ラヴェル:夜のガスパール【聴いてみよう】Ravel: Gaspard de la nuit, M. 55

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ラヴェル:夜のガスパール【名盤・おすすめ】

ラヴェルの「夜のガスパール」は、次の3つの曲で構成されています。
第1曲「オンディーヌ」Ondine  第2曲「絞首台」Le gibet  第3曲「スカルボ」Scarbo

ベルトラン・シャマユ 😘

ラヴェル:夜のガスパール ベルトラン・シャマユ 2015年
Ravel: Gaspard de la nuit, M. 55 Bertrand Chamayou

ラヴェルのピアノ曲「夜のガスパール」(Gaspard de la nuit)は、3つの曲で構成されています。第1曲は、水の精、第2曲は絞首台、第3曲はスカルボ。で、第1曲の水の精は「オンディーヌ」と呼ばれています。日本式に無理矢理あてはめてしまうと、水の神さま、龍神さまって感じになるでしょうか。(イメージ合わないですね)四大元素=精霊のひとつ水の精霊です。ラヴェルは、ルイ・ベルトラン(本名は、アロイジウス・ベルトラン Aloysius Bertrand)の詩集をモチーフに、このピアノ曲「夜のガスパール」を作曲したといいます。

男に恋しちゃった湖の底に住むオンディーヌが、結婚して湖の王さまになって欲しいと求婚したのに、ふられちゃったので、泣きながら甲高い笑い声をあげて、雨のなか消えていく~という話のようです。シャマユさんのピアノは、美少女のオンディーヌのまま、美しい姿で川面に浮かんでいます。

シャマユさんのピアノには、妖気を孕んだ女性のようには描かれていないように思います。絞首刑、スカルボにおいては、情景が少し変化してきますが、怖いとか、どろどろ~とか、エグミは少なめです。常に、どこか客観的な視線を感じます。とても綺麗なタッチで、音はソフトで濁りがなく、詩情豊かな演奏だと思いますが、主観的で強烈な個性は感じられませんが、それだけに、繰り返し聴ける演奏だと思います。(ん、ちょっと矛盾している?)出典:YouTube Gaspard de la nuit, M. 55 bertrand chamayou Provided to YouTube by Erato/Warner Classics

ピエール=ローラン・エマール 😩

ラヴェル:夜のガスパール ピエール=ローラン・エマール 2005年
Ravel: Gaspard de la nuit, M. 55 Pierre-Laurent Aimard

エマールさんのガスパールは、未来志向のような演奏で、ぐうの音もでないです。第1曲「オンディーヌ」は、綺麗な音で鳴っているのですが、進むにつれて不穏な空気が漂い、色彩が無くなり、暗闇に閉じ込められてしまいます。夜の水辺、暗闇のなかで、オンディーヌは、好きな男性を引き込もうとする水の精霊として描かれているようです。

不気味なのですが、水面を眺めていたけど、なにごとも起こらなかったって感じで、エマールさんのピアノは終わってしまいます。えっ、期待どおりにはストーリーが展開しない。あまりにも客観的すぎて、ふわっとしてて、音がヌケちゃった感じがして、妖艶さや怖さを感じなかったのです。吸い込まれる吸引力がない。えっ、もしかして真っ暗すぎて、影もカタチも見えなかったので、怖さを感じないまま終わった。うっそ! 少し間を置いて、泡が立ちのぼるような場面が、ラストにあるのですが、泡だけを見ただけで。ん? 何かあったの? でした。

第2曲目「絞首台」も、静かにパン パン パン・・・と、音が入ってきますが、暗闇すぎて描写がわからないな~という感じがします。無機質感が漂い、凡人には暗いっていうだけで、なんとも怖ろしい感じがしません。タンタンと音が鳴っているだけは、わからん! うぐっと口を押さえて逃げ出したくなるような匂いとか、キモチ悪くなるような、おぞましい光景が見えてこないのです。

第3曲目の「スカルボ」は、リズムがあるのでわかりやすいのですが、サッパリ気味に弾かれて、飛びはねている様は、わかるのだけど~ 何が飛び跳ねているのか、わからないままに終わりました。精緻な音が詰まってて、揺らぎウツウツしえ、とりとめのなさも感じるのですが、サイボーグ的、表情が硬すぎて、平板すぎてわからないんですよね。表情の少ない人を相手に、聞き出すのも疲れるんだけど。で、諦めました。

