ハチャトゥリアン:ヴァイオリン協奏曲【聴いてみよう】Khachaturian: Violin Concerto in D Minor

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ハチャトゥリアン:ヴァイオリン協奏曲【YouTube】

ハチャトゥリアン:ヴァイオリン協奏曲 ヴァイオリン:ミハイル・シモニアン クリスチャン・ヤルヴィ ロンドン響 CD収録風景で、9分23秒の動画です。
出典:YouTube Simonyan – Violin Concerto – Khachaturian (Official Video) Deutsche Grammophon – DG Mikhail Simonyan Kristjan Järvi London Symphony Orchestra, Orchestra

ハチャトゥリアン:フルート協奏曲(原曲:ヴァイオリン協奏曲) エマニュエル・パユ Emmanuel Pahud • flute
キリル・カラビツ 読売交響楽団 38分50秒の動画です。2002年録音のジンマン チューリヒ・トーンハレ管弦楽団とのCDもあります。Kirill Karabits Yomiuri Nippon Symphony Orchestra 出典:YouTube Pahud plays Khachaturian Flute Concerto in Japan (2016) AbsolutelyPahud

ハチャトゥリアン:ヴァイオリン協奏曲【名盤・おすすめ】

ネマニャ・ラドゥロヴィチ サッシャ・ゲッツェル ボルサン・イスタンブール・フィル 🤩

ハチャトゥリアン:ヴァイオリン協奏曲 ネマニャ・ラドゥロヴィチ サッシャ・ゲッツェル ボルサン・イスタンブール・フィル 2018年
Khachaturian: Violin Concerto in D Minor Arabella Steinbacher Sakari Oramo City of Birmingham Symphony Orchestra

ネマニャ・ラドゥロヴィチ(Nemanja Radulović)さんは、1985年セルビア生まれのヴァイオリニストです。写真を拝見しているだけですが、長髪で、ロックバンドのヴォーカル担当って感じがするんだけど~ ナハハ。聴いたらビックリ。繊細かつ大胆です。やっぱり冒頭からのスピードが違いますね。速っ! ヴァイオリンの細かな跳躍ぶりが凄いです。

オケの方は、フレーズの語尾を伸ばして粘着性を出したりして、演出バッチリです。聴かせ上手という気がします。CDカップリング 「BAIKA」とタイトルされたCDで、セルビア語でお伽話とのこと。ハチャトゥリアン ヴァイオリン協奏曲、R・コルサコフ シェエラザード(作品35 弦楽合奏版)、クラリネット、ヴァイオリンとピアノのための三重奏曲ほか 2018年録音 出典:YouTube Khachaturian: Concerto for Violin and Orchestra in D Minor NemanjaRadulOfficial Provided to YouTube by Universal Music Group

アンティエ・ヴァイトハース ダニエル・ライスキン ライン州立フィルハーモニー管弦楽団 🙂

ハチャトゥリアン:ヴァイオリン協奏曲 アンティエ・ヴァイトハース ダニエル・ライスキン ライン州立フィルハーモニー管弦楽団 2016年
Khachaturian: Violin Concerto in D Minor Antje Weithaas Daniel Raiskin Staatsorchester Rheinische Philharmonie

ヴァイトハースさんの演奏は、ちょっぴり硬めですが、そつなく演奏されています。よりどりみどり~というほどには演奏CDがないので、サブスクリプションを利用して拝聴しました。
CDカップリング:ハチャトゥリアン ヴァイオリン協奏曲、ヴァイオリンと管弦楽のためのコンチェルト・ラプソディ 2016年 出典:YouTube Violin Concerto in D Minor Antje Weithaas – トピック Provided to YouTube by NAXOS of America

ユリア・フィッシャー ヤコフ・クライツベルク ロシア・ナショナル管弦楽団 😘

ハチャトゥリアン:ヴァイオリン協奏曲 ユリア・フィッシャー ヤコフ・クライツベルク ロシア・ナショナル管弦楽団 2004年
Khachaturian: Violin Concerto in D Minor Julia Fischer Yakov Kreizberg Russian National Orchestra

フィッシャーさんの演奏は、アクの強い楽曲が、少し中和された感じがします。まあ、しかし、どうしてこんなコッテリ、アクの強い曲を取り上げて演奏しているんだろうと、最初は、不思議な感じがしました。ごっつい太筆書きスタイルのオイストラフさんのヴァイオリニストの演奏を、その昔は、聴いていたので、ホント、不思議だったのです。

