philharmonic Orchestra

バルトークのピアノ協奏曲のなかでは、第3番は、ロマンティックな楽曲です。幻想的で、たゆとう気分にさせてくれる大好きな楽曲で、冒頭、蜃気楼のようにピアノが立ちあがってきます。アシュケナージさんの演奏は、ジャズっぽさが良くでてコミカルに聞こます。オケは力強くメリハリがあり、ピアノは、そこに明るく柔らかい音を添えます。

主題が変わって、ピアノのカデンツァがあり、ピアノのペダル音が、ごわ~っと響き渡ります。ちょっと輪郭がなくなり、ピントがぼけちゃう印象を受けました。バルトークが、アメリカに渡っていた最晩年の作品で、夫人のために作曲したものなので、聴衆に解りやすく書かれているように思います。改めてCDのブックレット(解説書)を読んでみると、「いかにもハンガリー民謡風の、土のにおいを感じさせる素朴な曲想である。第2主題も、やはりピアノで奏されるもので、楽譜にはスケルツァンド(諧謔的な)と記されている。」って書いてありました。

第2楽章は、教会のコラール風で、大変美しい楽章です。弦楽器の二声によるコラールって感じで、ひそやかに柔らかく、静謐感があります。儀式化されたものではなく、弦とピアノの小さな祈り。中間部分は、「夜の音楽」と呼ばれているハンガリーの夜の自然が描かれているのだそうです。えっ、ワタシは、てっきり朝だと~ 鳥はフクロウ?

第3楽章 前楽章から、きれめなしに演奏されます。で、いきなりカデンツァ! また切れ目なしに猛烈な勢いで走り始めます。ティンパニも、弦も金管も、血湧き肉躍る感じです。痛点を通り過ぎて、快感~に。魑魅魍魎とした血湧き肉躍るタイプの舞曲で、オケが、野趣あふれる演奏をします。地面を揺るがすようなバーバリズムが炸裂、まあ、そりゃー ショルティさんですから。

ピアノは、このオケに負けじと、魔女のダンスのように踊ります。快活なオケで、力任せなパッセージが火祭りのように立ち上ります。ハンガリー+アメリカ 相乗効果抜群と称すべき主題でしょう。ぐつぐつ煮立った坩堝状態から、成り上がり、のし上がっていくパワーが感じられます。こりゃ強烈っ! ショルティ、アシュケナージは、猛烈マッチョ型、火を噴くというタイプの演奏で、その迫力にぐいぐい押されまくりです。

CDカップリング:バルトーク ピアノ協奏曲第3番 プロコフィエフ ピアノ協奏曲3番(プレヴィン ロンドン交響楽団 1975年) 発売時で、カップリングが異なっている場合があります。出典:YouTube Bartók: Piano Concerto No.3, BB 127, Sz. 119 ウラディーミル・アシュケナージ トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

スティーヴン・コヴァセヴィチ コリン・デイヴィス ロンドン交響楽団 🤩

バルトーク:ピアノ協奏曲第3番 スティーヴン・コヴァセヴィチ コリン・デイヴィス ロンドン交響楽団 1975年
Bartók: Piano Concerto No. 3, BB 127, Sz. 119 Stephen Kovacevich Colin Davis London Symphony Orchestra

コヴァセヴィチさんの演奏は、躍動感があり、ジャズっぽさ、静謐感もあり、う~ん。とても多彩です。描く世界が広くて大きいので、とても楽しめます。前のめり傾向の硬いフレージングですが、んぐーっという、何とも言えない粘りもあります。伴奏のオケは、パーカッションが良く聞こえます。

ピアノもオケも、キレの良いリズム感があり、洒脱が効いているようです。録音状態があまり宜しくないのが難点ですが、気怠さと硬さ、ぬめっとした感覚とドライ感が、両方聴けちゃうようです。漫才のように、つんのめったかと思えば、ジャズの洒落た下手なだじゃれを言って、ずっこけている様子で、面白さが潜んでいます。

第2楽章は、静謐で神秘的です。ポツンっと雨粒のようなピアノが、水琴窟のように響きます。岩からポツンと清水が落ちてくるのを見ているかのような感じで、呼応する響きが心地よさを促します。自然界に放り込まれた生物の世界というのかな~  生命の誕生に立ち会っているような気分になったりします。聴く人によって、想像する世界は違うでしょうが、いろんなイマジネーションを与えてくれる曲と演奏のようです。

第3楽章は、シンコペーションのリズムが、ハッキリしており、コミカルにつんのめってしまいます。何とも言えない野蛮さがあり、楽曲の持つ多彩が存分に描かれているようです。いろんな演奏を聴いてみると、その多彩さが解るのではないでしょうか。摩訶不思議な万華鏡のような世界も、なんとも贅沢な6分19秒の世界です。 追記:コヴァセヴィチさんとも、コヴァチェヴィチ、コヴァチェヴィッチとも表記されることも。また、昔は、スティーヴン・ビショップ、ビショップ=コワセヴィチとも名乗っておられてました。