CDカップリング:ラヴェル 夜のガスパール、エリオット・カーター ナイト・ファンタジーズ Night Fantasies、2つのディヴァージョン 2 Diversions、90+、ボーナストラック 出典:YouTube Ravel Gaspard de la nuit, M. 55 ピエール=ローラン・エマール – トピック Provided to YouTube by Warner Classics International

アンヌ・ケフェレック 😘

ラヴェル:夜のガスパール アンヌ・ケフェレック 1992年
Ravel: Gaspard de la nuit, M. 55  Pierre-Laurent Aimard

ケフェレックさんの演奏は、ラヴェルの粒立ちの良さが好きなので、オンディーヌの演奏を聴きたくて、サブスクで拝聴しました。ガスパールは、夏の肝試しにうってつけの怖い楽曲です。いや、あまりこの曲を繰り返して聴いていると取り憑かれそうで、実は避けたいんですよね。

でも、オンディーヌは、ホント美しい。女性の妖しさと底知れぬピュアな気持ちが、水面を通して伝わってくる感じがします。水面を、鏡のように覗き込んでいる一人の美しい女性がいる。サワサワした音が、横っぱいに広がって、ずーっと続いていきます。この横いっぱいに広がる響きが、ホント美しく、うっとり。いつまでもナルシスのように浸っていたいのですが、鋭いタッチでツーンっ。まるで鏡が割れたように、響きを残して姿を消してしまうのです。

ハイ、オンディーヌだけで満足して聴いてしまいました。あと、二曲を聴くパワーがありません。吸い取られたみたいで~ ごめんなさい。涙目・・・ 出典:YouTube Gaspard de la nuit, M. 55 アンヌ・ケフェレック – トピック Provided to YouTube by Warner Classics

ジャン=イヴ・ティボーデ 🙄 

ラヴェル:夜のガスパール ジャン=イヴ・ティボーデ 1991年
Ravel: Gaspard de la Nuit Jean-Yves Thibaudet

ティボーテさんのラヴェルは、繊細で、煌めきある動きが素敵だなあ~って思っています。しかし、夜のガスパールは、とんでもなく怖い世界で、不気味で諧謔的な曲なのです。もわもわっとした空気感が漂い、肌にはりつくジトっとした空気、生暖かい風が、ぞぞぞわ~っと吹いてきて幽霊が出てきてもおかしくない、そんな感覚世界なのです。でもね、テォボーデさんの演奏は、不気味さや不安感は少なく、諧謔的でもありません。健康的で、ある意味、安心して聴くことのできる演奏です。

オンディーヌでは、煌めきはあるのですが、独特のかかかぁ~っと笑っているような、どっか心が壊れた、歯車が壊れたという感じはしません。いまどき、こんな壊れた女性を描くピアニストがいるのかどうか別として、また、絞首刑やスカルボにおいても、怖くて鳥肌モノという、ちょっとゲテモノ的な演奏を期待するというわけにもいきません。あくまでも、ティボーデさんは、優美なピアニストなんです。(ホント?)

オンディーヌは美女のままだし、絞首台では、夜の帳が降りて、遠くで教会の鐘が鳴っている情景が浮かびます。そして、牧師さんが、まちのなかを歩いていくような風景のままで、心情的に湧きあがってくる不気味さとはご縁がありません。スカルボも、本来は、餓鬼だと思うんですけど~ 爽やかにパラパラしてて、あららっ。我が輩が求めている餓鬼ちゃんには会えないようなのです。音色は良いのですが、それが災いしてか、ブキミさが感じないのです。

どーも、ティボーテさんは、亡霊とか精霊とかには、あまり無関心がないのだろう思います。次回は、明るい曲のラヴェルの演奏を聴きたいと思います。(ワタシ的主観です~)出典:YouTube Ravel: Gaspard de la nuit, M.55 Jean-Yves Thibaudet Provided to YouTube by Universal Music Group

ルイ・ロルティ 

ラヴェル:夜のガスパール ルイ・ロルティ 1988年
Ravel: Gaspard de la nuit, M. 55 Louis Lortie 
出典:YouTube Gaspard de la nuit, M. 55 ルイ・ロルティ – トピック Provided to YouTube by NAXOS of America