しかし、シュタインバッハさんの演奏を聴いて、女流でも弾いていただけるようになってきたので、心なしか、アクがヌケてきた気がします。コテコテの楽曲から、風味が変わったという、所謂、アジヘンでしょうか。繊細なところは、もちろん繊細に、豪快なフレーズは、しなやかさに喉を震わせる感じで、スマートに変化してきているように思います。ワタシ自身も、思い込みを捨てて、この曲にアプローチしていきたいと思います。

CDカップリング:ハチャトゥリアン ヴァイオリン協奏曲、プロコフィエフ ヴァイオリン協奏曲第1番、グラズノフ ヴァイオリン協奏曲 2004年 出典:YouTube Violin Concerto in D Minor ユリア・フィッシャー – トピック Provided to YouTube by PIAS

アラベラ・シュタインバッハ サカリ・オラモ バーミンガム市交響楽団 

ハチャトゥリアン:ヴァイオリン協奏曲 アラベラ・シュタインバッハ サカリ・オラモ バーミンガム市交響楽団 2003年
Khachaturian: Violin Concerto in D Minor Arabella Steinbacher Sakari Oramo City of Birmingham Symphony Orchestra

CDカップリング:ハチャトゥリアン チェロ協奏曲 ダニエル・ミュラー=ショット 2003年、ヴァイオリン協奏曲 アラベラ・美歩・シュタインバッハ 2003年 サカリ・オラモ バーミンガム市交響楽団 出典:YouTube Violin Concerto in D Minor アラベラ・シュタインバッハー – トピック Provided to YouTube by NAXOS of America

アラベラ・シュタインバッハ フェドセーエフ モスクワ放送交響楽団 🙂

ハチャトゥリアン:ヴァイオリン協奏曲 アラベラ・シュタインバッハ フェドセーエフ モスクワ放送交響楽団 2003年
Khachaturian: Violin Concerto in D Minor Arabella Steinbacher Vladimir Fedoseyev Tchaikovsky Symphony Orchestra of Moscow Radio

録音状態はまずまず。ハチャトゥリアン生誕100年の記念演奏会のライブ演奏です。ベタでバタクサイ楽曲だと思い込んでいたが、洗練されたスタイリッシュな楽曲に早変わり。驚きの1枚である。最後拍手入り。

1楽章
ハチャトゥリアンは、ガシっとしたゴツイ音で奏でられるというイメージがある。「どぉ~ら しぃ~そ どしどら らぁ~ふぁ」「そ~み ふぁ~れ そっふぁそれ ふぁ~れ し~ら そみどらそっ」ヴァイオリンの音が、ギアの歯車がカミカミになって、音そのものが、ギシギシ音を立てているような、ヴァイオリンのフレーズが、まず登場する。ヴァイオリンの弦に、弓が、どんな風に当たっているのか、素人のワタシにはわからないのだが~ギクシャクした感じは、まるで、機械のパーツ歯車のようだ。このギアの大きさによって、不快な音が大きくなり、ますます、歯がギシギシ言う音になって、まるで大きな工場で機械のパーツを作っているようなイメージになる。隣り合わせになっている音が、半音ずれたような音で、スピードアップして悲鳴を上げて凄い速さで回転していくように感じる。

乾いた、カシカシ音が、繊細に飛び跳ねてくるところは、とっても優美とは言えないのだが、でも、このシュタイバッハーさんの演奏は、ふふっ。結構繊細なのだ。ふわーっと伸びて、伸びて、しなやかに伸びきってくれそうなところがあり、上に伸びた時には、バーバーのヴァイオリン協奏曲のような幻想的な雰囲気まで醸し出してくる。このCDは、ハチャトゥリアン生誕100年を記念した演奏会、2003年のライブ盤で。ヴァイオリンは、アラベラ・シュタインバッハーさん。時々、アラベラ・美歩・シュタインバッハー(Arabella Miho Steinbacher)として、ミドルネームも表記されている場合があるが、ドイツ人のパパと、日本人のママの間に生まれた女性である。