CDカップリング:バルトーク ピアノ協奏曲第1番 ロンドン交響楽団 1976年、第2番 BBC放送交響楽団 1969年、第2番 ロンドン交響楽団 1976年録音 出典:YouTube Bartók: Piano Concerto No.3, BB 127, Sz. 119 スティーヴン・コヴァセヴィチ – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

パスカル・ロジェ ヴァルター・ヴェラー ロンドン交響楽団 😍

バルトーク:ピアノ協奏曲第3番 パスカル・ロジェ ヴァルター・ヴェラー ロンドン交響楽団 1976年
Bartók: Piano Concerto No. 3, BB 127, Sz. 119 Pascal Rogé Walter Weller London Symphony Orchestra

パスカル・ロジェさんの演奏は、とっても繊細で、細かく震えながら進んでいきます。ゆらゆら~っと揺れて、音の多さが、ガラスの煌めきのようにキラキラさせます。蜃気楼のように、ほわぁ~っと立ちのぼります。これ以前の演奏は、カッチリしていたのですが、ふわっとフランス風という風味づけされた感があります。柔らかく暖かめの音で中性的です。ワタシにとっては、最初に聴いたのがアンダさんの演奏だったので、クールで端麗、光沢のあるヒンヤリした硬めが好きだったのですが、このロジェ盤で、目から鱗が落ちました。あっ、これ好きっ。

音と音の間の空気に揺れがあり、そーっと優しく、ほんの少し揺れるのです。鍵盤のタッチ感が違います。さら~っと風のように横に流れる音。カチカチとは、音がまっすぐに落ちないんですね。はじめはちょっと違和感を覚えたのですが、この柔らかさはクセになります。バルトークの硬くて渋くて暗い、哲学的なイメージが、ぶっ飛びました。特に第2楽章が絶品です。

CDカップリング:2枚組BOX バルトーク ピアノ協奏曲第1番~3番、ピアノと管弦楽のためのラプソディSz.27(op.1)、ヴァイオリン協奏曲第1番、2番 ヴァイオリン:チョン・キョン・ファ(ショルティ ・シカゴ響)同2番(デュトワ・フィルハーモニア管) 出典:YouTube Bartók: Piano Concerto No. 3, BB 127, Sz. 119 ロンドン交響楽団 トピック London Symphony Orchestra – Topic Provided to YouTube by Universal Music Group

ジュリアス・カッチェン イシュトヴァン・ケルテス ロンドン交響楽団 😅

バルトーク:ピアノ協奏曲第3番 ジュリアス・カッチェン イシュトヴァン・ケルテス ロンドン交響楽団 1966年
Bartók: Piano Concerto No. 3, BB 127, Sz. 119 Julius Katchen István Kertész London Symphony Orchestra

カッチェンさんの演奏は、ワタシのイメージでは楷書体、教科書体のようなピアノです。で、バルトーク? え、あの跳ね具合はどうなのだろうと注目していたんですが、出だしの部分は、やっぱカクカク、前のめり。でも、これが正解なのかもしれず。このカッチリ感は、気持ち良いときと悪いときがあって困ります。なんともカッチカチ状態で、泳いでいた魚が冷凍されたみたいで、うーーー。浮遊感がないみたい。

第1楽章は、ピンっとこなかったのですが、第2楽章も、遊びのない雰囲気で、オケだけで演奏して欲しいぐらい。で、第3楽章は、わはっは~と笑いたくなるような豪快さ。このピアニスト、腕っぱしは強いけど、もわっとした空気感を描くのは苦手らしいと、ワタシのなかで(勝手に)位置づけられてしまいました。(ごめんね)
CDカップリング:バルトーク ピアノ協奏曲第3番、ラヴェル ピアノ協奏曲ト長調 1965年録音 出典:YouTube Bartók: Piano Concerto No. 3, BB 127, Sz. 119 ジュリアス・カッチェン – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ピーター・ゼルキン 小澤征爾 シカゴ交響楽団 🙄

バルトーク:ピアノ協奏曲第3番 ピーター・ゼルキン 小澤征爾 シカゴ交響楽団 1965年
Bartók: Piano Concerto No. 3, BB 127, Sz. 119 Peter Serkin Seiji Ozawa Chicago Symphony Orchestra

P・ゼルキンさんの演奏は、小澤さんのバルトークが聴きたかったので、サブスクを利用して拝聴したのですが、リズム感がまっとうなのか、しゃくりあがっているのか、微妙な感じがします。聴きどころの第3楽章においても、ピアノは丁寧に刻むのですが、、オケは、パワフルで、アメリカンなツンデレ系の遊び心のある感じです。生真面目なピアノと、遊び心のあるオケって感じがします。CDカップリング:バルトーク ピアノ協奏曲第1番 1965年、第3番1966年、シェーンベルク ピアノ協奏曲1967年録音 出典:YouTube Piano Concerto No.3, Sz. 119 小澤征爾 – トピック Provided to YouTube by RCA Red Seal