ミハイル・ルディ 🥰

ラヴェル:夜のガスパール ミハイル・ルディ 1987年
Ravel: Gaspard de la nuit, M. 55 Mikhail Rudy

ルディさんの演奏は、亡霊が集うようななか、ひとり、ぼわ~っと揺れながら漂っているようなヤバイ感覚で、独特の危うさがあります。既にもう足が無いような、ぽわぽわ~と宙に浮くような、魂を抜かれちゃうような。でも綺麗、美しさと妖しさ、怖さ、不安と表裏一体で、憑依されそうになりながら聴く~ これが快感に繋がる場合があります。

生きている心地がしない楽曲なので、ピアノも、煌めきだけで演奏されちゃっても~ ダメなわけで。スカルボは、これは餓鬼です。パラパラ~っと飛び跳ねて おり、テクニックはすごそう~と感じるし、煌めく音のツブツブが、イッパイ出てくる。ようやく、難しい曲だということだけは、わかったんです。

こんな楽曲は、楽天的に聞いちゃじゃ~ダメ。(うっかり聴けないっていう意味)人に感情とか、何かを伝えるって方法には、何があるんだろ。どんな手段、ツールがワタシたちにあるんだろ。文学的に、絵画的に、音楽も表現しないと、単純に音だけでは、何かが人にホント伝わるんだろうか。音楽って、なんだろう? 純粋に音だけで、人に伝わるんだろうか、人は解るもんなんでしょうか。なんて演奏を聴きながら、ウダウダ考えてしまいました。
出典:YouTube Gaspard de la nuit, M. 55 ミハイル・ルディ – トピック Provided to YouTube by Warner Classics

イーヴォ・ポゴレリチ 👻

ラヴェル:夜のガスパール イーヴォ・ポゴレリチ 1982年
Ravel: Gaspard de la nuit, M. 55 Ivo Pogorelich

ポゴレリチさんの演奏は、ぽっかり穴のあいが世界が広がっており、ドンビキします。関わりたくない怖さ。第1曲「オンディーヌ」は、冒頭こそ、音が綺麗に鳴っているのですが、進むにつれて、途切れそうになるほど、か細く弱音になります。清流が細々となり、ついには凍り付いていく感じ。冷たくなって、硬質感のある細かな響きとなって、結晶化していくかのような感じです。

盛りあがるところでは、氷の粒が、大きな塊となって強い打音に。姿が変わる。オンディーヌって、水の精霊で女性だと思うのですが、両性具有的で、か細いかと思ったら、するりと豹変するので、えっ。関わりたくないナルシストという感じです。

第2曲「絞首台」は、最初っから最後まで、鬱々・・・どこかに吸い込まれるかのよう。自分の世界に、閉じこもり型の演奏で、関わりたくないと思う。ワタシの感情が湧かないので、引きづり込まれない。ワタシ的には怖くない演奏だ。(と、意地を張る) どうぞ、お一人さまで遊んでください。(と、肩肘を張って身構える)でも、正直言って怖い。怖い演奏だ。ピアニストは、この孤独に寄り添い、受け入れているようで、怖さと共に暮らしているよう。

第3曲「スカルボ」は、跳躍感のある動物的な演奏もあるし、無機質的、陽炎のような演奏もあるように思うのですが、ポゴレリチさんのピアノは、生命力を感じません。エナジーのない、粒立ちのよい音なので、動きが感じられません。既に、気化してしまった物体が、するり~っと抜けていく感がして、目の前を、ふわり~っと漂っている感じです。やだーっ! 怖い。漂うというなら動きがある筈なのですが、縦に動くというよりは、横に揺れる感じがします。そして、ピアノの硬い打音で、その動きを狙い撃ちしている感じなんですよね~ 

このスカルボは、ポゴレリチさんの生命のような、象徴した楽曲のようにも聞こえるのだが~ う~ん。この小悪魔は、自閉症なのか、超ナルシストなのか、ちょっとよくわからないが、ワタシ的には、この演奏者は、描写するというよりも、主人公になりきる型、憑依する型なんだろうと感じます。(ワタシ的主観です)