この演奏は、彼女が、大きく取り上げられて人気が出てくる前の録音になると思う。今は、ORFEO(オルフェオ)、Pentatone(ペンタトーン)から、CDが発売されているが、大きく飛躍する前の録音で、貴重な演奏盤だと思う。
ライブ盤なので、録音状態はイマイチなのだけど、ハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲のCDが、新しく出てこなかったので買い求めたもの。とても繊細で優美な演奏で、ほほぉ~良いやんって思ってしまった。なんたって華麗だ。
オジチャンたちの無骨な演奏も、大変面白いのだが、女性らしい演奏というのは、なかなかに優美で、得難いモノがある。ロシア臭い演奏とは違う。センスのある都会的な暗さ、スマートで、高音域へ駆け上っていくフレーズとか、間合いとか、ロマンティックさが詰まってて、すすり泣きをする多彩な顔を見せる。コーガン盤のように、50年代後半の古いCDを聴いてきた耳にとっては、とってもご馳走っ。一辺倒なカシカシな演奏ではなく、線の細い音だが、湿気がなく、 しなやかさの内にも、キッパリした演奏で、メリハリが出てて熱い。

2楽章
三拍子の揺りかごのようなフレーズ。乾いた音の響きだが、アラビア風千夜一夜のような官能の世界が拡がっている。弦の優美な、ねっとり系の間合いがあって、沈み込んでいく。「どみ ふぁ~ふぁ ふぁ~らそ ふぁらそふぁ~ しれみぃ~みみ みらそ ふぁ~」字余り風の転がる付点リズム。魅惑的で~ 暗い音色ではなく、あくまでも明るめで乾いてて~ 若い魅惑が詰まっているって感じだ。とろり感はあるが、どろりとした粘り感覚ではなく、すぃ~っとした線の綺麗さがあり、透明度の高い官能性だ。濁り感の少ない、爽やかな粘りで、間合いの、ふっとした空気感があって、執拗さはあまり感じさせないまま、高音域の美しい音色に耳がそばだつ。間合いの美しさというか、すーっと天上的に音がのびあがっていくところが、すごく美しい。いつも1楽章と3楽章のイメージが強かったハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲だが、2楽章の美しさに今頃気づいたって感じ。 まあ、オケの方はそのままロシア臭さを持っているが。

3楽章
オケは、さすがに派手に、賑々しくベタな鳴りっぷりだが、ヴァイオリンのフレーズが入ってくると、とっても、しまってキュートになっている。へえ~ このシュタイバッハー盤で聴くと、コミカルで、可愛い。すごい超テクのすばしっこいフレーズが続くが、平板にならない。いつもハチャトゥリアンって、ベタなバタクサイ通俗的な楽曲だな。と思っていたのだが、その、いつも感じていたフレーズが、繊細で、可愛く変貌していくのだ。これが面白い。オケもヴァイオリンも、互いに推進力があり、サクサクとした肌触りで、跳躍を繰り返し、スマートな都会的で現代的な感覚を得て、洗練されている。無窮動のフレーズが、ベタなオケのフレーズを足がかりに、虹を描いていくかのような~ 昇っていく上昇するエネルギー、ベクトルを描いていくようで、このヴァイオリンのフレーズは、すごい。ベタでバタクサイ楽曲だと思い込んでいたが、洗練されたスタイリッシュな楽曲に早変わり。う~ これは佳いやん。と、驚かされた1枚である。あー これで、ハチャトゥリアンも、ひと皮向けて、21世紀にも生き残れるかしらん。と、僭越ながら思っちゃった。(←余計なお世話と言われそうだけど)ホント、生誕100年 おめでとう。先を見越したような先見の明あり。シュタイバッハーさんの起用は大当たりだと思う。佳い楽曲になりつつあるようで嬉しい。今後、女性がこの楽曲を取り上げて、演奏してくれると嬉しいなぁ。

出典:YouTube Khachaturian: Violin Concerto in D minor – Steinbacher / Fedoseyevfur bru ★ 公式ではありませんが、YouTubeにおいて配信されていたのでご紹介しておきます。 Aram Khachaturian: Violin Concerto in D minor
May 13, 2003 Great Hall of the Moscow Conservatory

エマニュエル・パユ ジンマン チューリヒ・トーンハレ管弦楽団 😘

ハチャトゥリアン:フルート協奏曲(原曲:ヴァイオリン協奏曲) エマニュエル・パユ ジンマン チューリヒ・トーンハレ管弦楽団 2002年
Khachaturian: Flute Concerto(原曲:Violin Concerto) Emmanuel Pahud David Zinman Tonhalle Orchester Zürich