ゲザ・アンダ フリッチャイ ベルリン放送交響楽団 😘

バルトーク:ピアノ協奏曲第3番 ゲザ・アンダ フリッチャイ ベルリン放送交響楽団 1959~60年
Bartók: Piano Concerto No. 3, BB 127, Sz. 119 Géza Anda Fricsay Ferenc Rundfunk-Sinfonieorchester Berlin (Berlin Radio Symphony Orchestra)

ゲザ・アンダさんの演奏は、リマスタリングされており、透明度が高く、すっきりした味わいです。夫人が弾けるようにとの思いで作曲されたので、親しみやすく人気があります。アンダさんのピアノは、昔、名盤として有名です。今聴いても端麗な演奏ですね。第2楽章は、内省的な響きで、音に込められた想いが球体のように変形し、浮かび、漂い、消えていく感じです。表面張力のように、弾力を維持しているような静けさ。とても慈愛に満ちたもの。後半にかけては、深い闇のなかで、息を潜めて生きているような、自然に抗う意思を蓄えている感じです。

第3楽章は、確固たる意思で、かなり強い打音です。前楽章終盤から、生命力がみなぎっていましたが、ここで、いっきに流れ出されたかのようです。強いっ。強いエネルギーです。背をかがめて飛びかかっていくような、低い姿勢で走って、ガガガ~っと地面を引掻いていく足腰の強さ。地面に接する面積の広さ、粘りあるリズムで、駆けだしていきます。ピアノだけでなく、ティンパニの響きも重要です。

オケが、運動機能が高くないと面白くない楽曲だが、いやー、ゲザ・アンダ盤は、古い録音とはいえ、やっぱり、いつ聴いても、楽しい演奏で、わくわくしちゃいます。理知的で、音が数理的に詰まっている感じですが、数式を解くのに夢中になる人の気持ちも、なーんか理解できそうな雰囲気です。

楽譜を書くって、方程式を書いているみたいなモノかしらん。(あくまでも想像)このバルトークのピアノ協奏曲第3番は、聴いているだけで、リズムが、自分のなかで沸々とわいてくるので、いつ聴いても楽しいです。颯爽と終わってくれるところが最高な気分にさせてくれます。

CDカップリング:バルトーク ピアノ協奏曲第1番~第3番 1番が1960年、2番と3番が1959年の録音です。出典:YouTube Bartók: Piano Concerto No. 3, BB 127, Sz. 119 アンダ・ゲーザ トピック Géza Anda – Topic Provided to YouTube by Universal Music Group

バルトーク:ピアノ協奏曲第3番【解説】

バルトークは、現在のルーマニア(当時はハンガリー)で生まれた作曲家で、多くの管弦楽曲や協奏曲がありますが、このピアノ協奏曲第3番は、1945年、ラスト17小節の管弦楽分を補筆され完成された作品です。

第1楽章は、ホ長調 伝統的なソナタ形式 開始でピアノが、両手のユニゾンによって旋律を弾き始めます。第2楽章は、三部分形式で、ハ調の教会旋法により、弦楽器のコラールとピアノが交わす対話は、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第15番の緩徐楽章に性格的に似ています。中間部は、ピアノや木管において細やかい動機が飛び交い、ややスケルツォ的な雰囲気を漂わせるものです。

第3楽章は、ロンド形式で、管弦楽のための協奏曲のフィナーレと同じような民族舞曲調の主題がロンド主題に用いられており、フーガ風のパッセージや歌謡風の主題をはさみつつ進行します。激しい打楽器の打ち込みは、最後まで影を潜め、非常に静かで内省的な雰囲気を持っています。静かに、じっくりと聴きたい楽曲です。ラストの楽章は、リズミカルで、明るいノリの良いフレーズが続き、次第に燃えてきます。

バルトーク:ピアノ協奏曲第3番【ディスク情報】

1959年 アンダ フリッチャイ ベルリン放送交響楽団 G
1965年 P・ゼルキン 小澤征爾 シカゴ交響楽団 R
1966年 カッチェン ケルテス ロンドン交響楽団 Dec
1976年 パスカル・ロジェ ヴェラー ロンドン交響楽団 Dec
1975年 コヴァセヴィッチ C・デイヴィス ロンドン交響楽団 Ph
1979年 アシュケナージ ショルティ シカゴ交響楽団 Dec
1984年 コチシュ フィッシャー ブタペスト祝祭管弦楽団 Ph
1992年 ドノホー ラトル バーミンガム市交響楽団 EMI 
1994年 ブロンフマン サロネン ロサンゼルス・フィル SC
1996年 シフ フィッシャー ブタペスト祝祭管弦楽団 TELDEC
1997年 アルゲリッチ デュトワ モントリオール交響楽団 EMI
2004年 グリモー ブーレーズ ロンドン交響楽団 G
2009年 バヴゼ ノセダ BBCフィル CHANDOS
2016年 ペリアネス パブロ・エラス=カサド ミュンヘン・フィル HM 
2019年 アンドレアス・ヘフリガー マルッキ ヘルシンキ・フィル  BIS

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