なあって思ってしまった。このピアニストには、心のなかに穴があり、闇に住んでいるかのようだ。憑依型だったら、きっと、ファウストのように、速攻、魂売ります~ってことになるのかもしれない。(怖いっ 怨念が渦巻いているかのようだ。)ある意味、日本の能が描く怨霊の世界に近いですね。怖すぎ。

CDカップリング:ショパンピアノソナタ第2番、ラヴェル 夜のガスパール、プロコフィエフ ピアノ・ソナタ第6番
出典:YouTube Ravel: Gaspard de la nuit, M. 55 イーヴォ・ポゴレリチ – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ジャン=フィリップ・コラール 🙂

ラヴェル:夜のガスパール ジャン=フィリップ・コラール 1976年~80年
Ravel: Gaspard de la Nuit Jean-Philippe Collard

コラールさんの演奏は、煌めき度の高いタッチで「水の精」が奏でられています。絞首台は空しい。スカルボは、結構、ブキミだが、健康的で客観的、清潔感のある演奏です。

まず、オンディーヌ(水の精)は、結構な美女である。健康的で明るく、おおよそ、にひひ~っ うひひ~と笑うタイプではないようです。周囲の雰囲気も、さほど不気味でもないし、美女だから~って誘われることはあっても、心情的には、深みに引きずり込まれない。男を誘惑する魔性の女って感じでもなさげ。最後の方は、沈み込んでいくが、それでも、明るさは失われておらず~ 泡が、ぷくぷくと浮かんでオンディーヌは消えてしまう。って感じかな。

絞首刑は、これから絞首刑に処せられるのか、もう既に終わってしまったのか。鐘の音が、遠くで鳴り続けていますが、コラール盤で聴くと、どうも、これからという感じです。朝明け方のワンシーンのような感じです。地に足をつけて、ぼわ~っと地表から怪しげな空気が湧いているような感じでしょうか。

スカルボは、これは無邪気さが感じられます。綺麗で、絵画をみて美しいと感じる感覚です。客観的に綺麗だよなあ。というレベルで終わるかもしれません。良い意味で安心感がある~。何度聴いても、この「夜のガスパール」は難しい曲で、聴いている時の環境で、受け止め方が相当に変わります。聴くのは夜じゃーないと、やっぱ雰囲気が出ません。演奏によっては、寝ることが難しくなる場合があります。笑 それも一人、こっそり聴いてみてください。コラールさんは大丈夫だと思います。

CDカップリング:ジャン=フィリップ・コラール ラヴェル ピアノ独奏曲全集 出典:YouTube Gaspard de la nuit, M. 55 ジャン=フィリップ・コラール – トピック Provided to YouTube by Parlophone (France)

パスカル・ロジェ 🙂

ラヴェル:夜のガスパール パスカル・ロジェ 1974年
Ravel: Gaspard de la Nuit Pascal Rogé

ロジェさんの演奏は、引きずり込むような恐怖感や、エナジーは少なめだと思います。ぼわ~っと広がる曖昧さと、適度に柔らかい音の広がり、消えていくところがあって、そこが面白いです。動いているのに、動いていないような不思議な感覚に包まれる感じでしょうか。

爽やかに綺麗に、郊外の風景の一コマのような演奏で、ワタシの頭のなかの音符は、スカルボ=「ゲゲゲの鬼太郎」がイメージされちゃいました。ハイ、貧相なイメージで、ごめんなさい。 引きずり込むような恐怖感や、エナジーは感じないのですが、ぼんやりしているところが面白いデス。

怖すぎず、鳥肌も立たず、妖しげな感覚でもなく、ゾクゾクする興奮もなく、良い意味で、ぼわ~っと広がる曖昧さと、適度に柔らかい音の広がりが、すっと消えていくところがあって、そこが面白い感じがします。特に、絞首台って、ぞわーっとするんですけど、そのまま、持続すると思わせる中途半端な浮かび方なんです。

玉が空中で揺れているとしても、最後には、揺れが中央に集まってくるような感覚がしません。フーコーの振り子みたいに、同じ方向に輪を描いているはずなのに、いつの間にか向きが変わって、ずーっと揺れ続けるような~ 揺れ続けなければならないような感覚ですかね。音が、沈み込むわけでもなく、どこか張り付いたような浮かび方かなあ。動いているのに、動いていないような不思議な感覚が生まれます。勝手なワタシの妄想です。