録音状態は良い。速いパッセージをどう吹くのか、息継ぎができるのか心配しちゃいましたが、さすがパユさんです。当盤は、ハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲を、フルート協奏曲に編曲したもの。まずは、オケが登場していきなり、全合奏で序奏部分を、巻き舌風に、まくし立てるように豪勢に奏でたあと、通常ヴァイオリンのフレーズのところをフルートが奏で始める。えっ~っ! ヴァイオリンのところをフルートがそのまま吹くの? うっそ。冒頭と第1主題で絶句してしまった。猛烈に速いパッセージなのだ。ヴァイオリンのようには速いのは無理でしょ。ヴァイオリンは、快速パッセージには、確かに左手はまわらないとダメだけど、フルートは、息継ぎをしなくてはならない。これだけ速いフレーズを、息継ぎなしで走る?いやはや、シンジラレナイ。

ヴァイオリンとフルートの違いは、息継ぎが大きな問題だが、音程が正確でなければならないし、雰囲気だって違う。第一、フルートは、こんな汗臭い楽曲はご縁がない。だって湖のように神秘的であったり、内省的、静謐さ、小春日和のような雰囲気だったり、天使の声のようだったり。ふわーっと空気感を醸し出したり、幻想的だったりするじゃないですか。今まで聴いてきたフルートの楽曲って。ラヴェルのダフニスとクロエだったり、タイスの瞑想曲だったり、アルルの女のメヌエットだったり、名曲が、ひきもききらず。それが、こんなハチャトゥリアンのような楽曲で、フルートを主役にする?

えっ、こんな民俗音楽の舞踏のような塊のような、汗臭くて血なまぐさい(流血騒ぎではないが)ウォッカをあおって踊っているかのような血湧き肉躍る楽曲を、フルートで吹く? 
うっそ~ マギャク 全く180度、違うでしょーっ。イメージが。ハチャトリアンに、フルート協奏曲を作曲依頼するランパルさんも、すごい勇気のある人だが、新曲を断られて、ヴァイオリンのかわりにフルートにしたら~という、破れかぶれ的な提案をするハチャトゥリアン。で、ホントに編曲して吹いちゃうランパルさん。この応酬がすごい。う~ん。天才は奇想天外だ。

で、パユさんのフルートは、元がヴァイオリン協奏曲とは思えないほどに、イメージが違っている。冒頭の入りの部分、オケの全奏部分は、全くヴァイオリン協奏曲と同じ雰囲気を持っているが、汗臭くなく、血湧き肉躍るというよりは、穏やかで、とてもノスタルジックになってて雰囲気が違うのです。原曲のヴァイオリン協奏曲のイメージとは、かなり異なり、豪快で汗臭くムンムンした熱気、跳躍感が影を潜めています。オケは、汗臭いフレーズを、まったり~と、うねるように演奏しますが、フルートは、草原の風のように聞こえてきます。3楽章の怒濤のようなフレーズは、さすがに無理だと思っていたんですが、ヴァイオリンの超快速パッセージを、なんなくクリアー。この超テクには、やっぱりすごいな~っと、感心しちゃいました。しかし、民俗音楽の塊のような主題は、アクがすっかり抜けおちた感じで、えへへっ。正直あれまって感じです。あの豪快で、ねちっこい粘りのある跳躍感は、土壌が違いすぎでしょう。ワタシ的には、パユさんには、やっぱり透き通る音で、天使の羽根のようなフレーズを吹いてもらいたい。そう思います。この演奏に脱帽しつつ申し上げております。

CDカップリング:ハチャトゥリアン フルート協奏曲、イベール フルート独奏のための小品、イベール フルート協奏曲 出典:YouTube Khachaturian Flute Concerto (Transcr. Rampal of Violin Concerto, Op. 46)
Emmanuel Pahud Provided to YouTube by Warner Classics

イツァーク・パールマン ズービン・メータ イスラエル・フィル 🙂

ハチャトゥリアン:ヴァイオリン協奏曲 イツァーク・パールマン ズービン・メータ イスラエル・フィル 1983年
Khachaturian: Violin Concerto in D Minor Itzhak Perlman Zubin Mehta Israel Philharmonic Orchestra

録音は良い。民族的な色彩は薄いし、粘っこく演奏されていないが、やっぱりテクはあるし、録音が少ないので、はずせない盤かと思う。録音が1980年代なので、まあ新しい方の部類に入ってしまう盤である。だって~ 他の50年代の録音盤と比べると、そりゃ~良いです。ツボにハマルと、メチャ面白いリズミカルで、アルメニアという風土を楽しめる楽曲なのだが、なにせ録音が少ないのである。

だから、パールマン盤は、はずせないというのが現状だ。泣き節的な、背筋が、すーっとくるような音は絶妙だ。「ど~らし~そ どしどら~ふぁ~」「そ~みふぁ~れ そふぁそれふぁ~ し~そふぁれそしふぁ そ~ら~」しかし、あまり泥臭い、重々しい 雰囲気、とろみ味の出ている演奏ではない。それでも、スマートながら、ノリノリ感のある演奏になっている。オケとヴァイオリンのバランスは、まあソツのないところだと思う。迫力があって、汗くさく、粘っこく演奏してもらう方が、ワタシ的には嬉しいのだけど妖艶さには少し欠けているかも。

クネクネした、なんとも、粘っこく執拗で、しつこいくらいに世俗的な色気があった方が、もっとエキゾチックさが出てくるのだと思うが、ヴァイオリンもオケも、わりとスマートで、線が細めである。クネクネ感よりも、直線的であり、すーっとした、機械的にさえ聞こえてくるような無窮動さが目立つ。醸し出してくる、立ち上ってくる、匂ってきそうな色気は少ないし、動物的とは言えない。それに、オケが、あまり目立たず、鳴りっぷりの良い方ではない。全体的なトーンとしては渋いのだが、華やかな色彩感や、押しくる厚かましい、押しつけがましいようなリズムや、世俗的な押しの強い威圧感は少ない。圧倒的でパワフルな感じはしないようだ。

2楽章
木管が、「み~ふぁそら ふぁそら しどれ~ み~」「みふぁれみ~みふぁれみ~」と歌い始める。ファゴットだと思うのだけど、この怪しげな出だしから、3拍子で「しふぁ~ どふぁ~ しふぁ~ どふぁ~」というフレーズは、思わせぶり感がある。まるで、枯れススキが、風になびいているような寂しげな風情が漂う。

このフレーズの部分は、抒情的だし、スマートさからキレを感じる。打楽器は、奥深く鳴っており、全体的に暑苦しいような、うねるようなパワフルさには欠けている。バランス良く、抑制が効いていると言えば良く聞こえるかもしれないが、う~ん。どうだろう。まるで風景描写のように客観的で、クールさが良いのか。

ヴァイオリンの高音域のフレーズが前面に出てくるし、酒に酔ったオッチャンが、悲しい歌を歌っているかのような雰囲気よりも、枯れススキが、風になびくような植物的な感覚かもしれない。もっと人間臭くても良いんだけどな~と思いながら聴いてしまった。まるで映画音楽風~にも聞こえちゃって。格調が高いという感じではない。

3楽章
結構、ノリノリの派手な出だしとなっている。シャープだし勢いもあるが、ちょっと軽いかなあ。軽薄な感じもしちゃう出だしだ。パールマンさんのヴァイオリンは、さすがに軽妙で、小回りの効く、すばしっこさがあり、小気味よく跳ねている。民族的な色彩については、もっと粘って、小節がまわっていても良いような気もするが、小気味良い、すかっとしたテクニックで、コロコロと音が踊っている。

湿気や深い音色が、もう少しあった方が良いのかもしれない。1楽章同様に、泥臭い匂いを感じたい気がする。オケも、中間部分は、わりと几帳面で地味め。パールマンさんのヴァイオリンも、テンポアップしているところは軽妙だが、ゆったりした箇所では、アクセントやリズミカルが意外と淡泊な気がする。

初めは、粘りやアクの強さをイメージしていたのですが、聴いてみると、結構、淡泊です。 さらりと弾いているのか、粘りを意識して少なめにしたのかもしれないですね。全体的には、まあまあ。感動して、拍手~ってワケにもいかないし、痛快とも言えず。無窮動的で、機械的な演奏だな~という気もします。コテコテのアクが強すぎて鼻につく演奏が苦手な方には、現代風な演奏で良いかもしれません。録音されているのが少ない楽曲なので、選択の余地が少なく、貴重な存在だということに変わりありません。

カップリング:ハチャトゥリアン ヴァイオリン協奏曲、チャイコフスキー(グラズノフ編)瞑想曲(作品42-1)
出典:YouTube Khachaturian Violin Concerto in D Minor itzhakperlman Provided to YouTube by Warner Classics

レオニード・コーガン ピエール・モントゥー ボストン交響楽団 😘

ハチャトゥリアン ヴァイオリン協奏曲 レオニード・コーガン ピエール・モントゥー ボストン交響楽団 1958年
Khachaturian: Violin Concerto in D Minor Leonid Kogan Pierre Monteux Boston Symphony Orchestra