パスカル・ロジェ ラヴェル作品集 2枚組BOX13曲 出典:YouTube Ravel: Gaspard de la nuit, M.55 パスカル・ロジェ – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group 

マルタ・アルゲリッチ 😘

ラヴェル:夜のガスパール マルタ・アルゲリッチ 1974年
Ravel: Gaspard de la Nuit Martha Argerich

アルゲリッチさんの演奏は、冷たく揺れています。突然、すっと引きずり込まれるパワーがあり怖いですっ。強く揺らめき、妖しくうねっています。静寂イメージより、底に引きずり込まれたら、多分、浮かびあがってこれないよな~って気がします。強弱のパワーの強さと鋭さは、やっぱ~凄い。エネルギッシュ。一応、抑えられているので、いつ爆発するかって考えると怖いです。闇に底に潜んでて、謎かけをされている感じで、いつ飛びかかってこられるか、不安要素が強いです。

絞首台は、ぼんやりとしてて、輪郭があるような無いような幻影が出ています。冷たいような、生暖かいような、不思議な空気感で、ぶら~っとしています。スカルボは、跳躍感のある音がイッパイの曲ですが、動物的なようで、ちょっと無機質的でもあり、細かい動きと大きくうねる動きが、面白いように変化します。形が崩れそうなのだけど、キラリっと光るので、ばらけた感覚が面白く感じられました。

繊細でありながら、大枠は壊れ崩れて、豪快で、つかみきれないところが、ゾクゾクしちゃう。アルゲリッチさんの74年の演奏って、パワーありますね。(今ももちろんあるけど)スカルボは、嗅覚の鋭さを試されているみたい。突然、うひひ~っ。いひひ~っと笑っている感じで、夜の悪魔というより、悪戯的で、遊び心に満ちあふれている感じです。この曲を聴くときは、どうも、ワタシの感覚(感性)を試されている気がします。

CDカップリング:夜のガスパール、ソナチネ、高雅で感傷的なワルツ 出典:YouTube Ravel: Gaspard de la nuit, M. 55 マルタ・アルゲリッチ – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

モニク・アース 😘

ラヴェル:夜のガスパール モニク・アース 1968年
Ravel: Gaspard de la nuit, M. 55 Monique Haas

アースさんの演奏は、ゆったり優しく柔らかい。絞首台とスカルボは、寂しい感じはするが、不気味さは、あまり出てないような気がする。 この曲は、もう少しカッチリ、ゴツンっとした音が欲しい気がする。オンディーヌは、サワサワと湖面から立ちあがってくるようなビーナスのよう。神秘的で、幻影のような32分音符のパラパラとした和音が、全体的に軽やかに流れてきます。音の粒が丸みを帯びて暖かいです。

コケティッシュに、悪魔的に、笑って消える~という、オンディーヌというのではないですね。とても健全で、健康的なビーナスタイプの水の精です。「絞首台」も「スカルボ」も~ かなり不気味な楽曲だが、アッサリ系の演奏でした。

絞首台の鐘は、古時計のようだし、スカルボっていうのは地の精霊、妖怪人間のようにパラパラと飛び跳ねるのかなって思うし、地獄絵図のような曲というか、諧謔的で哄笑まじりの曲、イヒヒ~と笑う猟奇的な曲なんだと思うのだけど、アースさんの演奏で聴くと、霜が降りて、放射冷却となって、地面から霜柱が立ってきた~って感じに感じました。柔らかくて聞きやすいので、初めに聴くには違和感なく受け止めることができると思います。安心感が違います。じっくり聴けて嬉しい演奏です。出典:YouTube Gaspard de la nuit, M. 55 モニク・アース – トピック Provided to YouTube by Warner Classics International

サンソン・フランソワ 😨

ラヴェル:夜のガスパール サンソン・フランソワ 1966年~67年
Ravel: Gaspard de la nuit, M. 55 Samson Francois