録音状態は良い。リマスタリング盤。繊細な音ではあるが、リズム感がすごく良くクールに跳躍し、テンションがあがってくる。1楽章全合奏で序奏部分を奏でたあと、ヴァイオリンの不可思議な踊るフレーズが出てくる。メッチャ個性的なフレーズだ。最初は、機械的に動くフレーズが登場するが、そのうち、短いフレーズを転がるように歌い始める。これが哀愁が漂う主題となっている。

金管の短いパッセージも入って、今まで聴いたことがないような踊りのパッセージなのだ。それがまた、速いっ。すばしっこく俊敏で、するり~と逃げ去っていく。第2主題は、線の細い、かぼそく民族色豊かな中央アジアっぽい旋律なのだ。この主題は甘いのだが、コーガンさんのヴァイオリンにかかると、すーっっ伸びきって、まっすに飛んでいってしまいそうな雰囲気である。音がスマートで、直線的に響いてくる。

で、旋律走り出すのだが、ここにまた、金管やシンバルが挟まって、ジャンジャンと入ってくる。ヴァイオリンの旋律とオケの旋律が、対比されているというか、一体になっているというか。オケのリズムも個性的だし、パーカッション専門家だと、この不思議なリズム感が、カラダでわかるのだろうが、う~ん。ど素人には音符が跳ねているとしか思えず、捕まえられない。とっても複雑な音の並びで、なーんとも言えない不思議な音とリズム、そして、間合いが詰まっている。

しかし、わからない。とらえどころに迷うくせに、感覚的には、妙に懐かしい雰囲気を持っていて、DNAを呼び覚まされてしまうような感じになるのだ。理性より感性が、ビンビンに刺激される。重音の音色が妖艶であり、首をくすぐられているような感じのするヴァイオリンのフレーズが鳴っているかと思ったら、オケが、転げ落ちるし。滑稽な感じというか、はぐらかされているような気もする。妙に複雑なフレーズなくせに、合いの手は超シンプルである。何度もフレーズが繰り返されるので耳に残る。直線型のフレーズとクネクネしたフレーズで、絡み取られてやられる。

2楽章
歌謡風の旋律が詰まった楽章である。木管が歌い始める。ゆったりとした3拍子で、揺りかごのようだ。この揺りかごのなかで、ヴァイオリンがと歌い始める。妙に音が揺れる。官能的だが暗い。ゆったりしており、眠気が襲うのだが、これが、また刺激的であって、妙に覚醒され。う~ん。なんとも言えない夜のまだるっこしい、とろり感があり。雰囲気は場末っぽいのだが、これが妙に品があって、きわどい。

この品の良さは、コーガンさんのす~っとした音質から来るモノだと思うが。これを太い音で奏でられると、うぷっとするだろうけど。湿気がなく乾いている。で、中間部ではオケが、アラビアンナイト風の旋律、遠くからのエキゾチックな風が吹いてくるようだ。ここ、砂漠か草原かしらん。なにせオリエンタル風情が満喫できる。で、ヴァイオリンも、それに連れて弱く、れどれど~ らそそふぁ~風のように鳴る。オケが豪快に、エキゾチックなフレーズを奏でると、妖艶さがぶっ飛んでしまうのだが、力強く、劇でも見た後のような感触が残る。とにかく、一般的な西洋音楽ではないので、これにハマルと、なかなか抜け出せない感覚。

3楽章
ど派手な3楽章である。一気に、アメリカナイズされ、夜のラスベガスに飛んでしまったような派手な出だし。金管が鳴り出して。はあ? ↑ このリズム正確じゃーありません。で、ウジャウジャ鳴っているなか、跳躍三昧っ。踊りはねて~ 高音域に飛んで行っちゃう。

テクがなければ、恐らくこれだけ速く飛べないと思うが、三流のミュージカル映画で見ているような感じがしないでもないのだが、この不可思議なフレーズの音色に、まず驚かされる。また、この細かく揺れるリズムと付点リズム。で、前の楽章で出てきていた主題、甘いフレーズが、オケが、チャンチャ チャチャチャと、おとなしく鳴っているなかを弾いてくる。

一筋縄でいかないというか、構成が複雑に入り組んで、それがそれぞれ個性的で、驚かされる。ごった煮的とも言えるし、交錯しているとも言えるが。オケはいたって単調に鳴らしているが、ヴァイオリンは、オブリガート風に刻んでいく。木管や金管との絡みもテンポ良く進んでいる。で、最後に主題が戻る。メチャ速いっ。躍動感ありすぎ~ それに、哀愁の漂うオケのフレーズに乗って、風のように舞い上がっていくところの姿が、すごすぎ。

このリズム感に、まず身に委ねて、聴きまくらないと面白くない。それに、無機質なオブリガートではなく、繊細でありつつ、豪快であり、粘りや執拗さがなければ面白くないし、派手さも必要。強いアクセントというか、アクも主張も必要だと思うし、かなり濃い味付けも必要なのである。結構、要求される要素って多い。

この楽曲の素材本来の持ち味には、たっぷりと濃い味がついているから、クールに演奏しても、大丈夫。コーガンさんのヴァイオリン は、線がピンっと張った細身の繊細で、いささかクールな演奏だ。しかし、楽曲の熱っぽさにほだされ、こっちまでが舞い上がることは、間違いない。躍動感あるアルメニアの民族調のフレーズと、甘さと、超テクが混在しており、一風変わった楽曲で、マニアックな楽曲なのかもしれないが、流行ってもよいのになあ~。惜しいよなあ。って思う。今のところ古い録音しかないのが寂しい。この楽曲のCDを見つけて入手したら、即聴くことにする。

CDカップリング:ハチャトゥリアン ヴァイオリン協奏曲 1958年、プロコフィエフ「アレクサンドル・ネフスキー」 ライナー シカゴ交響楽団 1959年録音 出典:YouTube Violin Concerto in D Minor(Remastered) レオニード・コーガン – トピック Provided to YouTube by Believe SAS

ルッジェーロ・リッチ アナトール・フィストゥラーリ ロンドン・フィル 🙄

ハチャトゥリアン:ヴァイオリン協奏曲 ルッジェーロ・リッチ アナトール・フィストゥラーリ ロンドン・フィル 1956年 Khachaturian: Violin Concerto in D Minor Ruggiero Ricci Anatole Fistoulari London Philharmonic Orchestra

1956年の録音なので、さすがに良いとは言えないが、ティンパニーの響きなど、低音がボコボコしているもの良い方だと思う。ヴァイオリンのソロ部分は、1音分のところを2音弾いている感じで、装飾音的に奏でている。全体的には迫力がない。コーガンさんとモントゥーさんコンビの方が、シャープ。リッチさんのヴァイオリンも、スマートだしシャープなのだが、切れ味が、コーガンさんと比べると分が悪そう。

違いは、高音域の響きの、ひや~っとした響きだと思う。カデンツァのところで、コーガン盤ではショート・カットされているようだが、ひぇ~という首が寒くなるようなフレーズを、長く奏でている。すすり泣き風に、すきま風のように歌う。短いフレーズを転がるように無窮動風に進んできて、「れ~れどしれふぁれ~」をテーマにした泣きのカデンツァには、ホント泣ける。ちょっと長いため、くどい感じも受けるが、これがハイライトだろう。カデンツァ部分が終わると、オケが転げ落ちるのだが、この入り方が決まってない。なんとも、まぬけた感じで、がっくり。もっと、ビシっと決めてくれなきゃ。

2楽章
木管が歌い始める風雲を告げるような出だしとなっている。その後、3拍子でゆったり 感が出てくるが、ヴァイオリンが、「歌い始めるところは、どよ~んとした感じになっている。コーガン盤は、夢の揺りかご的だったのだが、リッチ盤では、豊満さは感じるが、ちょっぴり緩め。湿気の少ない草原的な広がり、枯れ草が風になびくような雰囲気とは、ちょっと違う。音が飛翔していかないので、地べたに足がついている、どっしりとしたアラビア風、マッチョなおじさん風が歌う歌声のように聞こえてくる。低音の響きが、ボンボンと響いているためかもしれない。

3楽章
三流のミュージカル映画で見ているような出だしなのだが、まあ硬いっ。オケに軽妙さがないというか、ウジャウジャ・・・と音が薄っぺらい。小気味よく、跳ねてくれ~リッチさんのヴァイオリンは、わりと頑張ってオチャメに弾かれていると思う。でも、几帳面だよなあ。遊び心が満載の楽章なので、ここは崩してくれないと、面白みに欠けてしまう。気候風土の違った国からやってきました。という感じで、ちょっと杓子定規的に聞こえてしまう。オブリガート風に刻むリズムも、あまりオケは弾んでくれていない。

主題が戻ってくる箇所も、「ふぁ~れどれ そらふぁ~」という甘いフレーズが、イマイチに感じてしまった。総体的にスマートすぎるのだろうか、ねちっこさ、アクの強さ。独特の土臭さ、草の枯れた匂い。が、漂ってきそうで、漂ってこない。(って言っても、私にアルメニアのDNAは入っていないのだから、ワカラナイのだが)リッチ盤は、優しいフレーズに鳴っているし、楽しげで、優美に最後は盛り上がってくる。じわ~っとクールに燃えてくるコーガン盤とは違って、ちょっと、お上品なのかもしれない。でも、うふふ。オケは貧相だし、ちょっと文句も言いたいが~ でも、楽しい楽曲だから良いか。