サンソン・フランソワさんの演奏は、洒脱のきいたオシャレなピアノで、強いタッチで弾いて、一瞬でチカラを抜くところが、妙に怖い演奏です。1曲目の水の精 オンディーヌは、32分音符の分散和音で、さらさらとした左手の旋律に沿って、右の主旋律が、さざ波のなかを、浮かんでは沈み、また浮かんで~を繰り返します。さわさわとした波の描き方と、弾むような強いタッチで昇り、テッペンで崩壊する描き方が、淡々としててかえって怖いです。

フランソワさんのピアノって、ホント力強い。リアル感たっぷりなのです。アースさんのピアノは、テンポが遅めでさっぱり。アルゲリッチさんのピアノは、くねくね~と知らず知らず渦が巻いて、引きずり込まれる感じだった。で、フランソワさんのピアノは、最後の最後で、ふわっと気怠さを残した余韻が、すーっと引いていくときに吸い込まれる。そう、その怖さがあるんです。引き際の時に、すーっと空気と一緒に吸われて、鳥肌が立つ感じです。

絞首台は、最初の和音の場面 ポン ポン ポンと、音が均等に置かれているのですが、余白があって、そこで虚無感を醸し出す感じです。掛け軸のような絵で、書かれていないところで、広がり想像させる意図がありますね~ 墨絵のようなモノクロの世界です。

スカルボは、激しくパタパタと跳ねまくり状態で~ どこか蝶番が外れている感じです。鍵盤を、さら~っとなでる感じと、縦に深く打音するところと、吸盤のようなタッチで多彩です。この曲では、ふっとチカラを抜く間合いが、ひぇ~っとなります。カンカン、ドンドンと弾いていると思ったら、突然、脱けます。えっと思わされるところで、多分ピアニストは笑ってるんでしょうね。やられました。出典:YouTube Gaspard de la nuit, M. 55 サンソンフランソワ – トピック Provided to YouTube by Warner Classics

ラヴェル:「夜のガスパール」【解説】

ラヴェルの「夜のガスパール」(Gaspard de la nuit)は、1908年の作品で、ルイ・ベルトランの詩集から着想を得て、「オンディーヌ」「スカルボ」「絞首台」の3曲を作曲しています。

第1曲「オンディーヌ」Ondine 嬰ハ長調 4/4拍子 終始複雑で細かいアルペジオが左右で入り組む難曲で、形式はソナタ形式 人間の男に恋をした水の精オンディーヌが、結婚をして湖の王になってくれと愛を告白する。男がそれを断るとオンディーヌはくやしがってしばらく泣くが、やがて大声で笑い、激しい雨の中を消え去る・・・という詩の内容に基づいています。

第2曲「絞首台」Le gibet 変ホ短調 4/4拍子 変ロ音のオクターヴが終始一貫して、葬送の鐘のように不気味に鳴り響きます。きわめて遅く、重々しいテンポですが、拍子はめまぐるしく変化を重ねます。鐘の音に交じって聞こえてくるのは、風か、死者のすすり泣きか、頭蓋骨から血のしたたる髪をむしっている黄金虫か、という詩の内容を表現したのかも。暗澹茫漠たる雰囲気が醸し出されます。

第3曲「スカルボ」Scarbo 嬰ト短調 3/8拍子 急速なパッセージと強弱の激しさ、そして不気味な旋律が、自由に飛び回る小悪魔を描いています。急速な連打音やアルペジオによる複雑な運指が、現代のピアニストでも満足に弾くことは難しいという難曲です。リストの「メフィスト・ワルツ」第1番が下敷きとなっているそうです。ラヴェル初期のピアノ曲の最高傑作とのことで、イマジネーションが膨らみます。気味の悪さ怖さは、良い演奏であればあるほど、ハンパではありません。お覚悟めされ~っ。

ラヴェル:「夜のガスパール」【ディスク情報】

1967年 サンソン・フランソワ EMI
1968年 モニク・アース E
1974年 マルタ・アルゲリッチ G
1974年 パスカル・ロジェ Dec
1976年 ジャン=フィリップ・コラール EMI
1982年 イーヴォ・ポゴレリチ G
1987年 ミハイル・ルディ EMI 
1988年 ルイ・ロルティ CHANDOS
1991年 ジャン=イヴ・ティボーデ Dec
1992年 アンヌ・ケフェレック Virgin
2005年 ピエール=ローラン・エマール Warner
2015年 ベルトラン・シャマユ E

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