CDカップリング:2枚組BOX ハチャトゥリアン ピアノ協奏曲 P:ラローチャ1972年 ヴァイオリン協奏曲 ルッジェーロ・リッチ アナトール・フィストゥラーリ ロンドン・フィル1956年 組曲「仮面舞踏会」ブラック ロンドン交響楽団1977年 交響曲第2番「鐘」 アラム・ハチャトゥリアン ウィーン・フィル 1962年 出典:YouTube

Khachaturian: Violin Concerto in D Minor ルッジェーロ・リッチ – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

ダヴィッド・オイストラフ アラム・ハチャトゥリアン フィルハーモニア管弦楽団 😘

ハチャトゥリアン:ヴァイオリン協奏曲 ダヴィッド・オイストラフ アラム・ハチャトゥリアン フィルハーモニア管弦楽団 1954年
Khachaturian: Violin Concerto in D Minor David Oistrakh Aram Khachaturian Moscow Radio Symphony Orchestra

オイストラフさんの演奏は、作曲家ご自身が、指揮をするというもので、ぐいっと力強い太書き型の演奏です。
出典:YouTube Khachaturian: Violin Concerto in D minor – Oistrakh / Khachaturian / Moscow Radio Symphony Orchestra fur bru ★ 公式ではありませんが、YouTubeにおいて配信されていたのでご紹介しておきます。

ハチャトゥリアン:ヴァイオリン協奏曲【解説】

アラム・ハチャトゥリアン((Aram Khachaturian)は、1903年生まれのグルジア(旧ソ連)の作曲家です。ヴァイオリン協奏曲は、アルメリアで民俗音楽を調べていたことを契機に1940年に作曲され、ヴァイオリニストのダヴィッド・オイストラフに献呈されています。

第1楽章 ニ短調 4/4拍子 ソナタ形式 全合奏による短い導入の後、ヴァイオリンがG線上で第1主題を提示します。管楽器とヴァイオリンの経過部を経て、第1主題が反復され、弦による経過句を経た後、グリーグのピアノ協奏曲を彷彿とさせるイ長調の第2主題が現れます。この主題は次の楽章でも再現されます。

第2楽章 ト短調 3/4拍子 三部形式 短い導入の後、ヴァイオリンが歌謡風に主題を提示します。中間部は、管弦楽の伴奏の後、弱音器をつけて民俗風の主題がハ短調で奏でられます。

第3楽章 ニ長調 3/8拍子 拡大されたロンド形式 58小節の賑々しい派手な導入の後、民俗音楽的な主題が現れ、繰り返された後に、嬰ヘ短調の主題が現れます。演奏時間は、約35分の楽曲です。有名なフルート奏者のランパルさんが、1968年にフルート協奏曲として編曲しています。民俗的なフレーズが個性的で情熱的な曲です。汗が迸り、文字どおり血湧き肉躍る、炎が舞いあがる~というスケールの大きな楽曲です。豪快な弾きっぷりに、しびれちゃう~という曲でもありますが、ラーメンで例えると、コッテリ系の豚骨風味で、多少、汗臭いかもしれません。一度聴いたら忘れられないと思います。

ハチャトゥリアン:ヴァイオリン協奏曲【ディスク情報】

1954年 オイストラフ アラム・ハチャトゥリアン フィルハーモニア管弦楽団 EMI
1956年 リッチ フィストゥラーリ ロンドン・フィル Dec
1958年 コーガン モントゥー ボストン交響楽団 R
1983年 パールマン メータ イスラエル・フィル EMI
2002年 パユ ジンマン チューリヒ・トーンハレ管弦楽団 EMI フルート協奏曲
2003年 シュタインバッハ フェドセーエフ モスクワ放送交響楽団 VISTAVERA
2003年 シュタインバッハ オラモ バーミンガム市交響楽団 ORFEO
2004年 ユリア・フィッシャー クライツベルク ロシア・ナショナル管弦楽団
2016年 アンティエ・ヴァイトハース ダニエル・ライスキン ライン州立フィルハーモニー管弦楽団 CPO
2018年 ネマニャ・ラドゥロヴィチ サッシャ・ゲッツェル ボルサン・イスタンブール・フィル G

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